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(短編集)
死んだら飛べる
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死んだら飛べるの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.11pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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白石朗とキングの名前でなんとなく購入。通勤電車で読むには最高の短編集。レイ・ブラッドベリやコナン・ドイルのような古典SFの大御所から(私が読書をあまりしない人間である事も手伝って)初めて拝見する著者まで、彩り豊かな空の旅が詰め込まれた本書だが、個人的に一番の収穫はリチャード・マシスンの名前を知れたことだろう。巻末の筆者たちの情報は次に読む本を探す手伝いに大いに役に立ちそうだ。 | ||||
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読んでいて、あまりに没入を阻害する翻訳に、「ん? もしや、この翻訳者は?」と思って確認したら、案の定、その迷訳が頻繁に取り沙汰される翻訳者で、Amazonの他のレビュアも同様の評価だった。最近読んだ同翻訳者の「寄港地のない船」とかもひどかったな。あと、もう一人特にひどいのがいた。読めばどの短編か明らか。これからは、翻訳者を確認してから購入しよう。 | ||||
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¶私は購入した本の内容がどんなにつまらなくても、読み始めた本は基本的に全て最後まで読み切るようにしている。せっかくお金を払って買ったので勿体ないのと、どんなにつまらない本でも何かしらの読んで為になる部分があるからです。 ¶しかし、読み始めてから1年以上が経過するが、本書は135ページまで我慢して読み進めていったところから先へは一向に進まない。本書は私の人生で初めて読了することを断念せざるをえなくなった記念すべき第一号の本になる可能性が高いと思われる。それほど読みにくく、私に読む気を起させない本だということです。 ¶原作が良くないのか、翻訳が悪いのか・・・。日本語の文章として読んだ時のリズムや間合いが良くないので、続きを読もうと本を開いても読む気が失せる。だから先に読み進めていくことができない。他のレビュアーの方も指摘しているように、翻訳者側の技量が圧倒的に不足しているのではないか思う。 ¶翻訳文章は、訳者の力量によって作品の印象が大きく変わってしまう。翻訳者が話の内容を十分に理解していないと、訳している本人でさえ何を言っているのか分からない翻訳文ができ上がったりもするし、日本語能力に問題があると極端に読みにくい翻訳文ができ上がったりする。原文を見ていないので何とも言えないが、本書の場合は翻訳者の日本語能力の方により大きな問題があると思うのは私だけなのだろうか? ¶本のタイトルが面白そうであったのと表紙のデザインが目を引いたので、書店に平積みしてあるのを買ってしまったのだが、内容は正に「死んだら飛べる」転じて「死んでも読むな」ということで★ひとつ。私に読了させない可能性が極めて高いことを加味すると、★ひとつもなしでもいいかもね。 | ||||
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今まで読みにくいと思った海外の小説はありましたが、読みにくくても意味が分からないものはありませんでした。 ですがこの本は想像を超えた酷さでした。レビューを読んである程度は覚悟して読み始めましたが、Go◯gle翻訳をそのままコピペしたのかと疑いたくなる仕上がり。しかも不幸なことにその翻訳者が作品の多くを担当しているという…。特に第五のカテゴリーがひどかった。 この翻訳者さえ関わっていなければ面白いアンソロジーだと思いますが、読み進めるたびにまたこの翻訳者の作品か!とうんざりさせられたので星は2です | ||||
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企画自体は斬新で面白いのですが、訳の一番多い担当者が直訳し過ぎ。若しくは、その人が全部難しげな作品を引き受け、やっつけ仕事に成ってしまったのかは不明。。兎に角もう少し融通を効かせた丁寧な翻訳をして頂きたかった。(文体も変) その人の翻訳を免れた ドイルの作品が素晴らしく、最近の「成層圏に生物が居るかも?」といったオカルトテーマの先取りを、100年以上前に出来ていた豊かな想像力に唸らされる。また、その作品の質の高さを担保している翻訳者の仕事も素晴らしかった。 ☆マイナス2は冒頭翻訳者の仕事問題。 | ||||
