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万延元年のフットボール
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【この小説が収録されている参考書籍】
万延元年のフットボールの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.16pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全45件 41~45 3/3ページ
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凄まじい作品だ。 作品では「これは小説である」とのメディア性が固定されるのみで、それ以外のあらゆる事象が休まることなく胎動する。そこでの流動性とは歴史さえもが逃れることはできない。 現実と過去との奇妙な一致は、一見、歴史の側からの一方的な到来の様でありながら、実は、現実側の過去への強姦であることが判明する。 そうして現実と過去は同一の相に並べられる。 しかし、果たして、その受胎によってひきおこされた胎動が、結果として好ましい成長へとつながるとはとは限らない。そこには奇形した世界への道程が開けることもある。 恐ろしいのは、各主体ごとの善悪の判断が全く停止されていて、自らが生み出された世界が全くの統御不能の状態にある点である。 一個人、対、自らが創り出したその世界、との熾烈な戦いの間では、二極の間の圧倒的な力の不均衡さに、個人は逃げ出すより他はない。現実逃避という放棄の後に現れるであろう自立の精神は、極めて微小にほのめかされるにとどめられ、そこには超然として有るべき著者でさえも判断を保留せざるを得ない。 しかし、まさに、現実の世界とはそのような挫折の精神史として、展開してゆく。そのような辛い現実をわれわれが生きているからこそ、この小説がこれほどまでに大きな衝撃を与えるのだ。 | ||||
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この作品の本当の凄さを感じたのは、最後の章を読んだ時だった。 それまでは、重いし暗いし、特に結末よりちょっと前あたりの惨憺たる挫折と悲しい出来事に私は胸を塞がれていたのだけれど、 意外な真実が明らかになったラストは、ものすごい勢いで、再生に向かって強く打ち出されている。 そのすごさに、本当に、感銘を受けた。 日本の、なかなか語れることはない、しかし本当は庶民にとってもっとも切実に大切な、地方の伝承・周縁の物語が、見事に語りなおされ現代に再生されている。 この小説を読んで、自分の住んでる場所の歴史や伝承、一揆の歴史をもっと調べたいと思った。 庶民の抵抗の歴史は、一見挫折したり転向したり、惨憺たるものに見えるかもしれないけれど、「identityの光」、本当は一貫した崇高な志だったということが、歴史を超えて我々に注いで、無気力と惰性に蝕まれた生命を蘇らせることがあるし、後世の人々に生きてくることがある。 この小説は、それを実に深く切なく描ききった。 この小説のエネルギーは、たしかに、他の小説ではめったに味わえないものと思った。 日本の民主主義の、西欧から輸入しただけではない、たしかな土俗的な、根が、この小説にはある。 その問題性も、さまざまに描きながらも。 | ||||
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深い山間の村で、自分の立場を決めかねる主人公。 それを叱責する妻。 それらが複雑な人間関係の中で重層的に描かれた力作。 ねじれ、よじれ、絡まりあい混沌した世界。 テーマ性の強い文章が、これでもかとばかりに詠われ、 好き嫌いは分かれるタイプだとおもうが、 この作品のパワーと完成度は世界レベルで戦える。 著者の長編の中で「個人的な体験」「洪水は我が魂・・」に匹敵。 | ||||
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この小説をはじめて読んだ時の衝撃は生涯忘れられません。 読破をきっかけに「表現すること」について意識的な生活を送るようになりました。 人間は自分の感情や気分を表現せずには生きることが出来ない、 という当たり前のことを心底思い知らされる契機も、この小説が引き受けてくれました。 僕としては、この小説を読み終えた瞬間に、僕自身、生後初めて物心がついたんです、といいたい、 そんな思い入れたっぷりの推薦文です。 | ||||
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失意の底から脱出すべく旅立った主人公とその妻。 内に地獄を抱え込んだ弟。 すべての登場人物が自分と自分を取り巻く環境に矛盾と閉塞感を感じながら、なすすべなし。 そんな中、変化を予感させる事件が起こる。 歴史になぞらえたストーリー展開にも引き込まれたが、圧巻は描写のすばらしさ。 クライマックスシーンでは発砲される銃の音が聞こえてくるほどだった。 | ||||
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