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ミステリーの系譜



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ミステリーの系譜の評価: 4.67/5点 レビュー 15件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全15件 1~15 1/1ページ
No.15:
(5pt)

直にくる。

以前、菅賀江留郎先生の『冤罪と人類』をレビューしました。ずいぶんと遠大なタイトルですが、取り扱っている冤罪は邦国のみであり、すべてアダム・スミスの『道徳感情論』でそのプロセスが説明できるという内容で、正直違和感を拭えぬかった。ひとつの見方としてはおもしろいとは思うものの、アダム・スミスの『道徳感情論』への愛を叫ぶために冤罪事件を扱っているように見えなくもなくて。もちろんそんなことはないのでしょうが。そのなかに本著に触れられている部分がありました。
本著は実際にあった事件を小説としてではなく、事実をそのまま考察をからめ淡々描出したものです。連載では数多扱っていたようですが、書籍化にあたり、三篇に絞ったらしく、本著に収められているのはそれだけです。一篇には、津山三十人殺しがあり。つまらないだろう、と短絡的な方は思うでしょうが、逆に非常におもしろい。虚仮威しの文句もないのが、逆にそら恐ろしくもなりますし。もともとそっけない筆致の方ですが、よりそっけなく、淡々と事実を並べてゆくため、その事件の凄惨さがつたわってきますし、さりとて囚われずに見てゆく目も同時に得られます。そして非常に読みやすい。彼の社会派推理小説より、ずっとおもしろい、かもしれません。
ミステリーの系譜 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.14:
(5pt)

生々しい取材の裏付け。

昔読んで、もう一度読みたくて購入。
今も恐ろしい事件が数多く起きていますが、こんな昔にも恐ろしいことは起こっていて、現代とは違う恐ろしさもあり、ゾッとしました。

やはり清張は素晴らしい!
ミステリーの系譜 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.13:
(5pt)

珠玉の短編三作

『闇に駆ける猟銃』『肉鍋を食う女』『二人の真犯人』の三編が収録されています。
実は私『闇に駆ける猟銃』つまり「津山・都井睦夫事件顛末」目当てで購入したのですが、『肉鍋を食う女』の迫力に満ちた描写が凄まじく、こちらの方が強く印象に残りました。
『二人の真犯人』は死刑制度、そして警察の証拠捏造に迫る一篇。こちらも読ませてくれます。
大正、昭和の事件簿解読を趣味にされている方には特にお薦め出来る短編集だと思います。
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4122001625
No.12:
(5pt)

一晩に30人の村人が次々に惨殺されたのは、なぜか

「読書クラブ 本好きですか?」のずっと年下の読書仲間・遠藤真央さんから薦められた『ミステリーの系譜』(松本清張著、中公文庫)を手にした。本書は、『闇に駆ける猟銃』、『肉鍋を食う女』、『二人の真犯人』の3篇で構成されている。

『闇に駆ける猟銃』は、昭和13(1938)年に岡山県津山地方で起こった大量殺人事件を、検事の報告書、警察の調査、関係者の証言、犯人・都井睦雄(22歳)の遺書を基に抑えた筆致で、睦雄が30人の村人を次々に殺していく場面を生々しく描いている。

「津山事件は――人々はそう名づけている――ある意味で日本の山村のもつ宿命の中に起った事件ともいえる。山あいに押しこめられて孤絶した環境、一切の娯楽から切りはなされた条件、生活に強いられている単調な労働。毎日見るのはいつも同じ顔だ。自分のことはもとより、祖父母や曽祖父母、その遠い係累の履歴まで全部村人が知っている。ちょっとした夫婦喧嘩も三十分後には全村に知れわたっている。隣の家との間は遠いが、噂の波及はおそろしく速い。外界と遮断されているこの小社会は、それ自体、同じ家の中に暮しているようなものだ。狭隘な、息の詰りそうな場所である。その上に、因習と頑固な偏見とが根を張っている。因習のなかには、古い農村に独特な『性の風習』もある」。『性の風習』とは、この村では夜這いが容認されていたことを指している。

「都井睦雄の犯行の動機は、同部落の女数人に対する憎悪が主体となっている。他の人々は、その捲き添えか、または偶然その場に泊り合せた不幸な無関係者である。睦雄の憎悪の対象になったのは、彼が関係するか、または恋情をもった女ばかりである。その中で最も彼が怨んだのは西田ミネと時本スミの両女である。事件発生時、ミネは四十三歳、スミは三十五歳であった」。

事件後、「各戸を回ってみて、そのむごたらしさに巡査は呆然となった。どの家も人間の死体が三つも四つも血の海の中に転がっている。巡査は動顛した」。

このルポルタージュ的作品を松本清張はどういう気持ちで書き続けたのだろうか。人間は、状況によっては、こうした異常な事態を引き起こすことがある、ということを訴えたかったのだろうか。
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4122001625
No.11:
(4pt)

