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都市と都市
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都市と都市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全32件 21~32 2/2ページ
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いやはや年の瀬から年始に掛けて、私はこの作品に没頭してしまった。これは類書のないとんでもない作品で、各々一都市で形成する二つの国が複雑に入り組んで接して存在する(なんて言っても分けわからんけど)仮想の場所を舞台に繰り広げられる物語。その設定自体が複雑だけど、本作が色彩の異なる、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ローカス賞、クラーク賞、英国SF協会賞受賞を受賞したことからもその内容が極めて多面的であることがわかる。 一級のSFであり、警察小説で、推理小説で、冒険小説であり、更に密かに恋と、深く哲学的様相まで含む、何とも感とも形容のしがたい作品になっている。ヨーロッパの作品だなぁ。 先ず以て大変なのは、仮想の国だけに、登場人物の名前が全くなじみがない。二つの都市(国)各々の登場人物の名前が先ず以て頭に入らない。ここに地名と、設定状必須の入り組んだ二つの都市ならではの特殊な状況を表す「用語」。 いやぁ、正直くじけそうになりますね。ここに、アメリカやカナダ、あるいはヨーロッパが実在として入ってくる。 いやはや。 それがどうだろう、半ばから、自分自身がこのおよそあり得ない設定の状況にはまってしまいます。 何とも不思議でたまらない気分になります。 およそ万人にすすめられる作品ではない。一方、この不可思議な世界を是非体験して欲しいとも思う。 終盤ややその奇妙さが、謎解きの部分で「普通」さを出すところでちょっと薄れてくるし、秘密の奥底が残るようで靴の上から足を掻く気分も出てくるが、とにかく、チャレンジしてもらいたいとも思います。 | ||||
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バルカン半島中部にある都市国家ペジェル、その郊外の住宅団地で若い女の刺殺死体が発見された。過激犯罪課のティアドール・ボルル警部補たちが捜査に当たるが、女性被害者の身元はなかなかつかめないままであった。しかし、匿名の電話から被害者がペジェルとウル・コーマのモザイク状に組み合わされた2重都市にいたらしいことがわかった。 ボレルは被害者が”統一主義派“に関係していると睨む。その仲間の話によると、彼女はペジェル、ウル・コーマとかつて共同体にあった都市・オルツィニーについて調べていたというのだが・・・なんて書くと普通のミステリーなんだと思われるかもしれない。 しかし、完全に重なりあった2つの都市なんてあるのか?さらに、そこに住む住民はお互いに姿も声も生活も知らない、そんな世界を極めてリアルに描いたらどうなるのか? 本書”都市と都市“は『見えない都市』という奇抜な世界設定=幻影をリアルに描き切るのである。そして、そればかりでなく、事件やそれをとりまく人々の状況までも緻密に描いているのである。物語の舞台は架空都市国家”ベジェル“と”ウル・コーマ“なんである。この二つの国にはやっかいな慣習がある。それは、相手の国に属するものを存在しないものとして振る舞わなければならないというものだ。 この慣習を侵すことは『ブリーチ』行為と呼ばれ、法律よりも厳格に禁じられているのだ。そんな架空の都市国家“ベジェル”で女性の遺体が見つかった。として物語は始まる。SF的要素は『ブリーチ』という奇妙で面白いアイデアのみで、物語は結構ヘビーな極上のハードボイルドで警察小説でもある、SFミステリー。筆致に力を感じた。 ゆっくりとお読みになることを御薦めする。 | ||||
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大体、こんな設定ありあえない。 二つの都市の住人が同じ所に住んでいながらお互いに見て見ぬふりをする?無理無理。 同じカップにコーヒーとミルクを入れながらカフェオレになるなと言うようなものだ。 年端のいかないこどもはどうする?痴呆の老人は?まして外国人は? 「ブリーチ」はどんな組織で、何を財源にしているのか? どちらの国の憲法のもとで働いているのか? 事業仕訳があったら、真っ先に廃止だろう。 ブリーチとブーリッチもまぎらわしい。 読みながらこうした突っ込みがだんだん激しくなり、読むのをやめてしまった。 こういうのをファンタジーというのか、向かない人間にはとことん向かない。 | ||||
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梗概は他のレビュー子のものを参照されるとして,間違いなく力作である。 特に,この種のテーマで小説が「書かれる」際に最も重要になる「イメージ」の 扱い方が巧みであり,かつ齟齬が生じていない。 うまく映画化されれば(かなり難しいではあろうが)話題になるだろう。 惜しいのは翻訳のポンコツさである。特に,何故か後段辺りから日本語の質が 落ちて,この作品には可哀想なひどい訳になっている。納期の関係でどこかの 下請けにでも回したのだろうか。 | ||||
