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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数106件
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物語の舞台はその殆どが別荘風の一軒家の中、期間はわずか一日、そして登場人物は僅か二人。
一軒家の中で見つけたある少年の日記を元に、主人公の元カノの失われた記憶を紐解く物語です。 「伏線の応酬」と評されることの多いこの作品。 確かに思い出したり読み直したりすると「ほお」と思う箇所は多いです。 プロット自体シンプルでリーダビリティも高く、読み出したら止まらない系の作品なので、仕込まれた伏線を「ここ怪しいな」と感じながら読むのは少し難しいかなと思いました。 ただ私の場合、伏線がどうこう言うよりも「タイトルに騙された」という印象が強いです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルにもある「蟹」は、人間の身体を蝕む、癌や脳の中でじわじわ広がっていく出血の影の比喩として用いられています。
また、「月の光が上から射して、海の底に蟹の影が映ったとき、その自分の影があまりにも醜いもんだから、蟹は身を縮こませてしまう」 とあるので、人間の体内に巣食う「醜いものの象徴」と考えていいのかも知れません。 作品では蟹ではなく実際はヤドカリですが、殻に身を隠す様や、殻から炙りだされて慌てふためく様など、人間の暗の部分の象徴としてより効果的であったように思います。 醜さを自覚しているという点でヤドカリは大人を象徴していると思うのですが、それが無色透明の人型生物である子供の浅はかな儀式であざ笑うかの如く焼き殺されるというのは、何を意図しているのでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者の代表作とも言えるのがこの作品と「ゼロの焦点」「砂の器」だろう。
しかし個人的に「ゼロの焦点」「砂の器」と比較すると社会派推理小説としては大きく水を開けられている印象があります。 社会派推理小説とは、トリックよりも動機を重視したもののはずです。 しかしながらこの作品は、官僚による汚職だとか情死という如何にも心理描写が必要な題材を扱っているにもかかわらす、動機云々よりも、アリバイトリックを主眼にしている気がします。 本作品は、我が国における「アリバイ崩し」の先駆的作品なようですが、そこに集約しすぎたが上に人間が描けていない。そんな気がします。 「本格ミステリ」に分類した方が良いのかも知れません。 この作品で有名なのは、やはりあの東京駅における「空白の4分間」を使ったトリックでしょう。 今読んでも、そのプロットの秀逸さには賞賛を送らざるをえません。 しかし、これがトリックの「肝」ではないのが残念なところ。 一方で、トリックの「肝」となる部分は、今読むと・・・なのである。 ここで言及はしませんが、かなりがっかりさせられる読者が多いように思います。 新幹線が開通する7年も前の物語。何かと時代を感じさせる作品と言えるのではないだろうか。 |
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古典部シリーズの3作目。
奉太郎の一人称だった前2作と異なり、今作は古典部メンバー4人で視点をまわしていくスタイル。 冷静で堅物?な奉太郎の主観のみで語られるのではなく、それに学園祭って事もあってこれまでより明るい雰囲気。 今作も謎を解くのは奉太郎だけど、今作の謎解き自体余り論理的とは言えない内容で、里志、摩耶花が主役って感じもします。 前2作よりハチャメチャ感もあって、こっちの方が好みですね。 謎解きのミスリードのひとつに、シリーズ過去作品を読んでいないとミスリードにならないものがありますね。 なので、やっぱり順番に読んだ方がいいでしょうね。 サブタイトルにもなっている十文字事件はクリスティのABC殺人事件を下敷きにしています。 ほんとに偶然なのですが、この作品の2作後にABC殺人事件を読んだという・・・ 逆だったらもっと面白く読めたかも知れません。 今回のテーマは「期待」ですかね。 ただ「期待」の裏には「絶望的な差」があるって事みたいだけど、これにはちょっと納得しかねるかな。 それにタイトルの意味がイマイチ分からないです。何故クドリャフカ? |
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このシリーズの最高峰「容疑者Xの献身」以後に出されたシリーズ短編作品。
