告白

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評判

告白の評価:

4.48/5点 レビュー 176件。 D ランク

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平均点4.48pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全350件 81〜100 5/18ページ
No.270
(5pt)

神話的なテーマを持つ作品を探す誰かへ

"なんらの言葉もなかった。なんらの思いもなかった。なにひとつ出てこなかった。ただ涙があふれるばかりだった。熊太郎の口から息のような声が洩れた。『あかんかった』"2005年に発刊され、明治に起きた【河内十人斬り】を題材に人はなぜ人を殺すのか?を描く本書はユーモアと絶望のバランス感が素晴らしい‬。

個人的には著者の本は映画化もされた『パンク侍、斬られて候』に続く2冊目として、朝日新聞による『平成の30冊』の3位にランクインしていた事をキッカケに手にとったのですが。

【実際の事件であり、河内音頭のスタンダードナンバーとしても今に伝わっている】といった前情報を全く知らないで読み進めていたこともあるのか。前半の熊太郎の成長を描いている部分には、大阪出身でもある著者自身が反映されているのかな?とか【大阪南部の史実ネタ】にもニヤリとしながら思いつつ。後半のヤクザ者になれど、不器用な好人物である熊太郎が、何とも必然的な流れによってスピード上げて破滅に向かっていく姿には、嗚呼。と【ぐいぐい引き込まれて】あっという間に読み終えてしまいました。

しかし、褒め言葉ですが。川上未映子もそうですが、ミュージシャンもされている方特有なのでしょうか?全般にわたるリズミカルな文体、センスの良い自由自在な言葉運びにはズルいというか、ある種の嫉妬すら抱いてしまいますね。本当に素晴らしい。

神話的なテーマを持つ作品を探す誰かに、そして【大阪南部に縁のある】全ての人にオススメ。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.269
(5pt)

神話的なテーマを持つ作品を探す誰かへ

"なんらの言葉もなかった。なんらの思いもなかった。なにひとつ出てこなかった。ただ涙があふれるばかりだった。熊太郎の口から息のような声が洩れた。『あかんかった』"2005年に発刊され、明治に起きた【河内十人斬り】を題材に人はなぜ人を殺すのか?を描く本書はユーモアと絶望のバランス感が素晴らしい‬。

個人的には著者の本は映画化もされた『パンク侍、斬られて候』に続く2冊目として、朝日新聞による『平成の30冊』の3位にランクインしていた事をキッカケに手にとったのですが。

【実際の事件であり、河内音頭のスタンダードナンバーとしても今に伝わっている】といった前情報を全く知らないで読み進めていたこともあるのか。前半の熊太郎の成長を描いている部分には、大阪出身でもある著者自身が反映されているのかな?とか【大阪南部の史実ネタ】にもニヤリとしながら思いつつ。後半のヤクザ者になれど、不器用な好人物である熊太郎が、何とも必然的な流れによってスピード上げて破滅に向かっていく姿には、嗚呼。と【ぐいぐい引き込まれて】あっという間に読み終えてしまいました。

しかし、褒め言葉ですが。川上未映子もそうですが、ミュージシャンもされている方特有なのでしょうか?全般にわたるリズミカルな文体、センスの良い自由自在な言葉運びにはズルいというか、ある種の嫉妬すら抱いてしまいますね。本当に素晴らしい。

神話的なテーマを持つ作品を探す誰かに、そして【大阪南部に縁のある】全ての人にオススメ。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.268
(4pt)

寝転んで読むには重い

難解な語句や読み仮名を忘れてしまう地名などは時折ありますが、読みやすくユーモアのある文章で、
三人称や一人称が頻繁に切り替わって読者を厭きさせない工夫もあり、非常に読みやすい文体でした。
河内弁に関しても自分には関西弁すら馴染みがないのでどうかなと思っていましたが、わりと抵抗なく読めました。

物語としては序盤に動きが少なくどうにも退屈で、まだ後何百ページもある、と
しょっちゅうページ数を確認してしまい、読み終えることができるか不安でした。
テーマにある思弁的という主人公の心理描写に入ると、同じような思考の繰り返しなので
またかと思って読むのが億劫に感じることが終盤まで多々ありました。

