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ビー・クール



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【この小説が収録されている参考書籍】
ビー・クール (小学館文庫)

ビー・クールの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

映像化狙いすぎ!?

あの『ゲット・ショーティ』の続編である本書は、やはりあのクールな元高利貸しチリ・パーマーが活躍するエンタテインメント作品。
前回高利貸しから見事映画プロデューサーに転身し、映画を製作してヒットさせたチリが今回扱うのはロックのインディーズレーベル。前回同様、芸能業界を題材にクールなチリが度胸を武器に常識を破っていく。

チリ・パーマーは個人的に数あるレナード作品に登場する主人公の中では最も好きな人物である。タフを地で行く彼にはどんなギャングが脅しにかかろうと動じない。持ち前の度胸と悪知恵で修羅場を乗り越えていく。あの「おれの目を見ろ」の台詞も健在だった。
そしてチリを彩る登場人物たちは今回も当然魅力的だった。ギャングの出身でリンダ・ムーンのマネージャーを務めていたラジの小物さ、そのラジのボディガード兼相棒のホモのエリオット・ウィルヘルム―この名前でサモア人の血が混じっている事自体、レナードのセンスが光る―、今回のヒロイン、リンダ・ムーンももちろん魅力的だった。
しかしなんといってもロシアマフィアのボス、ロマン・バルキンが出色の出来。初登場シーンの彼に対するチリの印象は今まで読んだどの小説よりも面白い。明らかにカツラとわかる男が車から降りてきた、何故あれほど頭よりもデカいカツラをヤツはつけているのだ?これには笑った。しかも似合わないカツラを被っているちゃんとした理由があるのがすごい。レナードの筆致は老いてなお、冴えわたる。

さらに今回は御齢75歳のレナードが随所に現代アメリカン・ポップス(原書が出版された1999年当時の)を縦横無尽に語るのがすごい。なんとスパイス・ガールズを語り、しかも彼女らの歌の好みについても語るのだ。俺の周りにはこんな75歳いないぞ!!
今回、興味深いのはチリの言葉を借りて、自らの創作姿勢を語っている点である。
「最初にプロットを描かず、まず登場人物たちを描き、彼らが動き出すのをそのままなぞる」
正に先の読めないレナード作品の真髄がこの創作作法にある。

しかし、今回はいささかやり過ぎた点があるのも否めない。あまりに映画化を意識した作りになっていること。
エアロスミスを作中に出させたのもその1つ。正に映画における特別出演メンバーではないか!
またストーリーがリンダのデビューをテーマに映画を作ることから、映画化された時のフィクションとノンフィクションとの境の錯覚、つまりメタ化を図っていることこそ映画化画策を露呈させている。
アメリカエンターテインメント界を題材として扱うチリ・パーマーシリーズは面白いことは面白いのだが、今回はちょっとあざとかった。


Tetchy
WHOKS60S

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