■スポンサードリンク
天使の歩廊
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
天使の歩廊の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ファンタジーという枠組みをしつつ、より深いテーマがある気がします。とはいえ、ファンタジーとしてだけ考えると、難しい作品かもしれません。さらには連作短編というぶつ切りな構成も読者を選ぶかもしれません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
第二十回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 笠井泉二と彼がつくる建物をめぐる六篇の短編からなる作品。短編で時系列がバラバラだが、それぞれ微妙につながっていて、一つ一つのエピソードを積み重ねることによって不思議な建築家笠井泉二の輪郭が徐々に浮かび上がってくる。 うまいなあ、と思ったのが雨宮利雅の醜い虚栄心の表現。地の文の説明がたとえなくても彼の台詞を二、三読むだけですぐ感じられる。読者はすぐに彼のことが嫌いになるはず(笑) 一番好きなエピソードは第一章「冬の陽」。章子夫人の強さと儚さ、最後の奇跡には胸を打たれる。ハッピーエンドなのだが、それが他人から見ると彼女は心を狂わせられてしまった悲劇の人でしかないところも皮肉的で面白い(第六章での雨宮の台詞から)。 急勾配の手に汗握るストーリーではないが、静かに心に染み入る類の優しい物語。 私も笠井泉二に家をつくってもらいたい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
実は、読むまでは、怖そうでつまんなそうだな、と思っていた。 それでも読む気になったのは、やはり過去に面白い作品を出している賞を受賞した本だから。 ファンタジーでありながら、どこか現実に触れているような、落ち着いた物語。 なんとなく読み始めましたが、結構なスピードで読み進められたのも、面白かったのだと思います。 大感動でも、心底面白い、でもないけれど、なんとなく印象に残る物語でした。 けれど、カバーイラストはもっとどうにかなったのでは・・・。怖いよ・・・。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
6編からなる独立したお話かと思いきや、それぞれが微妙につながった物語でした。 笠井泉二という不思議な建築家の物語。 時系列ではなく、少しずつ入り組んで話が進められていますが、伝記のようでもありました。 他人のために数々の建物を造ってきて、最後はこれ?っとちょっとヒヤッとしましたが。。。 ホッと心が和む本でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
なぜ他のレビューの評価がこれほど高いのか・・・。 全部で6編ありましたが、3編を読んで挫折しました。 天才建築家と、その建築家が作った家に関連するエピソード、というのが物語の基本構成ですが、何がいけないのかを振り返ってみました。 ・天才建築家のキャラ立ちが薄い ・中途半端にファンタジー これにつきると思います。 1編目は、老夫婦の人生が、壬生義士伝の登場人物からひとりを取り上げ、その人生の上澄みだけを10頁くらいでまとめた薄い内容。 激動の時代を歩んできた妻のために、天才建築家が感動の(?)家を建ててあげるのですが、前フリが前フリなので、ありがたみがわかない。 2編目が、鹿鳴館の副館長と、子供時代の天才建築家の話。小心者の副館長が右往左往するエピソードが大半をしめ、オチもよくわからず、消化不良。 3編目も、行方不明の推理作家は、家の中のどこかでまだ生きているんだろう、ということで終わったが「食べ物はどうしてるの?」と、現実的な疑問が沸いてくる。読者にそんな疑問を持たせるファンタジーは破綻している。 第一回目のファンタジー賞をもらったんでしたっけ? 発展途上の賞だったからこそ、まぐれでもらえたのかな、と思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
