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ベルリンは晴れているか
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ベルリンは晴れているかの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.53pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全43件 21~40 2/3ページ
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大戦中のドイツ国内の狂気と悲惨さをヒシヒシと感じ取れる描写は素晴らしかったです。 また作中にばらまかれた伏線を最後に見事に回収されており、ミステリー小説としても大変楽しめました。 ただ、メインキャラ以外の人物達が掘り下げ不足なのか、なぜこの人物を出す必要があったのか首を傾げることが数回ありました。 聞きなれない異国の人物だけに、その辺がかえって物語の脳内イメージをしにくくしているかなと思いました。 | ||||
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第二次世界大戦前後のベルリンが舞台で、主人公はドイツ人の女の子。日本の戦時中、戦後を扱う本や映画は多いけれど、ドイツというのが新鮮だった。ソ連、ポーランドなどヨーロッパにおける第二次世界大戦の頃、ナチに共感せずに自分の心に従って生きる少女が魅力的。どうして作者は日本人なのにベルリンをテーマにしたのかな、という疑問が浮かんでくる。読み慣れないカタカナ表記の固有名詞が多いので、上手な文章にもかかわらず何度も眠くはなった。それでも最後まで読みたいと思わせる素敵な世界観があった。主人公の冒険の続きが知りたいと思わせる流れだった。ラストはなんだかあっけなくて、サスペンスとしてはこういうひねりを入れる必要があったのかよくわからなかった。純粋にベルリンと時代背景と素敵な登場人物だけの歴史物語でも良かったような気がした。 | ||||
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時代は第二次世界大戦直後のドイツ。ベルリンを舞台にした殺人事件の物語。音楽家のクリストロフ・ローレンツが毒入り歯みがき粉で殺害される。主人公のアウグステ・ニッケルがナチから逃れる時の恩人だ。ソ連軍はクリストフの妻(フレデリカ)から、アウグステの名前を聞き、アウグステに犯人の疑いが持たれる。同時にフレデリカの甥エーリヒにも疑いがおよび、なぜか元俳優のカフカと一緒にエーリヒを探しにいく。だんだん冒険小説の体をなしてくる。最後は驚きの犯人と真相の判明である。戦中戦後の混乱期を逞しく生きながら、大小の不幸があったことを小説で示し、それをエンタメ小説として仕上げられた見事な作品である。 | ||||
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どんな言葉を紡いで感想を述べようとも、うまく述べられないのですが、この本に出会えてよかったと思った一冊でした。 | ||||
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明らかに、「パリは燃えているか」を敷衍したタイトルに 惹かれて購入した次第。 ジャンルにすると、ミステリーになるらしいが、 当方、まったくといっていいほど、ミステリーは読まないので、 歴史を舞台にした、ある架空の物語として読んだ。 だけれども、そういった点は気にならず、 仮にミステリーとしてではなく読んだとしても、 描写のすばらしさは疑いようがない。 戦争の終わったベルリン。混乱の極みにある様子が 眼前に広がるかのようである。 誰もが、自ら生きるのに文字通り必死、瓦礫をかき分け、 食べるものはすべて口にした。 (それでも空腹は到底満たせるものではない) その町のあちこちに漂う腐敗臭、焦げた匂い、土埃さえ伝わってくる。 ただ、空だけが爆弾が降ってくることなく、晴れ渡っていた。 当のドイツ人だけではない、ユダヤ人、占領軍としてのソ連、アメリカも 入りじまって、まだ敵意の消え去っていない様子、占領軍同士の 対立も丁寧に描かれていると感じた。 相当いろいろな資料にも当たられたようであるが、それだとしても、 ここまで書くのは労力が要ったろうと想像する。 適宜、幕間として、その混乱をもたらした戦争前、戦時中の回顧シーンが いくつか挿入される。 これまた描写が精緻で、戦争に突入していき、ベルリン市街戦までの 市民生活が手に取るように伝わってくる。 幕間は、当初、単なる主人公の回想にすぎないように思っていたが、 最後、回想シーンと物語の真実が合わさり、すべてが明らかになるという 構成は実に見事という他ない。 映像が思い浮かぶ描き方だけに、映画になったなら、ぜひ見てみたいと思う。 | ||||