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航空機にまつわるSF・ホラー・ミステリーのアンソロジー。 ◇「貨物」E・マイクル・ルイス/中村融訳 :1978年11月、南米ガイアナのジョーンズタウンで新興宗教団体のアメリカ人信徒たちが集団自殺事件を起こす。米軍のデイヴィス二等軍曹は遺体をアメリカ本国へ輸送する任を担うが、その途上で輸送機の貨物室には子どもの遊ぶ声が響き始める……。 カルト教団「人民寺院」による集団自決事件は当時日本でも報道されたのでよく覚えています。大人の信徒たちが子どもたちに先に毒を飲ませたという事実の衝撃さは忘れられません。その史実に材をとった怪談ですが、子どもの幽霊譚という虚構のほうにはさほどの恐怖を感じません。むしろ大人が大勢の子どもを殺めたという事実の重みにこそ恐怖するべき話である気がします。 ◇「大空の恐怖」アーサー・コナン・ドイル/西崎憲訳 :飛行機が発明されて20年後、飛行士のジョイス・アームストロングは大空にあるジャングルを目指して飛行機を飛ばした。そこで見たこともない生き物たちと遭遇し……。 物語の時代設定は飛行機の歴史が始まって20年目となっていますが、かのコナン・ドイルがこれを執筆したのはライト兄弟の飛行からまだ10年しか経っていません。それでいながら、未知の怪物が大空に存在すると空想の翼を広げたのはさすがです。 20世紀初頭に書かれたのですからおそらく原書の英語も凝った文体なのでしょう。それが見事に日本語に移植されていると感じました。 ◇「高度二万フィートの悪夢」リチャード・マシスン/矢野浩三郎訳 :アーサー・ジェフリー・ウィルスンは乗客として乗り込んだDC-7の窓外にグレムリンがいるのを目にする。怪物は翼の上を自在に移動してエンジンに手を突っ込もうとしている。ウィルスンはスチュワーデス(ママ)に危険を知らせるが、彼女が目をやる前に怪物は姿を巧みに隠してしまう……。 怪物を目撃してそれを乗務員に伝えるものの、ウィルスンは信じてもらえません。つまりこの怪異の物語の真の恐怖は、飛行機を墜落させるかもしれない怪物の存在よりも、目撃談を信じてもらえないことの絶対的な孤独にあります。ヘンリー・ジェイムズの小説『ねじの回転』も、家庭教師の女性が、世話をする幼い兄妹を襲う幽霊の存在に気づきながらも、そのことを周囲に理解されず、孤立感を深めていく様を描いていました。そのことを思いました。 この矢野浩三郎訳は『ミステリーゾーン4』(文春文庫)で既読ですが、1960年代のアメリカの航空機には拳銃を持ち込めるほどセキュリティが今よりもかなり緩かったことがわかり、驚きました。 この『高度二万フィートの悪夢』はTVシリーズ『ミステリーゾーン』、映画『トワイライトゾーン/超次元の体験』で2度映像化されていますし、昨2019年にリブートされたTVシリーズ『The Twilight Zone』の第1シーズン第2話では「Nightmare at 30,000 Feet (高度三万フィートの悪夢)」として現代的なアレンジを加えて映像化がされています。 ◇「飛行機械」アンブローズ・ビアス/中村融訳 :飛行機は絶対に墜落しないものではありません。この事実があるからといって皆が皆、航空産業に投資することをやめたわけではありません。投資の対象に貪欲な人間の性(さが)の恐怖を描いた1頁にも満たないこの小品を、第1次大戦前には死んだ作家アンブローズ・ビアスが書いていたのです。彼の未来を透視する力には感服しますし、ことは航空産業に限らず、軍需産業や原子力発電事業など、さまざま産業と投資の関係にも読者の思いを飛翔させる力のある小説だと言えます。 ◇「ルシファー!」E・C・タブ/中村融訳 死体保管所の係員フランク・ウェストンはある遺体から指輪を盗む。その指輪は57秒だけ過去にさかのぼることができるタイムマシンだった…。 この設定自体は面白いのですが、そもそも航空機にまつわるホラー小説アンソロジーの一編だという点で、物語の着地点はたやすく予想できてしまいます。それだけに結末には驚きはないでしょう。 とはいえ、作者タブの筆さばきは見事で、57秒の恐怖は十分に味わえます。 ◇「第五のカテゴリー」トム・ビッセル/中村融訳 朝鮮系アメリカ人で法学者のジョンは、時の政権の顧問として拷問を段階分けして正当化するための覚書を作成したことがある。