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六つの航跡
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六つの航跡の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.88pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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クローン人間やデジタル人格のガジェットを精密に描く作品が読みたければ、悪いが他をあたってくれ。 恒星間移民船の中で犯人も含めて乗員が死亡してしまって、生前の記憶がないまま全員がクローニング再生されてんだが、いったい誰がやったんだ?という密室、館物ミステリーなのです。 あと、藤井太洋『Gene Mapper (ジーン・マッパー)』が好きなら、主人公マリアのハッキング技術には心掴まれるかも。 | ||||
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エンタメサスペンスとしてはそこそこ面白く読んだが、実現されていない科学技術(本作の場合はクローンによる長命化)が導入された社会のインフラの変容や人の意識の変革についての深い考察がないうえに、クローンに関する設定の根本的なところで大きな違和感があって、つまりわたし基準では、本書はSFらしいSFとは言えず、かなり物足りない一冊だった。 宇宙船というクローズドサークルをメインにしながら、登場人物の過去として、地球や月も舞台として登場する。月にも生活圏があるが、光速の壁は超えておらず太陽系外へ行くには数百年が必要だ。23~25世紀が時代背景で、なにより最大の基本設定は、人格や記憶のコピー化とクローンによる肉体の若返りにより、実質的な不死が可能になった社会であることだ。登場人物たちは、基本的に何百年もの人生経験の持主である。 しかし残念なことに、そういった抜本からの変革による人間性や社会の深みはまるで描かれない。 登場人物たちの回想で、二百年ほど前にクローンと反クローンの社会対立があったことはわかる。同時に各人が隠す秘密も徐々に明らかになるという趣向。 不死が可能になったというと、その技術を謳歌できる特権階級とそれに無縁な下層の対立になりそうなものだが、本書での対立はそこではない。どうやらクローン化技術はかなり安価で、一部の特権階級だけがその果実を味わえるというわけではなさそうだ。では社会対立の原因はなにかというと、一言でいえば、クローンに魂はあるのかという宗教問題である。 各人がクローンを受け入れるどうかは、宗教観オンリーで判断されているようにみえる。 これは興味深い設定だと思うが、それほど簡単にクローンを使えるとなれば、間違いなく人口問題が大きな社会問題になる筈。そもそもドルミーレ号での移住計画も背景にはそれがありそうなものだが、いかんせん驚くほど深堀りされないw 著者はエンタメを書きたいだけで、SF設定は所詮装飾なのもしれないが、このあたりはきわめて雑である。西澤保彦の疑似SF的ミステリのように、最初から作者の立ち位置が明確であれば、なんの不満も湧かないのだろうが……。 次に根本的な違和感について。 二十代の健康な成体のクローンが極めて安価に手早く製造でき、また人格がまるごと正確にコピーできるとなると、目覚めた新たなクローンは、前回のマインドマップを取得して以後一定期間眠った後で目覚めたように感じるとは思う。 しかし前のクローンの立場では? 老衰死する直前にマインドマップをコピーして、それを新たなクローンに移植できればよいが、そうでない状況で死ぬ場合、人格や記憶をクローンに引き継げるからと納得できるだろうか。 ましてや、新たなクローンを起動させるために自らを死なせることができるだろうか? 例えば本書の設定でも、複数のクローンを作るのはあくまで禁止事項であって、不可能なのではない。原理的には本人が生きていようが関係なく、複数のクローンが同時に存在することも可能である。彼らの意識は共有されるのか? 人類進化系SFではあるまいし、そんなことはないだろう。 本人の意識からすれば、新クローンは、自分と同じ記憶と人格を持った別の誰かでは? 