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第二次大戦直後のドイツを舞台にした10台のドイツ人少女と自称俳優のユダヤ人男が殺人事件に関わる家族を訪ねて旅をする、ロードムービー的作品。 作者は日本人だがよくも詳しくドイツの暗黒の歴史を紐解いたものだ。当時のベルリンの街並みや風景、戦争における監視生活や悲惨な戦闘、ユダヤ人や身障者への迫害、通常ならざる生活を克明に描き、ドイツの人々がどうやってヒトラーに傾倒し人間性を失っていったのか理解された。 その中で主人公とその一家が一人の幼子を何とか生かそうと奮闘するシーンや、もう一人の主人公の隠された素性の告白シーンには胸が熱くなった。主人公達の正義感や楽観的な性格が、悲惨なだけではない救いをもたらしていたのが、この小説の良いところだろう。一気に読ませられた。 日本人が日本を舞台にした太平洋戦争を書くとどうしても言い訳臭く、本当に人間の汚い部分までを描くこと、読むことをがためらわれるが、これがドイツ人、外国人だと客観的に見られるものだと感じた。ベルリンが舞台だけに街並みの想像や地理関係は分かりづらい面があったが、ちょうどNHKの映像の世紀ヒトラー特集回と同時に見ることが出来たため時代背景やシーンの理解には結構役立った。戦場のピアニストや様々な映画を見ることで補完できるだろう。 ミステリー部分は薄味だが、久々の現代戦争小説は骨太で戦争を知らない世代が読むべき本だった。 なお、本屋大賞にノミネートされているが、戦争ものであるため読むのが痛い部分もあり、ミステリー要素も薄めということも含め、本屋大賞受賞向きではないと思う。 | ||||
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学生時代はベルリンで過ごした経験があるので、作中の街の描写や地域の名前などとても懐かしく感じました。記憶を辿りに時間だけタイムスリップしたようで、当時の世界観を楽しめました。 | ||||
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日本人の作家が書いたとは思えないほどベルリン、そしてその時代のドイツの様子を調べ上げて書かれた本である。読み始めると一気に読める。 | ||||
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久しぶりに、しっかり読んだ作品です。凄いリサーチ!私まで、主人公と一緒に、ベルリンの瓦礫の中を彷徨っているかの様な、気分になりました。ミステリー作品というよりそれを超えた人間模様に、興味が惹かれるました。 オーブランの少女 Amazonで、早速注文しました。 | ||||
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戦争直後の米ソ英仏統治下のベルリンが舞台。 その2日間のドイツ人少女の濃厚な行動を追っていく。 そして、戦争前から戦争中を顧みる。 ミステリーは終盤段階にボルテージが上がります。 それよりも、悲惨な戦禍の数々。 恐怖と混乱と狂気が混在した怒涛の中。 すさまじい惨状が眼下に広がっていく。 ドイツ人少女が見た光景が浮かび上がってくる。 守るべきもの。 ひとが作った負の歴史。 その様子が臨場感たっぷりに描写されている。 人道、道理に外れた行為が日常だった戦禍で、何が正しい行為なのか。 | ||||
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翻訳本のつもりで読み進めた。一気によむというより、じわりじわりと丁寧に読んだ。前世ナチス側だったのか最後まで罪悪感で一杯だった。 | ||||
