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都市と都市



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市の評価: 3.13/5点 レビュー 32件。 Eランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全32件 1~20 1/2ページ
12>>
No.32:
(2pt)

これSFじゃないよね?

『都市と都市』というタイトルから
クラークの『都市と星』と何かしら関連があるのかしらと思い。
また国境線がモザイクのように入り組んだ都市国家で起きた殺人事件
というプロットも面白く感じたので購入しました。
たくさん賞も取ってるみたいだし、SFだし。

100ページ読んで面白くない小説は最後まで読んでも面白くない。
というマイルールに従っても良かったのですが・・最後まで読みました。
面白くありませんでした。というか・・
カタカナ言葉が多くて何を言っているのかよく分かりませんでした。

あとこれSFじゃないよね?
解説で大森望が↑の『都市と星』との共通点とか、
本書がいかにSF小説として優れているか、とか色々言ってるけど、
そんな事言いだしたら夏目漱石の『吾輩は猫である』だって立派なSF小説に変貌するぜ。

本書はあくまで特殊な都市で発生した殺人事件を追う警察のストーリーだと思うし、
ミステリーとかファンタジーの範疇だと思う。
SFチックな設定を妄想する事は読者の勝手だけれどもさ。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.31:
(1pt)

ザ・キング・オブ・クズSF

そこで本書を手に取っている君。
是非買いなさい。買って私が味わった苦痛を味わいなさい。

ヒューゴー賞のみを取ったSFは読めたものではない。
ネビュラ賞のみを取ったSFは詰まらない。
ヒューゴー賞とネビュラ賞を両方取ったSFは確実に面白い。
この鉄壁の法則に次の一文を付け加えよう。
この5つの賞を同時に取ったSFは見つけ次第に焼き払うべし。手に取るだけでも時間の無駄だ。

まさに毒書とはこの本のためにある。詰まらない。だらだらしている。そして最後の1ページに至るまで面白いところが欠片も無い。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.30:
(1pt)

面白さが分からん

本書の何がそんなに特別だったのか私にはさっぱり分かりません。
2つの重なった都市。
私は物理的な壁は存在しないにしろ東ベルリンと西ベルリンをイメージして読みました。
が、お話が結構壮大な歴史的背景をもって進んでいく傍らでその歴史的背景がそこまで重要に物語に絡んでいるとは言い難く肩透かしをずっと食らい続けているうちに終わってしまったという感じです。
せっかく古代からの2つの都市の研究テーマのような題材を出しているのでその切り口をもっと見てみたかったというのが素直な感想です。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.29:
(1pt)

しんどかった

同じ作者の「ペルディード・ストリート・ステーション」を最初に読んだ。
”蒸気機関車と黒魔術が総べる”(だったかな)物語という、いかにも自分好みの世界観を期待したけれど、上下巻の長い話のわりに、いわゆる「物語」としてのカタルシスを(期待したほどには)感じることはできませんでした。
で、数々の賞に輝く本書ではあるが・・いやあ、読むのがしんどかった(;'・ω・)
ただでさえ馴染みにくい人名地名に加え、2つの都市を行きつ戻りつ展開する話の整理がつかず、加えて「物語」としての起伏や意外性も自分にとっては乏しく、とはいえ最後に何らかの瞠目があるかもしれずと読み進めたけど、「ペルディード・ストリート・ステーション」と同様、破綻も開放もなく淡々と終わってしまった印象。

おそらく異社会の構築やプロット作りには自分の興味を引くものがあると思うのだけど、やはり「物語」を求めて本を読む自分のとって、この人の話(と言っても2冊しか読んでませんが)は、あえてその「物語」を斜に外したような上から目線”を感じてしまうのですよ。
チャンドラーにも影響を受けたと言っているようだけど、綻びや説明不十分を補って余りある表現があるわけでもなく、ディックのように些細なプロットでも話に引き込むようなスピード感もなく(といっては身もふたもないが)、やたら小難しい話に仕上げることで、”僕って知的で高級なお話書いてるでしょ”と悦に入っているような気がしないでもないのですね。
ま、子の方はトールキンを嫌っているようなので、「指輪物語」と「デューン 砂の惑星」がマイフェイバリットの自分には、そもそも口に合わないんだろうな、あらためて思ってしまいました。
単に自分の好みではない作家であるということで、他の読者や鑑賞家にとっては、とても魅力的な話を紡ぐ作家のでしょう。でなければ、これだけいろんな賞をもらうわけないもんね。
しかしこれが、かって自分の親しんだSFやファンタジーの現在形ということになると、自分の好きだったどこか別のところにある「物語」世界としての小説は、どこにいってしまったんだろうか・・
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.28:
(3pt)

