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(短編集)

熱帯魚



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【この小説が収録されている参考書籍】
熱帯魚
熱帯魚 (文春文庫)

熱帯魚の評価: 4.07/5点 レビュー 27件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.07pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全19件 1~19 1/1ページ
No.19:
(4pt)

なんとなくイヤなヤツら

「熱帯魚」、「グリーンピース」、「突風」の三作が収録された作品集。

作品そのものに関連性はないのだが、表向き優しさをまといながらも、芯のところで冷え冷えとしている男性主人公のキャラクターが共通しているように思う。自分本位とも違うし、わがままとも違う。なんとなく、イヤなヤツなんである。僕自身にもどうやら同じ部分があるらしく、同族嫌悪というに相応しい気分にさせられる。

「熱帯魚」の大工の大輔は、子連れの女性と同棲しながら、引きこもり気味の義弟光男の面倒を見始める。家族にも友人にも同僚にも愛想のいい憎めない男。日がな一日熱帯魚を見て暮らす光男は、そんな大輔に心を許さない。押しつけがましくもある大輔の優しさに信を置けないのではないか。後に大輔は、ちょっとした事故を起こすのだが、その顛末を含めて黒い部分を見てしまう。

「グリーンピース」の草介は喧嘩の挙句、浮気をしたカノジョの千里を持て余している。人を”許さない”方法を見いだせないでいる。心をどこかに置いてきたような草介の行動。千里にグリーンピースを執拗に投げつけるという、草介の怒りの表現にはいごこちの悪さを感じてしまう。

「突風」の新田は、ふと立ち寄った民宿の奥さんと、つかの間の逃避行を実行に移す。都会と郊外では、別の顔をもつ新田。何気ない行動で波紋をおこし、それが意図したものでないゆえに、その結果を振り返ることをしない。感情があらわにならない男の寒々しさが淡々と描かれる。

吉田修一さんは、何考えているのかわからん奴を書くのが上手いね。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.18:
(5pt)

いろんな抽き出し

冒頭からねっとりとした嫌な空気感を醸し出している
その印象だけで、楽しい話ではないということは分かるのだけれど、なんだかそのまとわりつくような気持ちの悪い煮え切らない感じがずーっとつきまとう  もやもやと燻っている 悪人にも善人にもなりきれず、豪快さがあるわけでもなく自信家でもない、少し狡獪さを持っている普通のひと
この普通のひとというのが自分とオーバーラップするようでもあり、否定したくもあり… そういうところがこの何とも言えない気持ち悪さに繋がっている気がする…  なんとも消化できない嫌悪感が残る
このひとの作品はどれも新鮮で読みやすく手が止まらない
抽き出しの多さに驚かされる
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.17:
(4pt)

どちらにもブレるやじろべえのよう

3篇の中では最も短い「グリンピース」が好きだ。
気持ちの上澄みだけを描いたドラマの、なんとなく傷つけあった男や女たちが登場する
不自然な空気。ドロドロしないのは、吉田修一の得意技だから、読後がスッキリする。
ブルーワーカーが主役の表題作は、ティピカルな吉田修一ワールドすぎて、印象が薄い。
かと言って「突風」と比較すると、「熱帯魚」の癖のあるキャラクターたちはやはり
愛すべき者たちだ。吉田修一から目が離せない。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.16:
(5pt)

よいです

彼の作品は、なんとなく歪んでいて面白い・・・この作品もなかなかです。これからも出版される本はすべて読みたいと思います。
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4163198407
No.15:
(4pt)

優しさに包まれた話

吉田修一の作品は好きで、何作か読んだことはあるが熱帯魚はなかでも
お気に入りの作品だ。
本作は文章が読みやすく題名の魚が水中を泳ぐように滑らかに話が進む。
吉田作品に共通する寂しさと優しさが本作にも満ちていて、この作品は
特に周囲の人間から見られている主人公の姿が痛々しいくらいに優しい。
気が滅入ったときや真夏の夜の清涼剤に繰り返し読んでみたい作品です。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.14:
(5pt)

「グリーンピース」が秀逸!

