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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数126件
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学園青春小説+プチミステリ。
主人公は共感覚にて相手の声から発言の感情が読み取れる。それが嘘だったり、後ろめたさだったり、怒りだったり、遠慮だったり。相手の本音が見えてしまう為、人の顔を見て話す事を避けている。そこへ言葉が喋れない女の子と芸大課題の映像制作をする事になる流れ。 著者作品3作読みましたが、どの作品も青春の1コマを綺麗に描きます。本書は芸大が舞台。変態の先輩に付き合わされての映像制作。でもそれが嫌じゃない立ち位置。声の出ない女の子との出会い。主人公の内面の感情。などなど青春模様を楽しみます。中盤まで学生生活が続くので青春小説の印象が強いです。終盤でミステリ的に事件やまとめに入るのは毎回の事で面白い。ただ終盤に期待する作品でもないです。主人公と女の子の物語。結末も綺麗にまとまるのは好みでした。 余談。 やはり1作目が抜きん出ている。2-3作目は最後で楽しい。1作目のように序盤からイベントや盛り上がるポイントを散りばめれば2-3作目もより良くなり人気がでそうなもどかしさを感じます。全作品文章は綺麗で青春模様や結末の作りも好き。次の作品早くでないかな。 |
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著者作品は初めての読書。デスゲームなのに非常にサッパリした作品。
命のやり取りなのに鬱屈さはなし。どちらかというとギャグ・エンタメ寄り。頭脳・心理戦も軽い感じです。 だからと言って物足りないわけではなく、これはこれで面白い物語。設定がどうこう言うのではなく物語のテンポと展開を楽しむ感じでした。 デスゲーム内容は非常にシンプル。誰もが知るババ抜きです。ルールで読者が置いてけぼりになる事はありません。イカサマありのババ抜き。勝てば大金、負ければ死。この設定ですと、相手との頭脳戦や心理戦を楽しむ話かなと思う所なのですが、ゲーム内容の描写はほとんどなくパパっと決着がつきます。攻防に期待すると肩透かしをくらいます。なのでゲーム内容を楽しむというよりゲーム参加者の物語が見所になります。なぜゲームに参加するのか。各々の目的は何なのか。そこが見所です。 "女王ゲーム"の名前通り、女性側がなかなか個性的で良かったです。特に主人公の恋人役の今日子が面白いです。この子が関わると何が起きるのか。どう話が進むのか。そっちの方が気になって楽しみました。 デスゲーム系は好みで、著者作品はサクッと読める事がわかったので他の作品も手に取ってみようと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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非ミステリ。青春SF小説でした。
書店で積まれて目に止まったのと、広報・帯で泣ける!という宣伝につられて購入。 中身はそういう泣ける話ではなかったので、期待と結果がそぐわない過剰な広告で残念な気持ちを得つつも、物語は面白かったのでそういう本との出会いもいいかなと思う。表紙綺麗ですね。 物語は人間の神経と直結して五感を再現できるデバイスが存在する世界。空間上に配置された物体はそこにあるように見え、触れるし、食べれるし、味も再現可能、そのように脳が認識する。その原理となる説明も大規模演算するのではなく、入力と出力のデータベースを用いて再現しているだけという近未来でできそうな設定も巧い。ほんの少しだけの近未来という感覚がよく、舞台となる現代の街の漁港と重なってもそんなに違和感なくイメージできました。舞台作りはとても良いです。 一方、SF・ゲーム・アニメ的な感覚がないと、文章を読んでもスフィヤやデバイス操作など細かい表現はないので、想像し辛い内容であると思いました。アニメ映画で見てみたいです。 本書、実は恋愛ものではなく、〇〇物だったという流れは帯とは違うじゃん!