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暗き炎 チューダー王朝弁護士シャードレイク
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【この小説が収録されている参考書籍】
暗き炎 チューダー王朝弁護士シャードレイクの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.56pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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主人公の分裂した魂を象徴するような二つの事件は、結局繋がることなく、それぞれに決着を迎えます。が、主人公の内面では二つが密接に絡み合って、新たに世界と関わり合ってゆく道筋を作っていってくれることになります。 全く絶望しきって、自分はスケープゴートとしてこのまま死んでゆくしか道はないのだと思い込んでいる少女を救うことで、主人公は少女のみならす、自身の魂をも救うことになります。 それを助けてくれることになるのが、もう一つの事件のために助手として押し付けられた傍若無人な若い男であり、その男もまた深く傷付いていて、その上に事件が解決されなければ生きてゆく道を失うかもしれないという崖っぷちに立っている、というのも象徴的です。 最後は三人共、無事に再生の道を歩み出せることとなる訳ですが、世界の方は、混沌としていた政治も社会もますますぐしゃぐしゃになった感があって、大丈夫かなあ、しかしヘンリー八世の時代のイギリスって、本当にこんなにも酷い世界だったのか…と、少々気が滅入りもします。 でも、どんな暗い世界でも、人は胸の内に希望の灯を持つことが出来るのだと、教えてくれる物語でもありました。ありがとうございます。 | ||||
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二作目も相変わらずの上手さで、一頁目からぐいぐい引き込まれます。 今回も暗い話ではありますが、修道院の中にずっと閉じ込められていた前作とは打って変わって、今度はロンドン中を駆けずり回るので、ちょっと解放感はありますし、二つの全く異なる事件を同時に手掛けることになるので、変化も楽しめます。 また変化と言えば、主人公自身も、前作の悲壮な体験を経て、それまで何十年もかけて形造ってきた信仰心も信念も、冷淡な外面も無残に崩れて、別人のようになっています。 この魂の危機をどう乗りきってゆくのか、が今作の一つのテーマのような気がします。 その上で二つの事件をどう解決に導くのか、又、二つの事件はどのように繋がってゆくのか、全く見えないだけに下巻もますます楽しみです。 | ||||
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他の方も指摘するとおり、本書の傑出した魅力は、ミステリーとしてよりも (とはいえロマンスやアクションの要素もあり充分に楽しめる)、チューダー期 イングランド/ロンドンの精彩に富んだ描写である。 それに加えて物語に深みを与えているのは、著者のヒューマニスティックな視点だ。 エラスムスに傾倒する主人公の弁護士は、物語の終盤で次のように述べる。 「なぜ信仰心はおおぜいの人間の悪意を引き出すんだろうか。 なぜ人々を―教皇派であれ改革派であれ―獣にしてしまうのか」(下319頁) 宗教戦争(コンフェッショナリズム)を克服するために絶対主義が求められた、 と現代の教科書は言う。しかし、かつてトマス・クロムウェルとともに宗教改革の 理想を熱く語り合った主人公が目の当たりにしているのは、政治権力の魔性により 変質した宗教的理想であり、また宗教を道具として人々(貴族から物乞いまで)を 翻弄する絶対王政であった。 圧倒的な権力を前にして、個人は無力かもしれない。しかし、ムーア人の親友 ガイ・モルトンと主人公との真摯な交流からは、それでもなお人間性は信頼に 値するものなのだ、という著者の想いが読み取れるように思う。 | ||||
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時代背景は、15世紀イングランドとかなりマニアックですが、登場人物のキャラクターに好感が持てます。 キーワードとなる「ギリシア火」かなりマニアックではないでしょうか。 | ||||
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前作同様、主人公やその周辺の人物に好印象。 イギリスの歴史ミステリでは、ヴィクトリア朝時代が多いのですが、 絶対主義確立期の時代背景が興味深かったです。 | ||||
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クロムウェル失脚の報を受け、姿を隠した二人。クロムウェル派への粛正が思いのほか軽微だったためロンドンに戻ってきた。さて、ここからこのコンビ、変転極まりない時代の中でどのような活躍を見せてくれるか。当時の法律や生活についてのの書き込みも興味深く、繰り返し読み楽しみがあります。続きが読みたい。 | ||||
