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リヴァイアサン



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【この小説が収録されている参考書籍】
リヴァイアサン
リヴァイアサン (新潮文庫)

リヴァイアサンの評価: 3.96/5点 レビュー 23件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.96pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全23件 1~20 1/2ページ
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No.23:
(4pt)

支離滅裂のアメリカ現代文学の一例

ベトナム戦争こそがソ連がアメリカに仕掛けた最大の破壊工作だと言ったアメリカの作家兼映画評論家がいた。競合する相手が互いに似て来るというのが社会学的真理、ciaだのfbiだのが、アメリカ国内で今も対テロ作戦を続行中、本書に遠いヒーローとして名前だけ出て来るジョン・ブラウンは十九世紀の反奴隷制運動の活動家、軍隊を組織して米軍兵器工場を襲撃、アメリカの奴隷制史には欠かせない人物。僕が個人的に翻訳している『西洋文化と奴隷制の問題』(1968年ピューリツアー賞)をどこの誰も出版してくれない。もっとも自由主義経済自体を否定している本なので、EUでも受け入れられていないかも。
リヴァイアサン (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:リヴァイアサン (新潮文庫)より
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No.22:
(2pt)

小さきものの大風呂敷

主人公の男は (これに関しては語り手の「私」も同様) 作家でインテリぶっているゆえに何か崇高な社会的大義を求めているタイプだけれど、頭の中は隙あらば女たちへの性的欲望でいっぱい。女たちの個性も、そんな彼らにとって都合のいいキャラクターになっている。ターニングポイントはいつも彼女らへの欲望からの愚かな行動が引き金になっていて、愚かさから自己憐憫におちいるが、それに続いて起こる出来事から勝手に使命を見いだしていく。まるで、何か使命がなければ生きる意味がないかのように。

常に誰かの存在を自分の人生の大義、自分の存在意義にしてしまうのは、エゴイスティックで依存的であると共に、一種の冷たさを感じた。その出来事の中に殺人事件も含まれるのだが、被害者への同情もあっという間に自分のための大義にすり替わっていく。

タイトルとストーリーの出だしから、何か物凄い意義深いことをやってのける人物を想像するのだが、実際は権力に怯える小心者で、煩悩に振り回されている。それがリアルではあるかもしれない。ヒーローのような人物はこの世に存在しない。

その小ささを何か物凄いことのように見せ、魅力的な人物のように描く言葉の魔力。人は言葉に容易に騙される。そこを描くことが作者の目的だったのだろうか?

確かに、世の中はそんな風にできている。崇高に見える大義は、俗人のエゴと下劣さと冷たい理論から端を発している。大義を優先すると、情とか感情の機微が薄っぺらくなる。その薄っぺらさをこの小説から感じた。

逆に、まさに世の中のそれを描きたかったのだとしたら、この小説はとてつもなくリアルだと思う。文章の上手さ、読みやすさは相変わらず。
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No.21:
(4pt)

上品なタランティーノ風かな

単行本1999年12月25日初版にて読了、
オースターは初読だが、作風がもっと純文学風だろうとかってに誤解していたのだった、
本作の場合、ミステリ風の中間小説調で始まり、後半には活劇調も増し、少しの退屈も感じないまま読み通した、
訳文がこなれた日本文になっており、とても読みやすく読書のスピードも軽快だった、
訳者による解説に”誰の物語ともいえない”のが本作の特徴と書かれており、オースターのカタログではそうなるようなのだが、今年2022年に読む限りでは、語り手である小説家による本人と彼が密に関係した小集団による群像劇として誰でも素直に楽しめると思う、

本作は1992年発表であり、クエンティン・タランティーノが映画レザボア・ドッグスを発表した年である、
以降のタランティーノ作品の充実やポール・トーマス・アンダソン監督の活躍を知っている私たちならアメリカの物語の語り方としてなんの違和感も感じずに済む、

読後感は爽やかだが全体としてそこはかとない甘さがあり、なにか物足りないものを感じもした、
今日現在の視点ではテロリスト・テロリズムに同情的な語り方に見える点と語り手である小説家が自意識過剰気味ゆえだろうか、人の目ばかり気にして他人の気持ちや思考に鈍感すぎるように思う、