という気持ちでいっぱいなのですが、ここ数年における世界の流れに合った作品ともいえます。夏の物語の定番は、主人公の成長物語。出会いと別れ。今とは違う所への旅立ち。これらの要素が近代SFのオリジナルな世界観でうまく描かれ楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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表紙で驚かれるが星雲賞受賞作。ハヤカワからの出版作品。かなり癖があるが読んだら納得の個性が光る作品でした。
Amazonの電子書籍で話題になり、SNSで拡散され大いに注目された作品。内容もアイドル・アニメ・ソシャゲ・声優といった現代のオタク文化をベースにSFの広大な世界へ悪乗りしながら融合させ、想像しえない飛んでもない結末へ物語を展開させていきます。 現代的な内容・ネット拡散が巧く働いた作品ともいえ、今風なSF作品が世に出るきっかけを感じました。 何だか話題になっているという情報を得て、予備知識なしの読書。 アイドル活動から始まるが、20~30Pからまさかの急展開。ネタばれ控えて言えませんが、ん?これホラー?グロ?化学もの?え、SF?あ、跳躍系?ん?どこへいくのこの話?っていう感覚で跳んでいきます。予備知識なかったので、この本が何なのか不思議な読書体験でした。 なんだか読みながら、そもそもSFってなんだろう。なんて考えていました。科学技術や生物学やら宇宙やら環境がそうさせるのか。用語が難しかったらSFを感じるのか。ジャンルの定義の曖昧さを感じながら、物語は駆け抜けていきました。 ま、内容のベースはオタクネタなんです。本書は短編3作ある作品集なのですが、『ラブライブ』や『けものフレンズ』や『マクロス』とかそういうのを感じる中で、SFネタを融合させていきます。で、文章のテンポが非常に良いので、何だかおかしい気がするけれど、その変な所を考えさせないように、どんどんネタを投下して場面転換する剛腕が凄く巧いのです。 この本の楽しみ方は、SFは知らないでよく、アニメネタが好きで2次創作で突き抜けてしまった本書を一人で読んで刺激を受け、他に読んだ人がいればその人と、変だけど凄いよね。と共有して仲間を見つける、そんな体験本です。面白い漫画やアニメや映画やゲームを体験したけど、ちょっと人には言えない、だけど同じ人と出会えた時に嬉しくなる。そんな感覚の作品。 アニメネタに全く興味がなければ、SFネタだけ映し出され、それだと過去のハードSFであるような結末じゃん。という結論で終わってしまいます。まったく関係なさそうなアニメネタを過大解釈してSFと融合させる物語作りを楽しむ本かと思いました。 また、先に書きましたが、ジャンルについては広義のSFやら広義のミステリやらで、現代の出版作品は他ジャンルの融合で壁はなく、面白いかどうか、そして今の時代で売れるか。という事が昔からですが改めて感じさせる。そんな事を思いました。 3作品それぞれの点数は 『最初にして最後のアイドル』☆8。 『エヴォリューションがーるず』☆6。 『暗黒声優』☆4。 という感じでした。 |
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閻魔堂沙羅の推理奇譚の第3弾。
相変わらず面白いのですが今回は厳しめでこの点数にします。 まずミステリとしての感想ですが、すべての手がかりが提示されてはいるのですが、主人公達の突飛な発想を前提とした論理展開である為、納得し辛いものとなっています。1巻では、読者と主人公の頭の中の手がかりの準備と、その手がかりを元にした推理展開がとてもシンクロしていたのですが、本作は読者置いてけぼりで推理している事を感じます。読んでいて一緒に考えるのではなく、解答を眺める物語となっています。作品と読者の距離感がとても離れていると感じました。突飛な発想とはいえ、神の視点となる沙羅に正解が与えられればそういう物語なので納得せざるを得ないのですが、スッキリしません。複雑な謎を作り上げようとした気がしますが、これじゃない感がとても感じる物語でした。 ドラマの内容について。著者の思想がとても強くでています。