警察ハードボイルド+幻想文学+SF

"私は売店を〈見ない〉ようにしたが、〈嗅がない〉ようにしているその匂いの源が、私たちの向かっている先なのは明らかだった。『歩け』とアシルは言い、私を伴って両都市のあいだの皮膜をくぐり抜けた"2009年発刊の本書は主要な賞を独占した【モザイク状に組み合わさった2つの架空の都市国家】を舞台にしたディック–カフカ的読後感の一冊。

個人的にもSFは割と読んできたのですが。本書は未読であった事、また『メタルギア ソリッド』シリーズで知られるクリエイターの小島秀夫が紹介していた事から興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書はバルカン半島の真ん中あたり(推定)に位置する架空の都市国家、ベジェルの郊外住宅地で身元不明の女性の刺殺死体が発見される場面から始まり、主人公の刑事が調査を進めていく一人称ハードボイルド形式の【リアル警察小説としての展開が8割で】設定こそ物理的な壁がなく、同じ場所に互いに混在するも【両都市国家の国が存在しないものとしてふるまわなければならない】不条理さがSF的ではあるも、それ以外にはギミックも含めてSF要素がほぼ出てこないのに驚きました。

また、これが【翻訳の影響かは判断しかねるものの】ふたつの都市国家が同じ場所に共存することを認めてしまう違反行為、それを取り締まる組織、組織の存在する場所が全てが【ブリーチ】と一緒くたに呼ばれているわけですが。この単語が例えば『ブリーチしたので、ブリーチから来たブリーチが捕まえにきた』といった感じで本文中で頻出するのには、率直に言って、読みづらくて展開に集中できなく少し残念な読後感でした。(都市国家の設定はとても斬新だと思うのですが。。)

警察ハードボイルド+幻想文学+SFとして高く評価された独特な小説を読んでみたい方にオススメ。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.27:
(3pt)

国家と国家と主権?

海外SF作品を紹介した書籍から読んでみたくなり、購入した。
SFの中で、とりわけ「都市」に焦点をあてたものを読みたかったのだが、本作は都市の物理的立体感のようなものではなく、2つの都市国家の政治、人文的な交わりについて焦点をあてている。具体的には、隣接する2つの都市国家において殺人事件が起きてしまい、それを「だれが」「いかに」捜査し、どう処理するのかという内容のミステリーである。
切り口は斬新で、ストーリーもこまかで丁寧な作品だったが、こまかすぎて、そして自分の国語力の問題で読むのに非常に時間がかかってしまったのが問題点であった。
結末はそれ相応にダイナミックだと思うが、読書慣れしてない人や、海外ものに抵抗のある人は十分楽しめないかもしれない。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.26:
(1pt)

安いたこ焼き

普通の殺人事件。何がどう不思議なのかさっぱり。そのストーリーが薄い割に、情景描写がやたらと緻密。途中で何度挫折して読むのをやめようかと思いましたが、終盤になると面白いところが出て来るカモ、と期待して読み進みましたが、結局ストーリーが薄く、情景設定だけがやたら分厚い、安いたこ焼きのような作品でした。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.25:
(3pt)

前半はディストピア的警察小説、終盤は『マトリックス』のようなアクション映画

という感じで、作品のジャンル自体が変わってしまったような印象を受けました。ブリーチのアシルは完全に映画『マトリックス』のイメージです。

 あとがきによると、作者はアレゴリー(寓話)が嫌いで、本書は決して寓話として書いたものではない、としています。よって、前半の寓話的雰囲気がまったく台無しになる程、終盤コミックヒーロー的展開になります。著者の意図通りの展開なわけですが、私は本書は、前半の雰囲気の通り最後まで書き通した方が良かったのではないかと思います。というのも、他のレビューを読むと、エルサレムを連想する方がおられ、冷戦時代や、1990年代に成人を向かえた年齢層の方は、本作にボスニア内戦サラエボや冷戦時代のベルリンを連想してしまう方がおられます。私は後者で、更にナゴルノ・カラバフ紛争地域を連想しました(ブリーチは国連平和部隊相当でしょうか)。個人的な印象では、冷戦時代やボスニア内戦と同時代の年代の方は、著者が意図をどう主張しようとも、本書の設定自体が、現実の、過去現在の紛争地域を連想させられ、強く寓意小説として回収される方向にもっていかれてしまうのではないかと思います。著者は1972年生まれでボスニア内戦時成人しており、モデルを強く意識している世代が故に、終盤で完膚なきまでにぶちこわして見せたのでしょう。しかし結局は前半と終盤で作品がポッキリ二つに折れてしまったような中途半端さが残りました。