SFというか、ファンタジーというか、幻想的な終わり方をする小話の集まりです。 読んでいてとても不思議な気分になります。 ファンタジー部分は「それで?」という物足りなさがありますが、時代小説を読んでいる楽しさがあり、近代化したての日本の建築業界や日本人の生活が詳しく書かれていて面白かったです。どの話も長くはないので、空き時間にさくっと読めていいですね。 個人的には、主人公が満州で作り上げた街がどんなものだったのか?が気になります。余韻を残した終わり方なのもいいですね。 とはいえ、ファンタジー小説の面白さ(奇想天外さ)を期待しては肩透かしを食らうかもしれません。 でも、ジャンル的にはファンタジー小説でしかありえないんだろうなぁ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ふしぎな時間の中を旅して出てきたような読後感にさそわれる希有な連作小説です。 建築と小説といえば、どういう建物の構造で、どういう事件が起きるか、というミステリの形式になりやすいのですが、この連作はそうした因果律的建築論とは一線を画しています。 時代は明治後半から大正のはじめにかけて、全体は笠井泉二という異能の建築家の生涯のいろいろな時代のエピソードを扱っています。一作目は、華族の未亡人が夫の遺骨をおさめてともに暮らす別館の設計を、泉二に依頼するもので、夫の命日にちょうどその骨壺の台座に光がさしこむ工夫など、技としての建築の面が見られますが、第二作からは泉二の幼児期からの天使との邂逅ともいうべきふしぎな才能がつづられていきます。 第二作は鹿鳴館の秘密の地下道をなぜか透視して描いた子ども(泉二)の物語、第三作は建築家となった彼の設計した〈迷宮閣〉の中で消えてしまった作家の行方を追う巡査の話、第四作は建築科の学生時代の泉二が、亡くなった友人のために図面をひいた、いわばあの世での住まいともいうべき、二重螺旋階段をそなえた館の物語、第五作は泉二の短い結婚生活と、倫敦で建築の啓示を受ける事件、そしてラストの作品は、おさななじみだった女性のために彼女の故郷の村に建てる、水に満たされた別邸の物語です。 いずれの館も、そこに入るだけで、別の世界に入ってゆくような建築で、ここにいれば、心の平穏を乱すもの、依頼者の運命をかき乱してきた大きな力が入ってこれない、そういう、ひどくなつかしい、守られた空間です。ことに最後の作品では、依頼者である女性だけでなく、その夫で嫉妬のあまり、泉二を殺そうとする男が、彼を追ってその建物に入ったとたんに、水面に立つ天使と「忘れ川」の水音に、これまでの苦しいこと悔しいことのすべてが癒されてしまいます。ほんとうに大切なことを思い出したふたり。 泉二の建築に入れば、天界のふしぎな意識状態にさそわれてゆく。そういう空間の力が、ゆるぎなく、微妙なうすい光と水音と天使の姿をちりばめて、しずかに描き出されています。 読み終えたとき、この本の中の建築をわたしたちも通り抜けたのだと、そんなふかい感慨に誘われます。建築とは凍れる音楽だ、という言葉がありますが、この物語の建築は、やわらかに織りなされる光と影の空間、そんな日本人ならではの空間です。 時代が、はるかに遠い明治であることによっても、このしずけさはさらに強められています。ファンタジー大賞にふさわしい澄み切った作品です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は、天才建築家笠井泉二をめぐる、6編の短編で構成された物語です。 建築家を軸にしながらも、その1編1編の物語は、時系列に並んでいるわけではなく、趣向や時代背景が相当に異なる話が並んでいます。 私は、それぞれの短編を読み始めるごとに、「ああ、今度は、この時代のこの角度から描写したストーリーなのか」と感心しながら、読み進めました。何を書いても「ネタばらし」になってしまうので具体的には書けませんが、楽しめる作品群であることは間違いないと思います。 いやな部分が少しもない美しいストーリーを静かに展開しながら、読者を惹きつけて離さないのは、作者の非凡な才能を感じます。明治から昭和初期にかけてのノスタルジックな時代背景も印象的です。 それぞれに完成度が非常に高い短編なので、私は、一気に読まず、余韻を楽しみながら一遍ずつ読み進めました。 日本ファンタジーノベル大賞受賞作にふさわしい、すばらしい作品と思います。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