以下蛇足、

最後の一文も最終パラグラフも一流作家らしい見事さがあり、上等な小説としてはこれで良いと思うが、読者レベルを少し下げてより分かりやすくするなら、もう一章あってもよいだろう、
と思ったら以下の小説のようなものを思いついた、

ハリスが一人でやってきたのは彼の思いやりだったのだろう、
もし私がリヴァイアサンの原稿を彼に渡さなければ、おそらく私にFBIへの出頭を促す予定だったに違いなく、私が彼の意向に従いFBIを訪問した場合、最悪そのまま身柄を拘束される可能性もあったのだと思う、
原稿を受け取り流し読みしたハリスはさすがに驚いていたが、とりあえずこのまま局へ持ち帰り、あす今後について電話すると言い残して帰っていった、

翌日、ランチをとっているとハリスから電話があった、
原稿でおよそサックスの行動はわかったので、これから支局も動員して裏付け捜査が始まる、
ついてはあなたにも局へご足労願うことになると思うので当分州外へは出ず、いつでも連絡がつくようにしてほしいとのことだった、
テロリストの活動を知りながら放任した責任はあるので、なにがしかの罰を覚悟した半年ほどが過ぎた頃、起訴猶予となった、

エージェントと相談した結果、リヴァイアサンは発表することにした、
人名とエピソードを時系列を再整理し、高校生でも読書好きなら楽に読めるレベルに推敲して発売してみると予想以上の反響を呼び、結果私のキャリア最大のヒット作になってしまった、
私をゲイリー・シニーズが、サックスをトム・ハンクスが演じた映画まで作られそちらは大ヒットしてしまい、いまでは私の本よりも映画のDVDのほうが有名な状態である、

ディマジオの16万ドルの出所はけっきょくFBIでも突き止められなかった、
ハリスがつぶやくには、カルト教団の軍資金の可能性が高いらしいが、盗難届が出されるはずもなく結局迷宮入りだった、
カルト教団はその後さらに犯罪集団との付き合いを強めてゆき、最終的にFBI&アルコール・タバコ・火器取締局と派手な銃撃戦を行い壊滅させられた、

リヴァイアサンがヒットした私はいちおうの流行作家の仲間入りである、
TVに出演し、あちこちで講演やキュレイターを頼まれ、生活はずいぶんとうるおい安定した、
その後も創作は数年に一作、合間にはエッセイや文芸批評を必ず出版するようになる、
サックスの記憶もだいぶ薄れた頃、あの日がやってくる、
2001年9月11日、

未了
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No.20:
(5pt)

だいすき

いい話
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No.19:
(4pt)

求心力の作家の野心作

オースターの作品はこれまで「ムーン・パレス」「孤独の発明」「ガラスの街」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」「偶然の音楽」と読んできて、今回は本作である。これまで読んだ作品の中で一番新しい作品だが、1992年作だから25年前の作品である。
無我夢中で読んでしまい、ストリーテラーとしての才能には毎度ながら感服するが、内的な感銘が弱い気がする。
読後「だから結局何なんだ」と自問してみて、読者としての自分自身は表面的で浅はかな読みに終始してしまったと反省したが、作品自体もストーリーの劇的な展開に傾きすぎるあまり、主題の掘り下げが不十分だったのではないか。
本作は従来の作品よりも登場人物が多様化し、従来にはない社会性や政治思想的な側面もあり、そこに新しさがあることはあった。だが、そんな新しさが活かされたというよりは、テーマやモチーフの散漫さや消化不十分さを否めないのが残念である。
思うにオースターは遠心力よりも求心力の秀でた作家だから、様々なモチーフを同時進行させながらポリフォニックな文学的世界を構築するタイプではなく、主人公の内面世界を深く掘り下げる方が向いているように改めて思われた。
作者の求心力を体現すべきサックスは、作者の得意な性格破産者的な絶望と暗闇を抱えた人物である反面、善人で社交的で誰からも愛される好人物でもある。
確かに魅力的な人物であり、申し分のない人物設定であり、サックスこそが本作の中心テーマを追究する担い手に違いない。
だが、この主人公が最終的に爆弾テロに向かう必然性の説得力が弱いように思うし、サックスと妻ファニーと、もう一人の主人公で語り手でもあるピーター・エアロンとの三角関係は大胆で強烈な設定でありながらサックスの反応は案外あっさりし過ぎている。
結局オースターが一番描きたかったものをつかめそうでつかめないそんな歯がゆさがどうしても残る。
いや、しかし、瑕疵を挙げてけなすのは本意ではないし、本作は読まないほうがいいというつもりもない。
オースターの苦心の跡として一読の価値はあると思うし、引き続き他の作品も読んでオースターという作家を私は見届けたい。
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No.18:
(2pt)

