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決壊



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【この小説が収録されている参考書籍】
決壊 上巻
決壊〈下〉 (新潮文庫)

決壊の評価: 3.83/5点 レビュー 75件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.83pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全14件 1~14 1/1ページ
No.14:
(3pt)

ちょっと長すぎるかな

崇が犯人でほしい気持ち7割とほしくないような気持ち3割で読み進めた。
つまり、実弟をメッタ裂きにするくらいの屈折した心の闇がある英才を生んだ背景を主軸にした展開を望むか、途中から出てくる少年を絡めたネットの闇を主軸にした展開か。
結果としては後者で、サスペンスという観点では特段目新しさを感じなかったが、およそ20年前の発刊当時読んだら、全くの第三者同士をつなげて殺人にまで至らしめるネットって恐っ!って思ったのかもしれない。

他の方もおっしゃってる通り崇=作者なんでしょう。私は嫌いなタイプではない。
崇に発言させている内容で共感した部分を自分の備忘録の為に書き留める・・・

「功利主義的に考えれば、どんな献身だって、殉死だって、みんな自分に利益のためだよ。誰も決定的には、このシニシジムからは逃れられないと思う。そうした利己的な欲望の中で、人間は他人と交わりながら生きている。」

「他者を承認せよ、多様性を認めよと我々は言うわけです。しかし、他者の他者性が、自分自身に取って何ら深刻なものでない時、他者の承認というのは、結局のところ、単なる無関心の意味でしょう」

それにしても全体を通して傍点が多すぎて、その各傍点の打たれた意味や何を強調しているのかが分からなかった。頭のいい作者のことだからこの超大量の傍点にも何かしら意図があるんでしょうが・・・
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
410426007X
No.13:
(3pt)

後味が悲しかった。

登場人物の気持ちの細部まで描写が細かく、共感できる部分はたくさんありました。でも、最終的に救われない気持ちと「なぜ」という疑問が残ったままでした。
決壊〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:決壊〈下〉 (新潮文庫)より
4101290423
No.12:
(3pt)

ドストエフスキーの亜流

僕はこの小説を読みながら、「どうもドストエフスキーを意識しているのかな?」という印象が読みながら頭から離れなかった。次々に盛り込まれるテーマ、登場人物の過剰なモノローグetctc・・・。読後に他のレビュアーの方のレビューを読んでいたら、実際著者はドストエフスキーのスタイルを意識してこの作品をものしたらしい。だが、僕は上巻から盛り込まれすぎたテーマが後半にどうまとめるのか気になっていた。率直な印象をいうと上巻の完成度が低い。主人公崇の友人や同僚との観念的な芸術論や国際政治論も難解なだけで、主人公の人格描写としてストーリーラインに巧く融合していない。そして前半で家族問題もふくめたテーマを広げすぎた結果、それを下巻でまとめようとしているが、確かに下巻は前半のある意味伏線となったような家族問題らや「悪魔」と称する人間の問題もしっかり構成できている。しかし、一番欠けているのは、ドストエフスキーにみられる登場人物のある意味病的な人格の描写やモノローグにあるような、作品全体を貫く緊張感をたたえた筆力だ。このような多岐にわたるテーマを盛り込んだ場合、読者をひきつけつづけるのは前述した筆力が必須となるし、それがストーリーテリングの核となると思う。残念ながら本作にはそれがない。そのパワーがないと、こういったスタイルの小説は「理に落ちる」結果に終わる。著者の平野啓一郎氏が一切の手抜きなく本作をものしたのはよくわかるし、現代をとらえた大力作であることは間違いない。だが、折々に挿入される特に崇の長セリフのような言葉も盛り込みすぎたテーマに収拾をつけるための「理に落ちる」結果に終わっているような結果にしか見えないし、前述した筆力の欠落からどうも引き付けられない読書となったのが本作の率直な印象だ。
追記・本作発表前に『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)』という圧倒的におもしろい漫画が発表されているが、平野氏はその作品も意識していたのではないかな・・・。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
410426007X
No.11:
(3pt)