「容疑者~」のラストで初めて人間臭い姿を晒した湯川学を人間臭いまま登場させるあたりよく出来ています。 なので、この作品は一話完結をなす短篇集といえど「容疑者Xの献身」の後に読むべき作品といえますね。 また、この作品より内海刑事が登場したりとテレビシリーズの人物造形に合わせてきています。 「探偵ガリレオ」の湯川のモデルは佐野史郎、「ガリレオの苦悩」の湯川のモデルは福山雅治って事です。 そこまでの変化は感じないですが(笑) 「攪乱す」は長編で読みたかったな。 |
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ラストでも犯人を明かさず終了するという作品で、ある意味読者への挑戦の趣向を取っています。
主に謎を解明していくのが、警察官とはいえ交通課勤務の被害者の兄です。 彼の推理ではなかなか核心を突くには至りません。そして読者に与えられる情報は断片的です。 そこに肉付け、関連付けする役目を担っているのが、今作ではお助けマンに徹している感のあるあの加賀です。 本来の加賀であれば「瞬殺」だろうなと思いつつ、「私には全てお見通し」視線で主人公をそして読者をゲームに誘っているように思えます。 予めこの趣向を念頭に練られたプロットのはずで、やはり回りくどく真相に対して遠回りしている印象は拭えません。 なので、物語本体の部分はイマイチです。 この作品の評価は「犯人当て」を委ねられた読者が、その趣向を面白いと思えるかどうかでしょう。 私は個人的に余り感心しません。 犯行に至るまでの犯人の心情など、本来必要であるはずの描写が欠落しているからです。 加害者の犯行へ至るまでの経緯が読後感に大きな影響を及ぼす事って多々ある訳ですから・・・ |
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ミステリではないかもしれない。最後どんでん返しがある訳でもない。
でも、道尾さんらしい作品です。 作品全体を通して、道尾作品らしい窒息しそうな重苦しい雰囲気があります。 テーマは「嘘」ですかね。 正直この作品、何が嘘で何が本当かわからないです。 そして、それを象徴するのが作品タイトルにも関連する「ゾウを飲み込んだウワバミ」のくだり。読中頭から離れません。 悪意のある嘘、相手を思いやっての嘘、嘘にも色々あります。 何気に発した言葉が、思い込みや迷い、誤解を生み予想外に相手に重くのしかかる事があります。 それが思わぬ事態を生み、取り返しの付かない最悪の局面を迎えてしまう。 皆が自分のせいではと恐怖する。窒息しそうな苦しみを皆抱え込み、吐き出す事ができずに、じっと光が射すのを待つ。 登場人物中、光が射し込んだのは彼女だけか。 とすると、あれも嘘、これも嘘だった事になるけど・・・ 「龍神の雨」もそうだったけど、恐ろしいようで普通に有り得る話。 こういうの描かせたら上手いなぁ。 |
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ロシア革命やロマノフ王朝の事を全く知らなくても読めます。
しかし、ロシア・ロマノフ王朝崩壊にまつわる謎という歴史ミステリーであり、大半の読者には馴染みの薄いテーマではないかと思われます。 ウィキペディアなどで「アナスタシア」に関して少しでも前知識を入れた状態で読まれたら面白味は倍増するのではないかと思います。 私は、読書前半でこれは史実に基づいて描かれた作品では・・・と色々検索しました。正解でした。 御手洗・石岡コンビが登場しますが、ある地味な歴史的史実に対する考察本ですので、従来の御手洗シリーズを期待した読者には期待外れになってしまうかもしれませんね。 確かに御手洗シリーズ異端作と言えますが、違和感を感じたまま読み終えたとしたら、何か勿体無い気がしますね。 史実と空想を、作者らしい豪腕で見事に融合させていますよ。 エピローグが、読後感を一気に引き上げています。 そのエピローグ、特筆できる内容って訳ではないのですが、そこまでの話がかなり暗く、悲しい話ですので・・・ |
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作者である奥田氏の自叙伝的小説のようだ。