 この手の寓意小説は、だいたいが重苦しいディストピア小説になりがちですし、希望もなく終わるものが殆どです。本書も、主人公は前向きな姿勢で終わるので読後感は悪くはありませんが、それはあくまでこの小説世界内の話であって、本書前半で連想させられた現実の都市や地域での解決には何ら展望を与えてくれるものでもありません。これらの題材をディストピアにならずにエンタティメントに仕上げた著者の姿勢には賛同しますが、やはりまだまだ道半ば、エンタテイメントに消化/昇華しきれていない、と感じました。いずれエンタテイメントに昇華しきった作品が登場するであろう、試金石という位置づけであろうかと思います。
 
 読み始めは、『』、少ししてボルヘスの『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』(『』収録)、途中から映画『]』などを連想しつつ読み、最後は映画『マトリックス』を連想して終わりました。本書を読んで、サラエボを連想した方は少なからずおられるようなので、本書の出版に合わせて『』を復刊するなどの企画があっても良かったのではないかと思いました。ディストピア小説とは少し違いますが、一般に幻想小説とされるミロラド・パヴィチ 著『』も連想しました。この本はずっと幻想小説だと思っていたのですが(当時21世紀の幻想小説といわれた)、『』に、著者ミロラド・パヴィチ が強度のセルビア民族主義者で、『ハザール事典』(原著1984年)はその視点から読めば何ら難解ではない、と記されているのを読み、確かに、イスラム・ユダヤ・キリスト教の三者が同じハザール国を描写しているにも関わらず、まったく違った感じに描かれているという、幻想的なものは、実は単純に当時のユーゴを構成する諸民族にとっての「現実」だった、という幻想小説を装った政治風刺小説なのだとわかり愕然としたことがあります。

 このように、本書の紹介を読み、ボルヘス・パヴィチ・カフカ的寓意小説を期待する読者にとっては、肩透かしを食ったような終わり方なので、その点に留意して読むことをお奨めします。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.24:
(4pt)

ハードボイルド風、だがいささか消化不良感あり

殺害された若い女性の死体と、警察による平凡な捜査の始まり。 奇妙なのは、物語の舞台である都市国家のルール。 領土が霜降り肉のようにグチャグチャに重なり合う二つの国家、ベジェルとウル・コーマ。 両国民はお互いの存在を意識から排除しながら生活している。 <ブリーチ>という謎の管理者・権力によってそのルールは常に徹底されている。 主人公は目の前の異国に犯人を追うが、愛国者や統一主義者ら政治党派の争いに巻き込まれる。 犯行は、言い伝えの第三の都市オルツィニーの仕業か? ミステリ、SF、ファンタジーのジャンル間も軽々と越境する。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.23:
(5pt)

メン・イン・ブラックを思い起こされました。

読むのに10時間かかった。

一気に読破したいと思わせる本だけど、
とても1階で読みきれる内容ではなかったです。

読み終わるとメン・イン・ブラックという映画を思い起こされました。

題名にもあるように「べジェル」と「ウル・コーナ」という2つの都市を巡るストーリーです。

片方の都市を見てはいけないという奇妙な設定が、
いつも誰かに監視されているというディストピア世界観を作り出しています。

ハードボイルなSF小説です。

ぜひ読んでみてください。

この本で気に入った台詞は、
女性捜査官コルヴィが言った
「これがデータマイニングですよ。」
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.22:
(4pt)

最初の“とっつきにくさ”は我慢です。

【少しネタバレあり】
ある程度我慢して読み進めていけば、あとは最高に面白いです。

というのも、少しとっつきにくい。
「モザイク状に国境が入り組んだ都市国家」
「お互いの都市が政治的に敵対しているため、相手側の都市や住人が視界に入っても“認識”してはいけない」
という、なかなか斬新かつ秀逸な舞台設定なので、そこに慣れるまでは、少し大変かもしれません。
(一部の方がおっしゃるとおり、多少、翻訳もとっつきにくい部分がありそうです。ゆえに、☆4つ・・・かな。)
ですが、そこをクリアしてしまえば、楽しくて仕方がないです。
前述のとおり舞台設定はもちろんのこと、ストーリーもよく練られています。アッという場面も結構あります。
ハマってしまえば何度も読める、“渋い”小説ではないかと。

ジャンルはSFらしいですが、警察小説(ただし舞台が架空の世界)と認識したほうがよいかもしれませんね。

現実にこういう都市国家があったら、ぜひ、旅行してみたいものです。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.21:
(4pt)

読みやすいとは思わないけど

取っつきにくい話でだいぶ長いこと放置していましたが、
一旦入り込めば面白い本でした。
 これは「高い城の男」などと似たタイプの小説で、あり
えない社会を、もしこういう世界があったら、と描いた思
考実験であると思われます。
 実際には絶対あり得ない不条理な、文章という抽象の中
でしか存在しえない世界を描いているので、ある程度文字
の世界に慣れた人向きの本だと思います。

