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奇術師



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【この小説が収録されている参考書籍】
〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)

奇術師の評価: 6.00/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

あまり面白くありませんでした

途中であきました。

わたろう
0BCEGGR4
No.1:
(7pt)

映画を先に観る方がよい

19世紀末から20世紀初頭にかけて一世を風靡した二大奇術師の対決の物語。
しかしそこはプリースト、単純な話にはならず、得体のしれない双子の存在が物語の物陰から見え隠れする。それはまたプリースト特有の、自身の存在、そして住まう世界が揺らぐ感覚でもある。

今回は死んだと思われていた子供が成人して生きていた。さらには世界のどこかにまだ見ぬ双子の兄弟がいるという感覚に付き纏われるという、どこが地に足がつかない感覚が物語を包み込む。

更には稀代の奇術師たちが挑んだ瞬間移動奇術の謎とその因縁が主人公たち2人の男女の現在に纏わるという重層的な構造を持っている。

しかし物語の大半を占めるのはこの2人の奇術師アルフレッド・ボーデンが生前遺した自伝とルパート・エンジャの日記という手記だ。その中心にあるのはそれぞれが発案した瞬間移動奇術の正体だ。

アルフレッドの「新・瞬間移動」は完璧な奇術であり、まずはルパートがその謎を探るべく、彼の許に自分の愛する女性を助手として送り込む。しかしアルフレッド側に寝返った助手の女性から偽の情報を渡されたルパートはそこに書かれたアメリカの発明家ニコラ・テスラの許を訪れ、アルフレッドから全く違う方法で瞬間移動奇術「閃光の中で」を編み出す。

ここからがファンタジーの領域になっていく。

そしてそこから物語は双子、いや二通りのもう一人の自分の存在について語られる。

瞬間移動奇術の謎を解く話がいつの間にか一人の人物の存在というものへの疑問へと変わっていく。

瞬間移動奇術を通じてアルフレッド・ボーデン、ルパート・エンジャという名前を持つ存在は一人の男だけの物なのかを問う物語、というのは大袈裟な表現だろうか。

さらに物語は混迷を極めていく。それはプリースト独特の語り口故に。
語り手は「わたし」という一人称叙述に変わり、これがどの「わたし」を指しているのか解らなくなってくる。さらにはこの「わたし」は自分の死を語り、生者なのか死者なのかも不透明になっていく。

ここで思うのは名前という物の重要性だ。しかし名前という確定要素さえもプリーストにかかれば存在意義を揺るがすものとして扱う。

貴方の名前は誰の物?本当に貴方だけの物だろうか?
貴方の名前を名乗って貴方の人生を生きる存在がいる、などという人は皆無に等しいだろうが、同姓同名の人と出逢って、妙な違和感を抱いた経験がある人はいるだろう。その時に感じる自分の名前を横取りされたような感覚。本書のテーマはその違和感が肥大した物なのかもしれない。

なぜこのように感じるのか?
それは2人の奇術師の手記で構成された内容でさえ、作中の登場人物によって改竄させられたものだからだ。

そして驚愕の真相が明かされるのは最終章。

正直この真相は分かりにくい。なぜなら上に書いたようにこの顛末を語るのは誰なのか解らない「わたし」だからだ。
この私はルパートなのか、それともアンドルーなのか最後まで解らないからだ。
プリーストの、存在という基盤が揺らぐ書き方はさらに曖昧になってきている。読者もその理解力を試される作家だと云えよう。
二度目に読むとき、違和感を覚えた記述の意味が解る、二度愉しめる作品の書き手でもある。
しかしこれほど頭を揺さぶられる読書も久しぶりだ。次は読みやすい本でも手にしよう。

後日、本書を原作にした映画『プレステージ』を観たが、複雑なストーリーが換骨奪胎されており、実に解りやすく、かつ傑作だった。本書の場合は最初に映画を観てから読むことをお勧めする。

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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