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妊娠カレンダー



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【この小説が収録されている参考書籍】
妊娠カレンダー
妊娠カレンダー (文春文庫)

妊娠カレンダーの評価: 3.79/5点 レビュー 56件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.79pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全56件 41~56 3/3ページ
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No.16:
(3pt)

日常にありふれている負の感情を描いた作品

いかにも芥川賞受賞作といった類の純文学作品。同居生活を送っている「私」と姉、姉の夫という三人の生活がこの作品の主な舞台となっている。 妊娠してからというもの、「私」の姉はどんどんヒステリックになり、美しかった肢体には肉がつき、二重顎にたるみ始めた・・・「私」から見た「私」の姉や姉の夫の言動をひたすらに描写し続け、「私」の些細な感情の揺れはいちいち描かれないまま、しばらく物語は進行していく。一人称で描かれているが、中心に据えられているのは姉だ。しかし、「私」がアルバイト先のスーパーでグレープフルーツを貰ってきたあたりから、「私」の意図が見え隠れし始める。それはグレープフルーツでジャムを作り、姉に食べさせ続けること。昔、米国産のそれについて叩き込まれたある記憶が「私」にそうさせた。なぜそのような行動に出るのか? 人間が隠そうとする、あるいは気づきたくない負の感情のうちの一つがそうさせているのだろうと予想はつくが、何とも言えず不気味な妹なのだ。姉が産んだ赤ん坊を見に行く「私」は、いったい何を見ることを期待しているのだろう? 小川さん独特の手法にかかれば、ありふれた日常もホラー的な要素満載である。
妊娠カレンダーAmazon書評・レビュー:妊娠カレンダーより
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No.15:
(4pt)

現実世界の「ねじれ」から見える風景

本作に納められている短編3篇とも、現実世界の「ねじれ」から見える風景を表現している。物語の設定はすべてどこにもありそうな話しである。それこそ僕達の住んでいる地方にもありそうな話である。でもその何処にでも「ありそうな話」が何処にもない不思議な話なのである。それは作者の目線がちょっとズレたところにあるからかも知れない。古い産婦人科、学生寮、給食室。何処にでもあるが、ちゃんと見ていないと見逃してしまう、その独特の場所から現実世界では感じられない「ねじれ」を作者は我々に見せてくれるのである。ところどころに、作者の後から発表された作品の萌芽を感じることが出来るのも読書の楽しみを増やしてくれる。
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No.14:
(3pt)

心の奥底にあるのは、なんであれかすかに歪んでいる

短編を3編収録。それぞれに共通するのは、白黒の無声映画のような静かな雰囲気。木造の個人病院。さびれた学生寮。雨の小学校。すべてが淡々とひっそりしているのは、「個人的」な話だからだと思う。誰の心の中にもある、正体のわからない奇妙な感情。どんなに親しい人にだって、話すことはない、漠然としたまとまりのないもの。「個人的」なゆえ、うっすらと狂気を帯びているようなもの。それを、言葉に(小説に)変換したとき、個人的だったものは普遍性を持ち、共感を誘い、感興を呼ぶのだろう。そういう風に深読みしなかったら、またはそんな心のわだかまりを意識しない人には、きっと「なんか暗い、ヘンな話」かもしれない。(私はどっちかっつーと、そっちです。だから星三つ)
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No.13:
(5pt)

疑似体験

その詳細な記述により再現された現象の記述にわれを忘れた。「ああ、こういうふうになるのか」と納得させられた。それはおそらく著者の、現象を、それに対して感情移入することなく、冷徹に観察し、記述するという姿勢によるものであろう。あくまでも冷静に進行するが、知らず知らずのうちに読む側を引きずり込むその書きぶりにわれを忘れる。是非ご一読を。
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No.12:
(3pt)

ホラー?

