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都市と都市



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【この小説が収録されている参考書籍】
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市の評価: 3.13/5点 レビュー 32件。 Eランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(3pt)

警察ハードボイルド+幻想文学+SF

"私は売店を〈見ない〉ようにしたが、〈嗅がない〉ようにしているその匂いの源が、私たちの向かっている先なのは明らかだった。『歩け』とアシルは言い、私を伴って両都市のあいだの皮膜をくぐり抜けた"2009年発刊の本書は主要な賞を独占した【モザイク状に組み合わさった2つの架空の都市国家】を舞台にしたディック–カフカ的読後感の一冊。

個人的にもSFは割と読んできたのですが。本書は未読であった事、また『メタルギア ソリッド』シリーズで知られるクリエイターの小島秀夫が紹介していた事から興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書はバルカン半島の真ん中あたり(推定)に位置する架空の都市国家、ベジェルの郊外住宅地で身元不明の女性の刺殺死体が発見される場面から始まり、主人公の刑事が調査を進めていく一人称ハードボイルド形式の【リアル警察小説としての展開が8割で】設定こそ物理的な壁がなく、同じ場所に互いに混在するも【両都市国家の国が存在しないものとしてふるまわなければならない】不条理さがSF的ではあるも、それ以外にはギミックも含めてSF要素がほぼ出てこないのに驚きました。

また、これが【翻訳の影響かは判断しかねるものの】ふたつの都市国家が同じ場所に共存することを認めてしまう違反行為、それを取り締まる組織、組織の存在する場所が全てが【ブリーチ】と一緒くたに呼ばれているわけですが。この単語が例えば『ブリーチしたので、ブリーチから来たブリーチが捕まえにきた』といった感じで本文中で頻出するのには、率直に言って、読みづらくて展開に集中できなく少し残念な読後感でした。(都市国家の設定はとても斬新だと思うのですが。。)

警察ハードボイルド+幻想文学+SFとして高く評価された独特な小説を読んでみたい方にオススメ。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.5:
(3pt)

国家と国家と主権?

海外SF作品を紹介した書籍から読んでみたくなり、購入した。
SFの中で、とりわけ「都市」に焦点をあてたものを読みたかったのだが、本作は都市の物理的立体感のようなものではなく、2つの都市国家の政治、人文的な交わりについて焦点をあてている。具体的には、隣接する2つの都市国家において殺人事件が起きてしまい、それを「だれが」「いかに」捜査し、どう処理するのかという内容のミステリーである。
切り口は斬新で、ストーリーもこまかで丁寧な作品だったが、こまかすぎて、そして自分の国語力の問題で読むのに非常に時間がかかってしまったのが問題点であった。
結末はそれ相応にダイナミックだと思うが、読書慣れしてない人や、海外ものに抵抗のある人は十分楽しめないかもしれない。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.4:
(3pt)

前半はディストピア的警察小説、終盤は『マトリックス』のようなアクション映画

という感じで、作品のジャンル自体が変わってしまったような印象を受けました。ブリーチのアシルは完全に映画『マトリックス』のイメージです。

 あとがきによると、作者はアレゴリー(寓話)が嫌いで、本書は決して寓話として書いたものではない、としています。よって、前半の寓話的雰囲気がまったく台無しになる程、終盤コミックヒーロー的展開になります。著者の意図通りの展開なわけですが、私は本書は、前半の雰囲気の通り最後まで書き通した方が良かったのではないかと思います。というのも、他のレビューを読むと、エルサレムを連想する方がおられ、冷戦時代や、1990年代に成人を向かえた年齢層の方は、本作にボスニア内戦サラエボや冷戦時代のベルリンを連想してしまう方がおられます。私は後者で、更にナゴルノ・カラバフ紛争地域を連想しました(ブリーチは国連平和部隊相当でしょうか)。個人的な印象では、冷戦時代やボスニア内戦と同時代の年代の方は、著者が意図をどう主張しようとも、本書の設定自体が、現実の、過去現在の紛争地域を連想させられ、強く寓意小説として回収される方向にもっていかれてしまうのではないかと思います。著者は1972年生まれでボスニア内戦時成人しており、モデルを強く意識している世代が故に、終盤で完膚なきまでにぶちこわして見せたのでしょう。しかし結局は前半と終盤で作品がポッキリ二つに折れてしまったような中途半端さが残りました。

