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オールド・テロリスト



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【この小説が収録されている参考書籍】
オールド・テロリスト

オールド・テロリストの評価: 3.91/5点 レビュー 69件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.91pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全69件 41~60 3/4ページ
No.29:
(5pt)

前期の龍が好きだという人が多いが

コインロッカー・ベイビーズなどの前期の龍が好き、というか前期しか認めない
みたいなことをという人が多いが、僕は違う。
年を重ねるごとにまだまだ進化し続けている。
空港にてやラインなどの中期の作品で書き始めたミニマリズムな超現実的な実況中継的描写は、
半島を出よで完成を迎えた。
その後、何を書くのかと思っていた。
心はあなたのもとに、55歳からのハローライフときた。
龍は、普通の人間に近づいてきたんだと思った。もちろん良い意味で。
すごく変わった人ではなく、日常の風景を描き始めた。
そして、これだ。これは非日常を書いているといえるだろう。いや、そうではない。
セキグチの日常を描いている。壊れていく日常を。
日常と非日常のミックス。
龍は後期ではない。まだまだ黎明期だ!
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.28:
(5pt)

面白かった

旧・満州陸軍をモデルに日本転覆をはかる老テロリスト達の活躍が描かれています 本気で社会を変えるにはどうすればいいか 国民を本当に反省させるにはどうすればいいのか といった事柄を ドイツの巨大な戦車をもちいて実行しようとする(ドローンも出てきます)姿勢は 今の若い人たち(この場合若い人たちというのは10~50代)にはない エネルギッシュな闘魂をこれでもかとみせつけてくれます 未来がどうなるのかは誰にもわかりません 理想に向かってひたむきに突っ走る彼らの姿には学ぶべきものが沢山あるように感じます
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.27:
(4pt)

普通に面白い

「村上龍にはずれなし」とは誰も言わない。
ものすごい小説も書くし、そうでない小説も書く。
この「オールド・テロリスト」はまあまあ面白かった。
どこがまあまあ面白かったかと言えばエンタメとして面白かった。
この人の小説には独特の世界観があって、それは「普通のことを書かない」ということだと思う。日常的なことを日常的な文脈で書いてもあんまり面白くない。退屈な小説にしかならない。「退屈」の反対語は「興奮」である。
だから村上龍の小説は常に興奮を伴う。それは時にストーリーに優先する。読者の私に与えられるのは理由のわからない興奮である。感動ではない。
この「オールド・テロリスト」もそういう風に作られているのだけれど、どこか興ざめがある。
いつも村上龍の小説の読後感は「ああ、面白かった。」ではすまされないどろどろしたものがあとに残るのだが、この小説に限ってはそれがない。普通のエンタメとして出来上がっている。それなりに面白い。ただ、この人の今までの小説を読んできた者としては少し物足りない。
私の村上龍に対する期待値が大きすぎるのかとも思うが。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.26:
(5pt)

やはり底知れぬ魅力がある

表紙の愉快な感じに騙されてはいけない。 内容はダークで重いテーマを扱っている。 だが退屈と言うことではない、次々に登場する奇妙なキャラ達によって物語に引き込まれる。 村上氏の作品の中でも屈指のエンタテイメント性を持ちながらも現実社会の歪みを捕らえて問題提起してゆく作家としての姿勢。 そのスピード感に驚愕する。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.25:
(5pt)

最高傑作の1つ

氏の著作は全て拝読させて頂いております。文章の美しさ、テンポ、リアリティ:ファンタジーの比率がより洗練されておりました。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.24:
(5pt)

劇画的小説

ドキドキ感と少し温かい気持ちが、安定剤中毒者が主人公であるにも拘らず読後感想として漂う。ストーリーも満州の残党とその末裔とかなりギリギリ感が高い。要は劇画なのだと思うと納得がいく。若者が道具の様に位置付けられているのは作者が歳を取ったということだろう。
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No.23:
(4pt)

「イケてない日本」を描かせたら日本一

文芸春秋での連載が単行本化されたもので、『希望の国のエクソダズ』の続編的作品... とはいうものの、主人公が前作に出てきたジャーナリストというだけで、物語の軸になる集団は、前作とはまるで違います(その意味では『五分後の世界』と『ヒュウガ・ウイルス』の関係が思い出されます)。書き下ろしの『五分後~』や『半島を出よ』とは違って連載モノだったせいか、やや間のびした感は否めません。ただそれでも、だらりと弛緩しきった日本に容赦なく刃(やいば)を突き付けるあの感じは健在... いまや「イケてない日本」を描写させたら日本一かも(笑)。小説の苦手な私がグイグイ引き込まれてしまう筆力には凄まじいものがあります。
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No.22:
(2pt)

無駄に長い!

