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(短編集)
世界はゴ冗談
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世界はゴ冗談の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.13pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全23件 21~23 2/2ページ
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筒井康隆の最新短編,9編と「ウクライナ幻想」と題するエッセイが収録されています.小説はどれも荒唐無稽,出鱈目,狂気,ナンセンス,ハチャメチャ---.まことに書名どおり’’世界はゴ冗談’’の内容ですが,それは時として現実の社会の実写でもあります.彼のブラック・ユーモアは本気なのです.私は読みながら何度も頬を緩め,ときには快哉を叫びそうになった.巻頭の「ペニスに命中」(意味不明のタイトルです)の終行は殺人嗜好の痴呆老人の発言です.老人はタクシーを拾って次のように命じました. 「国会議事堂へやってくれ」と,わしは言った.あの喋り方の気にくわぬ総理大臣を四十六回殺してやる. 齢80の筒井康隆は痴呆を装って総理大臣を46回も殺した.何で? 一つの理由は総理はこの地震大国日本に原発再稼働させようとしているからでしょう.日本はフクシマの後遺症にこれから何百年,何千年,いや何万年も苦しまなければならないのに,総理はフクシマを無視しました.総理,ゴ冗談でしょ,です(p172~3参照). 最後のお話は「メタパラの七・五人」---,これも題名からして意味不明.まともに読めません.登場人物に死者がいる.彼の四十九日の法要に彼自身が生身で現れ会話に入ってくる.それどころか読者もストーリーに参加させるし,作者すらあらわれる.こんな風に. 「おかしいとは思わないかね」兆治(評者註,死者のこと)が突然,いつまでも無言のままで読んでいる読者に苛立ち,読者のあなたに喋り始める.「登場人物が急にあらわれたり消えたりする.何よりも死んでいる筈のわしがこうやって食卓の椅子に掛けて喋っている.これはおかしいだろう.読者として何か言いたいことがある筈だ.そう.むろんあんたに疑問を抱かせようとしてのことなんだがね.たとえあんたがこれはそういう小説なんだと思っているとしても,それではそれで何か理由がある筈だと思うだろう.しかし,何の理由もないとしたらどうだろう.当然あんたは変だと思うだろう.そうだよ.あんただよ.あんたというのは,今この小説を読んでいるあんたのことだ.いやいや,他の誰でもないあんたのことだ.あんたはきっと,この小説にはたくらみがあって,そしてわしの呼びかけは,読者全部に対するたくらみであり呼びかけなのだろうと思うかもしれないが,違うんだ.特定の読者であるあんたのことだ.そりゃあこの小説の読者は他にもたくさんいるだろうが,今現在,この小説のこの部分を読んでいるのはあんたしかいないんだからね.そうだよ.わしは今まさにあんたに向かって話しかけているんだ.(中略)あんたをこの小説の中に引きずり込もうというたくらみなんだよ」(中略)兆治はまた,あなたに言う.「さあ,何かいいなさいよ」「いや,それもまずいだろう」ここで突然,作者があらわれる. 筒井康隆に突然あんたと呼びかけられ,私はもうびっくりして返答に困りました.小説に死者やら読者やら更には作者まで登場させるなんて前代未聞,奇想天外もいいところ.小説の概念を壊して喜んでいます.小説革命を企んでいるのではありませんか.小説に革命なんかいらね〜よ,と誰かが叫んでいますが,それに怯える筒井老人ではありません.80歳にして意気軒昂.これからもこの調子でやって下さい.書き忘れています.メタパラの意,最後まで読めば何となく判ります.でも七・五は今もって不明.7.5ならまだしも七・五となると---.どなたか判った読者はご教示下さい.以上,畸人筒井康隆老人に乾杯しつつ星5を謹呈します. | ||||
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筆者が80才とはとても思えぬ実験的でチャレンジングな短編集。「ペニスに命中」の認知症の老人の世界は、町田康の「夫婦茶碗」の心身症の酔人の世界を凌駕するパンク。これ一編でも買う価値あり。 | ||||
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4月28日(火)に職場近くの小さな書店にも三冊入っていて、そのうちの一冊を購入。 (関係ないけど、ポール・マッカートニーの武道館ライブの日だった) ここ数年の短編を『繁栄の昭和』(文藝春秋、1984)と分け合ったにもかかわらず、密度の高さには驚く。 個人的な好みでは「三字熟語の奇」「ペニスに命中」「奔馬菌」「小説に関する夢十一夜」など。 前衛的、実験的、幻想的、過激、アナーキーで、風刺が効いていて、破壊力があり、読みやすく、単純にも面白い。 「三字熟語の奇」は、いろいろな読み方ができると思う。 形式では、かつての『バブリング創世記』の頃を彷彿とさせ、内容では、短編「昔はよかったなあ」「おもての行列なんじゃいな」の世界だ。 円地文子の「女坂」を読んでから読むと、また違った面白さを感じることができるかもしれない。 「ペニスに命中」「奔馬菌」には、ただただ感心してしまう。 「小説に関する夢十一夜」は、漱石「夢十夜」、百けん「東京日記」のファンとしては、こういうのが読みたかった、というところ。 和田誠さんのカバーの、力の抜け具合もいい(星新一さんの作品集を思い出すから、というのもあるし)。 あと、オビに、ヨイショ的な推薦文がないのもいい。 | ||||
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