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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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主人公の男女が中学二年生であり、序盤は単なる中二病の話かと思っていましたけど違いました。
背伸びをしてとか、大人ぶってとか、青臭いとかではなく、もうこれは深い深い真っ暗な闇、マイナス方向に振り切れている感じです。 しかし、これは間違いなく恋愛小説なんですね。相当に「歪」ですけど。 それに気づかされる読了間近はゾッとせずにおれませんでした。 作者を知らずに読んでいれば、間違いなく乙一の作品だと思ったでしょう。 乙一テイストな作品に、辻村深月が描く強烈な女の世界が融合した感じ。 黒辻村全開のえげつない作品だと思います。 辻村作品を読んでいると、時々、女に産まれなくてよかったと思う事がありますね。 精神的な成長は女性の方が早いと思っていたのですけどね。 面倒くさいし、ホントに怖いです。 まぁ、この年代の女性が全部そうではない事は分かってますけど。 |
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冤罪をテーマにした作品ですが、冤罪被害者とその家族にとどまることなく、日本の司法制度そのものに一石を投じた社会派ミステリーです。
メッセージ性の高い作品を多く世に出す作者ですが、その中でもこの作品は際立っているかも知れません。 テミスは、右手に権力を意味する剣を、左手には正義を測る秤を携える法の女神。 警察官、弁護士、裁判官。 彼ら或いは彼女らは、普通の人が持ち得ない「人を裁く力」を持っている特殊な人種である事を改めて思い知らされる。 そんな彼らが過ちを犯した。 人一倍に責任を感じてしまう者、開き直る者、狡猾に他人を陥れようとする者、そして模範囚の仮面を被って出所してくる改心ゼロの真犯人。 更に、一方で全てを隠蔽せんとする巨大な力。 権力に媚びず、組織に背を向け、自分の信念を貫く一人の刑事。 この異端児を格好いいとは思えなかった自分は未熟なのだろうか。 全編通してずっしりと重く、決して面白い作品ではないのだが、色々考えさせられた作品である。 高野和明「13階段」を読んだ時と同じ胸のつっかえを感じた作品。 それにしても、この作者さんの作品は最初から順番に読んでいかないとダメですねー。 作品間のリンクが半端ない。 |
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自分の作品である「連続殺人鬼カエル男」を自分の作品の中で映画化、その制作現場を描くという中々に面白い作品。
中盤のあのバイオレンスシーンは映像化したらさぞかし盛り上がる事でしょう(笑) 様々な困難に立ち向かいながらも、映画制作に懸ける心意気や熱さ、そしてそこに主人公の成長を描きますが、殺人事件まで起こしてしまうのは正直やり過ぎかと。 普通ならその時点でお蔵入りだろう。しかもクランクアップ後の犯人発覚。 読み手である私の、チームに対する、思い入れも固まった状況。 救済策があるのかと思いきや切り捨て代役とは・・・ 世に出す事が、そんなに大事なのかと・・・ ミステリの部分は、あっさりしていて軽く、重きを置かれているとも思えず、それなら正直不要だった。 憲法第三九条をめぐる人権団体との攻防を最大の障害とした方がよっぽどこの作者らしかったと思うのですが。 |
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幼少期に一家惨殺され、一人生き残った少年の復讐劇と、その事件を追う余命僅かな刑事を描いた物語。
もう1つのテーマが「顔」で、事件で顔に大火傷の跡を残した少年以外にも、醜顔恐怖症に陥ったアイドル、顔に痣を持つ刑事が登場し、顔に何らかのコンプレックスを抱える人間の闇が描かれます。 「虚なる貌」という事で、仮面の下に隠し持つもう1つの顔・・・的な展開を期待出来ると思いましたし、実際しましたが、蓋を開けてみると、その期待は裏切られただけでなく、ツッコミどころ満載の作品でした。 復讐劇ならストレートでそれでよかろうに、犯人を隠蔽せんとしたあの真相は最早反則技以外のナニモノでもなく、そこまで許すと何でもアリになってしまう。 また、ラストで誰も幸せになるわけでもなく、「人間、顔ではなく性格」を思いっきり否定した感じのまま終わっており、正直首を傾げてしまった。 犯人に与えられたラストシーンも正直「寒い」し、そもそも最初の一家惨殺事件の真相を見抜けない警察などありえない。 |