早く文豪になりた〜い

「決壊」に限らず、僕が平野作品を読んでいつも感じることは、登場人物に魅力がないということです。
その理由を考えるに、筆者が作品に対して完全にメタな位置を確保して、自分を脅かすような「他者性」を抱く人物を造形できないという点にあるように思います。それが端的に表れているのが、登場する女性の「薄っぺらさ」でしょう。筆者の人物造形には「人間こんなものだろう」というような侮り、もしくは人生経験の乏しさが現れてしまっています。
筆者の適性は文学より批評なのでしょう。ペラペラと筆者の代弁をする人物が出てくるとそう感じてしまいます。

「臆病な自尊心」を持つ筆者が葛藤の末に通俗性あふれる題材を描ききった点を評価して、虎の子の星三つです。
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4101290423
No.10:
(3pt)

ドストエフスキーには全く及ばない

この作品の『二 沢野崇の帰郷』で崇が幻に向かって喋る場面、そして兄弟の会話の場面は、「崇は『カラマーゾフの兄弟』のイワンを参考にしているのだな」と感じながら面白く読めた。しかし、作品全体を振り返ってみると、ドストエフスキーと比較するのは失礼ではないかと思う。

ドストエフスキーの長編には《キリスト》という大きなテーマがあり、殺人事件はその中で起こるエピソードの一つであった。だが、『決壊』では殺人事件そのものの比重が大きく、ほとんどそれだけを描くに留まっている。もっとも、『四 悪魔』でキリストの話が少し出て来るが、福音書とは無関係の表面的な話であり、作者のキリスト教への関心の低さが伺える。

しかし、詳細な描写によって、読者が作中の出来事をまるで眼の前で見ているかのようにリアルに感じさせる技能は素晴らしいものである。北九州の沢野家・TV番組・インターネット・警察・犯行現場などが迫真の筆力で表され、読者はそこで暗い衝撃を受けるだろう。

だがそれだけでは小説として素晴らしいということにはならない。作者は自分の外にある世の中をリアルに描いているものの、作者の内から溢れ出る情熱を感じられないのが残念だった。勿論、作者は作品に対して徹底的に忠実であろうとして、このように絶望的なストーリーにしたのだろう。だからストーリーへの文句は無いが、これだけの作品を書く際の創作意欲はどこから来たのか、その一端をもっと表してほしかった。この作者の『葬送』は面白かったし、素晴らしい技能を持っていることは本作で再確認できたのだから。

最後に言いたいのは、結末で崇は点字ブロックを跨いだものの、「線路に落ちた」とは書かれていないことだ。よって、崇が死んだとは決まっていない。崇の生死は読者の想像に委ねられている。私が思うに、線路に落ちていたら目線の高さからして運転手の顔など見えないだろう。
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4101290423
No.9:
(3pt)

力作だが、゙悪魔的゙なものがない

強い思想やテーマの盛り込まれた作品だ。
しかし、真の天才が書いたようなデーモニッシュなものはなく、「頭」で書かれたに過ぎない小説に思われる。

良介を殺した「悪魔」や友哉の人物造形も、どこか既視感があって、借り物のよう。
「悪魔」があんな人間になったのを酷い家庭環境のせいだと描写しているのも、友哉を育てた両親を、単に過保護的なママと子供に無関心っぽいパパと描いているのも、陳腐でオリジナリティが感じられず、作者がしょせん既存のデータでしか創作できない「秀才」どまりの作家であることを認識させる。

現代の異常性を「猟奇殺人」に象徴した作品はいくらでもあるし、犯人の動機が、怨恨や殺人趣味ではない、個人の奇妙な哲学に置かれるというのも、飽きるほど見てきた。
平野はまたそれを、お得意の華麗な修辞で焼き直したにすぎない。

平野は頭はよく、膨大な文学のデータベースを駆使する力を持っていると思う。 だが彼の才能は、ただその駆使の仕方が上手いという点だけに留まるものだ。自分で新たな思想や物語を創り出せる書き手ではないということを、この作品を読んで確信した。