登場するキャラクター達に政治や社会の考えを代弁させたセリフが多すぎます。2巻の『負け犬たちの密室』で登場した浦田も同じ傾向でしたが、このキャラクターは世間を見下した自己が確立した人物だったので、社会へのメッセージや思想多きセリフも浦田の改心へ繋がる物語として役割を果たしていて意味を感じましたが、本作の場合はただの著者の想いの発散の為、謎解きのノイズに感じました。必須ではない文章が多くカットしても問題ない所が多いです。1巻のように些細な会話が解決の手がかりとなるような無駄のない文章で謎を解き明かす品質を望みます。 本作品集の中では最初の『外園聖蘭』の章が面白く読めました。表題含めた他の作品は煮詰まってなくて複雑で長い物語に感じてしまいました。 2巻から続けて作品を書き続けているのでしょうね。物語の文章の流れの傾向から筆がのっている感じはとてもします。 何だかんだ不満を溢しましたが、総じては面白いので次回作も楽しみです。 |
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ログアウト不能のVR空間。仮想空間には存在しないはずの痛覚が発生し、閉じ込められた館内で殺人事件が発生。
現実世界は災害により退廃し、仮想空間内で暮らす近未来のSF模様。ログアウト不能により状況の手掛かりを得る為に館まで向かう話は冒険ファンタジー。たどり着いた館内での事件はデスゲーム+ミステリ。と言った具合に色んなジャンルが展開します。 ここは好みの分かれ所だと思う点で、多ジャンルが読めて好きという人もいれば削って内容を濃くした方が良いと思う人もいるはず。私は後者。館まで向かう前半は必要ないのでは?制作途中で物語の方向転換をしたのかなという印象を受けました。設定が繋がっておらずバラバラな印象です。 VR空間内のルールが不明なのでミステリとして読むのも難しい。殺人で返り血を浴びたとしてもアバターの着せ替え機能でクリーンニングできる為犯人が特定できないなど仮想空間を利用した設定は面白いが、こういったゲーム感覚を知らない人はチンプンカンプンかと思う。場面の想像がし辛い文章なので個人的になんとなく『ソードアートオンライン』『不思議の国のアリス』、その他デスゲーム、バトルロワイヤル系の作品の景色を頭に浮かべながらの読書でした。 300P台の本中、200P過ぎるまでしっくり来ない作品でした。ですが終盤の結末は見事。この結末を最初に構想してから本作を描いたのかなと思うぐらいよく出来てます。SFやゲーム作品で結構見慣れておりますが、終わりよければ印象良しという作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1作目『ドン・キホーテ・アラベスク』はあらすじ通りバレエを舞台とした作品。過去作の芸術ミステリ同様に、得意のフランス語を含めたバレエの知識を得ながら楽しめた作品でした。著者の勉強にもなるミステリは毎回面白い。シリーズキャラクターも交えて良い感じ。明かされた真相も気分の良いもので好み。短編作品+バレエ知識で中編ボリュームの作品です。
2作目は前知識なしで読んでもらいたいので、あらすじは割愛。 ふと、1作目と2作目、どちらのネタを先に思いついたんだろうと思う。2作目かな。中編集と言えどこの2作は2つで意味を成す体裁を得ている。それぞれ単体で見ると、そこまで際立ったネタではないと思う。ただ、2つ合わせる事で効果的に活用されている。こういう意味のある使い方は本当に巧いと思う。 ま、後は好みのお話なので、個人的には楽しめたけど、読みたい気分の内容とは違った作品だった次第。 バカミスは好きなんですけど、本格ミステリを読みたいと思って手に取るのと、バカミスを読みたいと思って手に取るのでは印象が異なる。今回はタイミングが悪かった模様。面白くて良い意味でくだらないwって感じなんですけどね。 と、なんだかんだ言っても質が高いのは流石です。 あと、著者はとてもお茶目で楽しい人なんだろうなっていう印象が本作ではとても感じました。ある種、本作はテーマをもった作品ではあるのですが、それよりも著者の人柄をよく表している作品であると感じました。勝手な想像ですが、自己紹介本の感覚で、どんな作品を書く人ですか?と尋ねられたら、本書を渡して、真面目な所とお茶目な所を感じてもらうような作品。そんな事を思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これはとてもピュアな青春恋愛小説。なんというか眩しい。悪意がまったくない作品でした。
