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(短編集)
十二人の手紙
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十二人の手紙の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全59件 41~59 3/3ページ
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1人の人間が、12人の人間になり代わって手紙を書くという作業は、思うほど簡単ではない。 高校を出たばかりの女が両親に、恩師に、弟に、親友へと次々に(時には長い長い)手紙を書き、しかも恩師には就職を世話してくれたお礼にとネクタイとピンセットを贈り、両親と弟に送金する。いまどき、こんな殊勝な女がいるとは思えない。 最初の「プロローグ悪魔」から始まって、最後まで、若い書き手の手紙はどれもスイスイと快調に筆が進んでいて、同じ調子。こんなに見事な手紙を書ける人がいるのか、という違和感が抜けない。 筆者の試みはわかるが、成功しているとは言えない。手紙の書き手の奥に、せっせとペンを動かしている井上氏の顔が浮かんできて、消えないのである。 | ||||
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手紙や公的文書(各種届け出書類とか)をツールに紡ぎ上げた作品集。 通常のストーリー展開と違う点(の一つ)は、手紙を書いている人物の“主観”しか読み得ない事。そこに悪意があっても精神的に破綻を来していても判別つけ難い。従って、それが判った時のカタストロフィーが、通常の小説とは違う味わいとなる。 社会的弱者や、世間ずれしていない人、日々の生活を懸命に生きる人々への作者の愛情は、悲劇を描いても、冷徹にはならない。ユーモア感覚のオブラートもあるだろうが、ストレートに生きる人間の生き様が筆から伝わるからだろう。手紙文という形式自体、然りである。 内容に触れられないのが残念だが、粋な趣向も凝らしてある。 | ||||
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どんでん返しの連続。手紙文の形式で情景やストーリーを紡いでいく手法は手がこんでいて感心させられる。 | ||||
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表紙の茶封筒、井上ひさしというイメージから思っていたのとは内容が違ったので、戸惑った。 | ||||
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文字通り12人の手紙であるが、手紙を書いた各人物の生活背景が、にじむように描かれている。 手紙という形式なので作中の人物が手紙を読んだときは?と、空想を巡らせながら、さらに空想の舞台が拡がっていく。 一編のみ手紙ではない記録が「見もの」である。 | ||||
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”手紙のみ”という形式がユニークで、最初は、面白いと感じました。 意外性もありました。 しかし、”顔が見えない手紙だから嘘がつける”というパターンが共通で、途中からは、先が読めてしまい、意外性が薄れました。 ごめんなさい。 悪くはないと思いますが、良作だとは思えませんでした。 | ||||
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某所にて手紙だけで構成される小説と聞き、どんなもんかと思い手に取った。読んで驚き。本当に手紙の形式に則って物語が作られている。しかも十二篇それぞれ趣向が違い、最後にはっとさせられるものから、性的な要素を含むものまでさまざまであり、読んでいて飽きがこなかった。『普通』の小説に食傷気味の方におすすめです。 | ||||
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文句なしに面白い。 手紙の形だけで編まれた13編の物語。 そのいずれも瞬く間に作品世界に引きずりこまれる面白さ。 とりわけ、役所の公的書類で物語を構成している「赤い手」、 手紙の書き方本の例文を使ってストーリーを展開する「玉の輿」は、 文章への興味と探求心が尋常ではない著者ならではの作品だろう。 こんな形式の本を、もっともっと作っていただきたかったと心から思う。 | ||||
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井上ひさし作品はどれを読んでも損はないが、とりわけ、『十二人の手紙』(井上ひさし著、中公文庫)は小説の醍醐味を味わわせてくれる。 キャバレーに勤める元・修道女の身も心もボロボロの手紙。上京し、就職した小さな会社の社長の毒牙にかかった少女から弟らへの手紙。家出し、演劇スクールに通い、新人公演の主役を射止めた女性から高校の恩師への手紙。人妻に突然送られてきた、25年前に夫と同期だった男からの手紙。鞍馬山中で仕事に励む初老の画家への留守宅の妻からの驚くべき手紙。ペンフレンドを求める若き女性に寄せられた恐るべき手紙など、12人の手紙だけで構成されたこの書簡集には、悲しみと笑いが詰まっているが、さらにエピローグでこれらの登場人物たちが一堂に会するという、いかにも井上らしい趣向が凝らされている。 | ||||