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見てはいけないもの。見えないもの。 例えば、道脇にたたずむ浮浪者。アジアのストリートチルドレン。 目を合わしたら面倒なことになる。いないものとして見ない。 考えてみれば私たちが日常的に行っている行為だ。 これがSFになるなんて。 「ブリーチ」という組織・存在がこの世界のキモかな。 | ||||
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ベルリンの壁のように物理的に遮断するのではなく,国民に対する教育と国民がもつ恐怖心を利用して都市を分断する。 「ベジェル」と「ウルコーマ」それぞれの国民は,幼い頃から受けた教育により,視野に入り「見える」はずの隣の国民を「見ない」ように目をそらす。これに逆らうと「ブリーチ」という犯罪行為に該当し,どこからともなく現れる最大の権力者「ブリーチ」によって処罰される。 「ブリーチ」の存在は国民の誰もが理解しているが現実にどういったものなのかは誰も知らない。 そして「ベジェル」と「ウルコーマ」という都市の間には,どちらの都市にも属さない「オルツィニー」という都市が存在するとの「都市伝説」まである。 実にユニークな設定だ。 そして何より「ベジェル」「ウルコーマ」「ブリーチ」「オルツィニー」といったネーミングがクールで想像力を刺激させられる。 「見える」ものを見てはいけないものとして「見ない」ようにしている。 あまりにも荒唐無稽な設定かと思いきや,実は,これは我々が日々生活を送るうえで無意識に行っていることなのではないだろうか。 例えば自動車を運転していて目に入る,車にはねられた小動物。 鉄道駅周辺でうずくまるホームレス。 奇声を発しながら歩く不審者。 この小説で描かれる状況は,この無意識に行っている行為を国家維持のために国家レベルで行っている状況だとも言えよう。 | ||||
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SFとミステリーが融合した作品。 とにかく賞を受賞しまくっています。 ウル・コーマという国がすばらしいんですが、 中でもトラディショナル・ウル・コーマンティーに関する記述は無視できないですね。 | ||||
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都市国家ベジェルで女性の他殺体が発見される。捜査を進めるボルル警部補は、被害者が隣接する都市国家ウル・コーマで殺害されてベジェルで遺棄されたと突き止める。ベジェルとウル・コーマの関係は複雑で、互いの国民は相手を見てはならないという掟があり、許可なく相手の領土に踏み込もうものなら<ブリーチ>という畏怖すべき第3の権力が取り締まりに現れる。ボルルは交渉の末、単身ウル・コーマへ捜査に向かうが、そこで彼は、伝説化している第3の国家オルツィニーの影を見ることになる…。 世界幻想文学大賞受賞作、と聞かされては手にしないではいられません。マシスン『ある日どこかで』(創元推理文庫)、ケン・グリムウッド『リプレイ』(新潮文庫)といった、人間の想像力が限りないことを見せつけてくれる物語に栄誉を与えてきた文学賞です。この『都市と都市』がどれほどのめくるめくストーリーを差し出してくれるのか、大きな期待とともに頁を繰り始めました。 ヨーロッパのどこかにあるとおぼしき二つの都市国家。両国民が相手を見てはならないという奇妙な規則の存在。そんなとりとめもなくデタラメな設定に、血肉を与える作者ミエヴィルの技量たるや、ひととおりではありません。 独自の言語の存在や領土の入り組み具合、さらには両国を統合しようと画策する<統一派>の存在といった政治論争までを緻密に描きこんで、一人の刑事が捜査に疾駆するハードボイルド・ミステリー×SF小説に仕立て上げているのです。 巻末の大森望の解説によれば作者ミエヴィルはこの物語をアレゴリーとして読まれることを拒絶しているとのこと。それでもやはり私は、これを寓話として読みたくなってしまうのです。壁によって東西に分断されていた時代にベルリンに足を運んだことがありますが、隣接する街をあらまほしからざるものと見なしていた両市民の心情は、まさにこの小説のベジェル人とウル・コーマ人とが互いを見まい、聞くまいと努める心理状態に通じている気がします。 | ||||
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まだ2012年から2ヶ月しか経過していませんが、既にbest級です! ”都市”についてこだわってきたミエヴィルしか書けない、素晴らしい小説です。 二つの隣接する都市で発生した殺人事件、それを追う主人公。 内容は犯人を追うフーダニットと、ありきたりの設定ですが、 その”都市”が全くありきたりじゃない。これは是非読んでみてください。 私は「<見ない>ようにする」とか、「相対局所的に」とか、筆者独特の言葉遊びに ぞっこんです。 SFに興味のないミステリファンの方々にも是非一読を。 今年これから発売されるSFは大変だ。常に本作と比較されてしまうのだから。 不可能ですが、<ボルル警部補もの>とかで連作できないか(^^;? | ||||
