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すべて真夜中の恋人たち
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すべて真夜中の恋人たちの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.37pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全74件 61~74 4/4ページ
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すごく良かったです。 恋がしたくなりました。 たぶんわたし達は死ぬのが分かっていながらも人生の間違い探しを続けます。 毎日の選択肢の中で、夜が終わる前に後悔し続けます。 何年も後になって気づく事もあります。 そんな時に思うのは光のようにあやふやな、現実にありがちな残り物のような気がします。 とても良い本です。 | ||||
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自分の閉じた世界で満足していたような、世界の片隅でひっそり、誰にも見つからないように、 息をひそめて生きているような、女性が、恋をする話……だけではないのだ。 彼女の悲しみや痛みもわかるし、モテない系の女性には身につまされるような描写も多い。 しかし、主人公の一人語りなので、騙されてしまうが、この話はかなりグロテスクなのではないだろうか。 主人公が、意中の男性に会いに行くのに、いつも、酒の力を借りていく、その壊れ具合とか、 ネタバレになってしまうので詳しくはかけないが、この主人公の好きな男性も客観的にはどういう人なの? 主人公のことをどう考えていたの?と首をひねってしまうところがあるとか。 そして、もう一人の友人と言っていいだろう人物もちょっと、終盤に向けて怖くなってくるのだ。 私は、ラストの明るさや、主人公が自己の人生に対する姿勢を洞察する部分が好きだが、 実は、そういう読み方はまだまだ甘くて、作者はものすごく、この小説に色々仕掛けているのではないか、 それを考えるために、もう一度読み直してみようと思う作品だった。 川上未央子は一筋縄ではいかないなあ。 | ||||
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川上さんの小説が好きで読んでいるので、この小説もすんなりと、異和感なく入ってきました。 くそれはまるで冬の匂いのような光りかただった。>というような、ふと散りばめられた文章に魅了されながら、読んでいる間ほんとうに幸せな時間を過ごしました。懐しいような、切ないような時間を。 | ||||
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発達障害診断された少女から借りた「ヘヴン」を読み、本作を読む気になりました。 たまには軽い恋愛小説でもよいかなと思い手にしたのですが、勘違いでした。 少女は特段目立つ存在でもなく、高校生の時にこれも特段目立つ生徒でもない 水野くんに常套手段と捨てぜりふでトラウマを持つ。 著者は実にさりげなく流すが34歳を過ぎてもそれを引きずる。 社会人になり、唯一の友人として主人公と一見正反対の生き方をする聖が登場する。 そして水野君と正反対の三束さんが大人になったはずの入江の前に登場する。 入江の小さな隠し事を受け入れる三束や 同じく入江の小さな嘘に優しく対応する美容院が心地よい。 途中、高校の同級生が登場し、崩壊しても形を保つ夫婦生活を語り、級友の死を語り 元上司の通夜で元同僚が世間一般論で聖を語り、 またある日、たまたま交通事故の現場に立ち会い、人の死を入江に目撃させる。 本書で初めてセフレという言葉を知りましたが、「自由からの逃走」や「死霊」 も頭をよぎりました。 終盤に石川聖が初めて入江冬子の部屋に訪れます。 そこでの二人の会話に涙が出てきました。 それでもスプーン一杯の体液の結果を受け入れて強く生きようとする石川聖と 受け入れることができずに生きていく入江冬子。 著者は目に見えないものの描写がすばらしい。 読了して三束と冬子の会話にもしっかり伏線が在ったことに気がつきました。 実によく構成され、考えされた小説でした。 追伸 この作品は石川達三のように解説が付きません。 注意をして読まないと登場人物の嘘や押し込めた感情に気がつかず 読み終わってしまうようです。 | ||||
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助走をつけて、勢いよく走り始めたかと思えば、突然泥沼にはまってしまう。 泥沼にはまった後は、進もうとすればするほど、後退して進路が塞がっていくようにさえ思ってしまう。 はじめ、すっと世界にはまり読めていたものが、泥沼にはまった後は読んでいるこちらまでページ進めるのが億劫になり、気分が滅入ってしまう。 光に向かって走り始めたものが、突然暗闇に襲われて行き場を失う感じに似ているのかもしれない。 主人公の入江冬子は、会社を辞めて、フリーランスの校閲者になる。 居心地の悪い職場を辞めて、さい先が良い人生を歩み始めたかのように見えたがそうではなかった。 彼女がもつエネルギーというのが、まさしく真夜中のような負のエネルギーが充満していて、どこにも出口がないような全面的な閉塞感に包まれているのだ。 仕事に、人間関係に、恋愛に、そして人生そのものに擦り切れ、消耗し、疲弊しきった主人公が最終的にある出口にたどり着く。 その出口というものを言葉にすると希望と呼べるのかもしれない。 言葉にしてしまうと、すごく陳腐に聞こえてしまうが、生きるということ、人間が生き続けるということには希望が必要なんだと思う。 希望があれば、目的とかゴールなんてものは、もしかしたらいらないのかもしれない。 実は、人間ってそういうものを糧にして生きていないんじゃないかとすら思えてくるから面白い。 | ||||