 この本は、「設定に無理がある」だとか、「実際にはあり
得ない」とかいうことにこだわってしまうと受け入れられ
ない本です。それを可能にしてしまう「文章世界」というも
ののおもしろさをおもしろがるべき本でしょう。

 ミステリーそのものはたいした謎ではなく、不条理を味
わう小説だと思います。娯楽性を求める向きにはちょっと
期待外れでしょう。

 意外な収穫でしたのでこの著者の他の本を是非読んでみ
たいと思いました。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.20:
(3pt)

訳はけっして悪くないのだが…

本書のおもて表紙に「ヒューゴー賞・世界幻想文学大賞・ローカス賞・クラーク賞・英国SF協会賞受賞」とある。
当初は、異次元の二つの街が重なったパラレルワールドの設定だと思い読み始めたのだが、そうではなかった。
巻末の解説515頁によると「物語の舞台は、バルカン半島の真ん中あたり(推定)に位置する架空の都市国家、ベジェル(Beszel)。時は現代(二〇一〇年ごろ)。小説は、郊外の住宅地で身元不明の女性の刺殺死体が発見され、ベジェル警察過激犯罪課のティアドール・ボルル(Tyador Borlu)警部補が現場にやってくるシーンで幕をあける。」 続いて516頁「ボルルは、所轄の若い女性刑事、コルヴィ一級巡査とコンビを組み、地道な捜査活動を開始する。〜。というわけで、小説の八割は、一人称ハードボイルド形式のリアルな警察小説として語られる。」とある。華やかなSFとは異なっていて、確かに、少々暗い警察小説といった出だしでなのである。
しかし、26頁に何の説明もなしに<クロスハッチ>という語句が現われ、次の27頁には<ブリーチ>という語句が現われる。そして、盛んに<ブリーチ>という言葉をが使われる。訳者は、SFらしくグロストピックには総体局所的という語句を当てたり、ミリツィアには民警という語句を当て、プリカーサーエイジには先駆時代という語句を当て嵌めて、意味をつまびらかにしている。しかしどうしたわけだろう、<ブリーチ>という語句はただ<ブリーチ>と工夫もなく記述されているだけなのである。何のことかさっぱり分からない。読み進んでみてどうもすっきりしないのだ。そこであらためて巻末の解説を読んでみた。518頁には「〜、ベジェルとウル・コーマという、まったく性格の違う二つの都市(都市国家)が〜。〜、ふたつの街は、地理的にほぼ同じ場所を占めている。〜。〜、両国の国民はたがいに相手の国が存在しないものとしてふるまわなければならない。そのため、一方の都市の住人は他方の都市の住人(および建物や車など)を見ることも、声を聞くことも禁じられている。〜。このもっとも基本的な決まりに違反すると(=<ブリーチ>行為をおかすこと)、<ブリーチ>と呼ばれる謎の組織がどこからともなくあらわれ、違反者を連行する。」とある。次の519頁には「しかし、両都市国家もあいだにまったく交流がないかといえば、そうではない〜。〜、それぞれの旧市街の中心に位置するコピュラ・ホールを通ることで合法的に(<ブリーチ>行為をおかすことなく)両国間を行き来できる。」とある。さらに同じ519頁にはブリーチは英語のbreachのことだと書いてある。とすると名詞「違反・裂け目」そして動詞「破る」の意で、転じて、どうやら本小説では、ブリーチを犯し法を破った者を取り締まる組織名としても登場するようなのだ。こうして意味が明らかになって読書を続けることができた。
しかしまた、この本小説の読みにくさに拍車を掛けているのは、覚えにくい人物名とその数の多さである。ざっと数えてみると80名以上の人名が出てくる。まわりくどい設定、状況説明とあわせて、作者は読者にとても労を強いるのである。
一方、解説520頁では「〜、この異様な設定をリアルに見せるための緻密なディテールに、(作者の)ミエヴィルは〜技術のありったけを投入する。」と記述されている。すなわち、こういった点が本書が高く評価されている点だろうし、数多くの受賞の理由でもあろう。実際の捜査活動のように、話はなかなか進まず、これまたリアルである。316頁『明らかな殺人が一件、そして失踪がこれで二件』 話が進むに従って二名の行方不明者が出てさらに混迷は増していくのである。