綿密な取材力

もともと津山事件に興味を持ち、「丑三つの村」と並行して読みました。
大御所松本清張の実力が発揮された、社会の闇を鋭く切り裂く視点を十分に堪能できました。やはり綿密な取材を通して表されるリアリズムは虚構や主観が介入されているとはいえ、登場人物の息遣いが感じられるほどで、五感のすべてが刺激されました。「闇に駆ける猟銃」という題名にもさまざまな想像をかきたてられました。「闇」「猟銃」=「狂気」というふうに自分は主人公の「心の闇」とのイメージを重ね合わせてみました。
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4122001625
No.10:
(5pt)

ミステリーの系譜(中央文庫)

数年前に購入したことがあるが、どこかへ行ってしまった。もう一度読みたくて再購入した。
淡々とした文章の中に、胸に迫る真実が濃縮されている。「さすが松本清張」。ミステリーの神様が熱を込めて説く、そんな気がする。
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4122001625
No.9:
(5pt)

現代にも通じる問題提起

津山30人殺人事件に対する松本清張氏のルポを読みたくて購入。

津山事件に関する著述は簡潔で分かり易い。調書・裁判資料・警察官取材など漏らすことなく取材している。

しかし、本書の真骨頂は3話目の二人の真犯人だろう。

二人の容疑者が別々に罪を認め、どちらも真犯人と思える怪事件。

警察・検察・裁判官も決め手を欠き迷走する。読者も迷う。

二人に有罪判決が別々に言い渡され、下手をすれば冤罪死刑でもおかしくない所まで進む。

しかし、当然真犯人は一人。

しかも、警察の謀略まで飛び出す。

死刑制度論議が松本清張氏の時代からまったく進歩せず、同じ様な議論を堂々巡りしているどころか、現状は後退している様に感じた。
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4122001625
No.8:
(5pt)

傑作です

津山事件について書かれたもので最も面白く読みました。これ以上に
詳細に事件について書かれた本もありますが、この書の松本清張の文章に
魅了されました。
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4122001625
No.7:
(5pt)

資料だけではない面白さ

緻密な分析と怜悧な資料解析は、さすが松本清張。
さらに登場人物の描き方が実録ものとしての立ち位置を厳守しつつも
感情移入させてくれます。
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4122001625
No.6:
(5pt)

松本清張全集(7)

大変面白かった。別冊黒い画集では「事故」、「熱い空気」、「形」、「陸行水行」、「寝敷き」、「断線」の6作、ミステリーの系譜では「闇に駆ける猟銃」、「肉鍋を食う女」、「二人の真犯人」の3作品を収録。
一般文学通算20作品目の読書完。1973/03/01
松本清張全集 (7) 別冊黒い画集,ミステリーの系譜Amazon書評・レビュー:松本清張全集 (7) 別冊黒い画集,ミステリーの系譜より
4165090700
No.5:
(5pt)

◆人は気付かぬうちに誰かを傷つけている

ちまたの推理小説家の中でも、群を抜いて優れているのが松本清張である。松本清張の緻密な資料集めと分析能力、それに現場百ぺんの徹底したリアリズムは、たいていのミステリー好きな読者の度肝を抜く。
頭の中でちょこちょこっとこしらえた非現実的なドラマとは、まるで違うものだ。だから事件を大げさに煽る修飾的な言葉もなければ、余計な主観を読者に植え付ける描写もない。とにかく淡々と冷静に、時系列に沿った文体なのだ。
犯罪は犯罪であり、同情をかってはならず、それ以上でもそれ以下でもいけないということなのだろう。

『ミステリーの系譜』は、「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3篇が収められているが、3つとも大正、昭和史に残る犯罪実話である。
「闇に駆ける猟銃」は、映画『八つ墓村』のもとになったもので、無論、ノンフィクションだ。昭和13年の岡山県津山で起きた、いわゆる“津山事件”で、当時21歳の犯人が、その日のうちに村人の28人を死に至らしめ、他に重傷死2人、重軽傷2人という大量殺人行為をはたらいたものだ。
犯人は健康上の悩みを抱えていたようだが、どうやら本人の被害妄想、自意識過剰から来るもののようで、医学的にはさほどのことはなかったようだ。性格はいわゆるネクラタイプで、対人関係が苦手だった。とはいえ、農村にはこの手の晩生な青年は珍しくもなく、これといった異常性を見出すことはできない。学業は優秀で、容姿も悪くなく、むしろ色白の美青年だったようだ。
松本清張の着眼点がスゴイと思うのは、このようにどこにでもいそうな、平凡でありふれた青年が短時間でこれほどの大惨事を引き起こす可能性があるのだという事実に注目したことだ。
犯人に前科があるわけでもなく、田舎の農村を舞台に、ある日突然、降ってわくのだ。