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なるほど川上未映子はこういう風にキャリアを重ねているのか、という実感をまず得た。前作とは全く異なる新しい川上未映子がはっきりと読み取れる。内容はというと、34歳のフリー校閲者入江冬子と、先輩であり彼女に仕事を託す存在でもある石川聖、そして冬子がカルチャーセンターで出会う58歳の数学教師の三束さんが主な登場人物で、ほとんどこの3人しか出てこないような物語である。そしてその中でも冬子の語りや描写が長い。とにかく長い。あれだけ語りを尽くしてもなお、という感じが読みながらしていて、小説のなかでどれだけの時間が経っているのかの実感が掴みづらいという妙な感じを覚えた。 前作は「善と悪」という複雑なテーマだったが、本作のテーマはこれ、とはなかなか判別しがたい。恋愛はあくまでジャンルであって、それ自体はテーマではないだろう。自分が読んだ中で描かれていたと思われるのは、ひとつは距離感の取り方だ。冬子と三束さんとの関係は恋という文脈で、冬子と聖との関係は仕事相手という文脈で、そして冬子の独白(ないし回想)する過去は、その当時の彼女と誰かの距離の取り方でもあるし、彼女自身の問題(現在の彼女と過去の彼女との関係)でもあると言える。 どちらかと言えば、長い詩を読んでいるような気分でもある。つづられるのは基本的に冬子の一人称による独白なので、聖や三束さんの感情は最小限にしか物語に介入しない。大きな主眼でもある冬子と三束さんの恋も、ネタバレをしてしまえばそれはあくまで恋であった愛にはたどりつかない。それは物語が続いてどこまで行っても、おそらく。そう感じさせるくらい、冬子という人間について読者は偏って知りすぎる。 その上で言うと、冬子は他人との距離の取り方についてかなり痛い。下手すれば2ちゃんねるやニコニコ動画を徘徊するニートよりもなお、かもしれない。そんな他人との距離の取り方が下手な彼女はどうしてそのようになったのか、そしてそんな彼女はどのような現在を、どのような34歳の女性を生きるのか。このふたつが物語の軸であって、前述したように三束さんや聖はあまり多く登場するわけでもないし台詞も抑えられているから、それ以上でも以下でもないような気がした。 ただ、だからこそ「すべて真夜中の恋人たち」というタイトルに称賛を送りたくなった。川上未映子はかなり確信犯的に(作家だから恣意的に作り込むのは当然だ、という意味以上に)冬子や聖、そして三束さんという人物を本作の中で動かしている。他人との距離の取り方は器用とか不器用なのではなく、単に視界の問題かもしれない。とはいえ、視界がすぐに晴れるわけではないし、いつ晴れるとも分からない。そしてそんなふうに真夜中を生きている人間は、現実にごくふつうに存在しているだろう。等身大な人物を描くこと、は感情移入も生みやすいが、きれいに感情移入できるかどうかはかなり分かれるだろう。冬子の言動を読んでいてアホくさい、と思うのも一興だろうし。すべてはあなたが決めればよい。たいていの人は、真夜中に生きているわけではないのだし。 | ||||
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主人公が、対人関係の緊張を解くためにお酒を多飲する場面が印象的でした。 酔いに救いを求めて会話をする姿が悲しくも愛おしい。 何気ない会話だけを何度も思い出して幸せになれる「恋」は、 年を取ると滅多に出会えるものではないので、 人生の中で大切な思い出になるだろうと思う。 | ||||
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人気作家による最新作はなんと恋愛小説です。といっても正攻法というよりはちょっと設定に変化球を投げていて、内気で内向的な校正専門家の若い女性が、年上の自称高校物理教師にだんだん惹かれていく顛末をじわじわと描きます。 だから光とか物理の講釈が出てきたり、校正の仕事の実態がレポートされたりして恋愛一直線の単純さに陥る危険をあえて複合的に回避しようと努めているのですが、それがうまく行ったとは必ずしもいえません。 そもそも校正家なんて著者のすぐ近くにいる存在であり、これを主人公にするのは安直に過ぎます。ヒロインは恋人とカルチャーセンターで知り合うのですが、どうして彼女がそんな所へ行く気になったのか、またどうして彼女が急にアル中状態に陥ったのかもよく分からない。 が、二人の恋は、読者にとっても著者にとっても想定外に盛り上がります。けれどすべての物語には終わりがあるのです。助平な著者は、無理矢理終わらせようとしてヒロインの友人を突如乱入させたり、相手の男性ににわかにヴェールをかぶせて行方を晦ませようとしたり、気のきいたフィナーレにしてやろうと腐心するのですが、このやり方が最善だとは著者も思っていないでしょう。 さりながらこのようにいくつかの短所を内蔵していようとも、この本の276から278ページの文章は文句なしに素晴らしく、著者の努力と天稟が存分に発揮されています。ヒロインと心をひとつにして、一緒に呼吸し、泣きながら心をこめて描いたのでしょうが、ここには恋する人の真情が、痛々しくも美しく表現し尽くされています。 | ||||