引き込まれ始めたのは中盤あたりのおっさんとの盆踊りからで、
のりのりで踊るふざけた光景がありありと目に浮かび、思わず噴き出してしまいました。
好きな娘のことを考えて枕に顔を埋めて足をバタバタするシーンなど、おかしな描写に度々笑ってしまいます。
物語が動き始めるととてもおもしろいです。
ですがいつか読み返したいかというとそれほどでもなく、自分的には一回で満足でした。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.267
(4pt)

寝転んで読むには重い

難解な語句や読み仮名を忘れてしまう地名などは時折ありますが、読みやすくユーモアのある文章で、
三人称や一人称が頻繁に切り替わって読者を厭きさせない工夫もあり、非常に読みやすい文体でした。
河内弁に関しても自分には関西弁すら馴染みがないのでどうかなと思っていましたが、わりと抵抗なく読めました。

物語としては序盤に動きが少なくどうにも退屈で、まだ後何百ページもある、と
しょっちゅうページ数を確認してしまい、読み終えることができるか不安でした。
テーマにある思弁的という主人公の心理描写に入ると、同じような思考の繰り返しなので
またかと思って読むのが億劫に感じることが終盤まで多々ありました。

引き込まれ始めたのは中盤あたりのおっさんとの盆踊りからで、
のりのりで踊るふざけた光景がありありと目に浮かび、思わず噴き出してしまいました。
好きな娘のことを考えて枕に顔を埋めて足をバタバタするシーンなど、おかしな描写に度々笑ってしまいます。
物語が動き始めるととてもおもしろいです。
ですがいつか読み返したいかというとそれほどでもなく、自分的には一回で満足でした。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.266
(4pt)

感情と言葉の狭間に酔ってしまう

感情をリアルにエゲツなく表現されている文章に没頭させられる、人が人を殺す事がなんら特別な事ではなく、自分自身にも主人公の様に感情と言葉の間に嘘をついている間に自分を傷つける結果に陥ってしまった経験を幾度となく経験している。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.265
(4pt)

感情と言葉の狭間に酔ってしまう

感情をリアルにエゲツなく表現されている文章に没頭させられる、人が人を殺す事がなんら特別な事ではなく、自分自身にも主人公の様に感情と言葉の間に嘘をついている間に自分を傷つける結果に陥ってしまった経験を幾度となく経験している。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.264
(4pt)

すごい

ラスト近くまでは主人公はしょうもないけど軽快で面白かったのに、終盤で一気に現実にあった犯罪事件と帳尻を合わせてくるので、調子が狂うというか齟齬が激しい気がします。読後、私も胸を撃ち抜かれたようにもなります。
読み終わった後の勢いでは非常な名作だ、と思ったり、しばらくするといややっぱりこれはないだろうと思ったり。
それ位、心の中の色々な部分をつつきまわしてくれる物語だと思います。どう説明すればいいかよくわからないけど、すごい。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.263
(4pt)

すごい

ラスト近くまでは主人公はしょうもないけど軽快で面白かったのに、終盤で一気に現実にあった犯罪事件と帳尻を合わせてくるので、調子が狂うというか齟齬が激しい気がします。読後、私も胸を撃ち抜かれたようにもなります。
読み終わった後の勢いでは非常な名作だ、と思ったり、しばらくするといややっぱりこれはないだろうと思ったり。
それ位、心の中の色々な部分をつつきまわしてくれる物語だと思います。どう説明すればいいかよくわからないけど、すごい。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.262
(5pt)

This is the 文学

科学が数字や法則を用いてこの世界の仕組みを解き明かす学問であるなら、文学は文字をもって物語世界を構築し、この世界の真理を顕らかにしていく学問であり、この小説『告白』は紛れもなく文学だ。
中盤過ぎまではエンターテインメントとして非常に楽しく読めるのだが、終盤は一気に文学性が加速し、ラスト・シーンが激しく胸に突き刺さって読了後しばし呆然となる。