 この手の寓意小説は、だいたいが重苦しいディストピア小説になりがちですし、希望もなく終わるものが殆どです。本書も、主人公は前向きな姿勢で終わるので読後感は悪くはありませんが、それはあくまでこの小説世界内の話であって、本書前半で連想させられた現実の都市や地域での解決には何ら展望を与えてくれるものでもありません。これらの題材をディストピアにならずにエンタティメントに仕上げた著者の姿勢には賛同しますが、やはりまだまだ道半ば、エンタテイメントに消化/昇華しきれていない、と感じました。いずれエンタテイメントに昇華しきった作品が登場するであろう、試金石という位置づけであろうかと思います。
 
 読み始めは、『』、少ししてボルヘスの『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』(『』収録)、途中から映画『]』などを連想しつつ読み、最後は映画『マトリックス』を連想して終わりました。本書を読んで、サラエボを連想した方は少なからずおられるようなので、本書の出版に合わせて『』を復刊するなどの企画があっても良かったのではないかと思いました。ディストピア小説とは少し違いますが、一般に幻想小説とされるミロラド・パヴィチ 著『』も連想しました。この本はずっと幻想小説だと思っていたのですが(当時21世紀の幻想小説といわれた)、『』に、著者ミロラド・パヴィチ が強度のセルビア民族主義者で、『ハザール事典』(原著1984年)はその視点から読めば何ら難解ではない、と記されているのを読み、確かに、イスラム・ユダヤ・キリスト教の三者が同じハザール国を描写しているにも関わらず、まったく違った感じに描かれているという、幻想的なものは、実は単純に当時のユーゴを構成する諸民族にとっての「現実」だった、という幻想小説を装った政治風刺小説なのだとわかり愕然としたことがあります。

 このように、本書の紹介を読み、ボルヘス・パヴィチ・カフカ的寓意小説を期待する読者にとっては、肩透かしを食ったような終わり方なので、その点に留意して読むことをお奨めします。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.3:
(3pt)