表題作「熱帯魚」は自分が愛されたい、もっと一般化していうと、実は自分がそうされたいのに、他人が自分にそれを望んでいるから、お節介にならない程度にそうしてやっているのだと自分で信じきっている青年(美人で子持ちの女と同棲中)のお話。なので、普通にイタイ。今回の主人公は無職ではなくガテン系でも高給取りの大工。が、まだ現場を任されたことはない。二年間だけ兄弟だった同居人の飼育している熱帯魚のイメージがラストでプールの底を舞い泳ぐ使い捨てライターの群れに変わる辺りは鮮やかだが、蘆花公園でカラスを捕まえるシーンに見られるように、全体的にはモノクロームで過ぎ去ってしまった夏の印象だった。
「グリーンピース」は、理由はないがグリーンピース好きの職探し中の青年が恋人に真剣にグリーンピースをぶつけたことがきっかけで、恋人に家を出て行かれるお話。もっとも出て行けといって車のキーを彼女に渡したのは主人公の方で、しかもそこは彼女のアパートで……といった辺りが巧み。缶コーヒーにマジックペンでそのときの偽らざる(しかし本気ではない)気持ちを書くのが癖だったりするところも…… 病気の祖父の年金で暮らしている情けなさが秀逸。彼女がキレて出て行って、共通の友人たちと浮気しまくろうと(ただし、実際にはひとり止まり)することころが良い。
「突風」は(詳しくは書いてないけど)証券会社勤務の高給取りの青年が休暇でたまたま出向いた千葉の田舎の民宿でアルバイトする様子を描いたお話。最後に少しだけ気の触れた民宿の中年だが美人の奥さんを何とかその状況から救い出そうと夜のドライブに出かけるのだが、主人公自身が自分から逃げ出せないことを悟って、帰りの電車賃(実は当面の生活費)を渡して新宿駅で奥さんを降ろすシーンの優しい残酷さが秀逸。一週間後に同じ場所で会おう、と奥さんの脱出を支援するためにした約束を思い出すのが三週間後という辺りが吉田節。当然、再会するシーンは描かれていない(しかも、待たれることがぞっとするくらいに嫌いという設定の主人公)。
 これまで読んだ作品で共通していえるのは主人公(または語り手)と、場合によっては主人公周辺の人物の痛さで、続けて読んでいると本当に自殺したくなってくるところが太宰と似ているかもしれない。本当に死ぬ気がなかったのに死んでしまった太宰と違い、予定調和的な死を予感していた三島の作品に死の影がないのが面白い(もちろん登場人物が死なないということではない)。だから、口に出していうと「えっ!」という顔をされる「潮騒」が好きなのかもしれない。いま読めば印象が違うかもしれないが、人工的な生の見事な鮮やかさが、そこにはあった。
 共通していえるといえば、おそらくそうはしないだろうけど、でも、もしかしたらそうするかもしれないという終わり方が多いような気がする。総じて情けない主人公の将来を読者に心配させる書き方とでもいうか……
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.13:
(4pt)

蒸し暑さ、なま暖かい風、やるせなさが伝わってくる

パレードの冒頭-マンションの窓から甲州街道の車の
流れを見るシーン。この作者の「今」を切り取る
うまさは、すべての作品に共通するように思えます。
本短編、特に「突風」は時を置いて読み返しても、
描かれている情景、蒸し暑さ、なま暖かい風、
やるせなさが伝わってくる。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.12:
(5pt)

流れるような文体

「熱帯魚」「グリンピース」「突風」の3作品が収められています。最近、著者の本を読む機会が多くそのたびに感心させられます。その理由は流れるような文体にあります。登場人物の心理描写や視覚的な描写にしても細かいところまで描いているのにもかかわらず、これだけ流れるような文章が書ける小説家は少ないと思います。ただしどの本にも共通しているのが最後の締りが無いこと。本書の中の「突風」には珍しく最後の締りがあったので、この中では一番好きな作品です。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.11:
(4pt)

「嗚呼、いいなぁこの感じ」

ある人がいろんな苦痛やら喜びやらいろいろな感情を持ち、その人生の経験から自らの努力により成長してなにかを勝ち得るのが物語の目標であるのならば、決してそんなのんきな物語ではない作品。