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この作者の作品は、私にとって好き嫌いがはっきりと分かれるんですよね。
嫌な女を描かせたら恩田陸さんと双璧だと思っていて、そういう女性が主人公の作品はどうも私には合わないのです。 この作品も、正直嫌な女が主人公と言っていいでしょう。 上巻を読んでいた時は、私には合わない作品かなと思っていましたが・・・ 長編で登場人物が多いですが、一人一人個性的でしっかり描かれている。 この作品は、私が好きな作品「冷たい校舎の時は止まる」「子供たちは夜と遊ぶ」系で、この2作品を超えようかという作品です。 何気なく描かれていて忘れかけていたような、エピソードとも呼べないような、ワンシーンや一つの台詞を、物語の最後の最後、衝撃の事実に繋げているんですね。 そういうのを「伏線」って言うんでしょうが、普通の伏線とは一緒にして欲しくないような伏線ですね。 この作者さんはこういうの上手いですね。 「お久しぶりです」が好きですねー。 上巻と下巻で、ガラッとその印象を変える事になる人物が、少なくとも4名いますよ。 指摘されているレビュアーの方もいらっしゃるように、つまるところ上巻と下巻は別物と言っていいと思います。 この作者の作品では、これまで読んだ中ではNo.1かな。 |
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自身が提案したアイデアが採用され、新規事業開発、そしてその夢を実現させる女性の話。
舞台は沖縄~南大東島という事で、作者の「カフーを待ちわびて」同様、どこかのんびりした雰囲気があるので、「ビジネス」という臭いはイマイチ。 そこがいいのかも知れませんが・・・ 主人公からは、正直、新規事業開発をリーダーとなって引っ張るような行動力を感じる事はできなかったのですが、好感度の高い女性ですので感情移入はしやすいかも知れません。 実話を元にしたという事ですが、作者にサラリーマン経験がないためでしょうか、「そんな甘いもんじゃないですよ」と言いたくなる。 苦難が余り描かれていないのだ。余りにもトントン拍子に行き過ぎ。 実物の主人公さんは実際間違いなくもっともっと苦労しているはずだ。 意図的に端折ったのか取材不足なのかの判断は出来ませんが、個人的には後者な気がしてます。 まぁその分、読む側も何のストレスもなく気持ちいいまま読み終えることが出来るのですが・・・ |
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図書館本です、ごめんなさい。
好き勝手に書評書いてます、ごめんなさい。 「音楽モノ」に加えて「出版業界モノ」がラインナップに加わったと考えていいのでしょうか。 メッセージ性の高い作品を多く描く作者ですが、この作品は、「メッセージを発信する」というより、主人公の名前からも分かるように「毒を吐く」である。 対象は自身が身を置く出版業界。 刑事物であるから事件は当然起こるのだが、その裏で皮肉やら嘲笑やらをチクチク披露する。 主眼はそっちだろうと言わんばかりで、主人公の日頃の鬱憤を毒島の口を借りて晴らしているといった感じだ。 (さすがに自分が身を置く業界なので)キレたり、ドカーーーンと暴言を吐いたりはしない。 毒島はそういうキャラ設定にしてあり、サラッとキツイ事を言う。 作者が普段から思ってる事なのかなと勘ぐるっていうより半ば確信しています。 シリーズ化希望します。 次はお金払って読みます。 |
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途中、主人公の女性のキャラが変わったなとは感じていました。