登場人物は主に男女2名のみ。過去のトラウマで医者の道を諦め悩む医学生の男性と、右手麻痺で左手だけでピアノを演奏する女性の恋物語。 著者の本は初読書。『このミス』大賞出身作家さんで、同賞のピアノを題材した作品群より、浅倉卓弥『四日間の奇蹟』や中山七里『さよならドビュッシー』を深層心理で感じながらの読書でした。読み終われば、これらとは違う位置づけにある作品であり、内容は「恋愛要素8:ミステリ2」ぐらいで、音楽+恋愛小説を求めている方にはアリな作品です。 序盤の率直な感想としては恋模様の展開が早すぎ!出会って直ぐにあれよあれよとデートして心惹かれてと純情過ぎる事に違和感。急展開に感じるのは、女性の行動力に対して主人公の反応が冷静過ぎて読者と気持ちがリンクし辛い為、話の先行だけが目立ちました。 主人公も女性の行動に驚いて読者と共感すれば違和感ないのですが、彼も驚いたりする事なく『翻弄されてばかりだな…… 』と冷静に呟いて、この展開が普通な世界なのかと話の先行が目立ちました。 ただ、終盤でのまとまりは巧くて納得するので、そこまでの道をもう少し違和感なく進むと良かったのにと思いました。 話は綺麗に終わるので、1つの恋愛物語として楽しめた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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死ぬ人が分かる少女と、その能力を参考に人を死なせないように行動する僕のお話。
コンセプトとなっている"人を死なせないようにする"という作品が珍しいかというと、ループ物作品にて多くあるのでこの設定自体は真新しいものではないのですが、能力設定は面白い。人が死に近づくにつれて顔にモザイクが濃くなっていくというのはミステリ仕掛けを色々期待できます。今すぐは殺される心配はないとか。直ぐに助けなくてはいけないとか。活用方法は多いでしょう。ただ本作については期待する仕掛けの作品という趣向ではなく、設定や人物紹介の割合が多い為、ミステリとして読む本ではなく青春小説という印象を受けました。 過去に起きた学園での転落事件の検証も推理というより、関わっていた人達の心理を告白し受け止めるようなお話です。ハヤカワ出版なのでもっとミステリした物を期待してしまった気持ちでした。死なないミステリである為か全体的に緩い雰囲気ですが、次作にて、死までのタイムリミットの緊張感や、舞台の性質を活かしたり、事件の真相も推理により導かれるような作品を読みたいと思いました。志緒と僕のキャラクターは好きなので、このコンビによる次作の活躍を期待します。 |
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面白い試みの小説だと思いました。
本書は、作者の長江俊和がある事情から出版できなくなったルポルタージュの原稿を入手し、これは世に埋もれさせてはならないと感じ出版した本です。 ※というのは、まぁ設定で、個人的にはノンフィクションを装った作品かと思います。 現実にあってもおかしくない内容なので、読者に「これって本当の事?」と思わせる物語のバランスがとても巧いです。 届けられた原稿は2002年に起きたある男女の心中事件のもの。心中は未遂で終わり、生き残った女性を取材したインタビューが記載されています。 小説として現代の"心中"を扱う場合は、一昔前のサスペンスドラマにて多くの男女のもつれによる殺人や偽装の作品が世にでた為、読者はこれってこういう話なんじゃない?と疑った見方をしてしまう難点があります。 本書の巧い所は、現実にあった事件の取材原稿としている為、読者へ事件内容を疑わず史実として受け入れさせている所。さらに物語ではないので、取材に漏れがあるかもしれないですし、作者の考察が正しいとは限らないといった地の文の正確さの保証が無い小説となります。 