不器用で自意識過剰な熊やんに共感する読者は多いはずだ。そして面白おかしく読み進ませて親近感を持たせた挙句に突き落とす作者はかなりえげつない。だがそれは作者ですら辛かったらしく、最後は「3行書くごとにそのへんにある本を手にして読んで」いたという(※)。
私も終盤はとにかく読み進めるのが辛かった。性根は善人なのにコミュニケーションの下手な主人公熊太郎に自分を投影して悲しかった。弟分の弥五郎も男前で義理堅くいいやつだからこそ、愚かな熊太郎を無邪気に慕う姿がもどかしい。
他の人々は脊髄反射的に会話を楽しんでいるのに、熊太郎は思弁してからでないと話せない。話しても共感は得られない。
社交性を欠く熊太郎は現実よりも、他者の上に自分で作った幻を見てそれを信じた。善や正義や神秘を信じた。そうした幻は多かれ少なかれ誰でも抱く。弥五郎が熊太郎の上に見ていた理想の兄貴像も同じものだったろう。普通は現実と幻になんとか折り合いをつけて生きていくが、熊太郎にはそれが全然出来ない。

他者とのコミュニケーションに断絶を感じ続けた彼が最後に行った告白に意味はあったのか。
その告白後もまだなお自己の内面を見つめて言葉を捜した彼が見たもの、作者がここまで彼を追い詰めて見せた風景こそが、この世界の真理の一面であると思う。

だがしかし、正直打ちのめされてしんどい。作者の描く熊太郎弥五郎が好きだ。彼らに幸せになってほしいが、このラストには妙に納得できてしまう。
多分読者の多くがこうしたやりきれなさを痛切に感じ、世界の不条理を嘆き、熊太郎弥五郎が胸のどこかに生き続けるのだと思う。この作品に出会えてよかった。
※「作家の読書道」http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi52.html
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.261
(5pt)

This is the 文学

科学が数字や法則を用いてこの世界の仕組みを解き明かす学問であるなら、文学は文字をもって物語世界を構築し、この世界の真理を顕らかにしていく学問であり、この小説『告白』は紛れもなく文学だ。
中盤過ぎまではエンターテインメントとして非常に楽しく読めるのだが、終盤は一気に文学性が加速し、ラスト・シーンが激しく胸に突き刺さって読了後しばし呆然となる。

不器用で自意識過剰な熊やんに共感する読者は多いはずだ。そして面白おかしく読み進ませて親近感を持たせた挙句に突き落とす作者はかなりえげつない。だがそれは作者ですら辛かったらしく、最後は「3行書くごとにそのへんにある本を手にして読んで」いたという(※)。
私も終盤はとにかく読み進めるのが辛かった。性根は善人なのにコミュニケーションの下手な主人公熊太郎に自分を投影して悲しかった。弟分の弥五郎も男前で義理堅くいいやつだからこそ、愚かな熊太郎を無邪気に慕う姿がもどかしい。
他の人々は脊髄反射的に会話を楽しんでいるのに、熊太郎は思弁してからでないと話せない。話しても共感は得られない。
社交性を欠く熊太郎は現実よりも、他者の上に自分で作った幻を見てそれを信じた。善や正義や神秘を信じた。そうした幻は多かれ少なかれ誰でも抱く。弥五郎が熊太郎の上に見ていた理想の兄貴像も同じものだったろう。普通は現実と幻になんとか折り合いをつけて生きていくが、熊太郎にはそれが全然出来ない。

他者とのコミュニケーションに断絶を感じ続けた彼が最後に行った告白に意味はあったのか。
その告白後もまだなお自己の内面を見つめて言葉を捜した彼が見たもの、作者がここまで彼を追い詰めて見せた風景こそが、この世界の真理の一面であると思う。

だがしかし、正直打ちのめされてしんどい。作者の描く熊太郎弥五郎が好きだ。彼らに幸せになってほしいが、このラストには妙に納得できてしまう。
多分読者の多くがこうしたやりきれなさを痛切に感じ、世界の不条理を嘆き、熊太郎弥五郎が胸のどこかに生き続けるのだと思う。この作品に出会えてよかった。
※「作家の読書道」http://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi52.html
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.260
(4pt)

告白

最近の小説はほとんど読んでいませんが、新聞の紹介記事で読みました。
章立てがないので、切りなく読ま根がなりません。でも、河内弁のテンポで終わりまで読みました。
読了後、昔読んだ、今東光の河内風俗を描いたもののほうがよかった、と思いました。年齢のせいですね。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.259
(4pt)