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著者・井上ひさし氏の、「十二人の手紙」というタイトル に目を惹かれた。十二人の手紙によって、ストーリーが 展開する少し変わった、短編集なのである。 昭和という高度経済成長期のまっただ中でありながら、 著者・井上ひさし氏の視点は、悲哀な人生を背負う人たち、 にスポットライトが当てられているのだ。 どちらかといえば社会の底辺に追いやられながらも、何とか 精一杯生きようとする、社会的弱者なのだ。 「赤い手」は、役所に届ける「申請書」や「届け出書」の 記述だけなのだが、その単純な書類の記載内容だけで、 その悲しい生涯が、読者脳裏に焼き付けられてしまうのだ。 そして、最後の「人質」では・・・。 本書の最後には、思いがけぬ仕掛けがあったのだ。 今の日本では、こんな生活はあるのだろうか?昭和という 時代が、懐かしく思える一冊である。 | ||||
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じんわりと、染み込んでくる。何とも言えない。小泉今日子さんが新聞に推薦図書として載せていたので購入しました。 | ||||
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読売新聞の書評欄(2010年8月9日)で女優の小泉今日子が「最近、久しぶりに読み返してみて、やはり名作だと再確認できた」と「私のイチオシ文庫」に選んでいました。 二十数年来、KYON2が面白いと言った本で、ハズレがあったためしはありません。彼女の言葉を読んで、これは手にしないわけにはいきません。 そして今回もまた、彼女の書を読む力に間違いがないことが「再確認」できた思いがしています。 書簡ないし公文書の類い、つまり誰かが誰かにあてた文書で紡ぎあげた13の短編を集めた一冊です。「十二人の手紙」とありながら13の短編がある理由については実際にこの本を手にすれば分かります。確かに12人が、というより正確には縁づいた12組の人々の手紙によって紡がれる物語が詰まった一冊です。 ここに掲げられた書簡があぶりだす物語の妖しさと不気味さに悪寒を覚える読書でした。 ほとんどの短編は、便りの書き手が「信頼できない語り手(unreliable narrator)」であることが最後に明らかになります。そのとき、登場人物たちに対する私の<信頼>がいかに無邪気なものであったかを思い知り、そしてその私の信頼が大きく裏切られたことの衝撃の強さに色を失うのです。 そう、まさに人と人との間にこの信頼というものを生み、育み、つなぎとめんと努める思いがこの手紙には込められています。ですがその思いが、つなぎとめんがためのいじきたない嘘に堕していることがあります。そこに私は言葉というものが持つ偽ることの力をまざまざと見せつけられ、怖気づいてしまうのです。 それでもわずかにいくつかの短編は、嘘は嘘でも、微苦笑をもって読まざるをえない方便の嘘が散りばめられた作品があります。(『ペンフレンド』『鍵』) その嘘が人と人との間に温もりを生む手ごたえを感じないではいられません。 言葉が偽り以外の何かを生む力がまだあることをどこかに思い、安堵の念も抱く作品群です。 | ||||
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井上ひさしが亡くなったと聞いて、最初に思い出したのはこの本。再読したいと探してみると2009年に中公文庫から新装版が出ている。単行本の出版が 1978年だから30年以上読者に支持されていることになる。 題名の通り手紙で綴られた短編集なのだが、それぞれに様々な趣向が凝らしておりそれだけでも十分楽しめる。だが、本書の面白いところは、それぞれの短編が少しずつリンクし、エピローグで昇華する長編小説にもなっているところ。このようなスタイルは最近でもよくあるが、30年以上前に書かれた本書は今でも全く色あせていない。 | ||||
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連作書簡体小説とでも言うべきか、12人の、どちらかといえば貧しい、あるいは不幸な人々の手紙だけで構成された作で、最後にそのうち何人かの人生が交錯する。近ごろの直木賞受賞作などよりよほど面白い、といっては、それはこれを書いた時の井上は直木賞作家だったのだから当然ともいえようが、直木賞受賞作はせめてこれくらいのレベルのものを望みたい。概して直木賞は、こうしたトリッキーな作品に冷淡であるような気がする。 | ||||