しかし終盤で、ボルル警部補は、国境線上での追跡、銃撃を行なう。そして<ブリーチ>行為をおかすことなく見ないようにするといった設定で記述がされている。果たして命が掛かった切羽詰った状態で、国境の外の都市の建物や車など”見ないようにする”なんてことは出来るだろうか。この<ブリーチ>という見ないようにする行為が信じられなかった。いままでのリアルに見せるための緻密なディテールとは、水と油の関係である。この点でこの小説の決定的な構造上の破綻をきたしたのではないだろうか。
さて、一部には訳者「日暮雅通」訳が悪いという意見もあるようだが。読んだ限りではあまりそう感じられなかった。同じ早川書房の文庫での御用達の訳者「田中一江」の日本語になっていないものと比べれば雲泥の差である。『最悪なのは誤訳のせいで前後の意味がまるで通じなかったり、ストーリー的に重要な箇所や伏線が意味不明になって台無しになっている箇所が散見されること』という一部の読者の指摘が、もし本当なら、どの箇所がそうなのか。どういった訳だったら正しいのか明示して戴きたい。そしてどうか英語に堪能な方、ご尽力戴きたいものである。たしかハリーポッターでも誤訳があり、ウィキペディアで詳しい記述があった。
本書のこれからの読者の役立ちとして、数多い登場人物の中から主な人名を挙げておきたい。ティアドール・ボルル警部補 (別称ティアド)、リズビェト・コルヴィ、ビエラ・マール、マハリア・ギアリー、ミケル・ブーリッチ、デイヴィット・ボウデン、クシム・ダット、ヨランダ・ロドリゲス、アイカム・ツーエ、ヨルヤヴィッチ、アシル である。
なお149頁のボウデンは、241頁ではボーデンとなってるが実は同一人物で表記が統一されていないだけである。これは訳者の誤謬である。また300頁5行目の「あまにも重かったので」は「あまりにも重かったので」の誤植である。361頁の「警官であるヨランダ・ロドリゲスのために、出国ビザを取ることができるか?」は辻褄が合わず、誤訳かと思ったが、後述の話筋から「警官に扮してヨランダ・ロドリゲスを出国させることができるビザを取ることができるか?」という意味だとわかった。しかし、373頁の次の文章はたしかにおかしな文章だった。『そこに書かれたメッセージが持つ亡霊を呼び出す力は心地よいものではなく、あの夫婦を知り、まるでマジックミラーのように言葉の内にいて彼らをながめている自分の姿は、こちらが書き手のひとりであっても、彼らには見えることはない。』これはさすがにおかしな文章だ。まさに『田中一江』風の文章だ。本書の最終は514頁。この373頁以降は、訳者の仕事の締め切りが迫ってきていたのか、訳文が少々雑になっているのだが、この際立っておかしな意味不明な一文を除けば許せる範囲だろう。
このように労して読み終えると、不思議と執心させられたのも事実である。前述した”決定的な構造上の破綻”がなければよいのにと悔やまれる。『物語の舞台は、ユダヤ教区とイスラム教区の二つで成り立っているイスラエル。時は未来(二一〇〇年ごろ)。永年二つの区民は異なる宗教によって、いがみあってきたが、エレクトロ脳神経科学の発達で、両区民は見えない、聴こえないことが可能となり、平穏裏に過ごしていた。しかし、遺跡調査のためエルサレム大学に留学してきた女学生が、郊外の住宅地で刺殺死体として発見され、エルサレム警察過激犯罪課のティアドール・ボルル警部補が現場に向かうシーンで幕をあける。だが地道な捜査活動を開始するものの二つの区民同士がが見えない、聴こえないことによって、捜査は困難を極め〜。』ああこんな設定なら、信じられるのになあと思った。
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4150118353
No.19:
(4pt)

