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妻の沈黙



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【この小説が収録されている参考書籍】
妻の沈黙 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

妻の沈黙の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

でき過ぎた女房の怖さ

人並み以上の野心と努力で成功を収めた不動産開発業者のトッドは、美しく聡明なサイコセラピストで主婦としての役割も完璧に果たすジョディとふたり、シカゴの高級コンドミニアムで事実婚生活を送っていた。一緒に住み始めて25年、トッドの浮気性が多少の波風は立てるもののジョディの落ち着いた対応で平穏な日々が続いていた。ところがあるとき、トッドが少年時代からの旧友の娘・ナターシャに心を奪われ、妊娠させたことから、二人の間に亀裂が生じ、その溝は徐々に深まっていった。浮気を隠しおおせているつもりでいて、秘かに子供の誕生に期待するトッド、夫の浮気を知りながら沈黙を続けるジョディ、ジョディと別れて結婚するように迫るナターシャ、三人の思惑がぶつかり合い、静かな緊張感が高まっていき、やがて悲劇のクライマックスを迎えることになる。
本作の読みどころは、美人で性格が良くて、主婦としても妻としても申し分が無く、しかも自立した女性でもあるジョディが、深い沈黙の影でじわじわと復讐心を育てていく怖さにあるのだが、もう一面から言うと、これだけ完璧な妻を持ちながら若くて奔放でわがままなナターシャに惹かれ、なおかつ女房との生活もだらだらと維持していきたいという能天気なダメ男であるトッドの浮世離れした物語でもある。トッドの視点から見れば、訳が分からない内に悲劇に巻き込まれた男のコメディーとも言えるのが面白い。もちろん、トッドは正真正銘の当事者なんだけど。
なお、著者のハリスンは本作刊行の2ヵ月前にガンで死去し、これだけ優れたデビュー作が遺作となってしまったという。もうけっして次作を読むことができないというのは、誠に残念というしかない。

iisan
927253Y1

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