最低限このあたりの考察がなにもないというのは、雑な作りというよりも重大な欠陥だと言える。 やたら貶してしまったので、少し褒めておくと、最初に書いたようにエンタメサスペンスとしては決して悪くない。主人公を含めて、登場人物の誰もが秘密を抱えており信用できないうえに、それどころか、自分が犯人である可能性だって捨てきれない。信用できないのは六人のクローン体だけでなく、AIのイアンも同様である。 このあたり、著者が『2001年宇宙の旅』や『ゴールデン・フリース』といった先行のマスターピース作品をどのようにひねってくるかも興味深く、そんなオチでいいのと思わないでもないが、パクらずにひねりつつオトしている。 スタトレファンにとっては、マリアを除く各キャラの役職が、艦長、副長、航法士、機関士、医者と、そのまんまスター・トレックのメインキャラの立ち位置だから、お好みの俳優をアテながら本書を読むのもアリだ。 登場する二人のアジア人がキラキラネームでない日系なのも好感が持てるw ここで〆るべきなのだが、SFとして期待していたわたしには、もうひとつ残念ポイントがあったことにも触れずにおれないw 表紙に描かれているように、ドルミーレ号は円筒形をしており、回転することで遠心重力を発生させている。 当然中心軸からの距離に応じて体感重力は変化し、一般居住区より周辺側にある農業プラント?では重力が大きくなる。 月人には特にそれがつらいとかの描写があって、それはいいのだが、こういった円筒型居住施設では、回転方向の床は上方向にカーブすることになる。 視覚的な違和感は別にして、地上とは異なるコリオリの力の影響が絶対にある筈だ。 その影響がわたしの想像と同じか、あるいは全然異なるのかを突き合わせたいのだが、本書に限らずこのあたりが描写された作品をこれまで読んだことがない。 最初に気になったのは、ガンダム作品のノベライズ、『ユニコーンの日』だったが、アニメ作品にそれを期待するのは酷だろう。それよりも宇宙空間での派手なSEや旋回運動をえー加減にやめる方が先だw しかし本書のような純粋なSF小説?で、しかも円筒型スペースコロニーよりもはるかに小さく、従って体感するコリオリの力はより大きくなる宇宙船が舞台の小説で、そこに関するコメントがまるでないというのは、わたし基準では大きなマイナスポイントである。 | ||||
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クローン技術が発達した星間宇宙船で発生した殺人事件とその犯人探しをメインストーリーに、乗組員たちの過去パートを組み合わせた構成です。 過去パートで断片的に語られる出来事を繋げていくと、徐々に大きな絵が浮かび上がるという展開なので、それなりに面白く読めました。 残念なのが、最後のピースがはまったとき、裏側にある陰謀の動機とやっていることのギャップが大きいように思えた点でしょうか。 とはいえ、クローンそのほかの設定を活かして、未来世界を描くというSFらしい物語になっているので、SF好きなら読んでも損は無いと思います | ||||
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満足です | ||||
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満足です | ||||
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6人の乗員とAIのイアンの過去が明らかになっていく。自分たちの全世代のクローンを殺害した犯人捜しをするのだが、恒星間宇宙船の中の出来事なので、完全なクローズドサークルかと思う。ただそこはSFの自由度というか想像されたテクノロジーのおかげで厳密なクローズドサークルにはしてもらえない。事件の真相が徐々に明らかになっていくストーリーテリングの巧みさがあり、やはりミステリというよりはきっちりとしたSFというジャンルの中でエンタメを感じられる。一時はクローンを作成できない状況に陥ったが、解決方法が想像の斜め上で面白い。上下巻合わせてずっとドキドキしながら読み終えた。続編があっても面白そうだ。 | ||||