重なる二つの都市

ベジャルとウル・コーマ。隣り合っている、どころか「重なって」存在する二つの都市。ベジャルの警部補、ボルルは担当した殺人事件で頭を抱えていた。この死体はウル・コーマで殺されたのではないのか? ベジャルの人間にはウル・コーマが見えないし、ウル・コーマの人間にはベジャルが見えない・・・というのは建前で、場所によっては境界がぼやけて「重なって」いる場所もある。ただし、そこでは互いが互いを「見て見ぬ振り」をしなければならない、という絶対的なルールがあるのだ。都市から都市へ、無許可で移動したり、じっと見つめたりする越境行為全般を「ブリーチ」と呼び、やはり「ブリーチ」と呼ばれる秘密組織の人間が、違反者を連れ去ってしまうのだった。「ブリーチ」は謎に満ちており、どうやって人々を見張っているのか、いきなり異次元から現れるタイムパトロール隊よろしく登場するのでどちらの住民にも恐れられている。ボルルは慣例に習って、事件から離れるための手続きをとる。しかし、そのまま捜査するよう命じられて・・・。

捜査をすすめるボルルと共に読者は二つの都市を旅する。物語はボルルと共に時系列順に進む。
無理やりにジャンル分けをするのならば、ファンタジックな警察小説・・・だろうか? ミステリ部分を重視すると、前評判の割に魅力は乏しいような気がする。(他のレビューを参照するに、訳文のせいもあるのかもしれないが。)
面白いのは設定。同じ空間を文化や言語がまったく違う二つの都市が「重なって」所有している、という発想が本当に面白い。都市間を行き来する時の手続き、それぞれの食文化などは、淡々と書かれているが、作者の脳内だけで作っただけとは思えないほどのリアリティがある。ただし、ベジャルやウル・コーマの背景的な歴史については殆ど触れられていない。
おかげで、読んでいると、どうしてもエルサレムを思い出してしまう。しかし、あとがきによると作者は寓話が大嫌いらしい。ううーむ。そうなのか〜。でも、多くの読者はパレスチナ問題風寓話として読んでしまうんじゃないの?・・・という、「脳内ブリーチ行為」を犯しては、見て見ぬふりを・・・という感じで読了です(笑)
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4150118353
No.18:
(1pt)

★は翻訳に対しての評価です。

元の作品自体は本当に素晴らしいです。
ただ、翻訳がひどい。あまりにひどすぎる。

読んでいてあまりに「?」と思う箇所が多かったのでKindleで原書を買って原文を参照しながら読み進めましたが、
いやあ、もうまさに山のような誤訳。私が気づいただけでも2,30箇所はあったんじゃないでしょうか。

別に誤訳って言っても単にヘタクソとか読みづらいとかならここまで言わないんですが、最悪なのは誤訳のせいで前後の意味がまるで通じなかったり、ストーリー的に重要な箇所や伏線が意味不明になって台無しになっている箇所が散見されること。
訳者は恐らくろくに内容も理解せずに訳してるんじゃないでしょうか。
原文読めばちゃんと意味は通じるんです。それを全てメチャクチャにしているのはひとえに訳者である日暮雅通氏のデタラメ翻訳のなせる業です。

「archivist」を「activist」と見間違えて訳していたりするのはまだかわいいほうで、英語の文法構造がまるで理解できていないかのような誤訳、教養が欠けているために適切に訳せていない語、日本語として何を言わんとしているのか意味不明の文章、せっかくの伏線を台無しにする意訳、文章の意味そのものがまるで逆になってしまっている誤訳、もうむちゃくちゃです。まさに誤訳のオンパレード、よくぞここまで誤訳できたという感じです。呆れを通り越して笑えてきます。

正直言って、日暮雅通氏には二度とミエヴィルの翻訳には携わってほしくないです。こんなに素晴らしい作家のこんなに素晴らしい傑作が、こんな最低の翻訳で紹介されるというのは本当に悲劇以外の何物でもない。

そして、早川書房の担当編集者にはもっときちんと仕事をしてほしいです。
いくら翻訳者がデタラメでも、編集者がきちんと目を通していればこの悲劇は避けられたはずなのですから。
担当編集者は、出来上がってきた翻訳原稿に目を通したとき、何も疑問に思わなかったのでしょうか?この訳文をそのまま出版してしまうというのは、ちょっといくらなんでも理解できません。

これから本書を読もうと思っている方は、最初から原書を読むか、あるいは日本語で読む場合でも常に原書を手元において読むことをお勧めします。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.17:
(1pt)

これがSF?

序盤の内容が哲学的で世界観の理解に時間が掛かりました
くだらない事を論理的に説明してる感じですかね
例えば、ジャンケンの心理戦を文章にしたような…
あやふやな説明のまま物語が進むからイライラしますね
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.16:
(5pt)

オススメ

いやー、超オモシロかった。設定がスゴイ。
”ベジェル”と”ウル・コーマ”という2つの都市が舞台である。
(設定ではおそらくバルカン半島あたりにある国家です。僕は”サラエボ”を想像しながら読んでました)

民族、宗教の違う人たちが、平和裡に共存している事が、所与の条件となっている。いつ頃から対立しているのだろうか。
2つの都市は重ねあわさっていて、お互いの住民は、実際には見えているのに「見てはいけない」という取り決めになっている。街の中心の国境を越えれば、相手の住民が「見える」一方で、自分の国が「見えなくなる」という決まりである。お互いの住民にとっては、暮らしていくための所与の条件である。厳格なルールに違反”ブリーチ”した場合には、ブリーチにどこかに連れていかれてしまう。古くからの習慣を知らない移民達は、テストが必要だし、観光客にも同様である。(本を読まないと何のこっちゃ・・であるけれど)”ブリーチ”行為には、国家同士の警察よりも上位の、超法規的な機関が関与している。
2つの都市国家が存在するためには、お互いの服装・クルマの相違といった細かな事から、言語の問題などの過去からの大きな問題を含め、お互いの存在を認めるために、敢えて”無視を決め込む”というルールを厳格に守らなくてはならない。

