翳ある墓標

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長編
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あらすじ

2015年02月10日 翳ある墓標 (光文社文庫)

トップ屋集団「メトロ取材グループ」の杉田兼助は、同僚の高森映子とともに銀座のキャバレーで取材をするが、協力した映子の友人のホステスが屍体となって発見された。警察の自殺判定に納得がいかない映子は独自に調べ始めるが、彼女も殺害されてしまう―。本格ミステリ界巨匠の異色作品。読み継がれるミステリファン必読の短編「達也が嗤う」を特別収録。(「BOOK」データベースより)

評判

翳ある墓標の評価:

0.00/10点 レビュー 0件。 C ランク

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翳ある墓標の総合評価:

8.00/10点 レビュー 7件。

感想一覧

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Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.7
(3pt)

このミステリーには致命的な欠陥がある【ややネタバレ】

「あとがき」で著者は次のように述べる。「克明な読み方をすれば、本格物の面白さの神髄にふれることになり、推理小説の楽しさがわかって、鮎川哲也の次作を待ちこがれるはずだ。」大した自信である。この小説が発表された1960年には、翻訳物の推理小説の筋をまともに追えない読者が多かったのだろうか。
 私にはこの小説の決定的な欠点が分かっているのだが、書き方が難しい。幾分ネタバレになる。

 主人公の杉田はトップ屋である。週刊誌や新聞の編集室に属さずに、記事をそれらに売り込むことを生業にする人である。現在のフリージャーナリストに近いのだろうが、杉田はトップ屋のグループに所属しているから、フリージャーナリストとは異なる。(そのグループが会社組織かどうかは分からない。)
 小説の冒頭で、主人公の杉田と、同じグループに所属する高森映子が、キャバレのホステスのひふみのインタビューをしたあと、別れる。翌日(12月2日)、ひふみの死体が伊豆で発見される。警察はひふみが自殺したものと見るが、映子は他殺に違いないと考えて、取材をはじめる。ところが、その映子は12月16日に会社に来たきり、その後連絡がない。やがて映子の死体が名古屋の廃屋で見つかる。杉田は映子を殺した犯人を捕まえるために、捜査をはじめる。

 当初はひふみの殺人犯を見つけることがこの小説の主筋であると、読者は思う(だろう)が、ひふみの死亡は自動車事故であることがじきに分かり、そこから、欠陥のある自動車を多数、欠陥があることを知った上で売った人間を見つけることが杉田の目的になる。その人間が映子を殺したに違いないと彼は考える。杉田はその人物を突き止めるのだが、その人物には映子殺しに関して鉄壁のアリバイがあった。そこで、犯人と睨んだ人物を警察に捕まえさせるために、杉田はそのアリバイを崩そうとする。
 この小説は、この本の5頁から始まって334頁で終わる。犯人が特定されるのは217頁辺りである。つまり100頁以上アリバイ崩しに費やされることになり、アリバイ崩しこそがこのミステリーの眼目なのだ。だから、ややネタバレですけど勘弁してください。

 プロットに問題はない。問題は、犯人は中古車会社の一セールスマンであるということである。セールスマン自身が中古車を仕入れるわけではない。中古車販売会社が中古車を仕入れた場合、必ず点検して整備をする。ブレーキの効きが悪い状態の車をセールスマンに売らせるわけがないのだ。ブレーキの効きが悪いのなら、原因を突き止めて、オイルホースなり、オイルリザーバーなり、ブレーキシューなりを交換することで、問題を解決することができる。それほど金額がかさむものものではない。かかった金額は売値に反映させればよいのである。この小説にはほかに走行中にハンドルが効かなくなったという例と、前輪の片方が外れたという例が紹介されている。これらもそれほど費用がかかることなく、あるいは部品の交換なしに修理できるものだ。(この中古車販売会社の社長はまともな人物で、人をだますようなことはしないということになっている。)だから、ミステリーとしてのプロットに問題はないが、話の前提が間違っているのだ。ひょっとすると、著者は自動車や中古車販売についての十分な知識がなかったのかも知れない。
翳ある墓標 (光文社文庫) Amazon書評・レビュー: 翳ある墓標 (光文社文庫)より
4334768768
No.6
(3pt)