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恒星間移民船ドルミーレ号では乗組員が自分自身のクローンを作成しながら何世代にも渡って目的地を目指している。ある時、クローンが緊急に再生された。目覚めたクローンは、眼前の自分たちの死体に驚く。6名の乗組員で生き残ったのは船長のみ。ただし昏睡状態。AIはまともに動いていない危機的状況。宇宙船内の閉鎖空間で6人のうちの誰かが犯人であるのは明らか。そして乗組員は犯罪歴があり、罪を特赦してもらうのが目的なので、誰もが殺人を犯しそうな6人である。少しづつ乗組員の過去が明らかになる中、誰が何を目的に殺人などをしたのか。真相は下巻に続く。 登場人物が少なくて読みやすい。日本人のヒロの性格は少し軽くて、日本人らしくないのが少し気になった。これも伏線なのかもしれないが。 | ||||
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オリジナリティーが少し足りないかな?という点で3/5点にしました。それと重力に関する 表現が間違っているね。光の数分の一ぐらいの高速で飛んでるなら、回転重力使わなくても、 進行方向の逆へかかる高重力で多分みんな死んでる気がします。 世界観的には、リチャードモーガン作オルタードカーボンの「タケシ-コバッチ」シリーズ のスピンオフ作品として読んでも問題ない話です。それほど極めて類似した世界観です。 人格をデジタルデータ化し、定期的にバックアップを行いクローン再生された肉体に インストールして、人格を半永久的に受け継ぐ事が当たり前になった時代の話です。 数百年かかる遠方の地球型惑星へ向かう大量の冬眠状態の入植者を積んだ世代間宇宙船内で、 作業クルーにされた元犯罪者6人の人格を封入されたクローン人間の中で起こった、原因不明の 殺人事件を解明していくのが主なストーリーです。全員が謎の事故によって、地球を出発した 時以降のデジタル記憶を失っており、また数百年単位の隠された「過去」を持っています。 本作には、オルタードカーボンでは語られなかった、デジタル人格クローン人間の黎明期 における倫理観の対立が描かれている点が興味深いです。またデジタル人格ゆえに、データーを 改ざんして、人工的な多重人格や偽物の記憶を刷り込んでしまう事を可能とした世界であり、 オルタードカーボンよりも、もっと人間的な道徳観が劣化した世界です。 本作では、自分の頭の中の事すら信用できなくなった時代というのが大きなテーマとなって おります。いくらでも人格を改造できて、原理的には改造された事に本人が気づけないからです。 「われ思う故に、我あり」という理念さえ通用しなくなった時代に、人は何を頼りに情報の 塊から自分を見つけるのでしょうか? | ||||
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話も面白いし、キャラもとても魅力的。 お気に入り作品になった。 今後もたまに再読していきたい。 よくある海外SF小説みたく淡々と進んでいくのかと思いきや、 SFだけどミステリはいっちゃってるわ、とっつきやすいキャラや 心情描写で感情移入できた。 海外のSF作品で、ヒューゴー賞とかもとれそうだった作品らしい。 そんな作品でヒロインと親しいメインキャラが日本人の男子なの驚いた。 親しみ感じるし、なんか嬉しい。 ヒロは小柄で目が大きく前職もオシャレ、飄々として軽口をたたき、 ヒロインをよく構う、ムードメーカー。 だけど本心は見せず、裏では大きな秘密を抱え苦悩する。 とても切なく、彼自身の魅力ともども、とても萌えた。 アニメやマンガで男主人公でも違和感ナシ。 ちなみに脇役で主役より人気でそうな男子キャラ的な存在も 日本人男子だった。 天才でずる賢くスマートな政府の高官だけど、本当は友情に厚く ラーメンと人間観察が大好きなヤツで憎めない。 アレ、これアニメとかマンガだっけ笑、、 元兵士で政府の要人、男言葉で勇ましいのに、メイド付きで お嬢サマ?っぽい一面もある女子とか。 とにかく、憎めない上に魅力的なキャラばかりだった。 続きが読みたすぎる、、 あの後、皆はどうするの、どうなるの。 ヒロインとヒロはその後どうなりますか。 とりあえず、読んでる間ずっとある違和感が根底にあって、 思い切り没頭できない部分があったから、☆-1かな。 死んで別の個体に脳移植するんなら同一人物だと思えるけど、 データのみ前の個体から引き継ぐってどうなんだろ。 死んだ人間のデータを持つ別個体って、ソレもう別人じゃん? そんな考えが頭から離れなかった。 魂の在処の問題になっちゃうかもだけど。 | ||||