この点が好みの分かれ所でして、ミステリとして読むか、こういう作品として認められるのかという心構えで評価は大きく異なるでしょう。 個人的な感想ですが、正直な所読んでいてまったく興味をそそられなかったのですよね。ミステリなら仕掛けを期待しますが史実設定なので他人の男女の死に興味が沸かないというスタンスでした。 ただ最後の閉じ方は印象に残りました。 表向きの考察と解答は作者の考えとして示されますが、それが真実とは限らず、もっと他の真相があるのでは?と読者に含みを与えて悩ませる深読み系作品ですね。なので読後感はモヤモヤしました。 読後にネットで著者を調べたら、放送作家の方で似たような番組を作られていたのですね。 これは非常に納得で、読者を虜にする仕掛けが巧いと思いました。 考察サイトを巡回しましたが、考察者は作者のアイディアや仕掛けを見つけ出す事を楽しんでおります。この動きを狙った商品として考えると非常に巧い仕掛け本だと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書は"ループもの"や"幽霊もの"ではなく、記憶障害を持つ恋人との青春物語です。
あらすじやタイトルで誤解しやすいというか、わざとな商業戦略なのかもしれませんが、こういうのは印象が悪いです。 ただ、望んでいた内容とは違いましたが、1つの物語として楽しませてもらいました。 記憶障害作品ですが、話の重さはなく、非常にライトで楽しめます。 中高生男子のラノベ色が強く、ちょっと訳あり主人公が、美人なヒロインにモテモテな設定。完全に男子向け作品です。 現実的に、恋人や友人や家族や身の回りに起こるであろう事を考えると、本書はとても都合がよい展開で、ツッコミ所は豊富でキリがありません。 なので、そういうのは一旦おいておいて物語として楽しむとすれば、全体はとても綺麗な小道具や言葉で描かれいるので、中高生向けの青春恋愛小説としてよく出来ていると思いました。主人公とヒロインの考え方には共感できないのですが、世の中の恋人の思考は人それぞれなので、1つのハッピーエンドでしょう。 さくっと読める読みやすさと、彼女の日記を間に挟む物語の構成など、作り方はとても綺麗でした。終盤の一言を配置するページの気配りなど、細かい所をよく考えられているのも好感。ライトな仕掛けのサプライズがあったり、 不思議な恋の物語としては中々面白かったです。 で、読み終わってから表紙を見ると、記憶障害の作品にしては綺麗な絵柄かつ意味深でタイトルも巧いなと思いました。 色々とわだかまりが残るのですが、全体的に綺麗にまとまっている事で好感が持てる不思議な作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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要所要所のネタは凄く面白いのに、B級ホラーのようなネタだけが目立って深みが弱い作品でした。文章表現が軽くてイメージが沸き辛いので絵付きの漫画かアニメ向きかも。小説というより仕掛けを楽しむ作品という感想でした。
舞台は廃墟がそびえ立つ無人島。ここに廃墟番組撮影のスタッフ9名が訪れた所、次々と人が死ぬ事件が発生します。このシチュエーションは好物です。 そこにホラー要素として、事件の予言の動画の存在が加わります。これは5年後の未来から主人公の元へ、未来を変えるべく犯人を暴いてほしいという動画で、動画には全身怪我を負い記憶を失くしたミイラ男が映っており、その人物の不気味さがあります。 生き残ったミイラ男は誰なのか?犯人は誰なのか?などなど、面白そう!と思う要素は豊富なのですが、なんだろう、、、読んでいて惹き込まれませんでした。 真相の仕掛けも面白かったので、アイディアは良いのですが煮詰まっていない勿体なさを感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ゲーム『逆転裁判』のオリジナルストーリー。著者は討論が魅力のルヴォワールシリーズを手掛けた円居挽。小説を過去に読んだ事があるので、言い争う逆転裁判の小説化の担当としては面白そうな組み合わせだと思いました。ゲームは逆転裁判1~4をプレイ済み。『逆転検事シリーズ』はプレイしていません。