「三島由紀夫の再来」。 このデビュー時の宣伝文句が、時が経つごとに虚しく感じられる。
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4101290423
No.8:
(3pt)

はっきり言って長すぎ

推理小説なのか、何なのか、現代を取り巻くいろいろな問題について書いてあり、面白いとは思いましたが、ただこの物語に上下合わせて1000ページ近くの長さが必要なんでしょうか?!
読むのにすごく時間がかかりました。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
410426007X
No.7:
(3pt)

分厚さに見合うだけのものを感じることができなかった

本の内容について賛否両論あるでしょうが、これほどまでの分量が必要だろうかと疑問を感じてしまった。特に会話については、ムダなものが多いと思えた。
恐らく、圧縮すれば一冊にまとまるはずだ。
それと本文中に新潮社の宣伝が出てくるのもいただけない。
新しい手法のCMなのだろうか?
2chからそのままコピペしたような話もつまらない。
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410426007X
No.6:
(3pt)

成熟を待つ

推理小説なのか、純文学の応用なのか、社会批評なのか、どのように読んでも読者の自由なのだろうが、この小説の場合は、いずれにしても生煮えの感が否めない。最初はアンチミステリーかとも思ったが、それには中井英夫『虚無への供物』という古典があり、その足元にも及ばない。犯罪に手を染める少年を生み出す現代的な家族への批評としては、スーザン・フォワード『毒になる親』などのノンフィクションが持つ迫真性と深みに欠ける。イラク戦争論の部分は興味深く読んだが、それでもトニー・ブレアの議会演説での参戦論には勝てない。作者によればこの小説は「ドストエフスキーの影響を受けている」そうだが、純文学を読むならドストエフスキーや、この作者の他の作品を読めばよい気もする。新しいタイプの小説の模索なのかもしれないが、完成品ではない。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
410426007X
No.5:
(3pt)

ワイドショーは、文学の素材たりえるか──。

“ワイドショー”(と、ワイドショー化した報道番組)は相も変わらず、
陰惨な殺人事件に多くの時間を割いている。
加害者(とTVが断じた人物)も被害者も徹底してプライバシーを暴かれ、
そしてこれが最大の問題なのだが、あらかじめ裁いてしまう。

それで、“冤罪”が頻出することになる。
たとえば、事件当時メディアを席巻した“和歌山カレー事件”にしろ、
“仙台・北陵クリニック事件”にしろ、
被告たちが無罪を主張する裁判は今もつづいている。
しかし、それについての報道はほとんどない。
もちろん、TVだけの責任に帰するつもりはない。

平野啓一郎著『決壊』は、
そんな“ワイドショー”が間違いなくトップニュースとするような
猟奇的な事件とその背景を、文学的な表現をもってていねいに書いている。
それでも、物語の前半でその後の事件に関わる関係者たちの日常を描いて、
それさえワイドショー的に見えてしまう。

ただ、私はミステリーの流儀に疎いが、
終盤になって新たな人物を登場させるのはどうなのだろう。

この物語を動かすもうひとつの要素──それは、ネット社会だ。
2004年にイラクで高遠菜穂子さんら3人が拉致された際、
彼女が海外からの連絡に使っていた掲示板に
書込みが殺到して閉鎖されるということがあった。
安否を心配するものばかりかと思ったら、そのほとんどは誹謗中傷だと聞いて驚いた。

当時も今も、ネット上にはびこる卑劣な言葉と精神とは
最も遠いところにありたいと願っている。
この作品では、たやすく増殖してしまう憎悪と他を排除する閉鎖空間が、
悲劇へと導いていく。

それにしても、救いのない物語だ。
これだけの筆力を持つ著者が800ページ近い紙幅を費やして描きたかったのは、
TVモニタが日々映しつづける“事件”と同等のものだったのだろうか。
あえて小説として読み直す必要があるのか、疑問が残った。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
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No.4:
(3pt)

時間が掛かる

分かりにくい比喩表現が多かったです。
ん?と一瞬立ち止まって読み返し、「ああ、比喩か」っていう感じで
なんども読みが止められてしまって非常に読みにくかったです。
上下巻本でも次のページが待ち遠しいほどの内容の本なら3日あれば
読めてしまうと思いますが、はっきりいってこの作品の場合は
最後まで読むのに非常に時間が掛かりました。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
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No.3:
(3pt)

決壊?