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オリエント急行殺人事件の舞台を恒星間移民船に移してクローン問題で味付けしたような内容。読ませるストーリーテリングで上下巻を一気に読了したが、物語を楽しんだというよりは消費したという感じで、私にとって何度も読み返すような心に残る名作ではなかった。 他のレビュアーも指摘しているとおり、クローン周りの世界観を架空の技術、法律、事件などで緻密に固めようとしているのだが、それでも救いようがないほどツッコミどころが満載で、物語への没入感を妨げる最大の要因になっている。 中でも最大の問題が、意識の連続性に関するパラドックス。登場人物たちは漏れなく「クローンを作成できない=永遠の死」と認識しているようなのだが、マインドマップをインストールしたクローンは自身の超精巧な複製品に過ぎず、自分という個体が死ねば自分の意識もそこで永遠に断たれ、生き続けるのは自分とそっくりな別人である。だが、登場人物たちの言動を見ている限り、彼らはクローン間の意識の連続性を信じている様子。これは物語の根幹となる部分であり、この違和感を払拭できないまま読み進めので、最後まで彼らに感情移入できずに終わった。 物語自体も捻りが効いているといえば効いているが、ストーリーをドライブするキーパーソンとして「無能者だと思ってたら実は超絶技能の持ち主でした」を登場させてしまったので無理やり感を否めず。 | ||||
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通常の作品内容については他の方のレビューを見てください これはどうしても納得できない私のメタ的な感想です この作品の登場人物達は、自分が死んでも新しい体を作って、それに時々セーブしておいた人格記憶情報を インストールすれば生き返れると考えていて、死ぬことをさして重要なことと考えていない これがどうも馴染めない そりゃ周りから見れば同一人物が継続的に生きてるようには見えるだろうし、コピー復活したクローン的 にも死んだ自分が復活したと"思いこんでる"訳だけど、そんな… だって、あなたの正確なコピーを取ってそれが代わりに生きるからと言って、自殺出来ます? 誰かの死とコピーは周りの者に取っては継続した一人の人間でも、死ぬ当事者的には死でしかなく、コピー は自分に限りなく近い他人でしか無い。 そこのところが全くこの作品の登場人物の考え方と相容れないので、誰かがあっさり死んで、でもコピー再生 したから大丈夫とか思ってるたびにアホだなーと思えてしようがなかった。 だって、法的には同時に一人しか一人のコピーを作ってはいけないことになっているけど、あくまで法的に なので、実際にはいくらでも作れてしまい、そういう事例も出てくる。 更には生きてるうちにコピーを作られてしまう状況すらある。 新しいコピーが居るから、古い方のあんた要らないと言われて死ぬバカ居る? この作品に出てくる人はその点においてみんな頭おかしい | ||||
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冒頭示される「クローン7つのルール」的な設定が、いきなり「???」である。クローンは同時に1体しか作ってはならず、違法に複数作られた場合は、「最新の躯体のみ合法」???おい、それじゃ、邪魔になったクローンを消すには、悪者が適当にクローンを作れば、合法的に現在のクローンが駆除されてしまうじゃないか。こんな法律、合理的か? クローンをめぐる物語中の出来事は、目新しいものではない。それこそ、複数のクローンの同時存在や、クローン体にへの他人の記憶の混入などは、何十年も前に、萩尾望都氏の「銀の三角」で描かれている。 そうしたアイデアの古臭さを別にしても、SFらしさがあまり感じられない。先代のクローンを皆殺しにしたのは、自分かもしれない、と、今のクローン達が疑心暗鬼になる設定は面白いのだが、「奇抜な設定のミステリー」の枠を出ない。例えていうなら、死人が生き返る町を舞台に展開するミステリーの怪作、山口雅也氏の「生ける屍の死」のような感じ。 あと、この物語の登場人物は、誰も「2001年宇宙の旅」を見たことがないらしい。宇宙船をコントロールするAIを欺くのは、そんな方法じゃダメに決まってるじゃないですか。 | ||||