告白

最近の小説はほとんど読んでいませんが、新聞の紹介記事で読みました。
章立てがないので、切りなく読ま根がなりません。でも、河内弁のテンポで終わりまで読みました。
読了後、昔読んだ、今東光の河内風俗を描いたもののほうがよかった、と思いました。年齢のせいですね。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.258
(4pt)

朗読

町田康さんが読み手の告白を聴きたいです
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.257
(4pt)

朗読

町田康さんが読み手の告白を聴きたいです
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.256
(5pt)

ごくごく平凡な人間の内面の内面を暴いた先に見えたものは。

時代物はなんとなく敬遠してきたのですが、なぜもっと早く読まなかったのかと後悔するほどの大名著。これは犯罪奇譚などではない、これほどまでに、私たちを含めた「ごくごく平凡な人間の自意識の中の中」までを描き切った作品がほかにあるだろうか。最後は嗚咽が止まらなかった。傑作。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.255
(5pt)

ごくごく平凡な人間の内面の内面を暴いた先に見えたものは。

時代物はなんとなく敬遠してきたのですが、なぜもっと早く読まなかったのかと後悔するほどの大名著。これは犯罪奇譚などではない、これほどまでに、私たちを含めた「ごくごく平凡な人間の自意識の中の中」までを描き切った作品がほかにあるだろうか。最後は嗚咽が止まらなかった。傑作。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.254
(5pt)

町田康の世界に陶酔!

いつもの町田氏の迷走する文脈は だんだんと引き込まれて いつのまにか町田康の世界に陶酔し楽しい時間をいただきました。熊太郎と弥五郎が実存し河内音頭になっている事も読み終えてから分かった次第で衝撃的でした。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.253
(5pt)

町田康の世界に陶酔!

いつもの町田氏の迷走する文脈は だんだんと引き込まれて いつのまにか町田康の世界に陶酔し楽しい時間をいただきました。熊太郎と弥五郎が実存し河内音頭になっている事も読み終えてから分かった次第で衝撃的でした。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219
No.252
(1pt)

虚無と渡りあう ― 町田康さんの告白 ―

日本文学史に残る傑作なのはまちがいない。
文学以外に絶対に為し得ない表現を達成している稀なる作品なのだから。
けれど、精神が不安定な人は避けたほうがいい。

そうはない救いのない小説を読むことにはなるから。途中で本を置くことなどできないで。
読売新聞夕刊に連載されたが、中断され、後半が書籍になってはじめて完結したのも納得。
仕事が終わって帰宅して、やれやれと憩いのために読むようなものではない。前半はともかく。

読みはじめ、あれっ、思ったより通俗的なものを書いてるんだなと思った。
『くっすん大黒』しか読んだことなかったので。志はもっと高いはずじゃあと。
とにかく、物語の仕掛けを活用して、読者のエモーションをアップダウンさせまくり、
それでもって、「感動した」って言わせようとしてんだろうな、と。
後半、どんどん、鬱ぽくさせてるのでさえ、「嫌ミス」的なダークな感情を味あわせるのが目的だなと。

たぶん、新聞に載せられなかったあたりから、読み続けるのが恐ろしくて、わざわざ周りに人が一杯いる場に出向いて読み続けた。
物語りのエンジンは強烈なんで、どんなに恐ろしい破滅を見せられることになるか分かっていても、
降りることはできなかったから。
けど、最後までなんとか読みっ切って、予想していたよりもっともっと恐ろしい小説なんだと分かった。
まぎれもない文学作品だと。
「生きていることの真実」を本当に伝えよとしてるんだと。容赦なく。
決して、誰も決して開けたくはない地獄の釜の蓋をあけて。

「人はなぜ人を殺すのか」というフレーズがやたらついてまわるが、たぶん、うまく言えてない。
そんな、ほとんどの人にとってはどうでもいいテーマを描いてるわけではないんじゃないと。
「人が人を殺すに至る絶望・虚無の深さ、それにに渡りあう言葉はあるか」が正確なんじゃないかと思える。
私たちみんなが、日々、虚無から逃れようと右往左往している。それは「危機」としてはじめて自覚される。
「危機」に襲われるないことが約束された人生などどこにもない。だから、切実なテーマだ、誰にしも。