そんな複雑な世界で起こった殺人事件をきっかけに、2つの都市に潜む謎に挑んでいく、ベジェル警察の警部補の話である。
まるでスパイ小説のようだった。

”あとがき”にも書いてあったけれど、パレスチナ問題の解決法として採りあげられたこともあるそうな・・。
読んでいて、東西に分離していた頃の”ベルリン”や、韓国・北朝鮮の”板門店”、紛争時代の”サラエボ”、”エルサレム”の事を考えながら読んでいました。

とにかくオススメです。
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4150118353
No.15:
(3pt)

ブリーチはBREACH

半ばまで読みすすめていくと事件も動き出して引き込まれたけど、それまではちょっと読むのがしんどかった。基本ミステリーなんだけど設定が特異で、しかもその特異な設定が物語の展開とともに徐々に明らかになっていくので世界観を理解するのが大変。

鍵となるのはブリーチという言葉だが、本文中では「ブリーチをしたらブリーチが現れブリーチされる」というような使い方がされている。英語におけるブリーチの意味を知っていればもう少し理解しやすかったかもしれないが、読み終わって解説を見るまで作品中のブリーチとは漂白のことだと思っていたので苦労した。

国境が曖昧で同じ場所を二つの国がそれぞれの領土としている世界。それも、ただ両国が言い張っているだけでなくそれぞれの国の国民が同じ場所で入り混じって生活し相手国の人や物は無いものとして生活しているという設定は面白いし、まさにSFで言う所のセンス・オブ・ワンダーだと思う。ただブリーチはちょっと浮世離れしすぎていてついていけなかった。日本の特高やナチスのゲシュタポのような存在で良かったのではないかと思う。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.14:
(1pt)

アウラという複製技術、歯車

モザイク状に組みあい、濃淡をもって重なりあったふたつの都市国家がある。かつて深刻な紛争をくりかえして、ついに共存しつつ共生しないルールを編みだす。それを両国間はじしんをこえた超法規的な至上命令といただく。国だけではなく、位相さえもちがうことにするのだ。言語や慣習がちがうように、見えるものも聴こえるものも異ならせる。見えるのだけれども、視覚神経の域外にある光線に消去されてでもいるかのように、あるいは図にのぼるものを地にうめかえすように、見ないふりをして見えないものとする。あたかも超自我に監督されているかのように、五感すべてをそう自我に身に強いる。これを日常感覚=作法の基底とする。両国共有といえる同じ通りを行き来していても、位相がちがう(ふりをしなければならない)のだから異国人は見えない(ふりをしなければならない)、どうように異国人の車も、店舗も、景色も見えない。
 この感覚作法を意図的に侵せば、超国家的な超法規的組織ブリーチにより一切の人権が剥奪される。ブリーチに拉致されて、都市での存在を抹消される。いちど拉致されたらもう戻ってこられないのだから文字どおりの抹殺となる。ブリーチが摘発するのはこの現行犯である侵犯行為=ブリーチだけだ。ほかのあらゆる違法行為は都市国家の法規にしたがい両警察が取り締まる。ブリーチは両国の代表による委員会制で運営されているらしいが、その実態(組織形態、人員、資金、設備装備)はその性格からいって市民にはいっさい知られていない。この両国が交流するのは正式なひとつのゲートをとおしてだけで、それいがいのあらゆる意図的な私的交流はブリーチとなる。
 ブリーチが見張る国境線とはいわば量子力学的な場であり、どうじにひとの内面でもあるように、ブリーチは神出鬼没で超法規的な有無をいわさぬ執行権力を揮うのである。たとえば両都市の統一をかかげる団体は秘密結社として隠れ棲むむほかない。だがいっぽう第三の超国家なる伝説が、ブリーチに同調、あるいは対抗するかのように、ひとびとにひそかに噂され想像されている。独裁的なブリーチの恐怖だけではなく、両都市国家が分裂するはるか以前、かつてあり滅び去った特異な考古学的な文明にも淵源しているかのように。それはむろん見えない。だが見えないふりをしているだけではないかと、ひとびとは疑心暗鬼でそれを欲望させられる。

 とまあなかなかみごとな世界設定だとおもうわけですが、残念ながら駄作です。第三章でブリーチの側、国境線上(場)から物語を展開させるだんになってかんぜんに失速してしまう。ブリーチをさてどう現実的に描写するかという困難を、いわば見ない聴かないことにして最後まで曖昧に書いたためです。謎の殺人事件の解決は現実的な利害関係と明かすだけに、この展開の隠しとおす、明晰さの不明晰さがきわだったというかんじです。見えないものとはじつはたんに見てはいけないものである、そのことをつまびらかにする侵犯行為を主題としておきながら、描写の徹底性においては見えないものは見えないんだもんと甘えているようなものです。ラストは悪しき感傷主義というほかない。