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中心になるストーリーと戦前からここまでを物語る幕間、どちらも目の前で起こっていることのように丁寧で細かい描写に思わず引き込まれます。 ただ、辛くて苦しい場面も多く、なかなか読み進められないなかをアウグステとジギのキャラクターがぐんぐん引っ張る。 戦争は世界中のどこでも起きる、やってよかった、傷つくひとが誰もいない戦争なんてない。 そういう、強いメッセージを受け取りました。 | ||||
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1945年7月、戦争に敗れたドイツの帝都ベルリンは連合国側の4カ国が占領していた。アメリカ軍の兵員食堂で働く17歳のドイツ人少女アウグステ・ニッケルは、突然NKVD(内務人民委員部)の尋問を受ける。戦時中に自分をかくまってくれた音楽家クリストフ・ローレンツが毒殺され、アウグステに嫌疑がかかったのだ。NKVDはやがてローレンツの妻フレデリカの甥エーリヒに目をつける。エーリヒは一時ローレンツ家の養子として迎えられたが、後に家を出たまま同家とは縁が切れていた。NKVDは映画の街バーベルスベルクにいるかもしれないエーリヒを探すようアウグステに依頼する。おりしも近郊でポツダム会談が開催されようとしていて、スターリンがドイツに向かっていた…。 ------------------------------ 2019年の直木賞候補作であり、本屋大賞ノミネート作です。終戦直後のベルリンの崩壊ぶりを日本人作家がここまで精緻に描き出すことができるのかと驚きをもって読みました。 瓦礫の山と化したベルリンで被占領国民の哀しく理不尽な日々が果てしなく続きます。わずか2日間とはいえ、まだ10代の少女に過ぎない主人公とともにする、謎めいた追跡の旅の道行きは大きな緊張を強いるものでした。 また「幕間」と称して5度にわたって差し挟まれる戦中回想シーンで描かれる、ユダヤ人やツィゴイナー、同性愛者や東欧移民などへの虐待の様子は苛烈を極め、目を覆いたくなるほど微細な描写が幾度も登場します。その抑圧された少数派側の憤怒と焦慮が、アウグステに同行する“ユダヤ人俳優”カフカ、ツィゴイナーとユダヤの血を引くヴァルター、同性愛者のアーリア人ハンスの関係を大きく揺さぶっていくのです。 彼らの姿の向こうに、戦争のむごさがくっきりと見えてくる物語です。 しかし、戦中・戦後のベルリンがあれほど詳細に描かれる一方で、殺人事件の被害者であるクリストフがその死を招くきっかけとなった背景そのものには霞がかかったかのようではっきりしません。クリストフの行動の動機が曖昧なまま物語が閉じてしまった印象が拭えないのです。クリストフ殺害犯もそこを明らかにする努力をしていないことにも納得がいきません。 謎解き物語としては、最後の意外な犯人像も含めて楽しめはしましたし、戦争終結直後のドイツをあたかも海外ミステリーを読むかのような気持ちで味わえたのも事実ですが、被害者の実像が不鮮明なままに終わった点に不満を感じたこともまた否定できないのです。 ------------------ *131頁:「リヒテンベルグ」という街の名が出てきますが、Lichtenbergは「リヒテンベルク」とするほうがドイツ語の原音に近いと思います。 *258頁:「帝国文化院」に振られたルビが「ライヒスカルチュアカンマー」となっていますが、Reichskulturkammerは「ライヒスクルトゥアカンマー」とするほうがドイツ語の原音に近いと思います。 ------------------ 作者・深緑氏自身、この小説を執筆する上で参考にした文献を巻末に多数掲げていますが、そのリストに載っていない書で、お勧めの書を以下に紹介しておこうと思います。 ◆臼井 隆一郎『 アウシュヴィッツのコーヒー―コーヒーが映す総力戦の世界 』(石風社) :『ベルリンは晴れているか』の中で「代用コーヒー」を口にする場面が幾度か出てきます。コーヒーとは名ばかりで、「栗を砕いて炒った」もの(57頁)や、「タンポポの根」を代用したもの(370頁)など材料は様々です。その一方でフレデリカが「陶器のカップで本物のコーヒーを飲む」(417頁)場面も出てきます。 代用コーヒーと戦争の関係について描いたノンフィクションが『アウシュヴィッツのコーヒー』です。 ◆ローラン・ビネ『 HHhH (プラハ、1942年) 』(東京創元社) :『ベルリンは晴れているか』の中で「ベーメン・メーレン保護領のプラハで襲撃され、死亡したラインハルト・ハイドリヒの葬儀が昨日あったばかり」(296頁)と記されます。 