熊太郎の余りに深い虚無が生まれるプロセスを観察し、細大漏らさず、執拗に、恐ろしいほどのページを費やし、徹底的に言葉を与える。
町田さんが書こうとしているのがエンターテインメントではなく文学だから。それが文学の仕事だと町田さんは考えるから。
現実の犯罪記録をよんでも、「かっとした」とかまったく犯罪者の内面をなんにも伝えることができない言葉や、あるいは、なにか象徴的な言葉に回収させてしまうやり方ではなく。
また、映画なんかなら、犯罪の激烈さの描写に置き換えてみたり(肝心の十人殺しの描写は徹底的に圧縮され、サービスとしてのカタルシスはない)、あるいは虚無を象徴するシークエンスにするしかないものに言葉を与えようとする。

多分、町田さんが、絶望・虚無に言葉をあたえようとしたのは、
言葉こそが人間最大の武器であり、この武器で「虚無を檻に入れる」ことに成功すれば、
それこそが問い掛けへの答となり、救済は見つかるはずと考えたからではないかなと。

しかし、すさまじいまでの戦いを続けたのちに、熊太郎(=町田さん)はこう「告白」する。

「まだ、ほんまのこと言うてへん気がする」
 熊太郎は思った。
 俺はこの期に及んでまだ嘘を言っている。・・・・
 俺は生きている間に神さんに向かって本当のことを言って死にたい、ただそれだけなのだ。・・・・
 そう思った熊太郎はもう一度引き金に足指をかけ、本当の本当の本当のところの自分の思いを自分の奥底の探った。
 曠野であった。
 なんらの言葉もなかった。
 なんらの思いもなかった。
 なにひとつ出てこなかった。
 ただ涙があふれるばかりだった。
 熊太郎の口から息のような声が洩れた。
 「あかんかった」
 銃声が谺した。

十人の人間を殺すしかなった人間の絶望・虚無に、徹底的に肉薄した。
けれど、その虚無の深淵はなお底を顕わそうとしなかったのだ。
救済は得られなかった。
たぶん、これが『告白』というタイトルの意味だ。

傑作であるとは、他人事の記録をおもしろおかしく無責任に(=批評的に)読むに終わらないということだ。
つまり、読者は、熊太郎の絶望・虚無を追体験することになる。
人間が最も目にしたくないもの、自分の中心にポッカリとあいている虚無に正対することになる。
だから、星ひとつしかつけない人たちにわたしはむしろ共感する。
こんな経験、嫌悪感しかないのが素直な反応だと思えるからだ。
それがこの本にたくさんのレヴューがついている同じ理由じゃないかなあと。
重量感のある読後感を担うのに、なにかが要るんじゃないかなあと。

町田康という作家は恐るべき作家だ。
その軽妙な文体が達成するのは、凶暴といえるほどの倫理性だから。
狂おしいまでの「自由」への希求が、世界を燃え尽くしてしまうから。
偽物の希望を語らず、本当の絶望を語るから。
真の改革者が持ちえる資質、野蛮さを溢れさせているから。
告白 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 告白 (中公文庫)より
4122049695
No.251
(1pt)

虚無と渡りあう ― 町田康さんの告白 ―

日本文学史に残る傑作なのはまちがいない。
文学以外に絶対に為し得ない表現を達成している稀なる作品なのだから。
けれど、精神が不安定な人は避けたほうがいい。

そうはない救いのない小説を読むことにはなるから。途中で本を置くことなどできないで。
読売新聞夕刊に連載されたが、中断され、後半が書籍になってはじめて完結したのも納得。
仕事が終わって帰宅して、やれやれと憩いのために読むようなものではない。前半はともかく。

読みはじめ、あれっ、思ったより通俗的なものを書いてるんだなと思った。
『くっすん大黒』しか読んだことなかったので。志はもっと高いはずじゃあと。
とにかく、物語の仕掛けを活用して、読者のエモーションをアップダウンさせまくり、
それでもって、「感動した」って言わせようとしてんだろうな、と。
後半、どんどん、鬱ぽくさせてるのでさえ、「嫌ミス」的なダークな感情を味あわせるのが目的だなと。