訳はけっして悪くないのだが…

本書のおもて表紙に「ヒューゴー賞・世界幻想文学大賞・ローカス賞・クラーク賞・英国SF協会賞受賞」とある。
当初は、異次元の二つの街が重なったパラレルワールドの設定だと思い読み始めたのだが、そうではなかった。
巻末の解説515頁によると「物語の舞台は、バルカン半島の真ん中あたり(推定)に位置する架空の都市国家、ベジェル(Beszel)。時は現代(二〇一〇年ごろ)。小説は、郊外の住宅地で身元不明の女性の刺殺死体が発見され、ベジェル警察過激犯罪課のティアドール・ボルル(Tyador Borlu)警部補が現場にやってくるシーンで幕をあける。」 続いて516頁「ボルルは、所轄の若い女性刑事、コルヴィ一級巡査とコンビを組み、地道な捜査活動を開始する。〜。というわけで、小説の八割は、一人称ハードボイルド形式のリアルな警察小説として語られる。」とある。華やかなSFとは異なっていて、確かに、少々暗い警察小説といった出だしでなのである。
しかし、26頁に何の説明もなしに<クロスハッチ>という語句が現われ、次の27頁には<ブリーチ>という語句が現われる。そして、盛んに<ブリーチ>という言葉をが使われる。訳者は、SFらしくグロストピックには総体局所的という語句を当てたり、ミリツィアには民警という語句を当て、プリカーサーエイジには先駆時代という語句を当て嵌めて、意味をつまびらかにしている。しかしどうしたわけだろう、<ブリーチ>という語句はただ<ブリーチ>と工夫もなく記述されているだけなのである。何のことかさっぱり分からない。読み進んでみてどうもすっきりしないのだ。そこであらためて巻末の解説を読んでみた。518頁には「〜、ベジェルとウル・コーマという、まったく性格の違う二つの都市(都市国家)が〜。〜、ふたつの街は、地理的にほぼ同じ場所を占めている。〜。〜、両国の国民はたがいに相手の国が存在しないものとしてふるまわなければならない。そのため、一方の都市の住人は他方の都市の住人(および建物や車など)を見ることも、声を聞くことも禁じられている。〜。このもっとも基本的な決まりに違反すると(=<ブリーチ>行為をおかすこと)、<ブリーチ>と呼ばれる謎の組織がどこからともなくあらわれ、違反者を連行する。」とある。次の519頁には「しかし、両都市国家もあいだにまったく交流がないかといえば、そうではない〜。〜、それぞれの旧市街の中心に位置するコピュラ・ホールを通ることで合法的に(<ブリーチ>行為をおかすことなく)両国間を行き来できる。」とある。さらに同じ519頁にはブリーチは英語のbreachのことだと書いてある。とすると名詞「違反・裂け目」そして動詞「破る」の意で、転じて、どうやら本小説では、ブリーチを犯し法を破った者を取り締まる組織名としても登場するようなのだ。こうして意味が明らかになって読書を続けることができた。
しかしまた、この本小説の読みにくさに拍車を掛けているのは、覚えにくい人物名とその数の多さである。ざっと数えてみると80名以上の人名が出てくる。まわりくどい設定、状況説明とあわせて、作者は読者にとても労を強いるのである。
一方、解説520頁では「〜、この異様な設定をリアルに見せるための緻密なディテールに、(作者の)ミエヴィルは〜技術のありったけを投入する。」と記述されている。すなわち、こういった点が本書が高く評価されている点だろうし、数多くの受賞の理由でもあろう。実際の捜査活動のように、話はなかなか進まず、これまたリアルである。316頁『明らかな殺人が一件、そして失踪がこれで二件』 話が進むに従って二名の行方不明者が出てさらに混迷は増していくのである。
しかし終盤で、ボルル警部補は、国境線上での追跡、銃撃を行なう。そして<ブリーチ>行為をおかすことなく見ないようにするといった設定で記述がされている。果たして命が掛かった切羽詰った状態で、国境の外の都市の建物や車など”見ないようにする”なんてことは出来るだろうか。この<ブリーチ>という見ないようにする行為が信じられなかった。いままでのリアルに見せるための緻密なディテールとは、水と油の関係である。この点でこの小説の決定的な構造上の破綻をきたしたのではないだろうか。
さて、一部には訳者「日暮雅通」訳が悪いという意見もあるようだが。読んだ限りではあまりそう感じられなかった。同じ早川書房の文庫での御用達の訳者「田中一江」の日本語になっていないものと比べれば雲泥の差である。『最悪なのは誤訳のせいで前後の意味がまるで通じなかったり、ストーリー的に重要な箇所や伏線が意味不明になって台無しになっている箇所が散見されること』という一部の読者の指摘が、もし本当なら、どの箇所がそうなのか。どういった訳だったら正しいのか明示して戴きたい。そしてどうか英語に堪能な方、ご尽力戴きたいものである。たしかハリーポッターでも誤訳があり、ウィキペディアで詳しい記述があった。
本書のこれからの読者の役立ちとして、数多い登場人物の中から主な人名を挙げておきたい。ティアドール・ボルル警部補 (別称ティアド)、リズビェト・コルヴィ、ビエラ・マール、マハリア・ギアリー、ミケル・ブーリッチ、デイヴィット・ボウデン、クシム・ダット、ヨランダ・ロドリゲス、アイカム・ツーエ、ヨルヤヴィッチ、アシル である。
なお149頁のボウデンは、241頁ではボーデンとなってるが実は同一人物で表記が統一されていないだけである。これは訳者の誤謬である。また300頁5行目の「あまにも重かったので」は「あまりにも重かったので」の誤植である。361頁の「警官であるヨランダ・ロドリゲスのために、出国ビザを取ることができるか?」は辻褄が合わず、誤訳かと思ったが、後述の話筋から「警官に扮してヨランダ・ロドリゲスを出国させることができるビザを取ることができるか?」という意味だとわかった。しかし、373頁の次の文章はたしかにおかしな文章だった。『そこに書かれたメッセージが持つ亡霊を呼び出す力は心地よいものではなく、あの夫婦を知り、まるでマジックミラーのように言葉の内にいて彼らをながめている自分の姿は、こちらが書き手のひとりであっても、彼らには見えることはない。』これはさすがにおかしな文章だ。まさに『田中一江』風の文章だ。本書の最終は514頁。この373頁以降は、訳者の仕事の締め切りが迫ってきていたのか、訳文が少々雑になっているのだが、この際立っておかしな意味不明な一文を除けば許せる範囲だろう。
このように労して読み終えると、不思議と執心させられたのも事実である。前述した”決定的な構造上の破綻”がなければよいのにと悔やまれる。『物語の舞台は、ユダヤ教区とイスラム教区の二つで成り立っているイスラエル。時は未来(二一〇〇年ごろ)。永年二つの区民は異なる宗教によって、いがみあってきたが、エレクトロ脳神経科学の発達で、両区民は見えない、聴こえないことが可能となり、平穏裏に過ごしていた。しかし、遺跡調査のためエルサレム大学に留学してきた女学生が、郊外の住宅地で刺殺死体として発見され、エルサレム警察過激犯罪課のティアドール・ボルル警部補が現場に向かうシーンで幕をあける。だが地道な捜査活動を開始するものの二つの区民同士がが見えない、聴こえないことによって、捜査は困難を極め〜。』ああこんな設定なら、信じられるのになあと思った。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.2:
(3pt)