蛇行運転

オースター好きだからあえて辛口で。

他の人も指摘している通り、話にまとまりがない。主人公の親友に近い、サックスがいかにしてテロリスト?的な存在になったか、という点に話を絞ってる感がない。あれれ?って思っちゃう。というのも、主人公の結婚生活、恋人やサックスの妻やら、なんやらで話の風呂敷を広げすぎて読んでて飽きる。
プロットは面白そうなのに、展開がダラダラと右に左にズレてようやくサックス君に辿りつく。加えて会話が圧倒的に少ないのでキャラ設定がしっかりとできていない。
ガッカリ。
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No.17:
(5pt)

傑作というより力作!深く生きた男の物語

人それぞれが心の闇に持つ、その闇の中に潜むリバイアサン。もう一人の自分という得体の知れない化物をどうやって上手く飼い慣らすのか。
 まず感心するのは、登場人物像の奥行きと深さと重さだ。誰もがそれぞれに独自のリバイアサンを心の闇に抱え、一見何不自由なく生きている。オースターの作品には人生の”何でもあり”が詰まってる。彼のファンの一人から贔屓目に言わせてもらえば、整備されたアスファルトならフィッツジェラルド、原生林の中を走らせたらカポーティ、何でもありのオフロードなら著者の領域である。
 彼の文才は上記の偉大なる二人に比べても勝るとも劣らない。天才的というより多才的。傑作というより力作。よくもここまでいろんな事を考えつくもんだなって、読む度に感心する。
 この本は、ものを書く事でもう一人の自分と上手く共存する男と、物書きを諦め、心の闇の中のリバイアサンに支配され、宿命に運命を重ね合わせる男との友情の物語。"現実の国家は腐敗しても、その現実の国家が目指す理想の国家は理念として生き続ける"と、訳者の柴田氏も語っておられるが、人の心が腐敗してもその人の持つ理想と理念は、死んだ後も延々と行き続ける。
 爆発魔に成り下がった狂気の怪人が、最後は自ら爆死してその波乱と奇才に満ちた生涯を誰にも知られることなく終える。それを知ってるのは、生涯最高の友人でもある売れないこの本の主人公でもある小説家のピーターだけだ。
 彼の生涯の友人であるサックスの狂気に満ちた犯罪の一部始終を、ある日突然聞かされる。ピーターに出来る事は、沈黙と彼の物語を小説にすることだけだ。自分に対する義務と彼に対する友情が良心を曇らせてしまう。しかし、サックスが自らの生を犠牲にし、最後には、心の闇深くに脈々と佇むリバイアサンを抹殺する。
 彼が自らの狂気と錯綜から自分を開放したように、ピーターも自らの義務と彼への友情から我が身を開放する。"彼はもう死んだんだ、全て話しても構わないさ"と言い放ち、小説化する予定だった書き溜めた分厚い原稿をアッサリとFBIに手渡す。彼が必死で涙をこらえるこのエンディングには、流石にこちらまで熱くなる。まるで、チャンドラーの『長いお別れ』を再現するようでもある。ロストジェネ世代の傑作を凌ぐほどの力作と言っても過言ではない。
 "深く生きた"男の叫び。まさにそれが聞こえてきそうな”男の物語”である。
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No.16:
(5pt)

