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リトル・シスター



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【この小説が収録されている参考書籍】
リトル・シスター
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)

リトル・シスターの評価: 3.79/5点 レビュー 29件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.79pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全29件 21~29 2/2ページ
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No.9:
(4pt)

善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思えるかわいい女の物語。

当代一の人気を誇る日本人作家の村上春樹氏が私淑する往年のハードボイルド・ミステリー作家チャンドラーの名作群を新たに訳出し現代に甦らせる事に挑んだ好企画の第3弾です。本書のあとがきで村上春樹氏は今回の訳題に至った経緯について依頼人の女オーファメイが「妹」を意味する事から相応しいと考えられたと理由を述べられていますが、それは勿論100%正しいだろうと思いながらも旧題「かわいい女」にも意訳とは言え内容的に見てシンプルながらも捨て難い良い味があるなと今回久々に読み返してみて改めて感じました。今回の訳題「リトル・シスター」も決して悪くはないのですが、前回の「さよなら、愛しい人」の今風のネーミングの新鮮さに対して逆にスマートさが平凡に感じられややインパクトに欠けたかなと思います。
事務所に訪れた田舎出の若い娘オーファメイから失踪した兄オリンの行方を探して欲しいとの依頼を受けた私立探偵フィリップ・マーロウは20ドルという端金しか報酬を見込めない仕事だったが興味を抱いて引き受ける。やがて彼が住んでいた下宿に調査に向かったマーロウはいきなりアイスピックで刺し殺された死体と遭遇するのだった。
帯に書かれた村上氏の言葉「チャンドラー節」をもじって言うと今回も「奇矯なマーロウ節」は健在で、お笑いの世界ではお馴染みの‘ひとりボケと突っ込み’はその最たる物でしょう。ミステリーの部分ですが、解説によると本書は著者が映画の仕事に追われていた時期に書かれた物だそうで著者自身も嫌いな作品だと述べられているという話が成程と肯ける随所に整合性の取れない荒さが目立つ不完全な出来だと思います。意外な犯人の趣向もちゃんと用意されているのですがあまりにも犯人が超人的で現実味に乏しく、また一部の殺人の謎が解決されないまま完結しています。しかし多くの欠点にも拘らず本書が魅力的なのは本筋の犯罪の謎とは別の、ヒロイン・オーファメイの実体が善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思える切ない哀しみと全てを知りながらも怒りも責めもせずに彼女を許すマーロウの思いやり深い真実の優しさにあると思います。
村上春樹氏というビッグなネームバリューの力もあって今迄にない多方面から注目されるこの画期的な試みは海外翻訳小説の人気を高める好機になっていると思います。段々と華々しい話題作は減って来ているとは思いますが、折角ですので村上氏には埋もれたチャンドラーの残りの四作品全ての紹介をぜひ実現して頂きたいと願っています。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.8:
(3pt)

探偵と犯人候補者たちが、いい文章で魅力的に描かれている

これは村上春樹が翻訳したチャンドラー6番目の長編探偵小説で、以前は「かわいい女」という題名だった。

 
 女2人、男1人の3人きょうだいが、長姉のハリウッド女優の卵をめぐってやくざがらみの犯罪を引き起こし、例によって美女の美脚に弱い私立探偵マーロウが、あれよあれよと巻き込まれ、命からがらロスの街をさまよい歩くというよくある話なのであるが、不思議なことにこの小説、誰の翻訳で、何回読んでも、いったい誰が、なぜ、誰を、どうやって殺したのかが五里霧中なのである。

 にもかかわらず、これほど読んで面白いミステリーもざらにはないというところが、本書のもっともミステリーな部分であろうか。翻訳がこれほどに拙劣で(彼のレーモンド・カーヴァーなどとは大違い!)プロットなんざそうとういい加減でも、探偵と犯人候補者たちが、いい文章で魅力的に描かれていれば、それで結構毛だらけ猫灰だらけなのである。

 このちょっと古風な探偵小説を読みながら、私はロサンジェルスを懐かしく思い出した。いくら近代的なビルジングが建ち並び観光客がうろついていても、サボテンの茶色い枯枝が空っ風に吹かれてベヴァリーヒルズの舗道を舞っているこの天使の街の中心は、やはり聖なる森であり、その森の下には、太陽に焼きつくされて白くなった大量の砂が、人類以前の古生代の夢を見ながらむなしく眠っているのである。