その上での感想としては、とても逆転裁判を再現していて文句なしです。読んでいて画やBGMが浮かびました。シナリオの進行の仕方、敵役の証拠の隠し方とその暴き方の展開、セリフ回しなど、逆転裁判が好きな人は納得の出来だと思います。キャラ物として面白かったです。 一方、逆転裁判を知らない人が、ミステリや小説単品として見るとどうか?と思うと、非常に厳しい作品かもしれません。法廷ミステリでもあるのですが、展開はゲーム的なノリそのままなので、シリーズが好きな人は楽しめ、知らない人は何だこのふざけている裁判は?となるかと思います。 大きな主軸となる謎はタイムマシンが存在するのかどうか? 密室内に被害者と共にいた被告人。タイムトラベルをしたとしか思えない状況の数々。この非現実的な内容を謎として捉えられるかどうかがポイントです。 原作はゲーム作品だから、霊媒やらタイムマシンの存在もアリなんじゃないかと思えてくるわけで、違和感なく楽しめたかどうかが評価に繋がると思います。 個人的にはミステリも然ることながら、ファンサービスが強い印象でした。懐かしいキャラクターが多く登場したのが楽しかったです。 何故、被害者は死の寸前、密室内に閉じこもり助けを呼ばなかったのか?この解法は本書ならではの理由で唸りました。 タイムマシンネタも、一般ミステリでは扱い辛いので、逆転裁判と結びつけたのはある意味巧いなと思います。 点数について。 ゲームだと相手の証言を崩すべき、おかしな所を試行錯誤して論破するのが楽しい魅力ですが、小説だと解答への一本道な為、おかしな証言はそのままおかしいまま読まされるだけなので、検察側の理不尽な証拠隠しが目立ち、なんだこのふざけた裁判は?という印象でした。文章は正に逆転裁判なのですが、小説の一本道だと違和感がありますね。同じ文章や雰囲気でもゲームと小説での印象は大分違う難しさを感じました。手放しで面白いと言えない難しさが残った感想です。シナリオそのまま、本書をゲームとしてプレイしてみたいと思いました。 |
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青い薔薇の温室。小窓はあるが室内の壁一面が薔薇の蔓が張り巡らされているという目張りされた密室の属性。首だけの被害者と謎のメッセージ。密室の情景が美しくとても魅力的でした。ミステリとしての仕掛けと物語の作りは非常に濃厚。読後感は凄く複雑な内容を作り上げる凄さを感じました。
読み終わってからの感想はとても良いのですが、そこへたどり着くまでの読書中はどうかというと、個人的な問題なのですが、あまりのめり込めなかったです。。。 本書は前作からの続きのシリーズとなりました。その為、時代設定がパラレルワールドの80年代。ちょっとSFが入る不思議な世界です。青薔薇におけるDNAや科学的の解説。「実験体七十二号」という怪物のような存在を感じさせる本書において、どこまでが現実的に解き明かせるミステリなのか?空想もの?読書中は判断が付かずで頭を悩ませてしまった次第。世界情勢も不明でU国やJ国という表現。登場人物名はカタカナの海外ミステリ模様。物語を楽しむ前段階で意図しない混乱をしてしまった次第です。本書はパラレルワールドの必然性は感じず、シリーズ故に引き継がれた設定が読みにくくしている難しさを感じました。作品はとてもよいのですが、好みの問題でこの点数で。 1-2作読んで傾向が分かったので3作目はちゃんと把握できると思います。しっかりした濃いミステリなので次回作も楽しみです。 言葉遣いが悪いけど特徴的なマリアと、丁寧な漣のコンビは中々よいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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言葉遊びのネタに特化した短編集です。短編4つの作品のテーマはそれぞれ