リヴァイアサン

迅速かつ丁寧な梱包、ありがとうございました。また機会があればよろしくお願いいたします。
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No.15:
(3pt)

物語としての核のようなものがない気がしてしまう

自分が感じたこの作品の主題は「人間は結局のところ自分の言葉で作り上げた世界の中でのみ生きているのだ。 それに抗おうとするも無駄である。 何故なら他者と隔たる自己なくしてはそもそも世界は始まらないからだ。 しかしその無駄は人生は意味のあるものか無駄であるかといったこととは何の関係もない。 それに抗うことが無駄なことは、ただ事実であり、受け入れねばならぬものなのだ。 ルールを受け入れて初めて皆自分の物語に入れるのだ」というものです。 文だけを取り出してみると、好きだなと思える文はたくさんありました。 けれど小説としては全てが中途半端な印象を受けました。
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No.14:
(3pt)

なぜここまで広がりすぎたのだろうか・・・・。

本作の評価はイッパツマンさんのレビューで的確に捉えられていると思う。従ってその繰り返しになってしまうと思うのだが、拙文を記してみる。〜本作は文庫巻末の訳者・柴田元幸氏の文章にあるようポール・オースターの作品の中では「誰の物語」と整理できないところに特色がある。なるほど、個々のエピソードや心理描写はさすがに巧く、それぞれが一個の中編や短編として成立してしまうレベルにある。しかし作劇の基本に立ち戻ってみると、冒頭からある政治性を帯びた謎の事件ではじまり、そこを中心とするのであれば、個々のエピソードと心理劇はサックスがなぜあのような行為を起こすに至ったのかを、間接的にあぶり出すものとして機能していなくてはならないはずだ。しかし、前述したように--いくつかの例外はあれ--サックスの事件とはほぼ関わりないかたちでそれぞれのエピソードが完結してしまっている。特に前半部分のピーターを中心としたエピソードは余りに長く、僕としては冗漫に感じた。
単純に言ってしまうと、作品全体が個々のエピソードで完結しすぎ、--イッパツマンさんの表現をお借りするしかないのだが--一つの作品としてテーマが絞り込めていないのだ。〜著者はおそらく青年期から中年期にいたる群像劇を作りたかったのだと思う。そうであれば、もっと長い作品としてサックスのエピソードをワンオブゼムと設計することによって、本作より大きな物語に仕上げるべきだったのではないか。本作の作劇スタイルに沿っていえば、残念ながらやはり、焦点が絞りこめていない、としか言いようがないのだ。
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No.13:
(3pt)

散漫:オースターにしては焦点が絞りきれてない作品

オースターによるアメリカ論的小説としては、邦訳されているものでは「ムーン・パレス」が挙げられるが、「自由の女神」を破壊して回る男を描いたこの小説が「リヴァイアサン」と名付けられている以上、僕はそのような内容を本作にも期待した。そして、僕の今回の星付が渋目である理由は、この「自由の女神」の破壊者がそうするようになった理由、動機が(多分わざと)明瞭に書かれていないからだ。

 勿論、人間心理なんて相当いい加減で不条理なものであり、本来、僕はミステリー小説にありがちな非常に一義的で明確な動機というものが出てくるとシラけてしまうタイプの読者である。それなんだけど、「自由の女神」が破壊されるという政治性を帯びた事件のインパクトで冒頭から引っ張っていこうという構成の小説なんだから、「事故のケガがきっかけで常軌を逃した男が起こす事件」というオチはなんか弱くないだろうか。また、このオチが早々に明かされた後に彼の周囲の人間達の心理劇が延々続くことも、構成上散漫ではあっても、このオチの弱さをフォローしきれていないと思うのだ。オースターにしては珍しく、焦点が絞りきれていない小説なように思うんですよね。

 ただ、現代美術家のピピロッティ・リストをモデルにした登場人物が出てきて、後に本作品をリスト自身がパロディ化する作品を作るなど、面白いエピソードもあるにはあるので、総合点で星は3つ点けました。
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No.12:
(5pt)