驚くほど面白かった。グリンピースを彼女に投げちゃう男や一流サラリーマンが鄙びた民宿バイトする話やバカなんだか賢いのか(たぶんバカ)鳶職のなんでもない日常が描かれた短編集。

作家にあんた物語書く気ないだろうと思いながら、ニタニタして読んでしまうほど直木賞作家では味わえない小説の面白さを与えてくれる作品であった。

エンタメ系の作家は確かに読みきったという後読感をもたらしてくれるかもしれない、それは小説が漫画や映画というメディアに打ち勝つひとつの方法なのかもしれない。

しかし、漫画は漫画、映画は映画、そして小説は小説と考えたときに、極めて小説の面白さを体現したのがこの作品のような気がする。

東野圭吾・恩田陸・宮部みゆきも確かに面白い。しかし、吉田修一も確かに確かすぎるほど面白い。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.10:
(5pt)

……

とびっきりクールな青春小説!! 

 と宣伝されているが…?? どこが?? 阿部和重の「グランドフィナーレ」もロリコンが現実とのつながりを取り戻す話、とか宣伝されていたりしたが、とんでもない誤読。基本的に帯って信用しないほうがいい、売るための文句だから、わりと中身が違う。

 で、吉田修一。売れているぶんだけほかの純文学作家よりもめぐまれていると見られているかもしれない。が、このひと、下手にエンタメがかけちゃうものだから、一般読者からまともに評価されていないんじゃないのか、という気がする。ふつうの人が小説を手にとる場合、残念ながら、求めているのは「物語」であって、「小説」でない場合が多い。はっきり言って、「物語」と「小説」は、全然違うし、にも関わらずみんなあんまり区別がついていない。

「小説」はなんでもあり。だから、「物語」がある「小説」もあるし、「物語」がない「小説」だってある。にも関わらず、話がおもしろくない!とか、あとに残るものがない!とか平気で言われたりする。

 話がおもしろい小説がおもしろい「小説」の条件では、全然ないんです。嘘だと思うなら、この短編集の最後の「突風」を読んでください。おそらく、何これ? と思うでしょう。何これ? が感想でいいんですよ、そう思って読んでみてください。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.9:
(5pt)

猛暑の暑さと汗臭さが伝わってくる

最近読みました。吉田さんの作品の中でこの作品が一番描写がよく出来ているのかと思います。もちろん他の作品だってとてもうまく書かれていますよ。買うまで知らなかったのですが、三つの話が入っています。
自分はやはり、熱帯魚が一番印象に残りました。
あの現場の男気臭さと汗臭さがすごく伝わってきましたし、光男君がカナリ気に入ってしまいました。毎度の事ですが、吉田さんファンならぜひとも購入を。好みに合わないような方は、短編なのでぜひ吉田修一ワールドに浸ってみてください。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.8:
(5pt)

純文学作家としての「吉田修一」

それぞれのキャラクターが、優しいのか、無関心なのか、残酷なのか、さっぱり統一されていない。でも、人間ってこうだよなあ、と思ってしまう。優しい人、とか残酷な人、とか割り切られたってなあ、と思う。しかし作家とすればそういう人格整理は必要なはずなのだ。それが過ぎれは作為と感じられる。
 ここに登場する人物のあっけらかんとした現代性とは、執着のなさである。目的とか熱意とかが継続しないのだ。古いタイプの人間のように、金をためたい、とか有名になりたい、とかいうわかりやすい目標がないのだ。執着するということは、カッコ悪いことだ。
 性愛も軽い。お互いに無関心でいたい。それでも人は寄り添ってしまう。そんなモヤモヤが、くっきりと描かれていた。並の力量ではない。
 3編とも、「パレード」「パーク・ライフ」と同じ作家とは思えないくらい純文学的な作品だった。いずれも印象的な場面でラストを飾って、きれいに小説の形を整えていた。これは、近作以後、徐々に吉田の作風から消えていく。
 この後、吉田は徹底的な観察者となり、作中人物に影響を及ぼす作家の自我を、排除しようとしているように見える。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.7:
(4pt)