 見えるけれど見えない。見えないふりを身に強(如)いて、そのふりが意識にのぼらないほどにする(なる)。視野において図の焦点とせず、地に不明瞭なままにしずめおおせる。おなじく聴こえるけれど聴こえない。そういうふりを習得して、聴覚にはいっても無意味な雑駁な物音として自然にききながす。とうぜん匂いや接触沙汰なども、そうでないものと遣り過ごす。こういう五感の身ぶりを日常作法、慣習として自然の業にすることは、言語という人工物を習得して自然に身につかせる経験とどうとうである。
 本書のこの徹底した経験論はたしかに異様です。だが、とらえかえして言語こそが人間の本質的な器官(神経の網の目状に浸透する)ではないかと懐疑すれば、あたかも自然な五感さえも人間の業たる約束事に根をはり、言語にまみれていないとはだれにもいえない。そのものがけして見たり聴いたり感じたりできない世界が、すぐ隣にあるかもしれない。さらに懐疑を先駆させれば、われわれはなにかに命ぜられて、神のロゴスのごとき言葉の範囲でしか世界を理解できないのかもしれない。その侵犯行為は人間の定義からいって本源的に禁じられているのだとしたら。
 本書はかような掟たるブリーチというてんでカフカ的であり、異世界の展開というてんでディック的ともいえるわけですが、そのおのおのがより描写が困難なほうへ、理不尽さ不気味さへと誘い、常軌を逸していこうとしているのにたいして、まったくぎゃくにそれを収束させて一件落着としている。いったいなにがこうも総なめ的称賛をえたのか不可解です。まちがいなく本書は第三の、考古学的=超国家的な荒唐無稽のほうへと筆をはしらせ、ブリーチが抑圧されたものの反復強迫のごときものとして、あるしゅの畏怖される深淵の摂理を閃かせる、そんな王道のSF沙汰を、ハードボイルドな警察小説の外装はあくまで借り物としてめざすべきだったとおもう(ディックのように。あるいはラブクラフトのような幻視的恐怖譚のように)。その構想は本書の物語の細部、たとえば考古学的発掘物なんかに宿っている。この複製技術ではあるけれどどうじにそうでない、真正(神性)のアウラとしての歯車という発想は、常軌を逸せしめる歯車となって軋みをあげている(ボガネットのように)、いやあげそこなっている。それは遺伝子なのだ。だれの、なんの。だが、それは見えないが見えるよう。その音は聴こえないが聴こえているよう。この誘いに耳目をふさぎおおせる感性はSFに反する。

《“クロック”という遠回しな俗称で呼ばれるわけのわからない機械装置が、実はまったく機械などではなく、中に入っている幾つもの歯車を保持しておくためだけにデザインされた込み入ったつくりの箱であると、彼はエレガントな論法で主張していた。》
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.13:
(1pt)

最後まで理解不能。

私は外国小説は好きですが、人名、知らない地名や距離感、文化等などを把握したり、理解しつつ読み進めるので、合わない時は、苦労します。挫折もします。この「都市と都市」はその最たるものでした。欧州の架空の都市国家の話なので、微妙に違和感ある架空の名前や地名や、設定された造語がまったく頭に定着せず、眠くなるので、だいたい、前回読んだ最後の章がよくわからなくなっており、各ページの圧倒的なカタカナ量と造語に、遡って読み返す気も起きませんでした。事件の中心である被害者女性の名前すらもう覚えておりません(主人公の名も忘れた)。また、「同じ都市に二つの国家が存在する」という大前提以外に、慣れない架空都市の色んな法律やら慣習、団体が後付けで出てくるので、展開される話のオチも全く予想できず、理解できず、ものすごいストレスです。そんなの警察小説でもなんでもないと思います。主人公や、多くの登場人物の誰にも感情移入できないまま、それでも「あれだけ賞を総なめしてて、アマゾンや雑誌の評価もいいんだから最後まで読めば面白いはず」と読了しましたが、何の感慨も感動もありませんでした。現代の何かを暗示してるのかわかりませんが、解説によると、作者は現代政治等への寓意を強く否定しているとのこと、え?「同じ位置に重なり合った二つの都市、それぞれの市民は相手国のものを見ない、聞かないことを徹底している」とかマジで言ってんの?という感じです。哲学的で高尚なのかもしれませんが、私には全く面白くありませんでした。意味不明です。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353

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