時を経てそれが公開されたとき、彼は世間の厳しい指弾を浴びるが、そんなときエストニアの国際会議に出席する。その帰途に載った航空機の中で目覚めると、自分以外の乗客が全員消失していることに気づく……。 このアンソロジーの中では50頁と比較的長めの物語です。エストニアという異国の地で、主人公が時と場所の感覚を失っていくかのような思いを味わっていく姿と、航空機内に突如現れた異空間に戸惑う様子が交互に語られていきますが、そのことの異常性よりは、この小説が想を得た恐ろしい事実に思いが至り、そのことが心胆寒からしめるのです。 その事実とは、イラク戦争時のブッシュ政権が法学者たちに委託して、捕虜の拷問を正当化するための覚書を作成させたことです。水責めの拷問をwaterboardと表現することも当時の報道で知ったものです。21世紀にもなって国家がこうした中世のような拷問を許し、またそのために法律的頭脳の粋を集めていたことの空恐ろしさを思い返しながら読みました。 ただ、翻訳には意味の取れないところがありました。 たとえば175頁に「第四のカテゴリー」の「テクニックはひとつだけ――異常な角度からの解釈だ」とありますが、「異常な角度からの解釈」の意味が分かりませんでした。 原文は「(Its)technique: extraordinary rendition」です。「extraordinary(異常な) rendition(翻訳=解釈)」と個別に訳語を調べたのでしょう。 ですが、オンライン辞書の英辞郎をひくと「rendition」には次の説明が3番目にあります。 「〔通常の法的手続きによらずに行われる容疑者などの〕他国への移送[引き渡し]◆特に2001年以降急増したとされる、CIAによるテロ関係容疑者の他国への移送。移送先の国に委ねる形で、米国内では許されない非人道的な取り調べが行われたのではないかと問題視された。広義では、移送のための身柄の拘束・移送後の拷問を含めて言う」 つまり「extraordinary rendition」は「異常な角度からの解釈」ではなく「超法規的囚人移送」ということです。Wikipedia英語版にも「extraordinary rendition」は立項されています。 *177頁:「会号」という表記がありますが、正しくは「会合」です。 ◇「二分四十五秒」ダン・シモンズ/中村融訳 :ロジャー・コルヴィンはベトナム戦争時に載っていたヘリが墜落して仲間を全員失ったが、自身はひとり生き残ったことがある。以来、飛行機に乗ることに恐怖を感じているのだが、勤務先の同僚とともに空の旅に出ることになり……。 2分45秒とはジェットコースター1回分の時間、そしてほかにもそれが意味するところがあって――というお話です。自分にとってその2分45秒が訪れることがないことを祈りたいものです。 ◇「仮面の悪魔」コーディ・グッドフェロー/安野玲訳 :ライアン・レイバーン三世はコスタリカに赴き、インフルエンザで絶滅したシュロクア族の儀式の仮面を、あまり褒められた方法ではない手段で入手する。カリフォルニアの故買店を通じて転売しようとするのだが、帰路の旅客機内でその仮面の呪いがライアンに襲いかかる……。 H・G・ウェルズの短編『ポロ族の呪術師』(『クリスマス13の戦慄』(新潮文庫)所収)に似た物語です。先進国の男が私欲にまかせて途上国を搾取し、その報いとして現地の呪術にからめとられていく怪異譚です。先進国から持ち込まれた感染症と、先住民からかけられる呪術は、それぞれの持てる知の範疇を超えた<呪い>という意味では同列だということでしょう。 ◇「誘拐作戦」ジョン・ヴァーリイ/伊藤典夫訳 :遺伝性疾患によって短命に終わる未来の地球人たちが長期にわたって次代を担う人類を過去から【誘拐】する作戦を実行する。誘拐現場は、まもなく墜落することが判明している旅客機で……。 奇想天外な物語が人物と舞台の詳細な説明もないまま始まりますが、伊藤御大のなんとも味のある訳文がすいすいと読ませます。北米大陸を西漸しながら土地を切り拓いていったアメリカ人の魂を、さらに遠い宇宙の果てまで伸ばす逞しい物語であると同時に、壊れてしまった未来世界を自分たちの手では伸ばしていくことのできない種族の哀愁をたたえた物語としても読めます。 この短編は後に長編小説『ミレニアム』へと仕立て直されたのだとか。さらに映画化(『ミレニアム 1000年紀』)もされているほど評価されていたようです。 ◇「解放」ジョー・ヒル/白石朗訳 :旅客機777便は予定の航路をはずれるようにミネアポリスの管制センターから指示を受ける。サウスダコタ州エルズワースの爆撃航空団に空域を明け渡す必要があるためだ。