死に直面している人物であり、別に不思議ではないと思いましたが、私は多重人格を疑ってしまいました。 なわけで、気持ちのよい騙され方と言いましょうか、ヤラレタ感満載でしたし、人並み以上に「上手いなぁ」と感じてしまったかもしれません。 「毒の連鎖」というタイトルからも「死」というか「自殺」の連鎖が想像でき、死のセールスマンは誰で目的は何なのかに着目してしまいがちですが、そういうミステリ的な事が主眼なのではなく、更に言うと「死」よりも「生」をテーマにした作品だったという気付きがあります、そういった反転ですね。 それだけでなく、自殺願望のある女性が語り手なわけで、必然的に重く暗くなっているのですが、毒を手に入れるまでの一年間で変わる女性を描いた作品だった事に気づいた時に、作品への印象もそうですが、読後感にも大きな変化をもたらしていますね。 同じような境遇から、死を選択した女性と、生を選択した女性。 どこが違うのか、とか色々考えさせられますね。 自分の気持ちなんて誰も分かってくれない、とは言うものの、人間やっぱり一人じゃ立ち直るきっかけは得られないんですね。 |
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伊坂の作品にしては、「らしい」けど「意味不明」でもないし、わかりやすいとは思うので、伊坂入門書として最適な気がします。
と言って、伊坂の代表作の1つとなるような作品ではないように思います。 車の視点で語られる、つまり「車同士が話をする事ができる」設定の物語。 「空いたボンネットが塞がらない」などの言葉遊びやお得意の面白い比喩が炸裂しています。 そして、例によって、伊坂作品らしい悪人が登場して、主人公家族(主「車」公ではない)が窮地に陥ります。 車たちは会話できる事がが全てで、実際「話」以外に何もしないんですね。 人知れず大活躍ってのを期待していたのですが、というか当然そういう展開だろうと思っていたんですが・・・ そこが残念というか、「何故?」っていう感じでした。 エピローグが良かったですね。 個人的には伊坂作品らしくないほっこりした終わり方だと思ったんですけどね。 |
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【ネタバレかも!?】
(3件の連絡あり)[?]
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連作短編集のような構成になっている学園ミステリ。
ですが、そこは麻耶雄嵩。 これを敷居が高いとは言いたくないですが、麻耶未読者にもはっきり分かりやすい「変な作品」です。 というのも、探偵役の推理が何の検証もされなく否定され、読み手に結末が明かされることなく章が終了するからです。 化石オタクの赤点女・神舞まりあが探偵役、事情あってまりあのおつきあいをしている秀才(?)・桑原彰がワトソン役。 ワトソンが一枚上手に見える設定であり、探偵まりあの推理は、毎回毎回ことごとくワトソン彰に却下されます。 それもそのはず、まりあの推理は、敵対する「生徒会メンバの誰かが犯人」が前提で、そこを起点に無理矢理こじつけていくという推理で、説得力などあるわけなく、読み手にも、まともに推理しているようには思えない、そんな印象を与えています。 まず犯人を決めて、それが成立するように推理を組み立てるというまりあの推理は、作者の「神様シリーズ」と似たパターンになりますかね。 探偵役とワトソン役との関係に一石を投じるのは、この作者が以前から試みている事です。 なので、この消化不良になりかねない章立ても、麻耶作品を何作か読んでいる読み手、特に「さよなら神様」を既読の読み手には、先の展開も比較的容易に予想できたんじゃないかなと思いますね。 |
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講談社の「ミステリーランド」シリーズ。
団地に住む母子家庭の2家族が物語の中心。 大人から見ると、当然恵まれているとは言えない環境なのだが、子どもたちにとっては、そんな団地が自分たちの世界なのである。 そして、この世界には大人の男がほとんど登場しない。 大人の女は数多く登場するのもかかわらずだ。そしてその多くは好意的に描かれている。 唯一登場する大人の男が「子どもの王様」 王様ではあるが、自分たちの平和を乱す悪しき存在として描かれている。 子どもたちの頭の中では、我々おっさんは眼中にすらないっていうか寧ろ邪魔者でしかないのかって感じてしまったのですが・・・ そして、子どもたちが大好きな、作品内に登場する戦隊モノがワーグナーのパルジファルが元ネタ。 主人公の少年が「聖なる愚者」って事でしょうか。 「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――」がコンセプトになっているこのシリーズ。 麻耶雄嵩の作品もそうでしたが、意外と深くて面白いですね。 |