ナチ高官としてユダヤ人問題の“最終的解決”計画の推進者であったラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画を描くフランスの小説が『HHhH (プラハ、1942年)』です。 2014年本屋大賞翻訳小説部門で第1位に選出されています。 ◆ハラルト ギルバース『 終焉 』(集英社文庫) :1945年4月、ソビエト軍が進攻してくる中、帝都ベルリンでユダヤ系の元刑事オッペンハイマーが、旧知のギャングであるエデから奇妙な依頼を受けます。ディーターと名乗る男とそのカバンをかくまうようにというのですが、ディーターは終戦を目前に殺害されてしまいます。一方、進駐してきたソ連軍もそのカバンを探していて…。 1944年5月に始まる『 ゲルマニア 』、1945年1月を描いた『 オーディンの末裔 』に続くドイツのミステリー・シリーズの第3弾です。ソビエト駐留軍との微妙な関係を背負って敗戦直後のベルリンで謎の解明に走る点で、『ベルリンは晴れているか』と共通するところが多い物語です。 . | ||||
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日本人が終戦直後のベルリンについてここまで詳細に調べて、読者をあたかもそこにいるような状態に引き込む表現力はすごい。 但しストーリーは主人公目線で展開していくにも関わらず、最後の落ちとのつながりが自然ではないように思った。 | ||||
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直木賞の候補作となり、高い注目を集める作品であるため現在(2019.1.8)アマゾンでは定価に加えて謎の取次手数料・配送料により単行本が1,000円以上高額になっています。3,400円という時もありました。お近くの書店や他の書籍購入サイトでは2,052円です。 Kindle版をご検討の方はそのままレジへお進みください。やはり紙で手元に置きたい、そしてアマゾンで買いたいという方は…止めません、内容はとても良いので損はないはず。 でも、そこそこの差額です。瑞々しくも恐ろしく面白い短編集「オーブランの少女」と好きな甘味を買うとか、感想メモする美しいノート買うとか、どうでしょう? さてあまりの高値に驚き前置きが長くなりましたが、この作品に寄せられる視線の熱さを感じます。実際とても熱量のある内容です。しかし落ち着いた、時に冷徹なほどの鋭い視点でまざまざと当時の空気を描き出しています。想像と取材と構成力の賜物。怒りと絶望の中に見出される、人間の力強さ、生きることへの希望。じっくりと読むに足る重厚さですが、けして重苦しいだけでなく興味関心を湧かせる豊かな筆力がありました。 こういった切実な時代を扱う物語の奥深さは、ひとえに作者が生み出したキャラクターと実際のエピソードや当時の文化風習の調和によるものと思いますが、老若男女を問わず世界観に引き込まれるのではないかと思います。 賞レースの行方はさておき「良いもの読んだわ」と納得できる作品なので、多くの方のお手元に届けばいいなと期待します。一気に読むタイプも、じっくり読むタイプも、アウグステの歩みと視点と共に物語をお楽しみいただけるかと。私は静かに自分を見つめ直すような気持ちで堪能できました。映画化をイメージして登場人物をキャスティングするのもおすすめです! | ||||
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戦場のコックたちにものけぞったが、2冊分の膨大な資料を読み込む過程で、この作家はたぶんあと何冊か、この時代の欧州の物語を書くだけの素材と動機を獲得したのでしょう。 ミステリー要素は二の次でかまわない(賞レースでは減点対象でしょうが)。とにかく、ベルリン陥落直後のドイツをこれだけ詳細に描いて、読者を引っ張り続けられる日本人作家は、他に居ない。「卵をめぐる祖父の戦争」を連想させる部分もありますが、真似ではない。 感動はしませんでしたが、おおいに感心した大作でした。「帰ってきたヒトラー」との併読や、「・・最後の12日間」の鑑賞をすると、よりリアリティが増します。 | ||||
