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愛の徴 天国の方角
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愛の徴 天国の方角の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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フランスやイタリアを舞台にした歴史小説と、量子コンピューターの操作という最先端科学の物語が融合していくのは興味深い。本の内容は数年前に読んだが、本自体が行方不明なので、古書を買い直した。歴史小説のパートの中に画家のヴェラスケスが登場した。続編の「永遠の眺望」ではフェルメールが登場するとのこと。大いに期待していたが、なぜかこの続編が出版直後に姿を消したのが残念でならない。どんな理由があるのか知らないが、一読者として何とか続編を読みたい気もでいっぱいだ。 | ||||
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「だけど、―――くん、まさかあなたがホームズ役だなんて思わなかったわ」(547ページより) 第48回メフィスト賞受賞作にして、著者・近本洋一氏のデビュー作。上下段構成・約600ページと、これほどまでにデビュー作という形容が似合わない作品もあまりないのでは。 SFでもって歴史を紐解く、とキャッチフレーズでも謳っているので、読んでいる間は自然、コニー・ウィリス『ドゥームズデイ・ブック』や『犬は勘定に入れません』辺りと比較していたのだが、しかし読み終わってからの位置づけはウンベルト・エーコの『薔薇の名前』が近い。 知識を織物が如く拡げ、そうして読者にも同じレベルを求めてくる点など、結果として人を選ぶ要素を含んでいる。 しかしながら『中世』にて児童小説のように幻想的かつ冒険的に展開するアナのパートと、 『現在』において次々と量子コンピューターが吐き出す資料を翻訳・読み解き、そうして仮説を打ち立てながらも自分自身の傷と向き合ったりする鈴(りん)のパートと、これだけの情報で我々読者も想像がついてしまうのだけれど、しかしその想像通り、いやもっと上をいく解答を出された時のカタルシスといったらもう! 興奮もするわ、涙も出るかもしれないわで、後半になるにつれ、てんやわんやだった。 最後にこの作品の『量子』を読み解く上で重要なキーワードを、 「見ていることは見られている側にもわかる」(59ページより) 「関係ってそうですよ。こっちが何か知ろうとすると、その行動が相手の態度を変えるんです」(63ページより) これって色恋だけでなく、読み手と本の関係にも似てると思いません? | ||||
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量子コンピュータを重要なツールとして、17世紀のヨーロッパと近未来の沖縄とを舞台に描かれた第48回メフィスト賞受賞作品。率直な感想として、並みいる過去の同賞受賞作群の中でも一際異彩を放っていた。 初めてアマゾンにレビューを残すが(その理由は後述する)、私は二つの視点からこの作品に星五つを贈りたい。 とても映像的で、しかし、もし実際に映像化したらどこまでも陳腐な代物になってしまいそうな……小説だからこそ描きえた風景(=世界観)を、他に類を見ない稠密さで紡ぎ上げている。 SFともファンタジーとも、あるいは歴史ミステリとも言えるのだが、それらジャンル小説の属性は担保されているものの、だからと言ってただごった煮にするのでなく、物語の終結部に向かって全ての要素が精巧なパズルのピースとなって嵌めこまれていく(ことが最後に分かる!)。 一つひとつのエピソードが何とも美しい。読者の知識量をそれなりに要求してはくるが、とくに17世紀のステージでの挿話は、さながら宝石のようだ。風景と情景が目に浮かぶ。悲しみがほの暗く広がるストーリーのなかで、しかし登場人物たちは活き活きと思考し、言葉を発し、行動する。それも全て、小説のピースとしての意味を抱いて。 600ページクラスの大長編をここまで精密に造り込んだ、その並外れた構成力と筆力に、まず星五つである。 とはいえ、もし特定のジャンル小説的な物語を期待して読み始めたら、本作は捉えどころのない焦点のぼやけたものに感じられてしまうかもしれない。なぜなら、本作は数々の「ジャンル」こそをピースにして、また別のおそらくは以下のような物語を紡いでいるのだから。 この小説は「残された者たち」の物語なのだと思う。このことを理解した瞬間に、私はいま一度、星を五つ捧げたくなった。 私が本作を読まなくてはと決意したのは、「伝説的な書店員」雪雪氏が、数年の沈黙を経て再開したブログで早々に感想を記していたためである。雪雪氏は本作を「人間賛歌」的だと少々不満気な様子だが……私は敢えてそれに異を唱えたい(そのためにレビューを書くことにしたのだ)。 「残された者たち」は、残された悲しみを抱えて、前を向かなくてはならない。前を向いたところで悲しみが消えるわけでもない。残されたことを受け止めるのみだ。 それは、真に一般的なことで、たとえば都会で毎日電車に乗っているだけでも想像できることだ。文学なればこそのレアケースとは位相の違う悲しみ。本作は、この「悲しみ」を描いている。単なる賛歌とは言えないだろう。 エピローグからの近未来のステージでは、涙腺が弛むばかりだった。本作が包摂する膨大な知識量と情報量。そして卓抜な構成と筆力が、全てこの「悲しみ」に収斂していくことに、驚きを覚えずにはいられない。 作者はなにゆえにこの小説世界を構築したのか……エンターテインメントとは違う意味合いでの「文学」として本作を見つめると、私には全く別の感動が立ち上がってきた。どちらが作品の核なのか、再読して掴んでみたいと思う。そう思わせる小説だった。 結びとして。 巻末に掲載されている次作の広告について。背景の画像が何か分かれば、添えられた惹句と併せニヤリとせずにはいられないと思います。まったくもって油断ならない一冊でした。 | ||||
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