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悲の器



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悲の器の評価: 4.39/5点 レビュー 28件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.39pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全23件 21~23 2/2ページ
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No.3:
(5pt)

是非読んで下さい

21才大学生の若僧としてのレビューです。
邪宗門とは違い法学という著者の専門分野ではない舞台で、現代の法学に通じた読み手によってこの本を読むことは、学説としての正さというのは小説として域を越えないかもしれないが、読む価値は必ずあります。何世代か前かのインテリゲンチャの苦悩の表現が、大学というを存在を当然のようにする現代の若者が全てを理解出来るかと言ったら、きわめて難しい。ただ私自身が年をとり、社会的な地位が上昇するに応じ登場人物(特に主人公)の苦悩というのは現在よりも受け止めることが出来るのではないか。また、自分が年をとってから、読み直したいものである。邪宗門を高橋作品として読んで以来、高橋和巳という人物に対して興味が沸いたが、高橋作品の多くは廃版になっており、入手がヤフオクなど限定的。最近の娯楽小説もよいが、たまにはこのような堅苦しい本も文庫化で復活してほしい。
悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)より
430942001X
No.2:
(5pt)

おのれと愛の羂に誑かされ悪業を作りて、いま悪業の報いを受くるなり

『悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉』です。
文庫ですが、ページ数があって厚めです。また、一ページあたりの文字数もかなり詰まっていますし、文体、内容も重厚で難解なので、読むにはかなりの体力と気力が要ると思います。
第一回文藝賞受賞作ですが、近年の受賞作綿矢りさとか三並夏とかいった読みやすく分量も少ない作品とは全く傾向が違います。
内容をかいつまんで言いますと、法学の権威であるエラい大学教授がメイドさんとヤっちゃったはいいが、婚約不履行で訴えられてしまい、若くて萌える婚約者もいたのに、破滅への道をたどってしまう、というものです。かいつまみすぎですが、間違ってはいないと思います、たぶん。

法曹界に関する専門知識がどうなのかについては素人では検証のしようもありませんし、あくまでもフィクションである小説であるからにはする必要もないのでしょうけど。
専門ネタが法学ものということもあって、内容はかなり難しいですし、生半可な頭脳では内容を理解することすら困難なのですが、文章自体が固めでありながらも表現が豊かなので、読んでいて退屈はしませんでした。
巻末には埴谷雄高と松本侑子のエッセイという形の解説があります。

難しい解説ができるほど、本書の内容を理解できたわけではありませんので、簡単に済ませますが。
確かに作品全体から、価値観の古さやぶっちゃけて言えば左がかった臭いが漂ってこないではありません。だから、分厚くて難解でもあるこの作品は今後は忘れられて行く一方なのでしょうけど。
戦中から戦後にかけての知識人の立ち回りなど、みどころも多く、読み応えはあるのではないでしょうか。面白いと思うかどうかは、もちろん読者次第ではありますが。
悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)より
430942001X
No.1:
(5pt)

未だ復権しない傑作モダニズム小説

ポストモダン小説理論の登場と共に、「全共闘世代の作家」として抹殺された高橋和巳の、事実上のデビュー作であると同時に最高傑作。
 師と仰ぐ埴谷雄高は、本作から後の彼の軌跡を「だんだん小さくなる。文学が向かうのは無限大でなければだめだ」(鶴見俊輔「埴谷雄高」)と好意的にではあるが揶揄し、柄谷行人は「下手な小説家」と一蹴する。柄谷をはじめとする近時の文芸評論家からみて、本作品が低い評価しか受けない理由は明白である。彼の小説には、テクスト分析の格好の対象となる「空白」が少ないからだ。「作者の死」というテーゼは、作者の情念が濃厚に書き込まれている本作では有効に作用しないだろう。
 多様な解釈を許す小説ほど面白い、というイデオロギーでは、彼の小説に相対することはできない。というのは、ひとつの理由として、彼の小説の力は、例えば本作品で言えば、「正木厳法学説」などの学問的フィクションが小説の内容と深く拘っていることを挙げておきたい。さらに一言すれば、本作品に即して言えば、高橋和巳がこの「学説」を考案するに当たり大きく影響を受けたのが、ポストモダニズムが一つの克服の対象としたフッサール現象学であることも、この作品の評価をさらに下げている理由であろう。
 小説というものは、いくら緻密に書こうとも、読者の読みはいくらでも変わってくるものである。たとえば、一つの提案として、ハンナ・アーレントの「公と私」という概念から本作を見直してみることもできよう。主人公の正木にとっては、私生活とは公人正木典膳にとって、どういう関係にあったのだろうか、など。
 再び高橋和巳が広く読まれるような時代は到来しないであろうが、心ある読者には読みつがれて欲しいものである。
悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)Amazon書評・レビュー:悲の器―高橋和巳コレクション〈1〉 (河出文庫)より
430942001X

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