食わず嫌いだったかも

これも古い本だが、いまさらながら、いい小説だ。なぜ、今まで、ポール・オースターを読むのを敬遠していたのか。こんなに、自分にしっくりくる小説家もいないなぁ。

食わず嫌いだったのかもしれない。まだまだ読むべき小説家はいそうだ。

そんなオースターの作品でも、この作品はかなり自分好み。主人公というよりは、その友人が自分には親しみがわく。作中で彼の書いた小説、「新コロッサス」って読んでみたい小説だ。
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No.11:
(5pt)

最高傑作ではない、、、彼がまだ生きているから

というくらい、いままでで一番、重く、なおかつ、夜どおし読んでしまうほど、おもしろい。

わけのわからない結果と原因を提示され、「なんでやねん!」とつっこみつつも、好奇心で読みつづけ、「なるほど。そいうわけか」と思った矢先、次にまた「なんでやねん!」とつっこんでは、「なるほど。そいうわけか」と…というのが連続し、どんどん物語に引き寄せられる。そして、その全体の構成がこれと同じ。

ポールオースターってだいたいいつもこんなんやけど、偶然の音楽とかムーンパレスって尻切れトンボって感じがしたのに、これには、完結した感があって、心にいつまでも「リバイアサン」の塊を持てるような気がする。本ってのは、読ませる力(オースターにはどの作品にもある)も大切やけど、残るというのが一番大事な気がする。
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No.10:
(4pt)

奇妙な

奇妙なおかしさがあり、しかし物悲しさもありの長編小説。

謎だらけで展開していきます。

ささいなことで人生は変わるんだ、と妙に納得させられてしまいました。

それはオースターの力なんでしょうか。

ずしんと重く響く作品です。
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No.9:
(5pt)

登場人物の心の描写が素晴らしい

ここでの評価や他のblog等で評判がよかったので読みました。

ポールオースターの作品を初めて読んだのですが、

とても良くできた作品だと思います。

久しぶりに人に紹介できる作品にめぐり合えて本当によかったです。
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No.8:
(1pt)

著者も認めるまとまりの無さ

大仰なタイトルや冒頭で「私」の友人が事故で爆死したことと、その後の記述には必然性も脈絡もない。そもそも登場人物が十分に書き分けられていない。主人公や友人は「作家」らしいが、創作の苦しみなどなく、放蕩に身をもち崩している。登場する何人かの女性も個性的なようでやはり書き分けられていない。どうしてこんな小説がまかり通るのかというと、米国の文化そのものがローコンテクスト、つまり「ことば」に込められる意味が平板で奥行きがないためだ。それ故著者はこれでもか、これでもかというように日常的な出来事を書き連ねていかねばならなくなる。その単調さを拭うためにところどころに不倫や殺人事件を配しているが、これも何の必然性もなく進行する。全体は大きく3つくらいの部分に分けられ、別々に書いたものを無理やりつないだとも見える。どこをとっても面白くもないこの小説を何とか読みやすくしようとした訳者の努力には敬意を表する。「訳者あとがき」には訳者の苦悩のあとが窺われる。時間を持て余している人、文学を口にはするが実は感性の無い人、ことばを大事にしない人にはうってつけである。多分映画化すると脚本家の手が入ってなかなかの作品にはなるだろう。ただし、原作とはかなり違ったものになることは止むを得ない。
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No.7:
(5pt)

事件が起こる探偵小説

ニューヨーク3部作を評して、犯人のいない探偵小説、事件の起こらない探偵小説とよく目にしますが、リヴァイアサンはまさに事件の起こる探偵小説です。

もちろん、共和党政治に対する市井からの批判という側面も、分割された自伝(複数の主人公たちによる分割)という側面も、恋愛小説という側面もあり、一言では規定できないというのは、オースターのいつもの通りです。小説の使命は「現実はいつも君が考えているよりも複雑だ」ということを認識させることだ、と看破したのは、クンデラですが、オースターの小説はいつもその意味で優れています。