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クローン技術により永遠に生き続けられるようになった未来。くじら座のアルテミスという新天地を目指す宇宙船で乗組員のクローン達が目覚めると自分たちの先代クローン全員が惨殺(1名は意識不明の重体)されていたのでした。そして、遺体の年齢からどうやら自分たちは地球を出発して既に20数年が経っているにも関わらず、その記憶が全くないことに気付きます。閉鎖空間における殺人事件の犯人探しのスタイルで始まるこの物語は、6名の乗組員たちのおそろしい過去が明かされるに従い、アガサ•クリスティのミステリーよろしく、「全員が怪しい」? 第一に、特殊な「3Dプリンター」でDNAデータから複製した身体に、「マインドマップ」と呼ぶデジタル化された人格・記憶をインストールするというシステムがユニークです。これまでにも、ブリンの「キルンピープル」やスコルジーの「ロックイン」、ゴールデンの「遠隔機動歩兵」などでも同様に、記憶や人の意識を「別の容れ物」に移すSF小説は結構ありましたが、本作が他のそうした作品と一線を画するのは、アシモフの有名な「ロボット三原則」に匹敵する「クローンの作製と管理に関する国際法附則」を登場させている事でしょう。この「クローン法」に対する違法ハッキング(肉体だけでなく精神まで書き換えてしまう技術)と「クローン対人間」の数百年に及ぶ歴史が絡み合い、異様なディストピアが描かれてゆきます。そして、映画「ブレードランナー」にも共通する、「では、人間とは何だ?」という哲学的な命題が浮かび上がります。 何の予備知識もなくたまたま見かけて読んだのですが、2018年の個人的ベストSF、掘り出し物でした(ラストがやや物足りないので、☆は4つですけど)。 | ||||
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ちょっとしゃべりが多くて、どういう世界感(SF的前提)になっているのか理解するのに時間がかかります。 が、わかり始めると、読みやすくって、一気に読めます。 それなりに人気があるのがわかります。 | ||||
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舞台は2493年の恒星間移民船。 冒頭にクローンに関する法律の重要部分が、まず掲示されます。 そして自分たちの死体と共に一斉にクローンとして復活する乗員たちという開幕。 それまでの宇宙での25年の記憶はなく、AIのデータも消去されている上に、みな犯罪歴を抹消する条件で長期の宇宙航海に出た元犯罪者であるために、お互いに疑心暗鬼に。 そんなぎくしゃくした中での犯人捜しと、彼らの過去が交互に語られていき、クローン法の成立やクローンという存在に、彼らがどう関わってきたのかが明かされていきます。 設定が魅力的で、展開もみなが思わせぶりな行動をしていくサスペンスフルで一気読みのSFミステリでした。 「○○さん有能過ぎじゃないか」という、ちょっとバランスブレイカーにもなりかねない能力を示すキャラクターがいることや、 伏線がきちんとあって遠未来のこととはいえ、技術的ななんらかの説明もなしにぽんと出されるとデウス・エクス・マキナにしか思えないようなSF手法が出てくること――ミステリ上重要な前者より、そことは直接関わらないこっちの方が私はむしろ気になってしまいました(笑)――など、ちょっと引っかかるところもないではないですが、 そこを差し引いても、特殊設定の閉鎖環境もの好きにはたまらない作品だと思います。 | ||||
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今回の評価4というのは、絶対評価と言うよりも好きか嫌いかという主観的な評価で、客観的には5点を付けても良いと思います。もってまわった言い方をするのは上巻の評価で触れたあるコミックの評価と全く同じ理由です。不思議なことに最終的な評価まで同じになろうとは思ってもみませんでしたが。 ストーリーは良く考えられていて面白く、読み易く、サスペンス満点で、どんでん返しの連続です。キャラクターも良く書けており、まさか、あのキャラクターがそう言う人だったとはという意外性の連続。 ただ一点、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、“WHY”が自分の好みと合わないため、それが嫌で満点を付けませんでした。