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「都市と都市」という、原題でも日本語訳でも非常に興味は惹くけど小説的魅力はあまりないタイトルが示すのは、範囲が入り組んでいるだけでなく、重なってもいる2つの都市国家。隣を歩いている人でも他国民であれば異質なものとして見てはいけないという国家です。 荒唐無稽な発想に思われるかもしれませんが、本書を読んでみると、そうでもないような。 作中で東西ベルリンのような飛び地との違いは強調されているけれど、人類の歴史を見ると、共同体における不可触賤民とか政治的地位と宗教上の地位の乖離とか、こんな国家が存在しても不思議はなかった要素は大ありでしょう。 その「ありそうさ」加減と、説明的になりすぎず提示される社会通念のほどよさが序盤の大きな魅力になっています。 一方で、人物像に魅力が乏しいのも、この特殊な「見てはいけない」ものが目の前にあたりまえに存在する世界のぼんやりした輪郭のなせる技かと考えれば気にならないし、文化的な設定が無節操に思えるのもこの特殊な地勢を表現しているのかと納得させられる--なんだか欠点を欠点と指摘できないような巧妙な作風だなぁというしてやられた感を抱かされます。 そうして実際のバルカン半島あたりの歴史との比較に思いを馳せて読み進んでいるうちに、今度は事件の展開に引き込まれてゆく。これもうまい構造です。 ミステリを読みたくて本書を手に取る人がいるのかどうかわかりませんが、ミステリの要素もおざなりでなく十分なエンターテインメント性があり、ラストも鮮やか。 でもこの「ありそうでない」手触りはやはりSFならでは。最後まで欠点を指摘したいのに言い出せないような痛痒感を残しながらも、面白かったと言わざるを得ない作品でした。 | ||||
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殺人事件を追う刑事。しかし、彼の前には二都市間のシステムが立ちはだかる……と書くと、よくあるミステリなんだけど、この都市が一筋縄ではいかず、それこそが主人公。 同じ場所でモザイク状に混ざり合った領土を有する〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉。 国民は互いの国を見ないように教育されていて、それを違反すると、超越的組織〈ブリーチ〉に拘束されてしまう。極論すると、ベジェル人がウル・コーマの車に撥ねられたら違法なのだ。 また、明確に分かれている地域もあれば、隣同士で異国という場所もある。無論そこに行くのは違法なので、都市の中央にあるホールで国境チェックを受ければ、訪れることができる。 聞いただけど、ありそうもないんだけど、『アンランダン』や『ペルディード・ストリート・ステーション』などで、魅力的な街を描いてきたミエヴィルの筆力で、非常に強い実体を持っている。しかも、アンランダンやニュー・クロブゾンがファンタジーであるのに対して、ベジェルとウル・コーマは東欧のどこかという舞台にもかかわらず。 自分の経験で、クロアチアのスプリットからドブロヴニクに向かう道の途中で、一部だけボスニア・ヘルツェゴヴィナが突出している場所を通ったことがあるだけに、なんかヨーロッパのどこかにありそうなんだよね。旧共産圏(らしい)都市国家という巧みな設定もそれを補強している。 街歩き好きとしては、是非訪れてみたい。入国のための試験に落ちそうだけど。 ベジェル用語が多用され、なかなか世界が「見え」ず、入るまで結構時間がかかる。しかし、そこがいざ「見え」てくれば、その手は止まらなくなる。 そんな街ならではの犯罪あり、それがなければ成り立たないという意味で、異世界ミステリとしても傑作。 隣り合っているけど互いが見えない〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉、両者を見ることができるけど越境がなければ動けない〈ブリーチ〉、この三者のシステムを使って、ボルルはどうやって犯罪を追っていくのかが、物語としての見所。 ラストは『ダークマン』を想起させ、ダークヒーロー的寂寥感を与えてくれる。 | ||||
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人種と文化の異なる二つの都市がモザイク状に入り組んだ場所を舞台としたスプロール・ミステリー。パラレルワールドみたいに重なっているのではなく、ただ、入り組んでいるだけと云うのが良い。しかも、そこで発生した殺人事件に都市を越境しない様に見張るブリーチと呼ばれる存在や、二つの都市と民族の元となる(と云われている)先文明の伝説などが入り乱れる。 ブリーチの自分達を見えなくする技術以外はSF的なガジェットは登場しないが、この都市の有り様を見て、山野浩一を想い出した。日本でなら、山野氏が書きそうな作品だ。そう云う意味では、クラシックなニューウェーブの香りも感じられる。 | ||||
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