この日常生活に潜む、どうしようもない不気味な現実は、過去のことではなく、現在を生きる我々にも同様の危険が孕んでいることをうかがわせる。
「人はだれでも他人からの日常的な被害感を持っている。悪口、軽蔑、中傷、妨害・・・それは“加害者”が気づかぬくらいに作為のない、些細なことであっても、受けた側の精神的な傷は、存外に深いものである」
私たちは知らない間に誰かを傷つけ、苦しませているのかもしれない。だとしたら自分の言葉に責任を持つことで、無用な噂話や無駄口は慎むべきだろう。誰かの耳に入った時、あるいは復讐に燃え滾るその人物から、腹部と乳房に貫通銃創を受けるかもしれないので・・・。
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4122001625
No.4:
(4pt)

「闇に駆ける猟銃」を読むためにある1冊

津山三十人殺しを松本清張節で語った「闇に駆ける猟銃」だけでも本書は読む価値があります。なぜ清張節などと書いたかというと、事件記録としては筑波昭さんの「津山三十人殺し」のほうが正確で優れているといわれ、実際、僕もそう思うからです。それでも清張さんの語りはいつものとおり読ませる。好みが入っているとは思うが、その、「読ませる」点では筑波作品よりも上だと思います。

「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」も悪くはないけれど、清張作品としてはさほどでもない。繰り返しになるが、社会派「小説」として、都井睦雄事件を知る入り口としては、最高級のものでしょう。なお、いくつかの点で「事実に反する」叙述があるとされていること、また、津山以外の2作品がいくぶん落ちることを考慮して、1点減点しました。
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4122001625
No.3:
(4pt)

最初の二編だけでも読む価値あり。

本書は実際にあった三つの事件を取材した、ドキュメントである。

にもかかわらず本書を読めば、背筋の寒くなる恐怖に満ちているのはどういうことか?特に、前の二編は凄まじい。「闇に駆ける猟銃」は、あの津山三十人殺しを題材にしている。「八つ墓村」でも有名なあの事件が、清張の詳細なルポとして淡々と描かれる。彼はあったことのみを細かく積み上げて、事件を再構築していく。そしてそこに自身の犯罪心理における推理をおりまぜていく。これが、実際そうだったに違いないと思ってしまう巧みな推理で、清張の人間心理の洞察の深さに舌を巻いてしまう。

「肉鍋を食う女」も、昭和二十二年に長野県で起こった事件を描いている。タイトルから察っせられると思うがこの事件は継娘を殺害し、その肉を山羊の肉といって三人のわが子らと食べてしまったという事件だ。人肉を食う話なら浦賀や佐藤などのメフィスト賞作家でもおなじみなのだが、ここで描かれるのは実際にあった事件である。背筋が寒くなるのは犯人の天野秋子が、継娘を殺害するときに「トラや、トラや」と継娘の名を呼ぶ場面である。娘は殺害されることも知らずに無邪気に近づいていく。この一瞬の狂気が恐ろしい。魔がさしたなんて生易しい言葉では表せない戦慄がある。

これにくらべて「二人の真犯人」は少しインパクトに欠ける。

しかし、最初の二編を読むだけでも、本書の価値はある。
ミステリーの系譜 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.2:
(4pt)

わからない真犯人

この本には「闇に駆ける猟銃」「肉鍋を食う女」「二人の真犯人」の3編が収められています。
どれも実話で前の2編は背筋が寒くなるようなすさまじい恐怖があり、清張独自のいつもながらの手法で犯人像を事細かに解釈して真に迫ります。
 後の1編は戦争という時代背景が問題で犯人は普通、犯行を否定し「俺はやっていない」と刑を逃れる主張をするのですが、この犯人は、逆に自供して罪を認め服役を望もうとする。しかし、自供に矛盾が生じ、「違うのでは」と刑事は思う。
そこへ新たな犯人が名乗りをあげる。何故?...刑務所の方が良いのだろうか?
兵隊に行って死んでしまうよりは...。
ミステリーの系譜 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625
No.1:
(4pt)

事実は小説よりも……

横溝正史の『八つ墓村』にもヒントを与えたという実際の事件「津山30人殺し」に興味を持ち、この作品を読みました。
「津山事件」とは、たった一人の男が、闇夜にまぎれて寝込みを襲い、日本刀と猟銃で村民の三分の一を殺戮したという驚くべき事件です。このような事件の犯人ならば、ことさらに英雄的に描かれたり、その精神の異常性が強調されたりするのが当然だろうと予想し、そのつもりで読み始めたのですが、松本清張はあくまで、淡々と実証的に事件を語り、犯人像を描いていきます。犯人の学校時代の成績表や事件調書など、数々の証言の積み重ねにより、寒村の青年を殺人者に変えた絶望的な怒りがじかに読者に伝わってきます。この作品には、ノンフィクションならではの「現実世界の恐怖」が、極めて冷静に、それだけに凄まじく描写されています。はっきり言って、白粉顔で銃剣を振り回す山崎勉(角川映画)より、こっちの文章のほうが怖いです。
ミステリーの系譜 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:ミステリーの系譜 (中公文庫)より
4122001625

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