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冒頭の1ページを読んで、何か感じるものがない人が読むとひどく退屈で、長ったらしい(冗長な)文章の羅列に辟易するでしょう。私はとてもすてきな本だと思います。自分にしかわからない世の中との「ずれた」感覚や、他人から見たら「うまく行ってるのに、なにが不満なの?」とも思える境遇にいる人が、内包する孤独感など。順風満帆で上手く行ってる人より、ちょっとめげて、あるいはちょっと疲れて一休みしたい人向けの本だと思います。 | ||||
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いろんな人がいろんな意見を書いておられますが、 私は気持ちよく読めました。 京都駅で本を買い、新横浜で読み終えたのですが、 夜の光に包まれた気持ちになり、幸せでした。 彼女の文体やストーリーが好きな方は、きっと楽しめるのではないでしょうか。 がんばってほしい作家さんです。 | ||||
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登場人物は、基本的に、主人公であるフリーの校閲者・入江冬子、その友人の石川聖、 それに冬子が恋をする相手の中高年男性・三束さんの3人しかいない。 確かに他のレビュアーの方が述べられている通り、 登場人物の人物像も、ストーリーの展開も、冬子の恋の結末も、あまりにも陳腐だ。 ストーリーだけなら、世の中にいくらでもある恋愛小説の1つにすぎない。 しかし評者にとっては、心に残るものがある作品だった。 それは、女性心理の繊細な描写と、細部にまでこだわった文章と言葉のおかげだと思う。 本書の文章については美しいだけでなく、格調の高さのようなものを感じる。 あまりにも陳腐な設定なのに、(少なくとも評者にとって)心理描写と文章力だけで 読ませてくれた作者・川上未映子の力量は確かなものだと思う。 しかし前作「ヘヴン」に比べてクリエイティビティに欠けることは否めないので、 星を1つ減らして星4つとします。 | ||||
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「乳と卵」で川上未映子さんのファンになった私は、新作の長編小説が出るということを知って、単行本が出るのを待ちきれず、群像を購入して読みました。 そして、単行本が出版されたということで、単行本も購入しました。単行本はラストに少し手が加えられています。 そもそも、「乳と卵」での独特な文章表現に引き付けられ、その次の「ヘヴン」では文体がガラッと変わったものの、世の中で持てはやされている小説とは一線を画したテーマを扱っており、地味ながらも引き付けられるものがありました。 そして、今回の「すべて真夜中の恋人たち」ですが、私の期待以上の作品に仕上がっていました。 相変わらず、一般受けするようなサスペンスものや禁断の〜を前面に押し出したような内容ではなく、じれったいほどの会話のやり取りが繰り返され、非常に地味な印象を受けます。ですが、普通は取り上げないような中高年の恋愛をこんなにも美しく表現したところに、また新しい彼女らしさを感じました。じわじわと心に染み入る、とても気持ちの良い読後感を得ることが出来ました。 文句無く、お勧めです。 | ||||
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デビュー作から最新のエッセー、雑誌や新聞などのこまごした文章まで読んでいるほどの、川上未映子ファンであるし、すべて真夜中の恋人たちも、本になるのが待ちきれなく、群像を買って読んだのだけれど、正直、読みすすめるのが辛かった。しかしでも思うのは、この「すすまない感じ」が、すべて真夜中の恋人たちの、狙いの一部なんじゃないかということ。 この「すすまなさ」は、本作が初めてじゃない、川上ファンならきっと 感じると思う。あのたたみかけるような怒涛の未映子節が恋しくなる反面、すべて真夜中の恋人たちのなかの、人物が語るセリフの数々は、やや詩的だけれど、一つ一つ洗練されていて、川上さんのうでを感じずにはいられない。「光のようなものをかきたい」と言っていた意味が、とくにセリフに顕れていると思う。 恋愛小説という読み方をしないほうが、愉しめる。とにかくページの いたるところで、セリフが輝いている。川上さんの言葉のセンスというのに 惚れ惚れする人は、少なくないはずだし、恋愛小説としては失敗している という人もおられる。しかし、ファンにとっては、ヘヴンに続くほどの 衝撃はないかもしれないけども、こんな川上未映子もあるのか、という 驚きと、発見がある。 | ||||
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川上未映子の長編恋愛小説である。前作の『ヘヴン』を読んでいたので、私は、特に中身をほとんど確かめずに、書店の平台の上に積まれている1冊を取って、すぐに購入した。前作の『ヘブン』の時から、川上は、文章がとてもがうまい、と思っていたので、物語の内容は、すらすらと読むことが出来た。物語の内容に踏み込むことは控えるけれど、恋愛小説マニア(というのがいるのかどうか知らないのであるが)からすると-ちなみに、私は、その恋愛小説マニアではない-たぶん、もの足りない内容ではないか、と感じてしまう。もっとドロドロしたものがあった方が良いのではと思ってしまうのではないか。だから、「極めて観念的な恋愛小説」ではないか、と思うのである。それは、彼女が、哲学などを学んでいることと関係するのかもしれない、と邪推してしまう。この小説に出てくる主人公の会話も、何となく、形而上的な香りがするのである。ただ、私は、そのような会話がとても気に入っているけれど。 | ||||
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