 そしてそんな面妖な街の片隅で、我らが主人公フィリップ・マーロウは、今日もブロンド女に32口径オートマチックの銃把で頭をぶん殴られたり、「モーツアルトはやっぱシュナーベルだな」とうそぶく警官に一晩中尋問されたりしているのだった。

リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.7:
(4pt)

チャンドラー節を村上春樹訳で・・・

『かわいい女』として日本では知られていた”The Little Sister”の村上春樹訳。
原文を大事にする村上氏らしく『リトル・シスター』と題されています
(本来はオーファメイ・クエストを指す「妹」という意味ですが)。

こういったハードボイルドが特に好き、というわけではないのですが、
チャンドラーの一連の作品には、アメリカ西海岸特有の
乾いた無常感が実に巧みに描出されていると思います。

ハリウッドの華やかさの陰にひそむ残酷さ、
高価な蘭の花のように優艶で、しかも抜け目ない女性たちなどが絡む
錯綜した事件の謎にマーロウが単身で挑みます。
思わせぶりで少々気取ったせりふにやや疲れを覚えながらも、
チャンドラーの魔法にかかったように最後まで読んでしまいました。

チャンドラーが意図した即物的な非情さを
村上氏の訳はうまく捉えていると感じました。
アメリカ文学を深く愛する村上氏にとって
チャンドラーはフィッツジェラルドとはまた違った意味で
大切な作家なのでしょう。
「あとがき」も村上氏のファンにとっては嬉しい充実した内容です。
チャンドラーの翻訳はこれからも続けられるそうで、今後の刊行にも期待します。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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No.6:
(5pt)

オーファメイ・クエストの描写はやはり素晴らしい

「訳者あとがき」で書いているんですが、ぼくも、この作品の素晴らしさは、マーロウに捜査を依頼しにやってくる、オーファメイ・クエストの描写だと思います。そして『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』の時ほど清水俊二訳との違和感は感じません。

 チャンドラー本人にとっても、満足できるような作品ではなかったようですが、『ロング・グッドバイ』のような、不意の完成といいますか、プログラムピクチャーの中で出来てしまった世紀の大傑作のような佇まいとは違う、まだ、才気はあふれているけどなかなか認められずにヤサぐれている感じも残っている良さがあります。楽しみの読書なのであまり細かくは読んでないのですが、清水訳の大きな誤訳もいきなり見つけてしまいましたが、恐ろしいのは、名調子の清水訳だと、なんとなく意味が通ってしまうことだとも、と感じました。
 
 個人的には、作品の中で重要な役割を果たすライカが何型なのかな、というのが改めて気にかかりました。室内の人物をフラッシュなしで撮れるライカといえば、スローシャッターの付いたIIIc(Leica IIIc 、1940年発売)でしょうかね。で、レンズはSummar 2.0/5cm(1937)あたりかな、とか想像を膨らませます。
 
 ちなみに1969年に製作された『かわいい女(Marlowe)』では、ブルース・リーが原作にはない殺し屋役で出演していたことでも有名で、カンフーアクションで頭上の電灯を割るシーンなんかもあります。原作も映画も、いろんな要素がごちゃまぜになった、不思議な味わいの作品です。
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No.5:
(4pt)

オールド・フォレスター・グリーンラベル

マーロウが大好きなバーボン。
やはりアメリカの私立探偵にはバーボンがよく似合う。
スコッチは銘柄すら出てこないけれども、オールド・フォレスターは極めておいしそうに感じられる。
真相はシンプルな結末だけれども、饒舌すぎる展開は読み手を引きつけるものだ。
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No.4:
(3pt)