ブリーチはBREACH

半ばまで読みすすめていくと事件も動き出して引き込まれたけど、それまではちょっと読むのがしんどかった。基本ミステリーなんだけど設定が特異で、しかもその特異な設定が物語の展開とともに徐々に明らかになっていくので世界観を理解するのが大変。

鍵となるのはブリーチという言葉だが、本文中では「ブリーチをしたらブリーチが現れブリーチされる」というような使い方がされている。英語におけるブリーチの意味を知っていればもう少し理解しやすかったかもしれないが、読み終わって解説を見るまで作品中のブリーチとは漂白のことだと思っていたので苦労した。

国境が曖昧で同じ場所を二つの国がそれぞれの領土としている世界。それも、ただ両国が言い張っているだけでなくそれぞれの国の国民が同じ場所で入り混じって生活し相手国の人や物は無いものとして生活しているという設定は面白いし、まさにSFで言う所のセンス・オブ・ワンダーだと思う。ただブリーチはちょっと浮世離れしすぎていてついていけなかった。日本の特高やナチスのゲシュタポのような存在で良かったのではないかと思う。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353
No.1:
(3pt)

惜しむらくは...

梗概は他のレビュー子のものを参照されるとして,間違いなく力作である。
特に,この種のテーマで小説が「書かれる」際に最も重要になる「イメージ」の
扱い方が巧みであり,かつ齟齬が生じていない。
うまく映画化されれば(かなり難しいではあろうが)話題になるだろう。

惜しいのは翻訳のポンコツさである。特に,何故か後段辺りから日本語の質が
落ちて,この作品には可哀想なひどい訳になっている。納期の関係でどこかの
下請けにでも回したのだろうか。
都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118353

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