人に見えないものが視える。闇の中に、他人の恐怖が悔恨が苦痛が悲哀が―視えてしまう。

当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。

「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。

「おお!そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼一郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ―。

近未来。牧野葉月は閉じた世界に生きていた。

江戸川、大磯で発見された毒殺死体。二つの事件に繋がりはないのか。

怖いものとは何だろう。本当に怖いものを知るため、とある屋敷を訪れた男は、通された座敷で思案する。

忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。

調査も捜査も推理もしない、天下無敵の薔薇十字探偵、榎木津礼二郎。

虚実は綯い交ぜになって物語になる。視界が歪み、記憶が混濁し、暗闇が臭いたち、眩暈をよぶ。

明治二十年代の半ば。雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠は、異様な書舗と巡りあう。

江戸時代に聞き集めた、怪しい話、奇妙な話。

「死にたいん―です」「なら死ねよ」。娘を亡くし、妻だった人に去られ、十五年勤めた会社を解雇された。

「推理はしないんです。彼は」。

匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。

死んだ女のことを教えてくれないか。三箇月前、自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美。

「あなた―妖怪お好きですか」。その男は真顔で尋ねる。

直木賞受賞作がついに文庫で登場 京極夏彦の直木賞受賞作。ラストに訪れる仕掛けが読者の胸を打つ感動作。

無類の不思議話好きの山岡百介は、殺しても殺しても生き返るという極悪人の噂を聞く。

「妖怪」はいずこより来るのか…。

幽晦との境界が、破れている。内部の薄明が昏黒に洩れている。

理由あって上方から江戸へ流れてきた双六売りの又市は、根岸の損料屋「ゑんま屋」の手伝いをすることに。

怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。

地響きがする―と思って戴きたい…相撲取りの討ち入りを描く「四十七人の力士」、肥満ミトコンドリアが暴れる「パラサイト・デブ」などなど数々の名作を下敷きに、パロディの極北を目指したお笑い連作巨編がついに文庫化。

夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。

人の住まぬ荒地には、夜どこからともなく現れた女のけたたましい笑い声が響き渡るという。

「先祖代代、片倉の女は殺される定めだとか。

丸い肉塊に黒い縦筋が十数本。

押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。

庭に咲く艶々とした椿の花とは対照に、暗い座敷に座る小山内君は痩せ細り、土気色の顔をしている。

「神隠し――と云うより天狗攫いね。高尾山だし」 聞き終えた敦子は先ずそう云った。

この世には不思議なことなど何もないのだよ―古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。

益子徳一、七十二歳、独身。定年後の人生を慎ましく過ごす独居老人の大真面目で可笑しくて少しだけせつない日常。

数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうしとつの「皿屋敷」。

上方には上方の仕掛けあり。「これで終いの金比羅さんやで」巷説シリーズ、新機軸の第五弾。

「遠野物語」から二十数年を経て刊行された怪異譚「遠野物語拾遺」を、 京極夏彦がその感性を生かして語りなおす。

明治三十年代初頭。古今東西の書物が集う書舗に導かれる、一人の若き女性。

僕は、まあやる気のない、モテない、冴えない子供だ。

昭和29年春から夏にかけて続く怪事件。 「先祖代代、片倉の女は殺される定めだとか。

この現実は、すべて虚構だ。価値観を揺るがす連作奇譚集! 元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。

「J・Mを殺したのは誰か?」。私が読んだ患者の原稿は、その一文で結ばれていた。

殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。消えた三つの他殺体を追う刑事。

昭和29年、夏。複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。

ミステリ作家の「私」が住む“もうひとつの京都"。その裏側に潜む秘密めいたものたち。

ミステリー作家・有栖川有栖が挑むまったく新しい大阪の怪談。

三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後の日に来た理瀬の心は揺らめく。

神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。

あたしは主人公にはなれない―。関根夏はそう思っていた。

9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。

強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。

舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。

ぼくは、ぼく自身の戦争をどう終わらせたらいいのだろう―戦争が残した傷跡から回復できないアフリカの少年兵の姿を生々しく描き出した表題作をはじめ、盟友である芥川賞作家・円城塔が書き継ぐことを公表した『屍者の帝国』の冒頭部分、影響を受けた小島秀夫監督にオマージュ

津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。

いまや誰もが知っている“妖怪”。

19世紀末―かのヴィクター・フランケンシュタインによるクリーチャー創造から約100年、その技術は全欧に拡散し、いまや「屍者」たちは労働用から軍事用まで幅広く活用されていた。