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この本を読んだ当時は、解説者が言うような、井上さんの祈りをこの作品から読み取ることが出来なかった。社会人になったいまの私には、井上さんの祈りが察せられるようになった。 私にとって最も興味深かったのは、公平に報酬を得る、とはどういうことなのか、井上さんがこの作品の中で問おうとしていたことだ。私は発達障害、という目には見えない障害を抱えている(と私は、推測している)。その私にとって、井上さんのこの試みは、福音のように思われた。事実、井上さんのこの試みは、『聖書』よりの引用ではないだろうか。朝から晩まで働いた人も、昼から晩まで働いた人も、みんな、同じ額の報酬を受け取れる。『聖書』の中には、だいたい、そんなたとえ話が登場していたはずだ。なぜ、みんな、同じ報酬を得られるのか? 朝から晩まで働いた人は、もともと、それだけの能力があった。昼から晩まで働いた人は、精一杯の力を出し切っても、それだけの能力しかなかった。いずれの人も、精一杯力を出し切った、それで十分なのだ。私は、確かに仕事が出来ない。「小学生だって、もっと、ましに出来るのに」と陰口たたかれるのを聞いたこともある。実際、私には、それが精一杯なのだ。 そのほか、私の印象に残ったのは、〈慈善〉の行為のつもりが〈偽善〉の行為になってしまうことが、この世にはままあることを、井上さんが示唆していたことだ。〈慈善〉を施そうとする相手の状況をよくわきまえない限り、相手を正しく知ろうとする努力をしない限り、そのような事象はまま起こってしまう。だからこそ、太宰の言うように、教養が必要なのだと私は思う、ハニカミを知ること、神を畏れること、それが大事なのだ。私は不幸にして、厄介な障害を持って生まれた。また、私は学生の頃、不勉強だった。それが、いけなかった。若い皆さん、ぜひ、熱心に勉強ください。井上さんや太宰のように、私も、万民の幸福を祈っている。 | ||||
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手紙形式の短編集であるが、それぞれが、手紙独特の味わいを、十二分に醸し出す。 多くは人生の悲哀を描き、また数作は、どんでん返しのある意外性のある作品となっている。 ただ、どれも、人生の重みを強く感じる内容だ。 この作品が発刊されたのは1980年。 当時は、長文の手紙は日常的で、意思疎通の重要な手段だった。 ところが、今は手紙が書かれる事が少なくなり、メールが幅をきかせている。 もしこれが、絵文字満載のメールだと、軽薄だろうな、と想像したりする。 この事を考えると、手紙形式の本書は、一種の形式美を感じる。 「赤い手」に至っては、出生届、死亡届などの、公的文書ばかりから成っている。 内容は、手紙形式故に、読者の心を深くえぐる。 なぜなら、綺麗事では済まない、人生の悲哀を、ストレートに描いている。 いつまでも色褪せる事のない名作だ。 | ||||
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手紙で構成された短編集。 どの短編にも色々な種類の手紙が出てきます。 中には出生届・婚姻届・死亡届・・etc.など、 ほぼ役所の書類だけで構成されている短編もあります。 この短編を読んだときには、書類を並べるだけでも 人間の人生を描けるんだなと妙に感心しました。そしてただの短編集と違い、井上さんはある仕掛けを設けています。これは読んでからのお楽しみですね。 もう少し有名になっても良い作品だと個人的に思います。 | ||||
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手紙、届出書、習作からの引用などで構成されたトリッキーな連作短編集。驚くべきアイデアを次々と繰り出してくるところは作風は違うが乙一の「ZOO」を連想させもする。全体に作者独特の温かみが漂っており、それを臭いと感じる方もいるかもしれない。また、単行本の刊行が昭和53年とは思えないほど言葉遣いなどの感覚が古い(昭和20~30年代風)点が玉に瑕。しかし、純然たるミステリーとは言えないので忘れられがちだが必ずチェックしておくべき傑作である。 | ||||
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その人が書いた手紙や、その人について書かれた手紙で構成された、 短編集です。井上ひさしさんらしく、文章も達者ですし、 報告書だけで、一人の人生を描いたお話など、印象的なお話もあり、 なかなか、面白いです。ただ、キャラの被っている人物がいたり、 すべてのお話が繋がっている訳ではなかったりもするので、十二人なんて欲張らずに、半分くらいにして、もう少し、 それぞれのお話を膨らませてくれたら、もっと、良かったのに、 という気分で、星4つにしてますが、星3.5というのが、 正直なところかもしれません。 | ||||
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