コインロッカーベイビーズを髣髴する劇場テロの場面は圧巻。しかし米軍の攻撃辺りは単なるやっつけ。拍子抜けするほど。

あとさあ、副大臣が掃討現場に立ち会うかなあ?隠密裏にコトを進めるとしても。

最後の一文も疑問。あと2つ残っているからどうした?って感じ。続編はないだろう。

オンナの描き方は秀逸と思うが、前半の様子と後半の様子があまりに乖離しすぎてすごく違和感があり、あまりのめり込めなかった。

本来だったら上下巻に分けて刊行するべきと思う。重くて読むのに疲れた。が、内容的に省略してもいい場面が多く、やはり無駄に長い!って感想が最適。

5分後の世界は何度も読み返したが、コレは一度読めば十分です。
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No.21:
(4pt)

リアリティこそが作品に生命を吹き込むエネルギーであり、エンターテインメントッ!

ニワカ・オブ・ニワカの ファンの感想としては
「歌うクジラとかとは違って まるで劇画っていうか
漫画的な雰囲気・要素が濃くなっている気がするなぁ 敢えてやってるのかなぁ」
でした

この「オールド・テロリスト」は (JMMでの)あとがきを読んで 昭和歌謡大全集のときのようなノリノリな感じがあったので
(そして 少し前に発売されたエッセイ 「ラストワルツ」は
村上龍のやる気の無さが滲み出ていて 読んで結構憂鬱な気分にさせられていたのも手伝い)
相当に期待して読み 且つ 期待を裏切らない面白さで (スッキリしない)満足感に浸れました
I can('t) get (No)SATISFACTION!

スッキリしない というのは 
ひとつは 序盤から 展開の仕方というか 今までと違い何か商業的で
あまり村上龍っぽくない構成だったという違和感が 少しあったことです
ラストワルツの題名変更の件でもあるように 「より売れるため」というのを今回も大分意識したのかなぁと

いつもなら もっと徹底して書くようなシーンが かなりアッサリだったりして
「トトン トントン... トトン トントン...    ドン(←フォントサイズ72くらい)」っていう
テンポを大事にしている漫画家のような展開の早さが比較的目立っていました
それが心地良くもあり 違和感にも繋がり 読みやすいものの
これでいいのか村上龍ゥゥゥみたいな印象が 読んでる最中はありましたが
読み終わると リアリティのために必要な端折り方・テンポだったのかも と思いました

なぜかというと
今作は「希望の国のエクソダス」の
(離婚してボロボロになった)ジャーナリスト・セキグチの視点というか 彼が語り手であり
老人たちからの視点は無いため セキグチが気絶したラストの戦闘などは 超あっという間です
それが 
あまりにも・・・あっけなさ・・・すぎる わけで もっと読んでいたかったのになぁ という
まさに 心療内科のアキヅキが セキグチに聞かせたローリング・ストーンズ「サティスファクション」の
最後のリフように I can't get no, I can't get no,(俺は本当に全然満足できないんだ)と
フェイドアウトしていくような読後感
つまり
それこそが セキグチのリアルを追体験というか それが村上龍の狙ったリアリティなのか
わかりませんが
とりあえず 今までに無かったテンポによる違和感・スッキリしない感じが
初見時には ありました

もうひとつは セキグチ視点であるがゆえのもの です

セキグチは 周りに流されるままで ほぼ決定権が無く 安定剤噛み砕きまくって 行動・移動せず
苛々させ 結構人任せというか 何より 都合のイイ人脈に定評があるようで 都合良く事態が好転し続け 
運命の奴隷・ローリングストーン(ズ)をまさしく暗示しているがごとく 自身も一緒に転がるだけという
(そういえば終盤で「これは運命だと思うことにした」とか セキグチ言ってた)
その情けないオヤジ・セキグチの精神状態の描写が 今作で最もリアリティがあります