このミステリーには致命的な欠陥がある【ややネタバレ】

「あとがき」で著者は次のように述べる。「克明な読み方をすれば、本格物の面白さの神髄にふれることになり、推理小説の楽しさがわかって、鮎川哲也の次作を待ちこがれるはずだ。」大した自信である。この小説が発表された1960年には、翻訳物の推理小説の筋をまともに追えない読者が多かったのだろうか。
 私にはこの小説の決定的な欠点が分かっているのだが、書き方が難しい。幾分ネタバレになる。

 主人公の杉田はトップ屋である。週刊誌や新聞の編集室に属さずに、記事をそれらに売り込むことを生業にする人である。現在のフリージャーナリストに近いのだろうが、杉田はトップ屋のグループに所属しているから、フリージャーナリストとは異なる。(そのグループが会社組織かどうかは分からない。)
 小説の冒頭で、主人公の杉田と、同じグループに所属する高森映子が、キャバレのホステスのひふみのインタビューをしたあと、別れる。翌日(12月2日)、ひふみの死体が伊豆で発見される。警察はひふみが自殺したものと見るが、映子は他殺に違いないと考えて、取材をはじめる。ところが、その映子は12月16日に会社に来たきり、その後連絡がない。やがて映子の死体が名古屋の廃屋で見つかる。杉田は映子を殺した犯人を捕まえるために、捜査をはじめる。

 当初はひふみの殺人犯を見つけることがこの小説の主筋であると、読者は思う(だろう)が、ひふみの死亡は自動車事故であることがじきに分かり、そこから、欠陥のある自動車を多数、欠陥があることを知った上で売った人間を見つけることが杉田の目的になる。その人間が映子を殺したに違いないと彼は考える。杉田はその人物を突き止めるのだが、その人物には映子殺しに関して鉄壁のアリバイがあった。そこで、犯人と睨んだ人物を警察に捕まえさせるために、杉田はそのアリバイを崩そうとする。
 この小説は、この本の5頁から始まって334頁で終わる。犯人が特定されるのは217頁辺りである。つまり100頁以上アリバイ崩しに費やされることになり、アリバイ崩しこそがこのミステリーの眼目なのだ。だから、ややネタバレですけど勘弁してください。

 プロットに問題はない。問題は、犯人は中古車会社の一セールスマンであるということである。セールスマン自身が中古車を仕入れるわけではない。中古車販売会社が中古車を仕入れた場合、必ず点検して整備をする。ブレーキの効きが悪い状態の車をセールスマンに売らせるわけがないのだ。ブレーキの効きが悪いのなら、原因を突き止めて、オイルホースなり、オイルリザーバーなり、ブレーキシューなりを交換することで、問題を解決することができる。それほど金額がかさむものものではない。かかった金額は売値に反映させればよいのである。この小説にはほかに走行中にハンドルが効かなくなったという例と、前輪の片方が外れたという例が紹介されている。これらもそれほど費用がかかることなく、あるいは部品の交換なしに修理できるものだ。(この中古車販売会社の社長はまともな人物で、人をだますようなことはしないということになっている。)だから、ミステリーとしてのプロットに問題はないが、話の前提が間違っているのだ。ひょっとすると、著者は自動車や中古車販売についての十分な知識がなかったのかも知れない。
翳ある墓標 (立風ノベルス) Amazon書評・レビュー: 翳ある墓標 (立風ノベルス)より
4651420052
No.5
(3pt)

このミステリーには致命的な欠陥がある【ややネタバレ】

「あとがき」で著者は次のように述べる。「克明な読み方をすれば、本格物の面白さの神髄にふれることになり、推理小説の楽しさがわかって、鮎川哲也の次作を待ちこがれるはずだ。」大した自信である。この小説が発表された1960年には、翻訳物の推理小説の筋をまともに追えない読者が多かったのだろうか。
 私にはこの小説の決定的な欠点が分かっているのだが、書き方が難しい。幾分ネタバレになる。

 主人公の杉田はトップ屋である。週刊誌や新聞の編集室に属さずに、記事をそれらに売り込むことを生業にする人である。現在のフリージャーナリストに近いのだろうが、杉田はトップ屋のグループに所属しているから、フリージャーナリストとは異なる。(そのグループが会社組織かどうかは分からない。)
 小説の冒頭で、主人公の杉田と、同じグループに所属する高森映子が、キャバレのホステスのひふみのインタビューをしたあと、別れる。翌日(12月2日)、ひふみの死体が伊豆で発見される。警察はひふみが自殺したものと見るが、映子は他殺に違いないと考えて、取材をはじめる。ところが、その映子は12月16日に会社に来たきり、その後連絡がない。やがて映子の死体が名古屋の廃屋で見つかる。杉田は映子を殺した犯人を捕まえるために、捜査をはじめる。

