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深山の桜
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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「深山の桜」という作品はこのミス大賞の優秀賞を受賞した作品で、アフリカの南スーダンという当時世界で一番新しい国での自衛隊の PKO活動をテーマにした作品です。読んでわかるのはとにかくディテールが細かいということです。いかにも臨場感があり自衛隊の内部のことを非常によく知っている人間でなければ描けない作品なのです。それもそのはずこの作者の神家正成という人は元陸上自衛隊の隊員出身だということです。陸上自衛隊少年工科学校というところを出ている、そういう人ですから生粋の自衛隊員ということになります。もちろん自衛隊幹部つまりキャリア組のエリートではありません。従って地に着いた自衛隊の地味な非常に大変な活動をよく知っているということです。自衛隊のアフリカやカンボジア中東などにおけるPKO活動についてはいろんな議論が国内でなされていることは事実です。戦闘状態にあるかどうかそれの判断で揉めていることも事実です。いずれにしても実際に現場に行くのは自衛隊員であり生身の人間なのです。その現場というものが置き去りにされて国会で政治家たちがあれやこれやと空虚な議論をしているのは非常に虚しい気がします。この作品は自衛隊の有意義さを訴えてはいますが、イデオロギー的に右や左の立場から訴えているものではありません。あくまでも現場を中心とした自衛隊員の矜持を語っているものであります。そのことは非常に有意義なことだと思いますし、自衛隊に対する国民の意義もこの小説を読んで深まることでありましょう。そのことに関して私は一定の評価をいたします。しかしミステリーというのはあくまでもエンターテイメントであり娯楽であり小説です。従って読んで面白いかどうかというのが必要な条件だと思います。果たしてこの小説が読んでいて面白いかと言われれば、ミステリー的には面白くないと言わざるを得ないのです。大きな事件も起こりませんしカタルシスと言うか何と言うか、サスペンスもあまりありません。ある意味自衛隊の基地の内部で銃弾が盗まれるというそういう話ですので、当然外部からの犯行説は非常に考えにくいところなので犯人が誰かというのも大体想像もつきます。従ってミステリ的に見た場合大きなトリックもありませんし、面白くはありませんでした。したがってあまり良い点はつけられないというのが私の感想です。登場人物について言うと中心となるのはこの亀尾と言う准陸尉そして杉村という陸士長、この二人が中心となって展開されています。他にも登場人物がたくさんいますが、あまり登場回数が多くなくあまり重要な人物はいません。ただ不思議に思ったのは東さつきという地元の孤児院に勤めている日本人女性が出てくることです。この女性は民間人なのですが何故かこの自衛隊の基地に出入りしております。果たしてそういうことが実際にあるのかどうかちょっと疑問に思いました。そしてこの東さつきという人をなぜ登場させたのかそれがさっぱり分かりませんそんなに重要な役割を持っていません。よく分かりませんでした。それから南スーダンの避難民の少年イサムという少年もいるんですがあまり重要な役割を果たしておりません。これもとってつけたような登場という感じがします。それからちょっと問題になっているのが植木礼三郎というこの亀尾の友人の息子、これは警務官と言って自衛隊内部の事件を調査するという仕事をしている男なのですが、この男が銃弾の紛失事件の捜査のために、わざわざ日本から来て、調べるわけですちょっとキャラが異様なキャラでいわゆるオネエ、オカマキャラなのです。なぜこのようなキャラにしたのかちょっと理解に苦しみますが、私個人としてそれほど気にはなりませんでした。ただこの人の登場する意味それはあまり感じませんでした。いずれにしても大きな展開もなくこの小説は終わって行きます。ただ一つだけ意外性のある事実が出てきます。これは重要なことではありますがいかがなものでしょう。賛否あるでしょう。これは詳しくはここでは言えませんそれはネタバレになるので、言えません。どうなんでしょうか。それは読んで皆さんに判断していただくしかありません。 | ||||
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