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ゲルマニア
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ゲルマニアの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.60pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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フィリップ・カーの ベルリン三部作『砕かれた夜』、『偽りの街』を楽しめた方なら 楽しめると思います。 当時のドイツの雰囲気、ナチスにべったりの人、心の中では反発しつつも皮肉を言う位しかできない人。 『子産み機械』に反発する 女性医師との心理学的な犯人像の推理、アドロン・ホテルなど 共通のキーワードが出てきて ニヤリとさせられます。 主人公の口調もどことなく上記の2作品に似ているかも。 | ||||
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ナチ政権下のベルリン、しかも負けが込んできている大戦末期、頭の上からは連合軍の爆弾がドカドカ落ちてくる中、いつ何時「移送」指示が出るかわからないユダヤ人の元刑事オッペンハイマーと、彼に捜査を依頼したナチの将校、フォーグラー大尉が「協力」しあって捜査に当たるという、異常な舞台設定。 若いSS将校・フォーグラーとベテラン(元)刑事のユダヤ人のオッペンハイマーという、この二人の捻じれた特異なキャラクター設定のほうが、正直、事件の真相より興味をそそられました。でも、もうちょっとフォーグラーのオッペンハイマーに対する内面的変化を書いて欲しかった。 ベルリンに残ったユダヤ人たちの「空襲」と「強制収容所への移送への恐怖」という二重の絶望状況の中の生活の閉塞感は、よく出ています。 ラストは秀逸。ミステリとしては、微妙なところ。ミステリ好きの方では、やや不満かも。私はミステリと言うよりも一種の時代小説として読みました。 ただ、時代設定の都合上、中途半端なところで終わってしまっています。登場人物のような立場の人間が、不本意な死を強いられる時代、この後、どういう運命を辿るのか、気になってしかたありません。ぜひ続編をお願いしたいところなのですが。 | ||||
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時代は1944年5月。舞台は戦時下のベルリン。かつては敏腕刑事だったオッペンハイマーは、ユダヤ人であるためにその職を失っている。彼が収容所送りにならずにすんでいるのは、ひとえに妻リザがアーリア人種だからだ。 ある日、彼はナチス親衛隊のフォーグラー大尉に呼び出され、目下ベルリンで起こっている連続猟奇殺人事件の捜査を託されることになる。ユダヤ人という立場にあるオッペンハイマーには捜査を拒む余地はない。彼が捜査を進める間にも、被害者は次々と数を増していく…。 私が敬愛する翻訳家・酒寄進一氏の手になるドイツミステリーと聞いただけで迷わず手にしました。ネレ・ノイハウス『深い疵』やフォン・シーラッハ『犯罪』といった小説の名翻訳家として知られる氏の手腕は今回もいかんなく発揮され、ドイツのあの苛烈な時代の空気を見事に日本語に移し替えてくれています。 国防軍と親衛隊の確執だの、親衛隊と突撃隊の対立だの、優れたアーリア人を育てる生命の泉だの、ナチスドイツの時代背景が史実に則って細かく描きこまれ、そしてそれが事件の捜査や真相に大きくかかわっていきます。この小説をきっかけにあの時代のドイツの歴史にさらに深く分け入ってみたいという気にさせられます。 そしてなんといっても、ユダヤ人でありながらナチスの捜査当局に協力せざるをえないという、オッペンハイマーが強いられる極度の閉塞感が読者に迫ってきて、息の詰まる読書を強いられます。英軍による空襲下、妻の安否を気遣いながらベルリンの街を奔走する主人公に併走しながらこのミステリーを堪能しました。 この小説は作者ギルバースのデビュー作で、その結末は続編を予感させるものです。 訳者あとがきによれば、すでに続編のタイトルも『オーディンの末裔』と決まっているのだとか。 『ゲルマニア』は1944年6月末で幕を閉じます。史実を顧みると、ドイツ敗戦までまだ1年ほどの歳月があります。オッペンハイマーには果たしてどんな事件が待ち受けているのでしょうか。 | ||||
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ストーリーの舞台は終戦間際で崩壊寸前のドイツ・ベルリン。 女性ばかりを狙った、猟奇的な連続殺人事件が発生します。 元刑事のユダヤ人、オッペンハイマーは、ナチス親衛隊に突然連行され、この事件の解決にあたるよう強制されます。 ナチスの恐怖政治のもと、悲しくも、迫害を受けるユダヤ人が、重大事件の捜査メンバーに徴用されるというのは、非常に理不尽ですが、敗戦間近という極限状況が描かれる本作では、この「理不尽」さが、むしろ魅力だったと思います。 連合国の空襲、爆撃の恐怖にさらされ、自分自身がいつ何時、粉々に吹っ飛ばされてしまうのか、絶望的な極限状況。 それでも、事件捜査を続ける、オッペンハイマーの刑事魂。 彼の本来の意志に反して、ナチスへの服従を強いられる中での彼の活躍ぶりには、強い共感を覚えます。 オッペンハイマーを連行したのはナチス将校、フォーグラーです。 フォーグラーは、オッペンハイマーに対して、生かすも殺すも可能な、圧倒的に強い立場にあります。 このフォーグラーとオッペンハイマーとの関係は従属的なようでありながら、時に対等な信頼関係にも思え、さらには、ほんのわずか、立場を超えた友情が、と非常に複雑に移ろいます。 この二人の関係、先行きも、本作の緊迫感を高めていた思います。 本題の事件そのものは、猟奇的とはいえ、ミステリとしての要素はそれほど込み入ったものではないと思います。 その分、第二次大戦終戦間際という、本作の舞台設定の過酷さ、特殊さがストレートに強く迫り、極限状況下の刑事物として、ストーリー展開に引き込まれ、読み進めることができました。 | ||||