グアムで閃光を伴って発生した事象に対処するための空軍行動が始まる。目標は朝鮮半島だ……。 核戦争勃発の瞬間にひとつの航空機に乗り合わせた乗客と乗員の人間模様をグランドホテル形式で描く中編小説です。その名は具体的には呼称されないものの、これが書かれた2017年時点のホワイトハウスの住人だからこそ引き起こされた大戦の中、政治に分断された多くのアメリカ人たちがそれぞれの来し方を振り返りながら、見えない行く末に恐怖と諦念を抱いていくさまが描かれます。 超常現象が襲いかかる正統派ホラーの対極に位置する、いってみれば現代地政学を背景にしたスリラーともいえる物語です。起こりえない怪異譚以上に、この起こりうるかもしれない物語のほうが強い恐怖を惹起することに気づかされます。げに恐ろしきは人間なり、を示す作品といえるでしょう。 なお、日本人読者のための補足を少ししておきます。 乗客には「ヴァイオリニストのフィデルマン」がいます。Fidelmanと綴りますが、これはfiddle man (ヴァイオリンの人)にかけています。また「-man」で終わる名前はユダヤ系に多いことも知っておくと、この物語がより面白く読めるかもしれません。 また、「アジア人」といわずに「東洋人」ということが差別的であるかのように描写されるくだりがありますが、原文では「東洋人」は「Orientals」となっています。英英辞典のMerriam-Websterでこの単語を引くと、「dated, now usually offensive」(時代遅れの言葉/今日ではたいていの場合、人を不快にさせる)と注意書きがされています。私も職場でアメリカ人ネイティブから、「Orientalは使わないほうが賢明だ」と助言されたことがあります。 ◇「戦争鳥(ウォーバード)」デイヴィッド・J・スカウ/白石朗訳 :第2次世界大戦に従軍した亡父について聞くため、わたしは父の戦友だったジョーゲンセンを訪ねる。老人は「戦争鳥」の存在について語り始める……。 話の聞き手である「わたし」もベトナム戦争の従軍経験がある男です。人間が戦争という愚行の中で作り上げ、そして解き放ってしまった憎悪を描く物語であり、SFやホラーというよりも、むしろ純文学の香りがする寓話のような仕立てになっています。 ◇「空飛ぶ機械」レイ・ブラッドベリ/中村融訳 :紀元400年の中国で、自ら作った装具を身につけて大空を飛ぶ男がいた。皇帝はその男に降りてくるように命じる。その言葉にしたがった男を待ち受けていた運命とは……。 アンブローズ・ビアスの超短編「飛行機械」に通じる物語です。人間が作り上げたものが、本来の目的をはずれて暴走する可能性を常に秘めていること、そしてその可能性を予期するあまり、技術革新の道をあえて閉ざすことを選択することの過酷さを思います。 ところでこの小説にも気になる訳文がありました。大空を飛ぶ男に向かって皇帝の侍従が「降りてこい」と叫ぶ場面で、「両手で杯を作って口に当て、侍従が叫んだ」とあります。(362頁)「杯を作って口にあて」たら、杯の底が口を遮って声が届かないと思います。 原文は「…the servant, hands cupped to his shouting mouth.」です。cup one’s hands to one’s mouthは「両手を(拡声器替わりに)口にあてて(叫ぶ)」という意味です。 ◇「機上のゾンビ」ベヴ・ヴィンセント/中村融訳 :ゾンビから逃れようとする一団が空港へ向かう。飛行機を飛ばせると主張するバリーの言葉を信じて、マイルズたちは旅客機に乗り込む。だがマイルズには心臓に持病があって……。 容易に予想がつくオチへと一気に突き進む掌編です。意想外の驚きはありませんが、それでも生きたいと思う人間の本能が描かれた好編だと感じるところもありました。 ◇「彼らは歳を取るまい」ロアルド・ダール/田口俊樹訳 :第二次世界大戦下のパレスチナにいる英国空軍はシリアにいるヴィシー政権のフランス軍と戦闘中だ。飛行機を駆るフィンは飛び立った後、二日間も行方知れずだったが突然帰還したかと思えば、当人はわずか数時間飛行していただけだと主張する……。 のちに記憶を取り戻したフィンが告げる真実は、戦争の悲劇を静かに、そして幻想的に語る物語でした。 原題の『They Shall Not Grow Old』は、ピーター・ジャクソン監督が2018年に制作した第一次世界大戦のドキュメンタリー映画のタイトルにもなっています。兵士たちが記憶と記録の中では永遠に歳をとらない事実は、むしろ彼らが戦場で確かに斃れたことの哀しみをかえって浮き彫りにするということでしょう。 それにしてもヴィシー政権がシリアで英軍と戦ったという話は初めて知りました。