ザリガニの鳴くところ
評判
ザリガニの鳴くところの評価:
4.39/5点 レビュー 243件。 A ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全359件 261〜280 14/18ページ
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ザリガニの鳴くところの評価:
4.39/5点 レビュー 243件。 A ランク
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誰もが最初に疑問に思うのは、果たしてザリガニは「鳴く」のかと言うことだろう。原文では「鳴く」のところはsingである。だから直訳すれば「ザリガニの歌うところ」となる。鳴くと歌うとでは若干感じが違う。鳴くにはおそらくストレス下にある場合も含むであろうが、singにはストレスはかかっていまい。すなわち、「ザリガニが自由にのびのびと暮らしているところ」といったほどの意味であろうか。言い換えれば、人間の開発や干渉が及んでいないところ、か。しかし、本文中ではとってつけたほどしか出てこないザリガニが、なぜ本の題名にまでなっているのか?彼女が一番お世話になったのはmusselsイガイであり、本来ならば「イガイの鳴くところ」とでもすべきだろうが、そうすれば毎日のようにイガイを大量に掘り、それを売りさばいて生計を立てている彼女自身が生態系の破壊者であることを想起させてしまうからだろう。
原文で読んだ。95%位(盛りすぎ?)はまぁまぁ正しく理解したと思うが、残りの5%ぐらいは意味不明だったり、適当に読み飛ばしたり、誤解したりしていると思う。大勢に影響ないとしておこう。(ところで、日本語の本のここに投稿するのは不適当かもしれないがお許しを。)
親からも兄弟姉妹からも見捨てられ去られて、天涯孤独の身となった6歳の少女Kyaの死ぬまでの物語である。彼女はたくましく、また反面半ば臆病に生き、そして成長していく。そこに殺人事件が絡んでくるが、これはおそらく読者を最後のページまで誘導するための作者の仕掛けであって、決定的に重大な意味を持っているようには思えない。法廷場面が好きな私は、そこを一番ワクワクしながら読んだが、読み方としては邪道と言えるかもしれない。しかし、この仕掛けがなければ、涙を誘う部分があるとは言え、前半はやや退屈である。
主人公の次に重要な意味を持つのは、ノースカロライナの湿地帯marshであろう。そこは彼女の棲家であり、遊び場であり、学びの場であり、食料の供給源であり、収入の源でもあった。そこは、日本でよくあるように、洪水や台風や地震といった自然の猛威といったものは、少なくとも彼女の命が尽きるまでの60年間ほどは一度もなく、彼女がshackと呼ぶボロ家も、多少手を入れたとはいえその年月無事に立ち続け、ストーブとともに彼女のアイデンティティーの重要な一部をなす。母親の帰りを待つためにも、そしてもはや帰ってこないとわかってからも、出て行った母親の記憶を留めるためにも、それはそこにそのままの形で必要だったのである。
また一方湿地帯は、そこは彼女がmarsh girlとして村人からあざけられ差別される原因であり、また同時に彼女を村人から守ってくれるシェルターでもあった。湿地帯はアクセスの障壁であり、その障壁を越えてやってくる2人の男を彼女は愛し、裏切られ、憎み、また愛し、そして・・・殺す(順不同)。
チェイス殺害の罪で彼女は起訴される。確たる証拠は何もない。はたして彼女は無罪の評決を得る。しかし、物語の最後に実は彼女が真犯人であったことが明かされる。メスのホタルが偽の光の明滅でオスをお引き寄せるように、彼女はチェイスを火の見櫓にお引き寄せ、そして突き落としたのだった。彼女に人を殺めたことに対する葛藤はなかったのだろうか。そこは何も書かれていない。が,なかったはずがない。最後の最後でのどんでん返しに導くために、作者は書くことができなかったのである。それは、この小説の重大な欠点と言わなければならないだろう。
この結末には納得できない。元来、作家はその主人公を煮て食おうが焼いて食おうが勝手であって、読者が文句を言う筋合いは無い。しかし、主人公Kyaには、いかに人に去られ、捨てられ、孤独であっても、on her own で、すなわち独力で生きていくと言う一種の気高さ、矜持があったのではなかったか。そうであるならば作者にも、主人公を最後までそのように生きさせる矜持が同じくあって欲しかった。例えどんでん返しなどなくても、である。それが、この小説を後味の悪いものにしていると思う。ただ、彼女が子供に恵まれなかった事は、わずかではあるがこれに対する天からの罰であったのかもしれない。(逆に天恵とも解釈できるが。)
振り返って、彼女の一生は幸せだったのだろうか。他人から見れば惨めだった少女時代、その中にも楽しかったテイトとの学びの日々と裏切り。チェイスとのこと。本を書いて名声と大金を得た娘時代、それはまた同時に一級殺人罪で法廷に立たされた苦難の時代でもあった。無罪獲得後のテイトとの撚り戻しと結婚。それ以後の愛と自由な生活と早すぎる突然の死。葬式の参列者の多さが、彼女の晩年が幸せであったと暗示しているようでもあるが、殺されなければならないほど悪人であったとも思えないチェイスの落下する瞬間の眼差しを、おそらくは時にふれ思い出したであろう彼女が、本当に幸せであったかどうかは、私にはわからない。
読んでいるうちに物語に対する疑問が、湿地帯の水のようにふつふつと湧いてくるが、長くなるので1つだけ書いておく。彼女が殺害現場に向かう際に時間節約の元になったとされる潮流は、帰りには逆流となって船足を遅らせるので、結局何の助けにもならなかったのではないだろうか。
ところで、今日は「広島原爆の日」ですが、Kyaの生まれたのは広島に原爆が落とされた2ヶ月後です。