 当初はひふみの殺人犯を見つけることがこの小説の主筋であると、読者は思う(だろう)が、ひふみの死亡は自動車事故であることがじきに分かり、そこから、欠陥のある自動車を多数、欠陥があることを知った上で売った人間を見つけることが杉田の目的になる。その人間が映子を殺したに違いないと彼は考える。杉田はその人物を突き止めるのだが、その人物には映子殺しに関して鉄壁のアリバイがあった。そこで、犯人と睨んだ人物を警察に捕まえさせるために、杉田はそのアリバイを崩そうとする。
 この小説は、この本の5頁から始まって334頁で終わる。犯人が特定されるのは217頁辺りである。つまり100頁以上アリバイ崩しに費やされることになり、アリバイ崩しこそがこのミステリーの眼目なのだ。だから、ややネタバレですけど勘弁してください。

 プロットに問題はない。問題は、犯人は中古車会社の一セールスマンであるということである。セールスマン自身が中古車を仕入れるわけではない。中古車販売会社が中古車を仕入れた場合、必ず点検して整備をする。ブレーキの効きが悪い状態の車をセールスマンに売らせるわけがないのだ。ブレーキの効きが悪いのなら、原因を突き止めて、オイルホースなり、オイルリザーバーなり、ブレーキシューなりを交換することで、問題を解決することができる。それほど金額がかさむものものではない。かかった金額は売値に反映させればよいのである。この小説にはほかに走行中にハンドルが効かなくなったという例と、前輪の片方が外れたという例が紹介されている。これらもそれほど費用がかかることなく、あるいは部品の交換なしに修理できるものだ。(この中古車販売会社の社長はまともな人物で、人をだますようなことはしないということになっている。)だから、ミステリーとしてのプロットに問題はないが、話の前提が間違っているのだ。ひょっとすると、著者は自動車や中古車販売についての十分な知識がなかったのかも知れない。
翳ある墓標 (1967年) (ロマン・ブックス) Amazon書評・レビュー: 翳ある墓標 (1967年) (ロマン・ブックス)より
B000JA6HEY
No.4
(4pt)

鮎川作品ならではの安定の面白さ

「風の証言」、「準急ながら」、「積木の塔」、「偽りの墳墓」、「憎悪の化石」に引き続き再読。

本作は非シリーズ物で、鬼貫警部や星影龍三は登場せず、「メトロ取材グループ」に所属するトップ屋の杉田が探偵役を務める。

警察官や新聞記者ではない杉田だが、愛する女性のために真相を必ず暴き出すという心情が原動力となっていて、何度か捜査が行き詰っても決して諦めない彼の姿勢に素直に感情移入できた。

シリーズ物ではなくても、手抜きというわけではなく、いつものとおり地道で論理的な捜査過程が楽しめる。

事件が終結した後のエピローグは感傷的ではあるが、くどさはなく、短いが余韻を引く締めくくりに好感が持てた。

なお、併せて収録されている短編「達也が嗤う」は、犯人当てミステリの古典的名作です。
翳ある墓標 (光文社文庫) Amazon書評・レビュー: 翳ある墓標 (光文社文庫)より
4334768768
No.3
(4pt)

鮎川作品ならではの安定の面白さ

「風の証言」、「準急ながら」、「積木の塔」、「偽りの墳墓」、「憎悪の化石」に引き続き再読。

本作は非シリーズ物で、鬼貫警部や星影龍三は登場せず、「メトロ取材グループ」に所属するトップ屋の杉田が探偵役を務める。

警察官や新聞記者ではない杉田だが、愛する女性のために真相を必ず暴き出すという心情が原動力となっていて、何度か捜査が行き詰っても決して諦めない彼の姿勢に素直に感情移入できた。

シリーズ物ではなくても、手抜きというわけではなく、いつものとおり地道で論理的な捜査過程が楽しめる。

事件が終結した後のエピローグは感傷的ではあるが、くどさはなく、短いが余韻を引く締めくくりに好感が持てた。

なお、併せて収録されている短編「達也が嗤う」は、犯人当てミステリの古典的名作です。
翳ある墓標 (立風ノベルス) Amazon書評・レビュー: 翳ある墓標 (立風ノベルス)より
4651420052

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