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暗き炎 チューダー王朝弁護士シャードレイク



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暗き炎 チューダー王朝弁護士シャードレイクの評価: 4.56/5点 レビュー 9件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.56pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

歴史背景の描写と時代考証が見事

近世のロンドンを舞台にしたサスペンスです。
主人公の法廷弁護士、シャードレイクが引き受けた裁判と、クロムウェル卿から命じられた使命、この事件と使命がストーリーの主軸です。どちらの設定も非常にミステリアスで魅力的な状況設定であり、どのように展開していくのかと、まずは、グッと引き込まれます。
ただ、この展開は、途中でサスペンスが盛り上がるところもあるのですが、全編を通じてはやや単調に思えました。科学捜査というものがほとんど存在しないこの時代では、情報収集と推察、そして幸運だよりになってしまうのは、確かに止むを得ないところだとは思いますが、もう少し捻りやサプライズがあった方が良いかなとも思いました。
(帯書にある”CWA賞受賞”というのは歴史小説部門のようです)
 
それでも、歴史物として、十分な満足感を得られました。史実とフィクションとの織り交ぜ方が見事で、舞台設定が非常にしっかりとしていたと思います。私はあまり世界史に触れたことがありませんが、その分、読んでいて勉強になりました。この時代の背景に精通されている方なら、なおのこと、楽しめるのでは、と思います。
 
当時の圧制と宗教改革のもとで生き抜く人々の必死さや苦しみが、ありありと伝わってきますし、さらに、当時の法制度や、政争の様子についても非常に仔細に描かれています。私欲と汚職とが絡む、当時の情勢がストーリーの展開に巧みに絡ませてあると思います。街中の雑然とした、さらには不衛生な様子までも非常に克明で、このような混迷した時代から、人間社会というものは、よくぞ、この現代まで発展できてこられたものだと(物語の本筋と離れた感想ですが)思いました。
 
本作品は前作からの続きであり、前作にまつわるエピソードも若干差し挟まれていますが、読みはじめがこの作品からでも、特に引っかかることなく、読み進められると思います。
暗き炎 下 チューダー王朝弁護士シャードレイク (チューダー王朝弁護士シャードレイク) (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:暗き炎 下 チューダー王朝弁護士シャードレイク (チューダー王朝弁護士シャードレイク) (集英社文庫)より
4087606716
No.1:
(3pt)

痛快娯楽時代劇としておすすめ

ポール・ドハティの一連の英国時代推理ものである「アセルスタン修道士」や「ヒュー・コーベット」シリーズのファンとしては、これらの続巻の刊行がほぼ期待できない現状では、このサンソムのシャードレイクものに当面期待をかけざるを得ない。前作と通して読了してみて、同じ英国時代ミステリでも、グレゴリーの「ブーリン家の姉妹」シリーズのように、ほとんど史実を無視した荒唐無稽さもなく、時代考証はまずしっかりしているし、時代活劇として面白く読ませる。ただ、ミステリあるいは推理ものとしては、例えば本作などは、ギリシャ火薬の正体など、かなり早い段階での著者のネタばらしなど待つまでもなく、「あれ」のことだと見え透いているし、殺人のトリックなども極めて単純で問題外。むしろ本作の価値はストーリーテーリングの運びのうまさと、宗教改革の嵐が吹きすさぶ時代のリアルで臨場感のある風俗描写に見出せるだろう。何しろ、1540年=天文9年のロンドンの場末の、安女郎屋の内部まで読者を案内してくれる小説はちょっとない。二つの事件−国家機密がらみと、個人的に依頼された殺人事件の再調査とは、同時に別々に進行し、その間、たった10日間で、助手ただ一人を頼りに、主人公はMI6とヤード捜査官の両方を兼ねて、しかも文字通り首を賭けて、どちらも結果を出さねばならない。いやはやご苦労さまなことで。結局都合よく両者はうまくかみあって何とか決着がつき、めでたしめでたし。それにしても、最後に黒幕が登場する場面には笑える。これが往年の東映時代劇かザ・ガードマンそのままのパターンで、縛り上げられた善玉を、あっさり始末してしまえばよいものを、よせばいいのに地獄の土産話とばかりべらべらと得意そうに悪事の一切合財を開陳した挙句、お決まりであっさり逃げられてすべてパー、という次第。まあ、これはこれでご愛嬌ではある。それはさておき、史実では、事件の解決リミットの1540年6月10日がクロムウェルの娑婆での最後の日なので、読みはじめからどう折り合いをつけるかと心配したが、これも予定通り大逆罪でロンドン塔はタワーヒルの露と消え、手先だったシャードレイク以下二名は都合よくお咎めなし。おかげで無事に、生き延びたこの男の第三の事件が読める(多分)見通しになった。予定される続編は、ヨークを舞台に、新しい飼い主としてカンタベリー大僧正のトマス・クランマー猊下が登場するらしい。いずれこの坊主もスミスフィールドで灰にされてしまう運命だが、それはずっと後年のこと。わが「カジモド」探偵、いや失礼法廷弁護士閣下のご長命をお祈りしつつ、続巻に乞うご期待。ところでこのシャードレイク、かつてカジモドと法廷弁護士の両方を演じた太めの名優・チャールズ・ロートンをイメージしたとしか思えないのだが。
暗き炎 下 チューダー王朝弁護士シャードレイク (チューダー王朝弁護士シャードレイク) (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:暗き炎 下 チューダー王朝弁護士シャードレイク (チューダー王朝弁護士シャードレイク) (集英社文庫)より
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