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細い赤い糸



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細い赤い糸の評価: 4.43/5点 レビュー 7件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

書き方がハードボイルド。

探偵作家クラブ賞の選考では、山田風太郎が「サスペンスでは第一、
これはその簡潔重厚な文体にもある」と推したのだそうだ。私見では、
簡潔重厚というより、情け容赦のない書き方、という感じがする。
それは他の飛鳥作品、特に長篇ではいずれにも共通する点で、作者は
登場人物たちが可哀そうなくらい、余計なことを書かない、描写しない、
ほとんど非情な書き方という感じ。この本でも、それは最初から最後まで
徹底しているので、結末の、あまりに断崖絶壁な結末を、これでもかと
悲痛に際立たせている。犯人があまりにも可哀相だ。せめて、追ってきた
刑事の一人にくらい、目撃させてやってもよかったのではなかろうか。
それほどに、究極のハードボイルド的ライティングである。
何の救いもない、ちょっと息の付けるエピローグも余韻もない、
いくら何でもこりゃ厳しすぎる。たぶんこれが、飛鳥高が松本清張級に
なれないところなんじゃなかろうか。それでなくとも、毎回毎回、
コンクリートに砂利山に埃を舞い上げるダンプトラック、そんな
灰色の舞台設定に、救いようのないラスト、もちろんそれだって、
飛鳥高の紡ぎ出した人工楽園、アーティフィシャル・パラダイスには
違いないんだが、読み終わった読者は、社会の灰色ミステリから、
現実世界に立ち戻らなくちゃならないわけだから、もう少しその、
橋渡しというか緩衝材というか、そういうものが、物語の最後に
あってもいいんじゃなかろうか?――そんな余計な心配をしてしまうくらい、
飛鳥ミステリは非情である。もちろんサスペンスはあるし、読んでいて
感心するところもあるけれど、書いていて、どこが楽しいのだろうか?
そんなことまで考えてしまうんだな。読み終わっても、つらいんです。

ところで、この文庫版229ページ、犯人を追ってきた刑事が、
女中に不在を聞かされるところ。

「もう一週間位――お葬式が済んでから、いません」

ここで、女中の言った「お葬式」という言葉に、
刑事が誰も反応しないのはおかしい。

「お葬式? 最近どなたか亡くなられたんですか?」

少なくとも、この程度の質問は刑事から出るべきだ。もちろん、
それに対して、女中の答えを律儀に書いてしまうと、数ページ先の
インパクトが失われてしまうので、作者はわざと刑事に喰いつかせ
なかったのだろうが、刑事のこのセリフがあっても、女中にしゃべらせずに
刑事に行動させればいいだけだから、これはちょっと痛い。
あるいはいっそ、「お葬式」という言葉は無かった方がよかった。

それにしてもこの作者は、かなりのウールリッチ・ファンですね。
細い赤い糸 (1977年) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:細い赤い糸 (1977年) (講談社文庫)より
B000J8S6B8

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