小川洋子氏初読です。ホラー的要素と数学的要素が絡み合った、独特の世界観をお持ちのようで。ご本人はきっと、すごい潔癖な方なんだろうなと思いました。腐敗を描いていても、3篇すべての小説から、消毒薬の匂いが漂ってくるかのような印象でした。
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No.11:
(5pt)

大好きだから不安になる。

オレンジの色は、濃いから良い。グレープフルーツの色は、どうも色が薄すぎて透明で、はかない。しかも、それがジャムになってとろとろにとけて蜜と化せば、くずれそうで、こわれそうで、色が今にも空気にとろけていきそう、と思う。 自分の大好きな、きれいで、はかなげで、ほんぽうでわがままな人が、結婚して妊娠していく様は、どんなだろう。人間らしくないような人が「人間」に「動物」に成り下がる様子はどんなろう。しかも、そのことで大好きなその人の容姿がくずれだしたりしたら、いっそのこと殺したい、と思うんだろうか。主人公が赤ん坊を一人の人間として考えず、ゲノムとして考えた理由は、姉から「人間」が生まれることに実感がもてなかったからじゃないだろうか。また、グレープフルーツのジャムで赤ん坊を壊したいと思ったのは、姉と義兄、自分という3人だけだった生活のなかで、姉と義兄だけの生産物ができることに恐れたからじゃないだろうか。もし、ジャムの毒でもって子供が破壊されていた場合、子供は三人の生産物となり、また生活は続く。妊娠した姉の心境よりも、妹の心のうつろいの描写がすごい小説だと思った。とても、おもしろい。
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No.10:
(4pt)

一面

妊婦というものはおなかで赤ちゃんをはぐくむ間に勝手に母性本能が発揮されるものと思っていた。自分が妊娠するまでは。「妊娠カレンダー」は友人が貸してくれた本だが、内容を知らなかった私はこれもまた妊婦の暖かい気持ちとか赤ちゃんを心待ちにする様子が描かれているのだろうと思い込みなかなか読む気になれなかった。ここにあるのは妊婦雑誌に出てくる前向きな女性とは正反対の女性「姉」である。普段匂わないようなものにさえ疎ましい悪臭を感じるつわり。体は思うように動かず鬱かと思うほどちょっとしたことに落ち込みイラつき、それが過ぎればまた馬鹿らしいほどの食欲。まわりの気遣いをものともしない上、素直に感謝する余裕もない。自分でもどうしたいのかわからない。おなかは見る間に膨れ、いまさらなにをどうしたって生むことの痛みと母親になることから逃れられない怖さ。このなかで「妹」が淡々とつくるジャムには姉を変えてしまう妊娠への無意識の抵抗に思える。もしかしたら妊婦にも二種類のタイプがあるのかもしれない。人事ではない、自分のおなかに生命が宿ったとき、この姉に共感する人は私だけではないと思う。自分の姉に赤ちゃんができたときは、楽しみで可愛くて幸せな気持ちにしてくれるまさに天使のような存在だった。特に子供好きなわけではなかった私でもそうなのだ。我が子ならきっと手放しで嬉しいものだと思っていた。それが我が子であるだけでどうしてこんなにおそろしいのだろう。作品には産まれてからの姉と赤ちゃんの様子は書かれていない。私のような人間には妊婦にはこんな一面もあるのだと認めたもらった気がする作品だった。
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No.9:
(5pt)

上手い恐怖の書き方

『妊娠カレンダー』でイメージする妹の悪意は、もしかすると誰にでもあるものかもしれない。特に女は小意地悪いところがあるけど、それに自ずから気付いている人の方が人間くさくて面白い。妹に悪があるとしたら、姉の母性本能の方が冷たい。妹はそんな姉に従順でいながら、どこかで懲らしめてやりたいという思いがあって、それがグレープフルーツ事件を起こさせたのかもしれない。三作のうち『ドミトリイ』が一番読み応えがあった。この二作は読後もいろいろなことを思い起こさせる、とてもエンターテイメント性があるものだった。
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No.8:
(3pt)

ちょっと違う印象

妊娠した姉に寄せる妹の悪意、というのがレビューではクローズアップされていたようだが、実際に読んでみるとそれほど悪意は感じなかった。悪意というよりも、妊娠・出産という神秘の領域への興味と懐疑、不安、といったものがちょっと歪んで発露した感じだろうか。なんで歪んで発露するかといえば、神秘の領域を鬱病気味の姉が侵蝕していくからに他ならない。だから本来主人公は潔癖で健全、強いて言えばちょっと精神的に子供、という設定なのだろう。『ドミトリイ』はいろんな要素が生きながら腐敗していく退廃感が悪くなかった。
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4163124209
No.7:
(5pt)

ぜんぜん違う

「博士の愛した数式」を読み、優しい世界を描く作家なのかと思い、なんとなく手にしてみたこの作品。 まるで違う。どこにも癒しなんてありはしない。かなりヘビーでダークなドロドロとした世界が描かれている。少しも癒されはしなかったが作品自体は楽しめたので、よい意味で予想が外れる形となった。 小川洋子が人の「綺麗な面」だけではなく、「汚い面」まで描けることを知り、彼女の描き出す世界の広さを感じる作品となった。
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4163124209
No.6:
(2pt)

妊娠前、妊娠中にはお薦めできず・・・?