まず訳者解説を

私はいつも作者あとがきや解説の類は最後に読むことにしています。そのため、途中のある箇所でひっかかり、確認のため何度も前に戻って「おかしいなあ?」と気持ち悪い感じを抱えたまま、本書を読んでいくことになりました。「最後まで読んだら、もう一度読み直そう」とまで思っていました。最後に村上さんの解説を読んで、「あぁ、そういうことなのね・・・」と納得というか、自分が読み違えていた訳じゃなかったのが分かって、胸のつかえは取り除くことができましたが、こんな気持ちで読み進めてもやっぱり、心から楽しむことはできませんでした。それでも、やっぱりマーロウ先生と女性たちとのやりとりを読んでいると、なんかニヤニヤしちゃいます。正直、こういうの好きです。映像化したら、こっ恥ずかしくて観てられないでしょうけどね。とにかく、これから読まれる方々はぜひ初めに解説に目を通すことをお勧めします。心配しなくても、ネタバレ箇所近くでちゃんと訳者が警告してくれていますよ。
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No.3:
(4pt)

作品が醸し出すムード・雰囲気で読ませる、“マーロウ”というブランド小説

『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』に続く、村上春樹の新訳レイモンド・チャンドラー第3弾。7冊あるマーロウものの長編の5作目にあたる、’49年の作品。本書は『かわいい女』として’59年に清水俊二によって訳出されているが、私は読んでいないので、比較ではなく純粋に『リトル・シスター』の読後感想を綴る。

ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウのもとに、中西部カンザス州の地方都市マンハッタンから来たオーファメイという若い娘が訪れる。彼女は20ドルで行方不明の兄・オリンを捜して欲しいと言う。娘の容姿・態度・話に興味を持ったのか、それとも単なる気まぐれか、マーロウが規定報酬の半額で引き受けるところからこの物語は幕を開ける。早速オリンの最後の立ち寄り先である簡易アパートに足を運んだマーロウは死体に出くわす。さらに調査を続けるとまたもや男の死体が。やがてマーロウは、いわくありげな女優や映画エージェント、ギャング、不審な医師らが棲息する虚飾の街ハリウッドの“裏通り”に迷い込むことに・・・。

本書は、オリンの目論見や、オーファメイの真の意図は明らかになるものの、展開が早く、人と事件が複雑に入り組んだプロットで、「黒幕の存在」とか「誰が誰を殺したか」というような謎解きのカタルシスは得られない。

どうやら、その観察眼、含みのある独白、女優や警察や依頼人などとの間のジョークと皮肉を交えたキレのいい会話といったような、あまりにも有名なハードボイルド私立探偵フィリップ・マーロウの“存在感”と、それによって作品全体が醸し出す独特のムード・雰囲気で読ませる、ブランド小説であるようだ。

村上春樹は<訳者あとがき>の結びで「このあともマーロウものの翻訳を更に続けていきたいと思う。」と言っているが、私としては個人的にシリーズ第1作で、現在絶版・入手困難な、マーロウ初登場の『大いなる眠り』(’39年)を訳してもらいたいと思う。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.2:
(5pt)

マーロウ、おまえはいったい何を言っているのだ?

事件の真相は正直なところ「なんのこっちゃ!」と思った。通常の探偵小説とは違って種明かしが繰り返されればされるほど煙が濃くなる。カタルシスはまるでない。それから哀しいのがマーロウの繰り出すジョークの何割かは何が面白いのかがわからないのだ。誰かに聞くのも野暮な話ですしね。でもマーロウって結構お茶目かもと読んでいて嬉しくなったりもした。メロドラマ一辺倒だった田村正和が「うちの子にかぎって」で見せた意外にはまる滑稽な演技を初めて目の当たりにしたようなおかしみだ。チャンドラーの書く文章は凄いなあと賛嘆しながら楽しめる時間と冒頭にも書いた「なんのこっちゃ!」が入り乱れる変な読書だった。村上春樹の茶目っ気も感じました。最後に訳者あとがきを読みながら胸をなでおろした。やっぱりそうですよね。私だけじゃなかったのですね、と。
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4150704635
No.1:
(4pt)

新訳かわいい女

旧訳は抄訳とのことで、原文を調べてみると確かに、ちょこちょこ省略して翻訳してある。今回の新訳はおそらく完全訳であろう。
本作は、チャンドラーの長編群の中では凡作の部類に入るのかもしれないが、不思議な魅力がある。冒頭文など魅力的で、映画を観ているような錯覚を起こす。
チャンドラーはハリウッドで色々な映画の脚本執筆を少なからず手掛けたようだ。話の舞台がハリウッドというだけでなく、文体にもシナリオ執筆の経験が影響しているのだろうか。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635

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