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審判
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審判の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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先に読んだD.W. バッファの『弁護』から興味を持ったので在庫のなかから著者の第三作目『審判』を見つけたので読むことにした。 本書は、2002年7月に発行されてものだから評者が読んでから13年時が過ぎたことになる。 本書『審判』も弁護士「ジョーゼフ・アントネッリ」を主人公とするリーガル・サスペンスものなのだが、読了して先に読んだ『弁護』のほうが作品としての完成度が高いように感じたのは評者だけでなないだろう。 アントネッリの初恋の人の登場から二人の濃密な関係修復などへの描写が長々と書かれてるのが、先を知りたい読者にはイライラ感を与えただろうと思ってしまった。 もちろん評者もその一人であるが、先に読んだ『弁護』に登場する恋人のアレグサンドラは、事件に大きく関与していたが、本書に登場する初恋の人ジェニファーは、事件そのものに直接かかわりがないから二人が楽しむドライブやレストランでの情景描写などページを飛ばしたくなってしまった。 ネタバレを承知で書かせてもらえば、著者がこの物語の最後で主人公アントネッリを、『弁護』と同じように「ハッピーエンド」で終わらせない布石と思えば納得できるのだが・・・。 ハッピーエンドとは言えない最終ページで、アントネッリに語たらせる描写などは、意外と爽やかさを感じるのは著者の才能のなせる技なのだろうと感じてしまった。 評者は、13年前に読んだ本書を再読したのだが、物語の内容をかなり記憶していたので『審判』ほど楽しく読み進むことはできはしなかった。 が、著者D.W. バッファは、シカゴ大学を卒業後、オレゴン州で弁護士を開業、刑事裁判では十五戦全勝という無敗の記録をうちたてた経験をもつ、いわゆるアメリカでのやりての弁護士だったから、著者の作品のなかで出てくる法廷でのリアリテイあふれる描写力が読み手を魅了してしまうのである。 子供のころロシアから亡命してきた古書店主のチチェリンなどとの交流で語り合うロシア文学やスターリンなどのエピソードを挿入する著者の博識なども著者の作品には多く挿入されているから、本作もたんなるリーガル・サスペンスものでは味わえない独自の魅力となっている秀作であると評価したい。 | ||||
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何ら法はおかしていないものの、知る限りもっとも邪悪な存在と思われる判事が殺された。 逮捕されたのはホームレスだが、何も語らないまま、留置所で自殺してしまう。 続いて別の判事が同じように殺されたとき、事件は模倣犯として片づけられそうになるが、 Antonelliは偶然とは思えないつながりに気づく。 それは、自分も深く関わる12年前のできごとにさかのぼることだった…。 孤高の敏腕弁護士、Joseph Antonelli シリーズ第三弾です。 いつもながら裁判シーンは痛快ですし、真相をときあかしていく過程を読むのも快感です。 意外性や劇的な展開ばかりをねらわず、人の深淵を考えさせるプロットが、深みを与えていると思います。 今回も、彼をとりまく人間たちの人生の痛み、人の欲望の残酷さ、悪意の深遠さを考えさせられます。 何より、社交的には不器用で内向的だけれど、 数少ない友人たちが暖かく見守らずにはいられない人物像が魅力的で、 読み続けずにはいられないシリーズです。 一作ずつ独立していますので、ストーリー理解のうえでは、必ずしもさかのぼって読む必要はありませんが、 特に一作目 The Deffence を読むと、彼が住んでいる豪邸や蔵書の訳、 かつてはどんな弁護をして、どんな恋愛をしてきたか、 そのAntonelli の人となりの背景がわかって、より魅力的に感じられると思います。 | ||||
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彼の作品は、読ませるのです。 裁判で勝ったり、負けたりしても、 そこが終わりではなくて、 事件を中心に、かかわった人の運命は すべて変わっていく、 そのどうしようもなさが書かれていて、 実に読ませるのです。 | ||||
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リーガルサスペンスというと、マンネリ化した小説が多々多いという印象を持つ人もかなりいると思う。確かに日米含め最近のミステリー界ではなかなか新作がめっぽう少なくなった分野とも思う。 でもバッハの小説は主人公のアントネッリの魅力十分に説得力ある文章表現から、登場人物の心の中を鋭利に抉り出す、そんな印象である。ぎらぎらした小説でもなく、どちらかというと物語の出だしから中盤までは地味な印象も強いが、最後まで読むとその読後感がなんともいえない。とりわけ今回の最終部分の展開は印象に残る、まるで映画でも見ているようなリアルさも感じえる。 精神異常者の犯罪という題材も、最近の日本社会に結構多い事件だが、実にタイムリーな作品とも言えそうである。 「弁護」「訴追」そして「審判」とまさに三部作の最終章なのだろうか、今回の作品には前二作になかった重厚感と趣が携わった傑作といいたい。早くも自作を読んでみたい。 | ||||
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バッファのリーガルサスペンスはどことなく地味。それは、真実が解き明かされていくのと平行して登場人物の内面も深く追っているからかもしれない。外側にある事件の事実と内側にある人々の心理が同時に展開することで、真実の「からくり」が立体的に描かれている。多くのリーガルサスペンスがロジックの閃きやキレを「華」として展開するのに比較するとこれが地味に感じられるのだろう。悪く言えば独特の重苦しさがあるが、いわゆる「ドラマ」としての面白さがある。 今回のシリーズは精神障害が随所に絡む物語になっていて更に重さが増している(といってもサイコサスペンス的なところは全くない)。病んだ精神が呼応し連鎖して殺人が起こるというからくりだが、それが関わる人々の心の歪も揺さぶりつつ解明されていく。誰もが抱える精神のアンバランスが、ある時は破滅に向かいある時は新たな成長に向かう。そんなことが事件と弁護を通して語られている。 精神障害者の犯罪の扱いが議論を呼んでいるこの頃。この国ではとかく責任能力や人権云々に議論が集中している。どんな物事でもそれが生じた外側と内側両方の「からくり」を理解しない限り、何の判断も出来ないはず。犯罪の深刻さと犯罪者の断面的な責任能力を秤にかけて答えが出るようなものでもない。たかが(?)娯楽小説からそんなことを考えてしまった。 | ||||
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派手な格闘シーンがあるわけでもなく、終始落ち着いた調子で書かれているのにもかかわらず、なんて毎晩、毎晩ワクワクさせてくれたのでしょう。この1ケ月間、毎日地獄のような朝を迎えることになりました。D.W.Buffaの小説は、時間の経過をうまく使い、過去のいろいろなピースが最後にはそれぞれ正しい位置にカチリとはまり、一枚の絵となり盛り上がった週末を迎えます。前作の‘The Prosecution’はいまいちでしたが、処女作‘The Defence’はこのような書き方をしていて、今回の ‘The Judgment’はさらに磨きがかかった感じで、私には ‘The Defence’より面白かったです。何一つ無駄がなく、本当によく出来た小説です。最後のほうにJosephが若い頃に弁護したJanet Larkin の娘まで登場させたのは、やり過ぎの感じもしましたけど、これはこれで、緊張感のある話にホッとしたものを与えてくれたのでいいとしましょう。D.W.Buffaの小説の好きなことの一つに、最終章が素晴らしいこと。読後感がとてもよく、明日も生きていこうね、という気が起きます。 彼の三つの小説の主人公はいずれもJoseph Antonelliなのでシリーズ化するおつもりなのでしょうか。個人的にJosephのファンでもある私はそうなるといいなと思っていますけど・・ | ||||
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