たぶん、新聞に載せられなかったあたりから、読み続けるのが恐ろしくて、わざわざ周りに人が一杯いる場に出向いて読み続けた。
物語りのエンジンは強烈なんで、どんなに恐ろしい破滅を見せられることになるか分かっていても、
降りることはできなかったから。
けど、最後までなんとか読みっ切って、予想していたよりもっともっと恐ろしい小説なんだと分かった。
まぎれもない文学作品だと。
「生きていることの真実」を本当に伝えよとしてるんだと。容赦なく。
決して、誰も決して開けたくはない地獄の釜の蓋をあけて。

「人はなぜ人を殺すのか」というフレーズがやたらついてまわるが、たぶん、うまく言えてない。
そんな、ほとんどの人にとってはどうでもいいテーマを描いてるわけではないんじゃないと。
「人が人を殺すに至る絶望・虚無の深さ、それにに渡りあう言葉はあるか」が正確なんじゃないかと思える。
私たちみんなが、日々、虚無から逃れようと右往左往している。それは「危機」としてはじめて自覚される。
「危機」に襲われるないことが約束された人生などどこにもない。だから、切実なテーマだ、誰にしも。

熊太郎の余りに深い虚無が生まれるプロセスを観察し、細大漏らさず、執拗に、恐ろしいほどのページを費やし、徹底的に言葉を与える。
町田さんが書こうとしているのがエンターテインメントではなく文学だから。それが文学の仕事だと町田さんは考えるから。
現実の犯罪記録をよんでも、「かっとした」とかまったく犯罪者の内面をなんにも伝えることができない言葉や、あるいは、なにか象徴的な言葉に回収させてしまうやり方ではなく。
また、映画なんかなら、犯罪の激烈さの描写に置き換えてみたり(肝心の十人殺しの描写は徹底的に圧縮され、サービスとしてのカタルシスはない)、あるいは虚無を象徴するシークエンスにするしかないものに言葉を与えようとする。

多分、町田さんが、絶望・虚無に言葉をあたえようとしたのは、
言葉こそが人間最大の武器であり、この武器で「虚無を檻に入れる」ことに成功すれば、
それこそが問い掛けへの答となり、救済は見つかるはずと考えたからではないかなと。

しかし、すさまじいまでの戦いを続けたのちに、熊太郎(=町田さん)はこう「告白」する。

「まだ、ほんまのこと言うてへん気がする」
 熊太郎は思った。
 俺はこの期に及んでまだ嘘を言っている。・・・・
 俺は生きている間に神さんに向かって本当のことを言って死にたい、ただそれだけなのだ。・・・・
 そう思った熊太郎はもう一度引き金に足指をかけ、本当の本当の本当のところの自分の思いを自分の奥底の探った。
 曠野であった。
 なんらの言葉もなかった。
 なんらの思いもなかった。
 なにひとつ出てこなかった。
 ただ涙があふれるばかりだった。
 熊太郎の口から息のような声が洩れた。
 「あかんかった」
 銃声が谺した。

十人の人間を殺すしかなった人間の絶望・虚無に、徹底的に肉薄した。
けれど、その虚無の深淵はなお底を顕わそうとしなかったのだ。
救済は得られなかった。
たぶん、これが『告白』というタイトルの意味だ。

傑作であるとは、他人事の記録をおもしろおかしく無責任に(=批評的に)読むに終わらないということだ。
つまり、読者は、熊太郎の絶望・虚無を追体験することになる。
人間が最も目にしたくないもの、自分の中心にポッカリとあいている虚無に正対することになる。
だから、星ひとつしかつけない人たちにわたしはむしろ共感する。
こんな経験、嫌悪感しかないのが素直な反応だと思えるからだ。
それがこの本にたくさんのレヴューがついている同じ理由じゃないかなあと。
重量感のある読後感を担うのに、なにかが要るんじゃないかなあと。

町田康という作家は恐るべき作家だ。
その軽妙な文体が達成するのは、凶暴といえるほどの倫理性だから。
狂おしいまでの「自由」への希求が、世界を燃え尽くしてしまうから。
偽物の希望を語らず、本当の絶望を語るから。
真の改革者が持ちえる資質、野蛮さを溢れさせているから。
告白 Amazon書評・レビュー: 告白より
4120036219