視点がセキグチのみ なので 当然得体の知れないオールド・テロリストたちには 不安や恐怖または安堵など
掌で踊らされるがごとく精神を揺さぶられる セキグチの不安定感には苛々させられる という「スッキリしない」感覚に陥ります
(そこがイイんですよ そこが)
村上龍は最近心療内科を小説によく出すので もしかすると罹患によるリアリティなのかも

強いてリアリティがなかったと言えば 最初のテロで危うく死にそうになっていたのに
3つめのテロ予告であろう場所 歌舞伎町に行って なぜか『館内に入って』
テロが起こるのかどうか映画鑑賞しながら確認する ってところと
カツラギのケア能力が高すぎる(江川達也の「神宮山美佳」みたいなキャラなのかも)くらいで
他は さすが村上龍 って感じのリアルさでした(僕の場合は)

特に カツラギと必要以上にイチャイチャ(スペイン語ではありません)しなかったのは 本当に良かったと思いました
村上春樹と変わらなくなってしまう 素数を数えて落ち着けセキグチィィィと読みながら思っていたので 心底ホットしました

そーゆーわけで
昔ながらの?村上龍ファンとかには違和感が強いのかもしれませんが
漫画好きな人に読みやすいと思われるテンポの良い小説
「オールド・テロリスト」のレビュー 以上です

そういえばセキグチの苛々させる雰囲気は 村上春樹の主だった小説の主人公に通ずるものがあると思いました
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.20:
(5pt)

ファンキーな表紙に騙されちゃだめ

「5分後」以降では初めて、一気に読んだ村上龍でした。
たった今、現在進行中でもおかしくない内容と固有名詞で描かれていて、
この小説の賞味期限は長くて数年ではないかと…
1~2年で陳腐化しそうな小説であったとしても、言わずにいられない事を
主人公やオールドテロリストの中心人物「ミツイシ」に語らせるために
著者はこの小説をなしたのかなぁと思います。

現在審議中の、あるいはもう通ってしまった新法によって
市民やメディアがどれだけ足枷をはめられ不自由になるか
それまでは考えもしなかった危機に放り込まれる事態になるか
(もうそうなっている、なりつつあるんでしょうが)
踏ん張り時です。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.19:
(3pt)

タイトルと裏帯から老人たちの愉快な社会への復讐劇かと思ったら‥

著者や他の作品も知らず、タイトルと裏帯から購入しました。老人達の愉快な社会への復讐(笑)と勘違いして購入。中身はなかなか重いストーリー。分厚い本ではありますが内容の小難しい用語の多さを抜きにしても10時間もあれば読めるほどスラスラ手を進められる。ただ終わり方があっけなく後日談や事件後の反響なども無く、捕捉のないまま読者へ想像を委ねるのはこの作品ではどうなんだろうと感じた。
関口やカツラギの心理描写をこと細かく現しているのに、マツノのその後や、若者をどう誘導してテロに加担させたかなどの説明などもなく喉に小骨が刺さったままの気分だ。肝心の結、部分が抜けていて違和感がある。
また、時間の経過と共にカツラギの言動が常人っぽくなっていくのにも魅力が減って残念だ。
社会風刺や今の若者を客観的に捉えた斬新な切り口だが尚更丁寧な捕捉と終わり方を選んでほしかった。個人的に65点。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.18:
(4pt)

村上龍を読みたくなる動機を裏切らない良作

村上龍の小説は、読後、「ああ、面白かった」では済まされないものが残り、ひとことで感想を書くのは難しい。
ただ、「今から死ぬまでの有限な時間の中で、何をやって、何をやらないか」という面倒な課題をちゃんと考える
ときに、私は、なぜだか村上龍の小説を読みたくなるというのがあって、最新刊のこの小説もそれに応えてくれる
ものであった。もちろん、「これをやって、あれはやるな」みたいな、直接的な回答が書いてあるわけではない。
むしろ、そういう回答を安易に求める態度の危険性や愚かさを一貫して書いている著者であると思う。
 これを読んで、もう一度、村上龍作品を読みたくなり、目下「愛と幻想のファシズム」を読んでいる。老人テロ
リストの集団「キニシスギオ」たちの中に、「狩猟社」の元党員はいるだろうか?多分、いるんじゃないかと思う。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.17:
(2pt)

他の方のレビュー、読後に拝見しました

Amazonのレビュー面白いです。

一緒に映画を観に行った友達と、鑑賞後に喫茶店で感想を聞き合ってるような感覚があります。

リアリティがない

俺も同じ感想です。

特に、由美子にコンタクトを取る流れが無理矢理な感じ。

経済に詳しい人って。いきなり過ぎて違和感がありました。

特定秘密保護法については俺は大賛成です。

村上龍は反対なのかな?