「鍵のかかった部屋」を読み終えたとき、「着地点をすべて用意しなくても気持ちがいい、というスタイルがあるのだな」と思ったのですが、リヴァイアサンは絶妙の着地点で、失礼、泣けてしまいました。

わたしにとってオースター作品ベストワンです。
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4102451072
No.6:
(5pt)

オースターが斬る80年代のアメリカ

ニューヨーク3部作では見せることがなかった作者の社会性を前面に出した作品である。最近のインタヴューなどからも明らかなように、オースターは共和党による政治をかなり悲観的に捉えている。しかし、アメリカが根底に抱えているデモクラシーという理念は決して悪いものではないのだ、ということを彼はこの本ではっきり説いている。いくらアメリカが悪い方向へ進もうとも、現状を打開できる手段はデモクラシーによるしかないのだと彼は主張している。ブッシュ政権が力を握っている今でこそ、この本は読まれるべきなのかもしれない。
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No.5:
(5pt)

心理描写の天才

『偶然の音楽』に続く、ポール・オースターの長編小説。 今回の『リヴァイアサン』では、実際に時が流れるのは6日前から「いま」に至るまでのたった6日間(語り手ピーターが、この話を書きはじめてから書き終わるまでに費やした時間だ)。だが、話の舞台はこの6日間にあるのではなく、6日前の友人サックスの爆死が起きるにいたるまでにある(この爆死がピーターをして話を書く気にさせた)。なぜサックスが爆死をしたのか、その回想と告白をピーターがえんえんと書くわけだ。 重要な登場人物は全部で10人くらい出てくる。テレビガイドでよく見る相関関係図を見ているようだった。ただこの小説の場合、引かれるラインの数がとても多い。語り手ピーターと爆死したサックスのラインを中心にして、人物から人物へと「親友」「片思い」「セックスフレンド」などいろんな種類の矢印が放たれる。 これはプロだから当たり前なのかもしれないけれど、それだけの相関関係(それと起きたエピソードの時制関係)を著者自身が頭の中で整理して、かつ読者に自然に植え付けるその離れ業は見事だ。各人物の奥底にある心理を、10人以上にわたって細緻に描写するのだから、まったくこの著者の人間に対する洞察力とはすごいものがある。 ある偶然によって話の展開が進むことはこれまでのオースターの作品によくあった。今回も後半のある重要な場面で、まったくの偶然がサックスの死に至る遠因をつくるシーンがある。ただ、偶然が物語を支配するトーンはやや薄くなった気がする。それはそれで、偶然にあまりにも頼り過ぎるのもどうかと思うので、よかったと思う。「自由の女神」がこの物語の象徴としてたびたび使われる。アメリカ人にとっては、心に響く何かがあるのかもしれない。日本人である自分にとっては、そうした象徴性から感じられるものは少なかった。
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4102451072
No.4:
(4pt)

二つの問題

オースターがこだわっているように見える二つの問題は、「人は世界に対して全く無関心になれるのか」と「人が一瞬にして変われるのか」という問題のように思える。人は一瞬にして変われないから、破滅した人間(この本ではサックス)も、実は破滅する前からずっとそれを待ち望んでいたのだ、ということになる。すると主人公がサックスを物凄く強い男だと思って崇拝していた頃から、サックスには弱い面もあったことになって、主人公はその両面性に混乱する。この本では善悪、強弱、正誤の両面性が繰り返し出て、主人公は世界を簡単には割り切れないものと知り、いっさいを超越した無関心に浸されていく。無関心は力を生み、この作品の場合、主人公の小説執筆が進む(だからこの本のサビは、ラストよりずっと前の、サックスに不倫がばれる場面にある)。

世界に対する簡単な割り切ったものの見方が横行する中で、オースターのこの両面性に対する配慮─分厚いものの見方─がどのような力を持つのか(今はまだはっきり書けていないと思う。主人公の執筆している小説の中身がそれに当たると思うのだが、それが空白のままなので)。彼はこの点を中心に据えて、分厚い質感の作品を作り続けていくと思う。
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4102451072

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