現実味

この作品には表題作他2編が収録されています。
こんな生活している人なんていないよ、と思いつつもどの作品もどこかしら現実味を帯びているのです。
全ての主人公はどこかかけていて、完璧な人間ではありません。それが人間臭さを感じさせます。
日常に起こる変化が淡々と描かれていますが、リアルで人間臭い人物達の演じる些細なストーリーにいつの間にか引き込まれています。
吉田修一さんは何気ない日常を描くのがうまいなあ、と思ってしまうのです。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
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No.6:
(4pt)

吉田修一

主人公大輔は義理の弟光男と同棲相手の真美とその連れ子の小麦と4人で暮らしていて、光男は引きこもりがちで何もせずにぼんやりと熱帯魚ばかり眺めている。どうしてこの4人が一緒に暮らしているかとというとそれは極論してしまうと大輔のエゴが4人を繋ぎ止めているのであって、例えば光男の場合大輔とは義理の弟という関係にあり離婚した両親の父親の連れ子で会ったということでそれだけが二人の関係で、その関係を強めるもの、それは幼い頃2年間という短い期間だけれども一緒に過ごしたということそして離婚し別れるという間際に父親に連れられて泣け叫ぶ幼い光男の姿。それを大輔は思い出し固執する。固執するから施そうとする。人に優しくしようとする。しかしそれは報われない。人に窮屈を強いることになる。明るく振舞えばするほど不躾になる。強く求めることは強く否定されることなのかもしれない。
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No.5:
(5pt)

吉田修一氏の小説を全部読みたい!16/01/07

東京湾景を読んでから著者にはまりました。トイレのペーパーがなくなる誰か来ないかドキドキする場面・大工大輔の変わった同居生活にも、思いやりがあふれている。この頃の若者が若い女の子にそそぐエッチな視線や下心豊かに表現。建築中の家主の娘、律子(中学生)と建築現場で一晩過ごしてしまう、リアルに表現!そして事件、ボヤさわぎ・・・読んでいて怖くなります。とっ拍子もない事をする大輔の考え方やする事がどうなるのか読者を不安にさせる。おわりにどうして「熱帯魚」なのかプールの波とともに私の心も揺らいだ。いい小説です。ぜひ読んで。
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No.4:
(5pt)

芥川賞受賞作よりむしろ好き

著者は現代の都市生活者が直面する、器用だか不器用なんだかよく分からない人間関係のあり様や、そういった単純でも複雑でもない、ただただ憂鬱で困難な関係性の中に生きざるを得ない人間の気分を、とても巧みに描きだしている。
 また、この作者の文章が持つイメージを喚起させる力も相当のもの。この本に収められている3つの中篇、短編は何れも、とりわけ締めの数行から喚起させられる映像が、とても鮮烈に美しく、いつまでもその残像が目に浮かぶほどです。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.3:
(4pt)

面白かった。

「グリーンピース」は、思わず声出して笑ってしまうとこがありました。
読みやすいといえば 読みやすいタイプの小説ですが、深く読むことも
軽く読むこともできる作品のように思います。芥川賞とってしまったので
はいりずらいかな、と思ってたけど、「とりあえず読んでみてよ」って
柔らかさがあって 無条件に楽しく読ませる作家の登場かもしれません。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.2:
(5pt)

次は芥川賞ダ

表題の熱帯魚の登場人物に、とても好奇心をあおられるいい小説だった。
純文学にしては、とても読みやすく、吉田氏は今後の純文学に革命をおこせる
逸材だとおもいます。 次回作はぜひ、芥川賞をとって貰いたい。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407
No.1:
(5pt)

出色の新人作家

それぞれに生々しい主人公を描きながら、
文章のセンスの良さとユーモアで生臭さを感じさせない。
瑞々しい才能の光る一冊。少し軽めにまとめすぎのきらいはあるが、
ここ最近の新人作家の中では群を抜いている。おすすめ。
熱帯魚Amazon書評・レビュー:熱帯魚より
4163198407

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