1ヶ月ほどで読み終えた。このテーマで、これだけしつこく書けるのは、この作家だけではないだろうか?今の時代を描くとしても、このようなニヒリズムを読者につきつけるのは、迷惑な話だ。そんなものは、個々が、勝手に絶望していればいいのだし、このニヒリズムを共有できる人たちは、この本を読まなくても深くそれを感じている。また、このニヒリズムを受け付けない人たちは、そもそもこの本を読まない。

いかなる作品であれ、人の元気を奪うものは良くない。

この作家は、資質的には、日本では中沢新一の近くにいると思う。なので、今回の作品の先にあるものを、どうにか描いて欲しい。平野啓一郎に読者が期待しているのは、それじゃないだろうか。「自殺よりはsex」とか言っている作家が、筆を折るような作品を書いてくれよ。

あと、大げさな表現が多すぎる。それが、読者と作家の微妙な距離を生んでいることも事実だと思う。それは、こんな表現をして申し訳ないような気がするが、昔の西洋かぶれの金髪のズラを被った演劇のようだ。

単純に、光を描くことは、許されないのだろうか。
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No.2:
(3pt)

幸福や価値観に疑問を感じた時に崩れ落ちるもの

潜在している反社会的な犯罪性が、日常に隣り合わせているかもしれない、
いつ自分がそれに巻き込まれてどん底に突き落とされてもおかしくない、という恐怖。
様々なおぞましさがネットという冷たい媒体を通じて、無情に好奇の目に晒され流布していく現実。
人間の幸福が遺伝と環境で先天的なものとして定められているはずだ、という冷徹な定理。
それを否定し死守することこそが「幸福でなさそうな人間」の存在意義なのかという懐疑。
表面的な幸福に満足できず、孤独なうちに自分の生きる意義を真面目に追及するとどうなるか。
不気味な【悪魔】が自分に内在しているものではないかと考えたときの戦慄。

自分が依存している幸福や価値感が、まやかしやヘラヘラした偽善で成立させられているだけの
空虚なものではないかと考えさせられた時に、この話が想起される気がする。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
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No.1:
(3pt)

決壊を読んで・・・

幻想とはここではないどこかできっと存在しているはずだが、永久に実感することのできない不在のことだ。近代が産み落とした「家族制度」と「幸福」という幻想、その崩壊をこの小説は描いている。もはや形骸化した「家族」の中で、あたかもそうするのが当然であり、それを演じることが「=幸福」であるかのように、父、母、兄、弟・・・といった「役」を登場人物達は演じようとするが、演じ切れない。陳腐化したOSに互換性のないソフトをインストールするかのように当然「家族」は機能せず、徐々に崩壊していく。個々の単位である「家族」の崩壊は、コンピュータウィルスのようにシステムの隙をつく「悪魔」(制度下で抑圧されていた遍在する悪意)の顕在化を招き、「家族」の集合である「社会」という巨大なネットワーク自体のシステムダウン(決壊)へと連鎖していく。
表現も人物描写も巧みであり、原稿用紙の空白を埋めるためのペダンチックなギミックもよしとしよう。しかし飽き飽きするほどにこの類のニュースが日々溢れる中で、この小説もやはり、それを小説という形で表現し、反復させただけで、この繰り返される退屈さから逃れるだけの「ズレ」がなかった。それとも、今更「文学」にそこまで期待することはもはや酷なのだろうか・・・。ついでに言うとこのインクまみれの装丁は迷惑以外の何物でもない、特に夏場は。本を読んだあとはよく手を洗いましょう。
決壊 上巻Amazon書評・レビュー:決壊 上巻より
410426007X

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