ただし、その私の感覚は、そのコミックの評価でも一般的ではなかったようなので、本書についてもほとんどの方は気にならないのではないかと思います。 下巻の最後で明かされる、その“WHY”以外は、良くできていると思います。 上巻の最後の一文でストーリーは大きく急転しますが、下巻に入ると上巻後半のまったりした雰囲気は急変し、ページが進むごとに衝撃の秘密が明かされます。まさかここまで奥の深い話だったとは。 そこで語られるのは、法律がテクノロジーの進歩にまったく追いつけないという絶望的な事実です。 冒頭で犯罪者と言われていた6人(7人)の過去の話は、未来のハイテク犯罪のカタログみたいです。テリブル、テリブル。上巻冒頭のイメージどおり、結構ダークな話でした。 確かにこういう経緯であれば上巻の冒頭のような事態になることもあり得るでしょう。最初に条件が設定され、その枠の中でロジックが展開し、伏線が置かれ、後に回収され、キャラクターは変化し、それなりに納得できるクライマックスを迎える。ある意味、プロフェッショナルな作家の作品です。 こういう話を読むと、70年代、80年代のSFは、結構平和な話が多かったなあと思います。 | ||||
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書店で見かけて何の情報もないまま購入。 冒頭に、2282年に制定されたという「クローンの作製と管理に関する国際法附則 全7条」が掲載されています。確かに、クローンが登場するSFを読んでいると、何らかの規則がないと何でもありになってしまって収拾がつかなくなるという予感はしていたのでグッドタイミングかも。しかし、今まで誰も提示しなかったのが不思議。(単に私が知らないだけか?) ストーリーを簡単に言うと、元犯罪者6人とAIが操船する恒星間移民船で乗員全員が惨殺されますが、クローン再生で同時に蘇ったその6人とAIが欠落した記憶に悩みながら謎を探る話です。 あらすじを聞くとややこしそうな話ですが、もしかしたらアシモフに対抗してクローン7原則を使ったミステリーなのかなと読み始めます。 上巻は2つの章に別れていますが、冒頭からしばらくはかなりホラー風味。なにせ、清潔なはずのクローン再生室内に、人工重力が切れたために4体の惨殺死体が血の帯を引きながら漂っているのですから。 さらに、全員が重犯罪者という設定の中で船長がやたら厳しかったり、退行現象を起して自閉する者がいたりします。また、再起動したAIも私は会話ができませんと繰り返すばかり。お先真っ暗です。 主人公は、6人の中では一番下っ端の保守係兼機関長補佐(実質は雑用係)の若い女性。と言っても全員が20代前半の姿でクローン再生されたばかりなのですが、実際には何度も再生を繰り返している数百歳?の人ばかりなのです。 この時代、クローンと人間は対立しながらも共存しており、彼らは最初の恒星間移民船として、2500人の人工冬眠者等を乗せてクジラ座タウの惑星アルテミスを目指しています。航海は数百年かかるらしく、乗組員はクローン再生を繰り返しながら操船するのですが、そんな厳しい任務を希望する者は少なく、重犯罪者が任務完了後の免罪を条件に乗り組んでいるという設定です。 で、それを支えるアイデアが、自由自在なまでに改良されたクローン技術と再生された肉体に書き込まれるマインドマップ(人格データ)です。肉体の再生は何度でもできますが、同時に生存できるのは1体だけ、それに最新のマインドマップをインストールすることで個体の生命の延長とオリジナリティを保証します。 このアイデアが去年読んだあるコミックの隠しネタと同じだったので、なんとなく比較してしまったところ、予想以上にキャラクターがかぶってしまって、印象が引きずられてしまいました。特に主人公が、料理好きでほんわかしているところなど、とてもクローン三世代分の終身刑を喰らっている重犯罪者とは思えません。 第二章に入ったあたりからキャラクターが妙に砕けてきて、酒盛りはするはデザートに舌鼓は打つは。おまけにAIまですねたりするし。一方で、各キャラクターの秘密も次々に明かされます。これからどのように展開するのでしょう? 設定やロジックにちょっと甘いところもあったりするのですが、下巻の展開に期待がふくらみます。 | ||||
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