俺は村上龍のファンなので、だとしたらショックですね。

本の表紙、裏にドローンが描かれてますね。
購入当初、この近未来的なロボット?ドローンは何だろう?って思ってました。
ラストにドローンが出てくるんですね。
ドローンもいきなり過ぎて、なんだかなー
ドローンの存在こそ、絵に描かないで読者に”秘密''にしていてほしかった。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.16:
(4pt)

ドキドキハラハラ読んだけど、クライマックスに多少違和感

ドキドキハラハラ読んだ。現時点で村上龍のおすすめ作品を3つ挙げろと言われたら、「コインロッカー・ベイビーズ」「半島を出よ」と共に、この本を挙げる。ディテールや展開は謎解きと妖しさに満ちていて面白いし、非日常的なテロ事件に遭ったときの心理描写は味がある。面白く読めたけど、原発を狙って云々とか、武力衝突とかは、どこか他国の誰かが外からやる手口であって、日本人が内側からやる手口としては、実際はもっと違う方法になるんじゃないか、と少し違和感を感じた。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.15:
(5pt)

自然体の極論。

異常な人間が異常な事態を引き起こし他の異常な人間が巻き込まれていく。でもそれは非日常的ではなく極めて現実的です。村上龍さんの他の作品に共通する常識人の皮一枚下の真実を白昼の下に曝け出す物語が精巧に且つシンプルに書き込まれています。単行本にして563ページ。長編ではありますがあっという間に読み込んでしまいました。結論ありきではなく続きを想像させる終わり方が憎い。フィクションがノンフィクションにいつ変わってもおかしくない真実味を常に内包するのは誰もが持つ猟奇性を言葉の針で突き刺すからだと感じます。とにかく理屈抜きに面白い。
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No.14:
(3pt)

主題は何?

タイトルやカバー絵ほどにはオールドテロリスト達が描かれてるわけではなかった。。
それより今の時代の50代半ばバツイチ男の心の内面ストーリーのようだった。
セキグチとあわせてカツラギそしてマツノも登場させて今の時代の閉塞感を描いてるのだろうが。
その閉塞感をリセットしたがるオールドマン達という構図。
オールドマン達の暴走する心の内面をもっと描いて欲しかった。

私も男ですのでカツラギには会いたいと思った。

龍さんには「昭和歌謡大全集」や「半島を出よ」でテロをやったノブエやイシハラを登場させた作品をまた書いていただきたい。
彼らもそろそろオールドテロリストと呼んで良い年になってます。前期高齢者だけど。イシハラはあと数年かな。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.13:
(4pt)

 ファンです。

久しぶりの長編でハードカバー!わくわくさせてもらいました。
龍の文章に慣れているので、すごく読みやすいです。
小説の女性はデパス女。魅力的に!鉄板ですわ。

今の老人。けっこう、イカレてる人多いですよ。
老人と呼ばれないことに誇りを付けてる人!!

昔は自立した綺麗な女性を目指していました。
今後は、ちっぽけな老人になる予定です。
考えることと、言い訳の区別が難しいですがね。
人って、ジタバタしたい!これが本能なのかもね。

余談ですが、初老なのでハードカバーが重いです。
早くアマゾンやらコボで電子化してくれませんか?
もう、儲けなくってもいいでしょ?龍さん!!
ま、これも庶民の厚かましさか?
だよなあ~と。

支離滅裂でも、40代でも、未熟でも、日常をやります。よ。
そんな気分です。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
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No.12:
(5pt)

小説世界と現実世界がシンクロした。

本書を読み始めてすぐ、新幹線内で70代男性が焼身自殺を図り周囲を巻き添えにするという衝撃の事件が起きました。本書の冒頭にあまりに似通っており、果たして自分が読んでいるのはフィクションなのか、それとも現実を反映したノンフィクションなのか、錯覚しそうになり身が震えました。『イン・ザ・ミソスープ』の新聞連載時にも殺人シーンを描写しているまさにそのとき、酒鬼薔薇事件が起きるということがありましたが、長年、村上龍のファンをやっていると小説世界と現実世界がシンクロするという奇異な体験をすることがあります。本書の初出は『文藝春秋』誌ですから、時代を先取りしていたとも言えるかもしれません。かつて村上龍は、「現代の見えない叫びを翻訳することが小説の使命」という主旨のことを言っていたと記憶していますが、本作品もまさにその言葉を体言しているようです。