・同音異義語による聞き間違い ・日本語/英語の聞き間違い ・ワープロ誤変換 ・表現、印象操作 を扱ってます。 前2つはお笑いコントのような話。電話越しで「きせいちゅうです」と聞いた時、"寄生虫です""帰省中です"の誤読が生まれる。日本語は同音異義語が多い為、前後の文脈から言葉の意味を推測するわけですが、このネタをふんだんに盛り込んだ結果、勘違いのコントに仕上がっています。 どこで勘違いしているかが分かり易いので、ずっとボケ続けている様子を見るのはちょっとシラケ気味でした。ただ、多くの聞き間違いネタを披露している所は面白かったです。 3作目の誤変換を扱った『鬼八先生のワープロ』は、かなりトンデモ作品。 キーボードで入力した平仮名としては全く同じ文章なのに、 評論家の酷評文章が誤変換によって下ネタ小説になってしまう作品。 『ここ数年。恐るべき新人が…』⇒『ここ吸うねん。お剃るべき新人が…』という感じで変換されていく下ネタ小説。 もう、アホかとw これは変態作品(褒め言葉)。ある種の病気。苦労系のバカミスを感じながら、物語を楽しむよりこれだけ豊富な語彙がでてくる事に驚きを味わう作品。 短編集ですが、この作品が一番やりたい事かと勘違いする程に際立った作品でした。 4作目の表現印象操作は、TVの問題やそれに負けない文章を紡ぐ作家の思いを感じました。 そんなわけで、帯に"トリック"や"犯人"という誘い言葉がありますが、個人的にこれはミステリではない作品だと思います。 技巧系作品です。語彙が豊富でないとできない作品ですね。ほんとうに凄い。そしてチェックする校閲も凄い。実際どうだか分かりませんが、制作現場が気になった次第。 ミステリのミスリードや叙述トリックなんかは、この言葉遊びによる対読者への印象操作ですものね。普段から作家さんはこんな事を考えながら思いついてニヤニヤしているんだなと勝手に感じて面白く思いました。 |
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著者の作品は、何かしらテーマを決めて他作では真似し辛い特異な作品作りをするので好みです。
本作はタイトルにある殺し方(ハウダニット)をテーマとした特異な存在となっております。他で真似できないような仕掛けの2つの物語です。 正直な所を申しますと衒学的な小説でした。専門知識の紹介が伏線となったり段階をおって読者を惹き込めればそれなりの仕掛けと驚きを得られそうな印象なのですが、短編なので心構えができないまま急に出てきた仕掛けに困惑します。これはかなり好みが分かれる作品かと思いました。 1作目『不可能アイランドの殺人』 何が起きているか分からない超常現象の作品。オカルト?ファンタジー?何なのコレ?と、心構えが分からず、どう感じたらよいか困惑の読書でした。読み終わると、あ、そういう事なんだ。一応ミステリだし、ハウダニットもなるほどな。と置いてけぼりを受けながら納得した読書でした。☆4点。 2作目『インペリアルと象』 前作でちゃんとミステリをするという事が分かったので心構えができての読書。ただ中身はクラシック音楽の薀蓄が披露されます。 クラシックは好きなので、私的には好みで楽しめました。ただ、これって興味ない人には目が滑る読書になるかと思います。。。 この2作目はとても好みでした。薀蓄もトリックに結び付きますし、音楽ミステリとしては作者の知識が披露された濃い作品となっています。 個人的には長編で読みたかった作品でした。☆7。 一般向けではない、ちょっとマニアックな作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1巻完結もののライトノベル系ミステリ。もしくは、ミステリっぽいラノベ。
個性的な表紙絵の探偵役が学園に転校してきて、とある事件の犯人を暴くという。この探偵や主人公など、登場するキャラクター達は何かを隠しており、読者にはそれが何か分からない。この分からない謎のモヤモヤがミステリっぽい雰囲気なのですが、全体的に何かを理論的に推理するような話ではない作品。 「探偵殺人」や「ゲーム」から連想する要素を感じず、タイトルと内容が合っていない気がしました。 本書は人狼系で、嘘や隠し事を直感的に見破るような作品です。 あんまり他作と比較するのも良くないのですが、雰囲気が西尾維新作品で、本作の「れーくん」は「いーちゃん」を連想してしまう読書でした。読者に全てを打ち明けない語り手として巧い存在です。 