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一部の好き者にしか評価されなかったであろう前作のまさかの続編。
しかも、前作はミステリのお約束に対する、鋭いツッコミでもあり、それなりに意義もあったのでしょうが、まさかの続編であるこの作品は一転、殆どが脱力系ギャグに。 作者にとって造詣の深い絵画・音楽までをも、(作者のシリーズ作品のエースである)芸術探偵・神泉寺瞬一郎まで引っ張り出してきた上にこき下ろしています。 破壊力抜群のバカミス警部と薀蓄探偵との掛け合いは、当然ながら、対決などという立派なものではなく、ズレにズレまくっていて、「クスッ」と笑えますが、それ以上のものでは有り得ないです。 |
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正体不明(らしい)絵師東洲斎写楽が誰かという真相に御大が挑んだ作品。間違いなく力作でしょう。分厚いし。
御手洗シリーズなどとはテイストもまるで違いますが、御大らしいスケールの大きさは感じる事ができました。 御大がデビュー当時からアイデアとして持っていたらしいですね。 だとしたら、満を持して・・・のはずですが、正直中途半端な気がします。 この評価の高さには若干違和感を感じてしまいます。 写楽の謎を追求した、というか自説を展開しただけで、これはミステリではありませんね。 そういう趣向の作品であるのなら、資料とかは用意して欲しかったです。 こういった芸術作品を取り扱った作品はこれまで何冊も読んでいますが、普通写真の掲載くらいするでしょう。 ですので、不親切なのは勿論、説得力もないですし、そもそも読み手に分からせようという気がないのかな、と。 ミステリ仕立てにした方が面白かった気がします。 また多くの方が指摘していますが、私も同じです。 まさか終わり? ってのが、700頁もの本を読み終えた時点での率直な感想。 回転ドア事故の裁判はどうなった? ヒステリックな妻と資産家の義父は何処行った? っていうか、そもそも子供が死ぬ意味あったのか? 結局あの(日本人離れした顔立ちの)教授は何者? 本は出版されたの? で、どうなったの? 主人公の置かれた状況や、その周りの人物造形に、事件や事故の臭いをプンプンさせるようなサイドストーリーをバラ撒いておきながら、完全に置き去りのまま終わってますよね。 発端となった肉筆画についても、あの程度の扱いでは弱くないですかねぇ。 読んでいる間はそれなりに楽しめたのですが、読み終わった瞬間「ウソでしょ?」な作品でした。 あとがきには「長くなりすぎて端折った」って言い訳していますが、明らかに端折る箇所を間違えてますよね。 回答編の役割を果たしていると思われる「江戸編」も、私が関西人だからなのか、あの江戸弁が・・・ |
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高校生の娘をひき逃げ事故でなくして以来、全てを失ってきた初老の男、と万引き犯の少女。
将来を嘱望され会社役員候補と目されていた状態からの転落人生。 本来であれば、住んでいる世界が違いすぎて交わる事など有り得ない(救いようのないような)少女との出逢い。 それでもその男は、やはり高人格であり、そんな少女相手なら、何もかもを達観した落ち着きと余裕を持った接し方になるのは当然だったろう。 そんな二人が、全く想定外~~想定できる範囲内だったが、小説のラストとして選択されないだろうと考えていた~~のラストを向かえては、こちらとしてもどうも読後感が悪い。 これを「世界が反転」という表現はおかしいだろう。 どん底に叩き落しただけではないか。 まぁ、それまで徹底的に読み手が感情移入出来るような描き方をしておいて・・・ってとこは、やはり上手いのか。やられたって事なのだろうか。 「葉桜」とは別の意味でかなり印象に残る作品になってしまった。 |
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【ネタバレかも!?】
(2件の連絡あり)[?]