その男がつくる建物は、住む人の心を狂わせる 明治時代から大正時代に生きた建築家(造家師)・笠井泉二を巡る6編の物語をまとめた短編小説集。 笠井本人ではなく、彼に関わる人物の視点から、彼の設計した建物や設計を望んだ人物たちの物語を描く方法をとっています。彼の描写や感情は抑制的に描かれ、天使に魅入られた建築家という神秘的なストーリーが展開されるという効果をもたらしています。 6編の物語のうち、一番興味を覚えたのは一作目の「冬の陽」。夫を失った子爵未亡人が、「亡き夫と過ごせる部屋」を希望した建築を依頼します。 優秀な(他の短編を読むとそうではないことが分かるのですが)建築家の提案をことごとく退けていた子爵婦人は、夫とのこれまでの生活を教えてほしいという笠井の言葉に、江戸から明治にかけての人生を話し始めます。 笠井が作り上げた建物は…… 人物と時代、言葉の輪郭が鮮明に描かれているので、読みやすく、のめり込みやすく、感じやすい素敵な小説だと思いました。第20回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
明治から昭和初期へ。時代の流れとシンクロさせながら時空を行き来するオムニバス形式の建築家の物語。 ファンタジーでありながら豊富な歴史の知識が物語に厚みと風格を与えている。 また明治の女性、昭和の男性、登場人物はその時代時代の言葉そのままに語る。言語学の知識も驚異的。 主人公の創造した美しくあやしく人の人生を変える建築群。誰か映画にして見せてほしい。いえ実現は不可能だろうか。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
まずは、構成の妙に唸りました。自身も神秘的な体験 をもつ異能の建築家が、幽冥間の行き来を望む依頼主 に応じる話しをいくつか綴った後に、やっとその建築家の 履歴を紹介するという造りに感心しました。 それぞれの依頼主が語る、俗界での辛く厳しい経験も、 深みに欠けるきらいはあるものの、メリハリは十分で説 得力はあります。特に苦界から脱出しながら、そのトラ ウマに苦しむ実業家の妻が、夫とともに新築の建物で癒 される最後の挿話は、ちょっとした感動ものでした。 読み終わって、他ではあまり経験できない充実感や 満足感が得られます。 〔付記〕 受賞第1作の『ロスト・トレイン』(2009)を読み ました。前作と違いミステリー仕立ての長編なので、読 み出があります。宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』の幻想 性をベースにして、「まぼろしの廃線跡」で前作同様に 幽冥の両世界が通じ合い、読後感は悪くありません。 ただ、「テツ」というマニアを主人公に据えた分だけ普 遍性から遠くなり、全体のテンションは下がったような 気がしました。 (2010.2) | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
プロのレベル、いや、それ以上にあると思えた。建築という無機物を扱っておきながら、 人間に対するこの作者の温かい目線はどうだろう。 直木賞の候補に上がっても不思議はないと思う。 建築をベースにファンタジー、ミステリーの色合いを重ね、明治から昭和初期までの 時代をとても丁寧に描いている。 一つの章では、昔の関西弁をここまで再現したのにも驚かされた。 これがデビュー作とは到底信じられない出来映えで、プロ作家でもここまでの作品を 書き上げるのは容易ではないだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この世界の枠の外に存在しているような無類の建築物を設計する男、笠井泉二(かさい せんじ)。明治、大正、昭和の初めを舞台に、図抜けて異端の才能を持つこの建築家が創造した建造物と、それを頼んだ依頼主とをめぐる逸話、あるいは笠井泉二その人の奇妙な人となりを描いた話で組み立てられた作品。 「冬の陽」「鹿鳴館の絵」「ラビリンス逍遥」「製図室の夜」「天界の都」「忘れ川」の六つの短篇が、「明治十四年」の序奏と「昭和七年」のコーダをつなぐ形で、あたかも虹の架け橋を渡す感じで配置されています。建物に癒やされる登場人物の姿に目頭が熱くなった「冬の陽」と「忘れ川」、エッシャーの『相対性』の絵が脳裏に浮かんだ「ラビリンス逍遥」の三篇に、格別、心惹かれましたね。素敵な話だったなあ。 『第20回 日本ファンタジーノベル大賞』を射止めた本作品。1962年生まれの著者のデビュー作とのことですが、静かな気品をたたえた文章の佇まいといい、すっと立ち上がってくるイメージ喚起力といい、これが新人の作とは到底思えないレベルに達していたところ。正直、驚かされました。 不思議な魔法に引き込まれていくかのような作品の雰囲気。幻想小説であり、ファンタジーでもある小説が奏でる調べの美しさ。本の中に入って至福の数時間を過ごすことができた! この作品に出会えたことに感謝です。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!