ライトノベル系のミステリは、異能力が存在する世界の設定か判らないままの読書が辛いですね。何系の本か判断に迷いました。 設定が複雑でしたが、読みやすい文章だったので楽しめました。個性的で綺麗にまとまっていた作品。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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世間を震撼させている連続見立て殺人事件の犯人:通称「毒リンゴ」。とある条件で相手を殺す事ができる能力を持つ5人が集められ、いち早く「毒リンゴ」を抹殺した者が、死者を蘇らせる権利を与えられる。
誰が毒リンゴなのか?願いをかなえる為にライバル同士のデスゲーム模様。相手の能力は何なのか?と、駆け引きもあり、そこそこ楽しめました。本書1冊完結型の中で、世界観の導入、事件の顛末、ラストの収束まで綺麗にまとまっていて良かったです。 ミステリの小ネタが多くて楽しめましたが、驚きや理論的な何かに繋がるわけでは無かったのが物足りなかったです。結末は好み。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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高校生達が謎の現象に巻き込まれて、理不尽な死が待つデスゲームに参加させられる話。
校内放送にて謎のボスからゲームのお題がでるわけですが、ルールをアレンジした神経衰弱など内容が身近で分かりやすく、読者が混乱しない作りはよかったです。 序盤のゲーム内容や雰囲気としては何だか軽い話だなと思っていたのですが、中盤あたりから戦略や人間関係の心理面がでてきて面白くなりました。 バトルロワイヤルのような相手を出し抜いて殺してやろうというデスゲームではなく、理不尽に巻き込まれた状況で、友達を殺したくない、何か傷つけない方法はないのかと、常に模索する登場人物達の心理面がよかったです。こんな現場に巻き込まれなければ普段は仲のよいクラスメートだったんだとよく伝わりました。 雰囲気は漫画『神様の言う通り』に似ている感じと言えば伝わりやすいかな。結末もよくある落とし所で既視感があり、新鮮な刺激がなかった事が物足りませんでした。真相の目的については、内容に齟齬が多くてちょっとすっきりしない話でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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角川カクヨムWeb小説コンテストのミステリー部門大賞作品。
この大賞で注目というより、京大ミス研の学生が獲った所で気になった作品。web小説じゃ軽いだろうな…でも京大ミス研ならしっかりしてそうな安心感アリ。WEBでも読めますが、ちゃんと編集が入って整っているだろう文庫で読書です。 とある場所で、殺し屋、泥棒、人身売買関係者、など、癖のあるキャラクターのエピソードが交差し、ミステリーらしい驚きの背景や繋がりを感じる作品でした。表紙通り、雰囲気がアニメっぽいのでその辺りが大丈夫な人向け。 ネタバレではないと先に伝えたうえで、ちょっと思うところとしては、様々なエピソードが繋がって、実はこうだったのかとか、読後に再読して新しい発見があるのはよいのですが、それらが仕掛けとして狙った感じはしませんでした。読者をうまく誘導して驚かせるというより、話がバラバラで理解ができないまま進み、あとで解説を受けて納得するような印象。「やられた!」ではなくて「そういう事だったんだ」という感覚。散らばった話をまとめる難しさを感じました。 うさぎ強盗が12歳の設定って必要だったのかな。16ぐらいの方がなんか合ってました。強すぎ。キャラクターは一之瀬が好みです。と、なんだかんだ書きながら、2度読みもして楽しませてもらった作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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