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「魔女は甦る」の続編。
前作だけでは余りに消化不良なので、前作を読んでいるなら読むべき作品だと思いますし、勿論前作を先に読んでおくべきでしょう。 ひょんな事からヤクザとコンビを組んで、ヒートの売人を探す事になった主人公・七尾。 主人公・七尾は、前作にも少しだけ登場しており、(前作の主人公)宮條を慕っていた麻取のエース。 麻薬の効かない体質というのも、今までにない、中々に効果的な設定だと思います。 しかし、その売人が殺されて、殺人容疑をかけられてしまう。 追手の追従をかわしながら疑いを晴らし、という食欲をそそる展開なわけですが、その追手というのが、嘉手納基地から発進されたホーネットって・・・ 正直、こういうのやめて欲しい。 「魔女は甦る」→「ヒートアップ」って、タイトルだけ聞いていると、どこか宮部みゆきっぽいな、なんて思ってたんですけど、こういう時、宮部みゆきならお得意の「魔術」が降臨するわけですが、この作者の場合は「バイオレンス」でオトスんですね。 どっちもどっちだけど「魔術」の方が全然マシです。 2点減点。 それにしても、宮條が生きていて、ヤクザの山崎とあの御子柴が繋がっているという・・・ 出し惜しみしないという点は相変わらずです。 これは続編がなきゃウソだね。 |
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「しきみ」/「むろ」と読み、どちらも植物の名前なのですが、木偏を取り除けば「密/室」って事ですね。
「樒」は「鏡の中は日曜日」が文庫化された時に併録された作品です。 「鏡のー」に登場人物である作家・鮎井郁介の「名探偵・水城優臣シリーズ」の1つとされており、内容も「鏡のー」のおまけ的なものです。 一方「榁」の方は、「樒」から16年の時を越えて、同じ場所で似たような密室殺人が発生し、別の探偵が挑み、全く同じシチュエーションに対し、異なる解答を示すというもの。 こう聞くと「ほぅ」と思うかもしれませんが、期待するだけ損をする脱力系バカミスです。 ノベルズ化された際に「榁」が追加されているとは言え、「樒」は「鏡のー」を読んでいてナンボの作品ですので、この作品単独で評価するのは難しいと思います。 |
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名探偵石動戯作の人生に同情せざるを得なくなりますね。
もう汚名返上の場を与えられることは叶わないのですね。 シリーズを通して、名探偵に対するアンチテーゼを展開してきたこのシリーズですが、クライマックスの謎解きシーンは、探偵役はとしては禁じ手で、ひどい役どころだったなぁと苦笑いせずにはおれません。 設定にしても、「黒い仏」ほどの破壊力はない(当たり前ですが(笑))ものの、この作品も中世の騎士の亡霊が主役というプチ破壊力を秘めております。 その中世の騎士の名前はエドガー・ランペール。 江戸川乱歩を容易に想像させる名前であり、その騎士さんが、現代人からすると素っ頓狂な訳の分からん事を連発。 乱歩を笑っているのか、乱歩の時代はよかったという揶揄なのか、私には計り知れますが、作品全体を通して、ミステリというより、エドガーと現代人が織りなすコメディの比重が大きくて、作者が何を表現したかったのかイマイチよく分かりませんでした。 肝心の密室トリックも脱力もので、ミスディレクションになっていると思われている「◯◯口」も、そもそもミスディレクションとして成り立っているのかすら甚だ疑問です。 捜査関係者の誰も気付かないなんて有り得ないですよね。 |
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碓氷優佳シリーズエピソードゼロ。
倒叙ミステリ三部作で探偵役として活躍する碓氷優佳の高校生時代を描いたエピソードゼロ的作品です。 タイトルからは、人間・碓氷優佳を形成するきっかけとなったエピソードでも描かれているのか、など期待していましたが、この頃からキレキレでした。 折り返しの「著者のことば」には、三部作を先に読んでいなくても楽しめるとありますが果たしてそうでしょうか。 三部作未読の方にとっては、少し読後感の良くない単なる日常の謎風ミステリと感じるのではないでしょうか。 しかし、三部作既読であれば、ラストの展開にはニヤニヤなはずです。 既読者にとっては、ある意味この作品も倒叙ミステリといえるのではないでしょうか。 表装の萌え絵でカムフラージュされていますが、登場するのがあの碓氷優佳である以上、ライトな物語であるわけはないですからね。 個人的には「扉は閉ざされたまま」くらいは先に読んでおいた方がいいかなと思います。 |
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なんか既読感があるなぁ・・・と思っていたら、メフィスト賞を受賞したデビュー作「ウルチモトルッコ」の文庫版だった(泣)
改題しただけでなく改稿もしているらしいですが、「ウルチモ」を読んだのは4年も前の話ですので、どこがどう改稿されたのかは当然分かりません。 というか、「これ、ウルチモトルッコ」じゃねーかよ、って気づいたのすら半分くらい読んだ後でしたので・・・ それまでは「また、このトリックに挑戦してるのかよ。好きだなー深水さん」って思ってました(呆) 「読者が犯人」というトリックに真摯に取り組んだ作品として、一読の価値はあると思いますが二回読む必要はなかったわな(大泣) 同じ毛色の作品なら「虚無への供物」の方が全然納得できますね。 |
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