短編が2作。「妊娠カレンダー」は、自分も新人パパ3ヶ月ということで興味を持って読むことができた。主人公の姉が妊娠し、出産するのだが、この姉がちょっと精神的に鬱病気味。妊娠中の、精神的に不安定な姉を冷めた目で観察する主人公の描写が話を進めていくのだが、ちょっとリアリティがない。物語は日記形式で読みやすく、一気に読み終えたのだが、読後の感想はいまいちすっきりしないどころか、物語全体を包むくらい空気が体にまとわりついて離れない。自分の体験から、妊娠と出産は、もっとすばらしいものだと思っているので、退廃的な何かに対しては抵抗感を感じる。2作目以降の短編は、途中で読むのがイヤになってしまった。とにかく物語を一貫して包む冷めた感情やマイナス思考に嫌気がさしてしまう。小説としては完成度が高いのかもしれないが、この手の小説はほんとに嫌い。
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4163124209
No.5:
(3pt)

けっしてきれいなものではない

博士の愛した数式を読んでから、この本を手に取りました。妊娠という人間の生理的な変化が必ずしも、喜ばしいということだけで片づけられないこと、そして夫や家族にどのように影響を与えるのか...。ねっとりとした、まさにジャムのような、イチゴの甘ったるいジャムを食べたときに甘さだけでなくその奥にかくれた嘔吐を催すようなえごさをふくんだ話でした。他の2つの短編も底辺におなじようなドロドロしたものを感じました。
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No.4:
(2pt)

女のどろっとした妖気

表題「妊娠カレンダー」以外もとくにもかくも身体の一箇所のパーツをねちっこく見つめる視線がねっとりマタニティブルーなのか、生理中なのか女性ホルモンのバランスが崩れた女性心理をちまちま描く感じでしょうか・・・・湿気の含んだ部屋にいるような感じでしょうか・・・・文中に出てくる大量のジャムのせいでしょうか・・・登場人物の四肢の無い先生のもたらす効果でしょうか・・・ねっとり満載
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No.3:
(3pt)

極限の状態で人のとる行動

この本から作者の伝えたい事を見つけ出す大変難しいです。それぞれの『わたし』の行動、思考が人間の深層心理、つまり一般的な感覚から離れた倫理観のはたらくところで行われているので、これらの『わたし』の考えを理解して読み進めていくことができるのはその立場を経験したことがある人ではないとかなり難しいです。なのでこの本は周りが幸せのなっていく中で一人孤独を感じ、自我が保てないくらいの精神の極地を体験したようなことがある人にお勧めしたいです。そのような人たちがこの本を読めば楽しんで読むことができると思います。
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No.2:
(3pt)

ん~、不思議だ。

『妊娠カレンダー』の他に、『ドミトリイ』と『夕暮れの給食室と雨のプール』を収録した作品集。 『妊娠カレンダー』は、妊娠した姉に、防かび剤PWHが付いているかも知れないアメリカ産グレープフルーツで作ったジャムを食べさせる、妹の日記、という形態をとっている小説。 本の裏表紙の紹介文等を読むと、恐怖小説のような感じがするが、実はそうではない。 『ドミトリイ』にしても、途中から、クライマックスにかけては、読みようによっては、すごく恐怖が湧いてくる。が、オチは……。 ある意味、実は、安心して読める、不思議な小説だ。
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4163124209
No.1:
(5pt)

注意!

決して心温まるマタニティ小説ではありません。妊娠中の方は読んではいけません(笑)芥川賞受賞作。妊娠した姉を見つめる妹の日記形式による作品。農薬づけのグレープフルーツで作った鍋いっぱいのジャムを食べる姉。妹は、毎日ジャムを作る…。日常に潜む淡い悪意が、静かに積もっていく。
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4163124209

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