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(短編集)

キミトピア



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【この小説が収録されている参考書籍】
キミトピア

キミトピアの評価: 3.80/5点 レビュー 10件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.80pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

そりゃあ芥川賞は取れないよね

もとより作者本人も取る気なんてないんだろうけど。

「美味しいシャワーヘッド」の話だ。なぜ取れないか?単純な話だ。これは現代版・村上春樹に過ぎないのだから。それも非常によく出来た。とはいえ、村上春樹が取れていないものを、同じことを同じように書いた舞城王太郎が取れるはずがない。

判っているのに判らないということにしてしまう、そういう気持ちの仕組みを構造的に抱えている「優しい」「僕」、実生活上の処理能力はそれなりにあるし、努力しなくてもいつのまにか女の子には好かれる、けれど読者にははっきりとは示されないまま彼女たちとの関係は喪われていく。その合間合間に断片的に挿入されるちょっと不思議な日常生活のエピソード。そして最後、また女の子が現れて、彼女の手引きで"異界"へと導かれた「僕」は、そこで僅かばかりの救いを与えられる。

筋が一緒なら書かれていることも一緒だ。
例え舞台が現代の東京・調布に移り、小道具が現代風に刷新され(漫画、映画、ネット上の巨大匿名掲示板)、「僕」の仕事が農業用機械の営業社員になっていたとしても。

まあ、作者本人も自覚的に書いているのだろう。お遊びか、あるいはオマージュか。
いずれにせよ、内容的には40年前に書かれた小説から一歩も前進していない。そんな作品が賞を取れるはずがない。

とはいえ、作中の会話は軽妙で、エピソードもアイデアに富み、文章はテンポ良く、全体として面白いと感じさせる。
それは「美味しいシャワーヘッド」に限らず、本書収録の各篇を通じて感じることで、その点では作者の力量を十分に感じた。

まあ、時間潰しに選んでも損はないと思います。
キミトピアAmazon書評・レビュー:キミトピアより
4104580066
No.2:
(3pt)

クセが強いので結構苦手。

第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」を収録した中短編集。
舞城王太郎さんの作品は初体験。かなりクセのある文体の作家さんだというのは聞いていて、初めてならこれがお薦めと何人から言われたので手に取りましたが……うーん、文体よりも物語にクセがあるなぁ。

7編の物語とも物語が向かう方向に意外性があって、言葉の選び方一つ一つが特徴的。現実の世界で、あまりウチの周りにいないタイプの登場人物でその違和感が時々、イラッとさせられます。

「やさしナリン」は夫婦の物語。人の可哀想に異常に反応してしまう夫とその妹に振り回されながら、関係を再構築していく過程が伺えます。
「やさしナリン」という言葉の選び方が単純に凄いなぁと思いつつ、突き放した見方に同調仕切れず消化不良。

「すっとこどっこいしょ。」「ンポ先輩」「真夜中のブラブラ蝶」は登場人物に受け入れづらい方が登場するので、読んでいると結構苦痛。

一番好きなのは「あまりぼっち」かなぁ。
ある日突然、自分の目の前に現れる"昨日の自分"。別居中の妻子の元に向かうも、その日の晩には"昨日の自分"は消えてしまう。
SFな設定ですが、他人に興味のない今の自分と、消えてしまう不安を抱えた昨日の自分との対比が面白いですね。
キミトピアAmazon書評・レビュー:キミトピアより
4104580066
No.1:
(3pt)

舞城ワールド

なかなか楽しい7つの短編集。

それぞれに変な味があって、すっと落ちないところが面白い。クセになる。

最初に1ページのカップルのじゃれあいのような短編で、タイトルの説明があって、
それを読んで読者がなる「置いてきぼり感」が、この本全体や、舞城王太郎をあわらしていると私は思った。

言っていることにとても同調できて、共感を持つのだけれど、
結局それの納得のし所がない感じ。はっぴーえんどで「ちゃんちゃん♪」ではなく、
「で?」「なんだったんだろうな?」って感じ。

・やさしナリン
「すっごい同情心のあるお人好し」の話?
こういう人いるよなーって思うところの掘り下げでストーリーが進んでいくんだけど、
もっともっといろんな展開があって、主人公と一緒に読者もイライラしながら、複層していくのかと思ったら、
突如終わった。しかも、過剰なお人好しによって話がややこしくなるのとは、別の軸でまとめ上げた。(名は体を表す的な)

・添木添太郎
子供の純なストーリー(怪奇含め)のような感じで読んでいたけれど、
結局これも落ちどころがわからない。
怪奇なことがあっても、そういうこととして話が進むから、物理的な不都合感とかは拭って読んだものの、
でっかい山が出現する。
どういうところがダメだったのか、わかんないまま。救われない。

・すっとこどっこいしょ
ドタバタコメディーで、青春感溢れていてヨシ。テンポも良い。

一部だけ、
「巫子さん」はわかるけど、
「タキシード仮面」「お相撲さん」「エロゲ主人公風の男」に言い換えている繋がりがわからなかった。
あと、Raccoonという名前には、モチーフあるのだろうか?

・ンポ先輩
きっと、最後の一文を思いついてからストーリーが構築されたんだろうと思う。
それが言いたいだけの、おかしな話。
そう思うとオチがつくから、まだ納得感がある。

・あまりぼっち
一番ありえないけど、物語として一番しっかりしてる。
「恋はデジャブ」を思い出したけど、そう言うタイムトラベルものとも違って、
変化が起こった自分と、変化が起きていない自分二人の気持ちを想像する事になって不思議な感覚を貰えた。

・真夜中のブラブラ蜂
これも、どうやって落ちていくのか期待していたら、とても意外なところに行くパターン。
ご都合主義なのか、収拾つかなくなっちゃったのか。「なんて言えば良い!」

・美味しいシャワーヘッド
一度目は、「新潮」で読んで、
二度目は、この短編集の最終話で読みました。
主人公のいろんなストーリーが脈絡もなくぐちゃぐちゃと飛び飛びに出てくるのだけれど、
最終的に、なんとなくその理由がわかります。
なんとなくだけど。

だから、芥川賞の選考委員のレビューで、わけがわからないと言われているような
支離滅裂さだけで終わってしまっうワケでもなく、
ちゃんとしてると思えました。
2度目でしたが、面白いです。その、飛び飛びに出てくる話もちゃんと波があって楽しめるし。
この中では、一番好きです。
キミトピアAmazon書評・レビュー:キミトピアより
4104580066

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