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競売ナンバー49の叫び
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【この小説が収録されている参考書籍】
競売ナンバー49の叫びの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全28件 21~28 2/2ページ
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アメリカ現代文学の重鎮にして、難解・寡作で知られるトマス・ピンチョンの代表作の一つ。 ピンチョンの作品の中では、比較的読みやすく(とはいっても普通の小説を想像してかかると その衒学的で癖の強い文体にびっくりする)、大衆性をあわせもった作品ではないか。 ピンチョン作品は短編集しか文庫になってなかったが、本書を文庫にするとは、さすがちくま文庫! 内容は、アメリカの平凡な主婦が、突然降ってわいた遺産相続の話を通じて、アメリカ史の闇に暗躍する 陰の郵便組織の存在をかいま見ていく、というもの。その組織が実在のものであるか、主婦の妄想であるか は最後まで明かされず、すべてが明きらかになるであろう競売のシーンの絶妙なタイミングで小説は終わる。 ここで読者は妄想と現実崩壊の入り混じった不思議な読後感を味わうことになるであろう。 本作では、架空の郵便組織、という、比較的平和で俗っぽい組織を妄想の題材に仮託しているが、 このように、陰の組織が実社会を支配しているという妄想感覚、現代人には共通するものなのではないか。 古くはユダヤ議定書などから始まる歴史上の陰謀論、はたまたさいきんよく耳にする集団ストーカー、など ありとあらゆる社会レベルでこの感覚が見られる。これをただのスキゾ的被害妄想、と言い切ってしまうのは たやすいが、本作はまさにその感覚そのものをテーマにして、現代人の特異な心性を描ききってみせた。 この心性がテーマゆえ陰謀は存在するのか、しないのか、答えを出していない本作であるが、実のところ ピンチョンはどう考えていたのだろうか。 実態のとらえづらい現代的な心性をテーマを一つのストーリーにした傑作として、本書には★5を献上したい。 この調子で、他のピンチョン作品の文庫化も望みたいところ。 | ||||
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難解である。 そして、思わせぶりな文章はたくさんある。 切手を偽造する秘密結社の存在。 自殺できなかった人たちがその秘密結社を使って ネットワークを張っているという展開。 LSDを服用する夫の見る幻覚とは。 そういう様々な思わせぶりな文章に彩らせて語られる、 なんとなく深いかもしれない小説である。 深読みするのにはうってつけの作品かもしれない。 しかし、おれははっきりしたオチがなければ、雰囲気だけでは高評価はしない。 この物語にはっきりしたオチはない。 ゆえに、それほど読む価値のない小説だと思う。 | ||||
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難解というのももちろんありますが、とにかく長いピンチョンの著作にあって、例外的な分量と取っつきやすさを持って鳴る「競売ナンバー49の叫び」です。詳細な「解注」が付されていることもあって、ピンチョン入門にうってつけだと思います。もう20数年前にかのサンリオ文庫で出されたのを読んだのが最初で、当時買ったその文庫には、「解注」で触れられている箇所にマーカーで線が付けられており、それを目にする度に苦戦した大学時代の記憶がよみがえります。ところで、今回、この文庫化で初めて本書を手にされる方は、一見とかく詳細に過ぎるように見える「解注」に面食らうかもしれませんが、実は「解注」は本作の基調や読み方を読者に知らしめ、ピンチョンの世界にソフト・ランディングしてもらおうとの訳者、苦肉の一策であって、後半になるほどに量質ともに収まってきますので、100頁あたりまでは鳴らぬ堪忍で頑張りましょう。僕個人は、まず一度栞を二つ使って本文と「解注」を行きつ戻りつもたもた読んだ後、間を置かずもう一度読むようにしています。二度目は取るに足らない固有名詞の説明などが頭に入っていますのでほとんど「解注」を確かめることもなく、この作品の有する感傷的な部分まで愉しむことができるように思います。また、今回の文庫化はそのサンリオからのものではなく、その後ちくまから出された「殺すも生かすもウィーンでは」を収録した単行本の文庫化であり、訳者によるあとがきでは、サンリオ文庫閉鎖の余波で原稿料が出なかった等の、およそピンチョンの壮大な作品世界に似つかわしくない後日談を知ることもでき笑えるのですが、これもまた、意外に下世話なピンチョンっぽいと言えば言えるかもと変に納得させられもしたのでした。 | ||||
