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ベルリンは晴れているか
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ベルリンは晴れているかの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.53pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全43件 41~43 3/3ページ
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1945年、敗戦・分割占領されたベルリンの米軍慰安所でウェイトレスとして働くアウグステの日常から物語は始まる。突然ソヴィエト監視所に連れられ、毒殺された旧知の演奏者について尋問を受けるアウグステ。ここで僕は既視感にとらわれる。冒頭から遠慮なく投げかけられるは、ひとの本質を突く強い文章。そう、これは『朗読者』『階段を下りる女』のベルンハルト・シュリンクを読んでいる感覚、いや、それを超越した骨太さだ。アウグステと"ユダヤ人"カフカの旅を追う「本編」とナチス政権下でのアウグステと両親の苦闘を描く「幕間」のバランスも見事だ。 ・Ⅰ章ラスト近くの「高い建物が消え失せて…」の文章には唸らされた(p92)。 ・廃墟となった繁華街の中で、それでも楽しく生きようとする人々の描写は心に残る(p138)。 ・中盤で明かされるはカフカの運命。俳優として"演じる"ことの真の意味が語られる。 ・「幕間」と、特にⅢ章のカフカの独白に表現される全体主義の恐ろしさよ。軍需用ユダヤ人、そして夜間の強制移住の恐ろしさは身の毛もよだつ(p266)。人間性の根幹からの否定。「ドイツ人は皆ヒトラーに洗脳されている」とアメリカ軍士官に言わせたのは絶妙だ。「…どれが"まとも"なのか教えてくれよ!」(p269) ・カフカにとっての"あいつ"。「まだ息があるのに埋めるな」(p267)。アウグステにとってのギゼラ(p214)。一生ついてまわるは後悔の念か、それとも忘却への願いか。 ・ベルリン爆撃の描写は迫真だ(p427)。ブロックバスター爆弾と焼夷弾の恐ろしさが強く伝わってくる。 ・知人はどんどん死んでゆく。ナチス親衛隊の手により、ユダヤ人収容所により、イギリスとアメリカの空爆により。「最後のひとりまで戦え」。ちぎれたハーケンクロイツ旗。「あんたも気をつけな。生き延びてまた会おうよ」(p432)赤軍の猛烈な侵略を受けたベルリン市民の最期は壮絶だ(p434)。誰もが殺しあう日々……。 ・そして、密告者、隣人の喪服の女性が、自殺を試みた瀕死の女性が、アウグステに語ったある事実(p437)……。 物語に通底するは、非占領国民の強さと"哀しみ"だ。4か国の外国人に蹂躙され、未来を見通せない中で日々生きていくことの困難さよ。 戦後70年を経過しても"ナチ狩り"に執念を燃やすドイツ人の姿は、わかるような気がする。それは自らへ課す贖罪でもあるのだ。 旅路の果てに、それでも希望は、ある。ベルリンは晴れているか。これだけの物語を紡ぎ、胸奥深いところを緩やかに刺激する文章を書きあげた著者の力量に脱帽だ。 | ||||
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ネットで評判だったので気になっていたら、以前すごく感動した「戦場のコックたち」の作者さんの本だと知って即購入。「コック」は第二次世界大戦の最中に日常の謎を解くというのが面白くって読んでいると、どんどんと深刻な内容になってきて、それでも読むのをやめられずに最後はエピローグを読み終わって思わずうるっときてしまいました。 今度の「ベルリン」は、舞台がドイツで敗戦国、しかも軍人じゃなくって普通の少女ということで、前の作品よりもずっと辛くて、かわいそうな状況なんだけども、まるで当時のベルリンを歩いているような気分にさせてくれるものすごく手に取るように鮮やかな文章で、あっという間に物語に引きこまれてしまいました。 物語もとっても凝っていて、1945年7月時点の終戦間もないベルリンと、主人公アウグステが生まれてから成長していく様子とナチスが誕生してドイツがどんどん酷い状況になっていく様子を書いた幕間とが交互に書かれています。 この二つの物語が最後で一つに合わさって、ミステリーとしても、あっと驚く結末が待っていました。 ユダヤ人や同性愛者、身体障害者などの差別問題についてもとても深く考えられていて、当時の迫害の様子が容赦なく書かれているので読んでいて辛いところもありましたが、「これは今も続く地続きの問題なんだ、遠い過去の異国の物語ということで、他人事のように考えていてはいけないんだ」と気づかされました。 あとがきにもの凄くたくさんの参考文献がのっていて、なるほどプロの作家さんってこれだけ調べるんだと感動と納得。 今みたいな世の中に、こんな作品が書かれて、それを読むことができてとてもよかったです。 ぜひ、ドイツ語に翻訳してドイツの人にも読んで貰いたいです。 | ||||
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題名は「パリは燃えているか」の本歌取りだろうか。「戦場のコックたち」に続く第二次大戦終戦前後の物語であり、敗戦国ドイツの首都ベルリンを舞台にしたミステリー小説である。戦中戦後のドイツの惨状は、自ら体験した小説家が描いており、特にノーベル賞受賞作家のハインリッヒ・ベル等の短編は、暗さと絶望に満ちている。本著者にそれを求める人はいないだろうが、物語の背景には「幕間」」として十分に描かれている。この本はむしろグレアムグリーンが描いた「第三の男」の方に近いかもしれない。最期のどんでん返しは予想していなかったが、それを予感させる布石がもう少し前半にあっても良かったのではないか。いずれにしてもまだ若い女流作家が、何故第二次大戦終戦前後に題材を求めるのか、個人的にはそちらの方を聞いてみたい。 | ||||
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