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戦後すぐのベルリンが舞台で、ポツダム会談直前に起きたソ連統治下のベルリンでドイツ人が米国製の歯磨き粉に含まれた毒で殺害されたという事件をめぐる2日間に焦点を立てた小説です。ミステリー小説という触れ込みでしたが、第二次世界大戦期間のドイツの状況を詳細に調べ上げ、それを一人称で現在進行形で描くことで、市井の人から見た戦争体験記という印象を受けました。 ユダヤ人、障碍者などの人種差別はもちろんですが、国家と多様性、国家権力vs個人の尊厳という極めて現代にも通じるテーマを扱っております。黙認する罪というのを感じましたが、あの時代にあの場所にいて、自分が黙認以外の選択肢を取れたかというととても難しいかな。集団対個人という風に置き換えば、悪の度合いが違うだけで同じような場面はいくらでもあるはずで、その時に自分は何を考えて判断するべきなのかなと考えるきっかけをくれました。 | ||||
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ここまで凄惨な状況だったのか、読むまではわからなかった。読むことによってその一端を知った。著者、深緑さんの再現能力は高い。没頭して読んでしまう。あたかも自分もベルリンで暮らしているかのように。とにかくすごいとしか、言いようがない! | ||||
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連合国4ヶ国に占領されたベルリンで、主人公の少女アウグステは、ある日突然ソ連軍に呼び出される。そこで告げられたのは、戦時中に匿ってもらっていたクリストフが毒物により不自然な死を遂げたという事実。 戦後、クリストフはソ連に近い立場にいたことから、地下に潜伏したナチス工作員による犯行の可能性があるとしたソ連軍は、クリストフの甥であるエーリヒという人物を探すことをアウグステに命じた。 そしてアウグステは、ソ連軍に同行を命じられたカフカを道連れに、エーリヒを探す旅に出たが…。 焼け跡を行くアウグステとカフカが遭遇する様々な困難が描かれていくが 、ナチスの台頭から敗戦に至るベルリンの状況も合間に挿し込まれ、現在と過去とが交錯しながら物語が進展する。 本書が過去の幕で繰り返し読者に投げ掛けてくるのは、国家が人間に突き付けるグロテスクで圧倒的なまでの不条理だ。それに対して、現在の幕で示されるのは、個としての人間が人間にもたらす不条理。 戦争により理性の皮を剥ぎ取られた状況下での人間の醜さを描くことにより、「国家」や「集団化した人間により組織された政権」などの抽象的な存在ではなく、不条理を生み出す核はそもそも個人にこそ内在しているのだということを語りかけてくる。 エーリヒ捜索にかけるアウグステの「執念」の理由、苛酷な目に遭いながらも逃亡せずにアウグステと行動を共にするカフカの「真意」、そしてアウグステが暴いたある人物の行動の「動機」など、本書にはいくつかの謎が織り込まれている。そして終盤でのどんでん返しと、ストーリー的にもかなり読ませる作品だ。 戦後の荒廃したベルリンの描写や、ナチスによりベルリンが息苦しくなっていくさまなどは、実にリアリティがある。脇役に至るまで、人物造形も細やかだ。 ヨーロッパを舞台としたこれほどの深みのある作品が、まだ若い著者の手によって産み出されたことに、素直に驚きを覚える。 | ||||
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新聞書評に引かれて読んでみようと思った。大変面白かったが、面白いからすぐに読めるというのではなく、読みがいもあり、しばらくの間は寝るまでのひと時を楽しむことができた。 舞台は第二次世界大戦直後のベルリンである。話は、篤志家のドイツ人が何者かによって殺されるところから始まる。殺されたのは、主人公のドイツ人少女・アウグステを戦争中に助けてくれた一家の主人だった。帯書きには、「圧倒的スケールの歴史ミステリー」となっていて、犯人探しの物語のように書かれているが、内容は少し違う。犯人探しというよりも、戦後のベルリンの様子が、親を亡くした孤児や、進駐してきたソ連軍、アメリカ軍を狂言回しとして詳しくそして興味深く語られていくのだった。この辺の著者の取材力と筆力は読者を圧倒し、次々とページをめくっていった。日本人でありながら、どのような動機があって、作者はドイツのことを書いたのだろうかと興味がわくが、あとがきにはそのことは書かれていなかった。 この本からは、ドイツ人の全てがナチやヒトラーを崇拝していたわけではない、ということも述べられている。アウグステの父親がそうだった。貧乏な工場労働者だが気高い心を持ったドイツ人である。そんなことも知ることのできる、小説として楽しめた一冊だった。 | ||||
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