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トマス・ピンチョンの作品の中で「一番読みやすい」小説がついに文庫化。1966年の作品。 一番読みやすいと言っても、日本でも人気な「60年代のアメリカの作家」(例えばカポーティ、ヴォネガット、サリンジャー)などと比べるとかなり難しめですので注意。 一般人向けと言うより文学ヲタ向けの作品ではあります。 しかし「非常に難解な文学作品」と「一般人でも読める文学作品」のちょうど中間的な小説でありますので、なんというか「橋渡し的」役割がある小説だと思います。 注釈とかあとがきでページ数が割り増しされてますが、本編は「250ページ」しかありませんから、「古典的な文学作品」をある程度読んだ人はこれに挑戦すると良いんじゃないでしょうか?。 話の内容はある人の死がきっかけで主人公の前に謎が立ちあらわれ、話が進むにつれて色々な伏線が回収され収束していくという形式の小説。 まるで迷路の中をさまよっているような・・・あてどもなく漂い、迷い、流れていくような・・・。 暗喩がたっぷり。2,3回は読みなおしたい。 ちなみに2010年6月から新潮社でトマスピンチョンの全集が続々と出版されますので、この作品の新訳も来年ぐらい(?)に出版されると思われます。 ハードカバー版でしょうから高いのはイヤって方は、このちくま文庫版がおすすめ。 新訳好きやマニアの方は新潮社版がおすすめであります。 | ||||
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難解というのももちろんありますが、とにかく長いピンチョンの著作にあって、例外的な分量と取っつきやすさを持って鳴る「競売ナンバー49の叫び」です。表紙に作中重要な意味を成すバロの絵画を用いたり、詳細な「解注」が付されていたりと、ピンチョン入門にうってつけだと思います。もう20数年前にこのサンリオ文庫で出されたのを読んだのが最初で、当時買った文庫には、「解注」で触れられている箇所にマーカーで線が付けられており、それを目にする度に苦戦した大学時代の記憶がよみがえります。ところで、この回初めて本書を手にされる方は、一見とかく詳細に過ぎるように見える「解注」に面食らうかもしれませんが、実は「解注」は本作の基調や読み方を読者に知らしめ、ピンチョンの世界にソフト・ランディングしてもらおうとの訳者、苦肉の一策であって、後半になるほどに質量ともに収まってきますので、100頁あたりまでは鳴らぬ堪忍で頑張りましょう。僕個人は、まず一度栞を二つ使って本文と「解注」を行きつ戻りつもたもた読んだ後、間を置かずもう一度読むようにしています。二度目は取るに足らない固有名詞の説明などが頭に入っていますのでほとんど「解注」を確かめる必要もなく、この作品の有する感傷的な部分まで愉しむことができるように思います。 | ||||
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本書はThomas Pynchonの小説二点の翻訳、"The Crying of Lot 49 "および "Mortality and Mercy in Vienna"を収録。 表題作、『競売ナンバー49の叫び』。 「ある夏の日の午後」のこと、「どの日もどの日もまずは似たものばかり」、そんな平凡な ヒロイン、エディパ・マースのもとに一通の手紙が舞い込むところからすべてははじまる。 それは大富豪ピアス・インヴェラリティの遺言執行人に彼女が選出されたことを告げる手紙、 そしてそれは彼女を夢幻とも現ともつかぬ波乱の日々へと誘う手紙。 テレビの映画放送、観劇した芝居『急使の悲劇』、切手コレクションと秘密の郵便組織―― 全てのものが意味ありげなざわめきを以って彼女にささやきかけてくる。彼女が巻き込まれた 世界は果たして、誰かの手によって周到に仕掛けられたものなのか、それとも歴史の必然の こだまか、あるいは単なる偶然の連なりの中に妄想を見出しているに過ぎないのか。 「ザ・トライステロ」、それは彼女を包囲する何かの謎を明かすに留まらず、「彼女の塔に 幽閉されている状態に終止符を打つ」鍵を握ることばに違いなくて、ところが、このことばを めぐる探求が彼女をさらなる深みへと引きずり込むこととなる。 やがて狂気と正気は境界を失いそんな人間の依って立つ世界の危うさ、セカイの危うさに 肉薄した、実はすぐれて正統派の佳品。 この小説は決して軽やかなエンターテインメントの類ではない。幾度となく執拗に慎重に 読み返され、読み解かれるべき一冊。 | ||||
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ピンチョンを読むことは、読書というより体験だ。 圧倒的な力によって、60年代アメリカが、ぐんぐん異質なものに変容していく。 安っぽいモーテル、ロック、ホームパーティによるお買い物etc.といった既視感のある現実の日常の風景が、LSDの浸透の影に隠された陰謀、ヴィクトリア朝の郵便制度の秘密、フリーメーソンじみた奇妙な暗号に彩られた形成された別の次元にすりかわってしまうのだ。 | ||||
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かつての恋人の遺産を調べる女性主人公が、徐々にアメリカ全土に張り巡らされた、ホモセクシャルや自殺中毒者など非アメリカ的な人々の地下組織を幻視するようになっていく……、という風にストーリーを言葉でまとめられる事自体がピンチョン作品のなかでは稀有な存在です。 中編で、サスペンスフルでもあり、ピンチョン作品の導入には最適の作品。 ピンチョンお得意の、歴史的逸話をベースにした挿話も大変魅力的です。 | ||||
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