当時シリアはフランス委任統治領だったのですね。 ◇「プライベートな殺人」ピーター・トレメイン/安野玲訳 :グローバル航空162便の化粧室で企業経営者キンロッホ・グレイの射殺体が発見される。化粧室は内側から鍵のかかっていて凶器は見当たらない。乗客の中にいた医師ロスと犯罪学者のフェインは、機が目的地に到着するまでの3時間で事件の真相と犯人をつきとめようとする……。 究極の密室殺人事件をめぐる短編ミステリです。密室の謎解きも面白く読みましたし、ラテン語がちりばめられた教養あふれる事件も楽しめる掌編でした。 これを読みながら、航空機内の事件をめぐるミステリとして以下の2編のことを思い出しました。 F・W・クロフツ『クロイドン発12時30分』 セバスチャン・フィツェック『座席ナンバー7Aの恐怖』 ◇「乱気流エキスパート」スティーヴン・キング/白石朗訳 :クレイグ・ディクスンの仕事は差配屋がかけてくる電話の指示に従って航空機に乗り込み、ただ目的地へ向かうだけ。見返りに得る報酬は多額で、到着先では高級ホテルでの滞在が約束されている。クレイグが飛行機に乗るその真意とは……。 このアンソロジーの編者であるスティーヴン・キングの書下ろし短編です。ここまで読んだ中では白眉ともいえる一編です。クレイグの生業が一体何をもたらしているのか。最後に明らかにされる真相は、読者である私の想像をはるかに超えるほど奇妙で奇怪、ある種英雄的ともいえる要素をはらみながらも、その一方で、激しい恐怖を与えるものともいえます。 あまりにも秀逸な発想を持つこの物語を思いついたキングは、これを少しでも早く発表したいがために、自らの短編集をこしらえるよりもはるかに手軽な方法として、古今の航空機ものを集めてアンソロジーを編んだのではないか。そう邪推したくなるほどです。 ◇「落ちてゆく」ジェイムズ・ディッキー/安野玲訳 :客室乗務員が機外へと放り出され、上空数万フィートから地上へと落下するさまを描いた一編の詩です。 地上にたたきつけられるまでの永遠とも須臾の間ともおもえる時間を描出した詩です。実際に客室乗務員が墜落した事件の記事に触発されて書いたもののようです。事実の重みを背負っているだけに、読んでいてつらい思いがします。 この詩を読みながら二つの書を思い出していました。 ひとつは石垣りんの『崖』という詩です。 沖縄戦で崖から身投げした女性たちが戦後15年も経つのに誰も海に到達していない――身投げした戦時の瞬間から時が止まったままであることを描いた一編です。(『石垣りん詩集』(岩波文庫)所収) もうひとつは小倉 孝保『空から降ってきた男:アフリカ「奴隷社会」の悲劇』(新潮社)です。2012年9月、五輪が終了した直後のロンドンの住宅街で黒人男性の遺体が発見されます。遺体の様子から、彼は街の上空を飛んでいたアンゴラの首都ルアンダ発ヒースロー空港行きのBA便から落下したものと思われました。当時、毎日新聞の欧州総局長だった著者は、地元紙に掲載されたこの不可思議な事件に興味を持ち取材を重ねていくというルポルタージュです。 . | ||||
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読売新聞の書評欄に載っていて読みたくなって購入しましたが、翻訳者の中にとてつもなく下手な人がいて、 その小説は全く頭に入ってきませんでした。 もっと上手な翻訳者に訳してもらったらとっても面白い読み物なんだろうと思いました。 | ||||
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1899年のアンブローズ・ビアスから、本書のために書き下ろされたキングやジョー・ヒルのものまで、幅広い年代から飛行(飛行機)にまつわる恐怖を扱った作品を集めたアンソロジーです。 発案者がキングで、序文と各編に前書きもつけていますが、前書きは軽くネタバレしているものもあるので、気になる人は先に読まない方がいいでしょう。 10編が初訳で新訳されているものも数編。 SFやミステリー色の強いもの、幻想・奇想風の短編に詩もあり、 ホラーもスーパーナチュラルなものから、現代社会のリアルな恐怖を扱ったものまでと、様々な趣向の話が楽しめました。 あとがきで編者の一人ヴィンセントが、 「飛行中に悪い方へころぶ可能性のある事態を網羅しているわけではない」 と、あるシチュエーションのことをあげていますが、これにはティプトリーの『エイン博士の最後の飛行』を推したいと思います。 | ||||
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