舞台設定は東日本大震災から7年後、東京オリンピックまであと2年という2018年。予告テロ事件が相次いで起きます。実行犯は心に病を抱えた若者たちで、一見、彼らの衝動的な犯行に見えて、手がかりを辿っていくと、ある高齢者たちのグループに行き着きます。彼らは何らかの形で戦争を体験し、戦後の焼け野原を生き延び、社会的地位と富を築き、現在も精神的・肉体的にも健やかさを維持しています。先の長くない彼らが、現代日本の体たらくを見て義憤に駆られ、存命中に日本に喝を入れよう思うのは、分からなくもありません。彼らの言い分を聞いているとシンパシーが湧いてくるから不思議です。彼らが制裁の対象とするのは、マスコミ、暴走自転車、アイドルグループにうつつを上げ骨抜きとされた者たちなど(個人的には、歩きタバコと歩きスマホの輩も加えてほしかったところです)。戦争体験者による世直しというのは『五分後の世界』と共通のテーマですし、頭脳明晰で魅惑的な人物が”正義”を語る様はオーウェルの『1984』を彷彿とさせます。プロットの巧妙さと語り口の絶妙さで、ページを手繰る手が止まりませんでした。

個人的には、ここ15年ほどの村上龍は経済評論家っぽくなり、あまり好きになれませんでした。村上龍は小説さえ書いていればいいのにとさえ思っていましたが、たまに発表する小説も難解だったり(『歌うクジラ』)、現実的で暗すぎたり(『55歳からのハローライフ』)でガッカリでした。本書は久々に村上龍らしさ全開の快作です。
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4163902392
No.11:
(5pt)

単行本化待ってました

文藝春秋で連載の時から読んでました。アキヅキ医師の言葉、自分で自分の生き方を選ぶことができることができるのは
共通して数パーセントだ。という文章に共感。著者も恐らくその数パーセントに入ってることを自負してのフレーズであろう。それ以外の人たちには蛇蝎の如く嫌われる小説。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392
No.10:
(3pt)

発想も展開も、興味深く読み始めたが、終結に至る主人公セキグチに疑問★★★。

発想も展開も、興味深く読み始めた。
NHKでの事件、池上での事件、歌舞伎町での事件、とにかく、一般市民に対しての事件としては、大量に犠牲者がありすぎな事件で気になった。
おそろしいが、もしかしたらほんとにできてしまうのかもと不安な気分になり、すっかり、その事件があったとしたら、一般市民として、恐怖に陥るだろうなと思いつつ読み進めた。
主人公セキグチのようなリストラされ、世間との折り合いがうまくつけられずにいる立場の人間も、今の世の中いっぱいいるのかも。
それにしても、カツラギがコンタクトを取り始めたあたりから、どうにも、気分良くは読み進めなかった。
カツラギの設定に少々無理があるのだとしか思えない。
コンドウとの関係も今一つ納得がいかない。
マツノ君が去っていったあたりも気に入らない。セキグチはもっと関わるべきとしか思えなかった。
アキヅキの登場、語りあたりから、ミツイシに至るあたりは、むしろこのまま、この老人たちに肩入れしていたので、終結に至るあたりの展開、セキグチのあいまい且つ、煮え切らない逡巡はいらいらさせられるだけだった。
彼の立ち位置はなんなんだ?
大体セキグチを高く評価しすぎていたミツイシたちの読みの甘さとよめばいいんだろうか。
老人たちが奮起して、現代の日本に鉄槌を、と活躍する、夢物語を何とか、成功させたかったなあと思う。
あんなに簡単にそれも、政治と異国の力終わっちゃうなんて、残念。
しかし、カツラギの設定はなんだろう。ただ、村上龍さんが、書いている際の癒しとして書いたとしか思えない。
できたら、老人たちの蜂起、夢物語として、思い切り、気持ちよくドカーンと書いてほしかった。
読後感が今一つなので、☆☆☆。
オールド・テロリストAmazon書評・レビュー:オールド・テロリストより
4163902392

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