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本廟寺焼亡



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【この小説が収録されている参考書籍】
本廟寺焼亡 (1981年)
本廟寺焼亡 (講談社文庫)

本廟寺焼亡の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
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No.1:
(8pt)

本廟寺焼亡の感想

生まれながら代々の京都人であることから、良きにつけ悪しきにつけ、寺社仏閣については馴染みはある。

個人的なことを言えば、私が通った高校の土地は寺の借地であった。

とはいえ、この高校、なにも寺が運営している私立ではなく 全くの公立高校である。

そうして、授業をサボって近所の喫茶店で溜まって麻雀ゲームなんかをしていると、明らかにこちらもサボっていると思われる僧衣のままの若い坊さんもタバコを燻らしながら麻雀ゲームに勤しんでいる。

教科書に載るような有名寺社の僧侶なんかは、ポルシェやフェラーリの乗り回している姿を万々目撃することも珍しくもなく、寺社の金権については、まったく違和感がない。

そんな下地で読んだ当作だったので、少々 批判的感情が入っていないとも言えないが・・・。


というわけで、当作表題となっている『本廟寺』は架空である。

もしやと思い、調べてみたが、そのような名前の寺はやはりない。

ただし、親鸞を祖とする浄土真宗の中の一派、真宗大谷派の総本山であり 正式名称「真宗本廟」が東本願寺であることからも、またその歴史的背景からも、同寺であることは明らか。

この浄土真宗総本山で起こる連続殺人事件となっている。

構成は井沢作品としてオーソドックスな、歴史モノを題材にした推理小説となっている。

推理小説として見れば、残念ながら、というかいつも通りはあるのだが、それほど大したことはない。

が、彼の本領となる歴史的側面を 推理小説に上手く取り入れ絡ませあう手法は、ただただ脱帽。さらに、彼独特の読みやすさとスピード感も健在で、一気に読めてしまう。

特に今回の作品で突出しているのは、仏教の歴史的背景はもとより、真宗の教義と現実の乖離、金、権力等々を生々しく伝えてくれるところに 格段に面白さ上乗せされた秀作となっている。


兎角、宗教というものは、ヒトは弱いものであり 楽な方へ楽な方へと流されてしまうことを認め、その弱さを理解し補う目的で 元は善意から発生しているのかもしれない。

それは本来、坊主も同様であるはずである。

が、その自浄作用を考えていなかった片手落ちか、年月が立ち その善意がお金や権力と結びつくことにより、もともとの教義は都合よく改変され保守に向かうのは、世界中の宗教共通であり、ある意味 一番 わかりやすく生臭いのかもしれない。

そんなことを、考えさせらる一冊であった。 了

とも
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