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近世のロンドンを舞台にしたサスペンスです。 主人公の法廷弁護士、シャードレイクが引き受けた裁判と、クロムウェル卿から命じられた使命、この事件と使命がストーリーの主軸です。どちらの設定も非常にミステリアスで魅力的な状況設定であり、どのように展開していくのかと、まずは、グッと引き込まれます。 ただ、この展開は、途中でサスペンスが盛り上がるところもあるのですが、全編を通じてはやや単調に思えました。科学捜査というものがほとんど存在しないこの時代では、情報収集と推察、そして幸運だよりになってしまうのは、確かに止むを得ないところだとは思いますが、もう少し捻りやサプライズがあった方が良いかなとも思いました。 (帯書にある”CWA賞受賞”というのは歴史小説部門のようです) それでも、歴史物として、十分な満足感を得られました。史実とフィクションとの織り交ぜ方が見事で、舞台設定が非常にしっかりとしていたと思います。私はあまり世界史に触れたことがありませんが、その分、読んでいて勉強になりました。この時代の背景に精通されている方なら、なおのこと、楽しめるのでは、と思います。 当時の圧制と宗教改革のもとで生き抜く人々の必死さや苦しみが、ありありと伝わってきますし、さらに、当時の法制度や、政争の様子についても非常に仔細に描かれています。私欲と汚職とが絡む、当時の情勢がストーリーの展開に巧みに絡ませてあると思います。街中の雑然とした、さらには不衛生な様子までも非常に克明で、このような混迷した時代から、人間社会というものは、よくぞ、この現代まで発展できてこられたものだと(物語の本筋と離れた感想ですが)思いました。 本作品は前作からの続きであり、前作にまつわるエピソードも若干差し挟まれていますが、読みはじめがこの作品からでも、特に引っかかることなく、読み進められると思います。 | ||||
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ポール・ドハティの一連の英国時代推理ものである「アセルスタン修道士」や「ヒュー・コーベット」シリーズのファンとしては、これらの続巻の刊行がほぼ期待できない現状では、このサンソムのシャードレイクものに当面期待をかけざるを得ない。前作と通して読了してみて、同じ英国時代ミステリでも、グレゴリーの「ブーリン家の姉妹」シリーズのように、ほとんど史実を無視した荒唐無稽さもなく、時代考証はまずしっかりしているし、時代活劇として面白く読ませる。ただ、ミステリあるいは推理ものとしては、例えば本作などは、ギリシャ火薬の正体など、かなり早い段階での著者のネタばらしなど待つまでもなく、「あれ」のことだと見え透いているし、殺人のトリックなども極めて単純で問題外。むしろ本作の価値はストーリーテーリングの運びのうまさと、宗教改革の嵐が吹きすさぶ時代のリアルで臨場感のある風俗描写に見出せるだろう。何しろ、1540年=天文9年のロンドンの場末の、安女郎屋の内部まで読者を案内してくれる小説はちょっとない。二つの事件−国家機密がらみと、個人的に依頼された殺人事件の再調査とは、同時に別々に進行し、その間、たった10日間で、助手ただ一人を頼りに、主人公はMI6とヤード捜査官の両方を兼ねて、しかも文字通り首を賭けて、どちらも結果を出さねばならない。いやはやご苦労さまなことで。結局都合よく両者はうまくかみあって何とか決着がつき、めでたしめでたし。それにしても、最後に黒幕が登場する場面には笑える。これが往年の東映時代劇かザ・ガードマンそのままのパターンで、縛り上げられた善玉を、あっさり始末してしまえばよいものを、よせばいいのに地獄の土産話とばかりべらべらと得意そうに悪事の一切合財を開陳した挙句、お決まりであっさり逃げられてすべてパー、という次第。まあ、これはこれでご愛嬌ではある。それはさておき、史実では、事件の解決リミットの1540年6月10日がクロムウェルの娑婆での最後の日なので、読みはじめからどう折り合いをつけるかと心配したが、これも予定通り大逆罪でロンドン塔はタワーヒルの露と消え、手先だったシャードレイク以下二名は都合よくお咎めなし。おかげで無事に、生き延びたこの男の第三の事件が読める(多分)見通しになった。予定される続編は、ヨークを舞台に、新しい飼い主としてカンタベリー大僧正のトマス・クランマー猊下が登場するらしい。いずれこの坊主もスミスフィールドで灰にされてしまう運命だが、それはずっと後年のこと。わが「カジモド」探偵、いや失礼法廷弁護士閣下のご長命をお祈りしつつ、続巻に乞うご期待。ところでこのシャードレイク、かつてカジモドと法廷弁護士の両方を演じた太めの名優・チャールズ・ロートンをイメージしたとしか思えないのだが。 | ||||
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前作がとても好きで、読み返したばかりです。 ドキドキしながら読み始めて、読み終わるのが寂しくて、結末が知りたいけれど終わりたくない気持ち。こんな本はなかなかありません。 今回のシャードレイクは、クロムウェルから距離をおいて3年。 弁護士稼業に専念していますが、背中の障害について揶揄されてもそれほど卑屈にならず、前作より若返った印象です。前回は暗い中年男性というイメージで読んでいたのですが、今回は顔立ちの整った、脊柱後湾症をかかえつつも弁護士としての仕事に誇りを持って生きている男性という印象です。 またしてもクロムウェルから呼びつけられ、無実(と思われる)少女の重石責めを猶予するかわりに盗まれたギリシャ火薬の行方を追うことになります。少女のためを思うこともあるのでしょうが、袂を分かっていても、どんなにクロムウェルが野望をかなえるために卑怯なことをしていたとしても、シャードレイクの心のなかにクロムウェルを慕う気持ちが残っていたのではないかと思うのです。どんなに悪人でも、好きな人は好きなままなことがありますよね。 私はイギリスの歴史のディテイルは知らないので、クロムウェルがどういう道筋をたどるのかわからないままに読み、十分楽しめました。歴史をご存じの方は少し先が読めてしまうかもしれませんが、欧米のレビューを見てもサンソムの作品は全てが好評ですので、歴史に関しての知識の有無にかかわらず読み応えがあるといえるでしょう。 イギリス人に訊くと、『クロムウェルはすごく悪い奴だよ』という認識でした。野望を抱えて出世したけれど、最後はどこの国でも同じ盛者必衰の理が・・・。 サンソムは歴史学の博士号を取得し、自身も事務弁護士ですので物語のバックボーンもしっかりしています。 ケン・フォレットの『大聖堂』と毛色は全く異なるけれど、同じようにその時代に入り込める物語です。 本当に大好きで、期待を裏切らない作品です。 (シャードレイクの愛馬、チャンセリーが死んだときはホロリときました。シャードレイクが18歳のときに買った馬ですから、20年以上をともに過ごしています。馬って長生きなんですね。) | ||||
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