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本屋で平積みされたこの本を見つけて、思わず衝動買いしたが、正解だった。 舞台は1944年のベルリン。徐々に戦況が悪化しつつあるドイツ国内において、女性ばかりを狙う連続殺人鬼が出没。どうしても秘密裏に事件を解決したい親衛隊将校フォーグラーは、ユダヤ人であるがゆえに公職を追放された、かつての刑事局の敏腕警部オッペンハイマーを捜査のために徴用する。ユダヤ人と親衛隊将校という相容れぬ二人は、共に捜査を進める中で徐々に友情とも言えるものを育んでいくが・・・。 ナチス支配下のドイツを舞台にしたミステリとしては、フィリップ・カーの傑作「偽りの街」から始まるベルリン三部作が有名だが、あちらの私立探偵ベルンハルト・グンターも同じく刑事局をドロップアウトした元刑事なのは同じだが、グンターはナチスの専横に嫌気がさして自主的に刑事を辞めた立場なのに対して、こちらのリヒャルト・オッペンハイマーはユダヤ人であるがゆえに職を追われ、いつ強制収容所送りになるかわからないという状況であり、前者よりさらにつらく困難な立場に身を置いている。その彼がナチスに支配された時代に抗い、ナチス高官でさえも容疑者として扱い、一人孤高の刑事として事件を追うその姿勢には胸が打たれた。 事件の終幕においてオッペンハイマーは最愛の人と別離を余儀なくされるが、時代設定からすると、ドイツの降伏まであと約1年あまり。果たして彼は生きて最愛の人と再会できるのだろうか。次巻が待ち遠しい。 またこの本が気に入った方は、新潮文庫刊の「偽りの街」「砕かれた夜」「ベルリン・レクイエム」をお薦めしたい。やはりナチスドイツ下のベルリンにて、一人孤高を貫く探偵ベルンハルト・グンターの活躍する最高のミステリシリーズだ。 | ||||
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<書かれた時代状況は創作ではありません。ベルリン市民が、あの戦争が辿った結末を知らないままに、一九四四年初夏の怒涛の日々をどのように生きたかを描きたかったからです。(著者あとがき)より> この作品は上質のミステリでもあり、すぐれた戦争小説でもある。 建築家アルベルト・シュペーアの造った夢のような妄想都市「ゲルマニア」の模型を見て、「すばらしいぞ、シュペーア」とアドルフ・ヒトラーが囁く冒頭から、現実のベルリン市街が連合軍による連日の猛爆で破壊され瓦礫の山となっていく状況が詳細に描写される。その中でナチと空爆の恐怖に怯えながら生きていく人々と、ナチスドイツの圧政に覆われた日常の中では、殺人事件など小さな恐怖に思えるほどの時代の様相に圧倒されるのだ。 一九四四年、瓦礫の山と化したベルリン。空襲が続く中、ユダヤ人というだけで公職追放された元刑事オッペンハイマーは突然、SS大尉フォーグラーの命令で女性の死体の前に立たされる。<女の死体が損壊されている><女の下半身が第一次世界大戦の慰霊碑に向かって大きく両足を開いている> フォーグラーはオッペンハイマーに殺人犯を捜しだせと命ずる。 何故ナチス親衛隊の将校が、非道にも人間とみなしていないユダヤ人元刑事に捜査を依頼しなければならないのか。 その背景にはナチスのプロパガンダにある<完璧な民族共同体には犯罪は存在しないはず>であり、戦時下で街中の死体の存在は日常茶飯事なことであったからだ。 さらにナチ党内部の複雑な機構と派閥闘争。 <ヒトラーの権力掌握後、国家と党機構の垣根は大幅に取り払われた。党の機関は次第に行政に口を出すようになった。><新設された国家保安部の下に親衛隊情報部(SD)、秘密国家警察(ゲシュタポ)、刑事警察が統合されていた。> フォーグラーは親衛隊(SS)であり、他に国防軍、さらに突撃隊(SA)とすべての組織がヒトラーのお気にめすよう綱引きをしていたのだ。 彼らにとって国を統べるのは強者の論理であり、問答無用で残虐な暴力はふるうが刑事警察としての能力は全くの素人だった。フォーグラーSS大尉は藁にもすがる思いで、なりふり構わずユダヤ人オッペンハイマーに協力を仰がざるを得なかったのだ。 オッペンハイマーが探りをいれると、過去にも同様の事件があり、新たな事件も起きてしまう。そのすべてが全く同じ状況で女性が殺され、事件は連続猟奇殺人事件となっていく。 惨殺された女性たちの過去が明らかになるにつれ、様々なナチスドイツの闇が浮かび上がる。「生命の泉協会」なるナチ養成プログラムの存在。女性蔑視。高級娼館。ファシズムに批判的な人々。 <こんなに状況証拠に乏しい事件はめったに経験したことがない。犯人の風体すらつかめずどこから手をつけたらいいのかわからない始末だ。> しかし<証言に矛盾が生じている>のをついに見つけ出した。 事件が解決しても戦争は続いている。目の前を爆弾が降り続けている。 こんなにも非情なミステリがあっただろうか。 戦争は続いているが人々は生きている。 しかし独裁者と全体主義がこの世から無くなるまで、人々に自由と解放はないのだ。 優れて重量級の「ドイツ推理作家協会賞」新人賞受賞作である。 | ||||
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