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(短編集)
岬にて: 乃南アサ短編傑作選
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岬にて: 乃南アサ短編傑作選の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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この作者の数多い既刊の短編集から何本かの作品を引っ張り出し、それに新作の短編1話だけを加え、 それを「新たな作品集」として刊行したものの1冊。林真理子然り、すでに単行本収録された短編を、 さらに別の単行本に収録して売る……人気のある作家と下品な出版社が手を組んだ「強者の商法」だ。 林真理子は新作を加えることもなかったはずで、だとしたら乃南アサのほうが少しはマシか。 汚い売り方に関して意見を述べると、自分を真摯で優しいと思い込んでいる人たちがAmazon事務局に 通報して削除されちゃうので、ともあれ内容について。表題作であり唯一の新作の『岬にて』、これは まったく酷い! 既婚のキャリアウーマンが仕事で四国の宇和島を訪れ、そこで生まれた元彼のことを 切なく思い出し、葛藤し、納得し、前向きになる話なのだが、宇和島の観光案内・風土紹介的な記述が さしたる工夫もなく続き、そこに素人が考えたレベルの薄ーい恋バナを混ぜ込んだだけ。乃南さんって こんなにダメ作家だったかな……と戦慄が走った。 収録されているほかの短編と比べてみれば、その質の差は歴然。職人の男の恋心が秘かで心に染み入る 『鈍色の春』や『泥眼』は何度も読み返したくなるし、『悪魔の羽根』は展開こそ単純だが、主人公が 追い込まれる描写に目が離せない。『愛情弁当』の厭らしさは、乃南さんのいい意味での性格の悪さが 実によく出ている。全般に既刊の短編集『行きつ、戻りつ』から引っ張ってきたやつは今イチかな…… そもそもあの本は「短編小説集」じゃなく「紀行文の寄せ集め」って感じだし。『湯呑み茶碗』だけは アホで軽薄な主婦の偽善たらしさが制裁された上で温かい内容がよかったけど。 そう、表題作『岬にて』は、もろに『行きつ、戻りつ』に収録されたうちの、つまんない話のテイスト。 大して情感のない紀行文にチャカチャカッと人間ドラマ(笑)を加味しただけ。もともと乃南さんって 人間の醜悪さを切れ味よく表現して、うんざりさせながら楽しませるのが真骨頂の人だと思う。情感で 勝負しようとすると内容がないよーになる。というよりも……この1遍だけが初収録だから当然だけど、 ほかの短編よりも新しいのね。最近のやつ。『鈍色の春』や『泥眼』が収録された『氷雨心中』は確か 2000年代前半の作品集。表題作は3年前ぐらい……乃南さん、才能が経年劣化してるんじゃ…… もしもこの最悪の懸念が当たっていれば。出版社側が「この作家さんはもう良作は描けなくなってきた」 と判断し、ゆえにこのような「強者の商法」による(全盛期の財産を切り売りした的な)作品集を刊行 したんじゃないか……という想像すらしてしまう。はっきり言って『岬にて』レベルの短編が5、6篇 収録された短編集が刊行されたら、すべて初録作品でも絶対に買って損すると思う。 ただ、これと同じ方式で刊行された短編集『すずの爪あと』は、その表題作=初収録作品も面白かった。 ネコちゃんが可愛いだけで大した話じゃないけど。だからまだ大丈夫かな。 ついでに言うと、近年の短編集『それは秘密の』はとても気色悪い話が多かった。甘ったるい色欲話が 絶望的にヘタクソな作家。前述したが『鈍色の春』の主人公の恋心など、男の硬質な恋愛感情の描写は あんなに芸術的なのに。作風の幅が広いと言われる人だけど、駄作でも書けば「守備範囲」になるのが 何とも……ご自分のお得意な分野で楽しませていただきたいんですよね。作品の質に差があり過ぎる。 | ||||
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