自叙伝的小説の中には、余りにもその人生が一般と比較すると異端で、共感できるどころか、そんな生き方格好いい的な描写に虫唾が走る作品も多いのだが、この作品は違います。 いつの時代もありそうな事という印象で、誰にでも共感できるのではないだろうか。 特に私の場合は、同世代という訳ではないが、僅か6,7年程度のずれなので、この作品に登場する出来事、事件等は全てリアルタイムで経験しているのが大きかったかもしれません。 しかも、そのディテールが細かいのがまた嬉しい。 時代的にも、生き方にも共感できたという事になりますね。 浪人→上京→大学生活→中退→就職→独立 18歳から20代、確かにこの10年強は、親との関係性もそうだけど、人間関係に目まぐるしい変化がある期間でもあります。 章立てされていますが、各章毎に登場人物がガラッと変わっているのが、そこをよく表せているように思えて、そのリアルさが妙に気に入っています。 結婚を含めていないのがいいですね。 来るべき30代に色々な可能性を連想する事ができますからね。 30歳を前にして「人生これから」なんて言ってたら「何、悠長な事言ってるの」って怒られるかもしれない。 主人公が親しい関係になった女性も、章毎に異なっており、以前の女性の話題など微塵も登場しない。 この辺りは、男の私にはよ~く分かるのですが、女性からは理解を得られないかも知れないですね。 |
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ジョーカー・ゲームに続くD機関シリーズの第2弾。
前作同様、各章が独立した短篇集であるため、このダブル・ジョーカーを先に読んでも大きな問題こそ無いですが、個人的にはやはりジョーカー・ゲームを先に読んだ方が数段楽しめると思っています。 というのも、今作は視点が敵対組織などD機関の外にあるからです。 外側から見たD機関、つまりは敵対組織の追い詰められる様が描かれる訳で、これはこれで大変面白いのですが、「D機関とは」「結城中佐とは」を理解した上で読んだ方がやはりよいでしょう。 まず今作では、結城中佐が余り登場しませんからね。 前作を読んだ方には、登場しなくとも、そこに結城中佐の影を感じたり出来るでしょうが・・・ 今作では、結城中佐の過去や、D機関の完全無欠でない部分も描かれます。 D機関から人間味を感じる事ができたのは意外な展開で、そこからはまた独特の美学といったものも感じる事ができます。 ただ作品の面白さという意味では、やはり前作の方が上でしょうか。 |
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壮絶醜女が整形により絶世美女に変貌を遂げ、ある目的を果たすという物語だと思ったのだが・・・多分違う気がします。
その目的が、復讐にしても恋愛にしても、壮絶な整形手術の繰り返しの描写に比べて、その成就の描写が明らかに中途半端です。 恐らく、そこには作者の主眼はないのではないでしょうか。 中村うさぎさんは、解説において「本書は女の成り上がり物語」などとのたまっておられるが、違うと思うなぁ。 この物語にはおおよそ4種類の人間が登場します。 ブスと美人と、ブスを蔑む連中と美人に媚び諂う連中です。 ブスと美人が核となります。 普通であればブスに肩入れしそうなものですが、この作品では、そのブスと美人が同一人物で主人公になります。 美人の傲慢さやわがままっぷりは当然描かれますが、変身前の人間的醜さもしっかり描かれています。 ブスで可哀想というより、卑屈すぎて同情するに至りません。 正直醜いです。 まぁ何れにせよ結局は同一人物な訳ですから、感情移入できませんし、多分してはいけない存在なんだろうなと思いながら読みました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者自身が解説されているように、これまでの伊坂氏の作品と比べると、「機知に富んだ会話」「凝ったプロット」「練られた伏線」「他作品とのリンク」といった持ち味とも言えるレトリックが殆ど見受けられず、でいて、ある意味不思議な世界観がファンタジーで非常に難解という・・・
しかも、シェークスピアの某作品をオマージュしており(多分)、読んでいないとそれが上手いのかすら皆目見当がつかない。 確かに賛否が分かれそうな作品ですね。 ただ、らしくないようでいて「らしい」と思いましたけどね。 伊坂さんにしか描けないような気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「麦の海に沈む果実」の続編。
「麦の海」のラストで覚醒した理瀬のその後という事で期待は大きかったのですが、少々肩透かしを食らった感じ。 高校生になった理瀬は、「あっち側」=暗黒の人生を生きていく事が運命づけられ、自身もそれを受け入れており、「こっち側」の世界の人間達とは一線を画すというスタンスこそ垣間見えるのですが、まだまだ純粋な少女の一面が残っていて、過渡期という感じでしょうか。 周りには黒い人間(黒いのは何故か女性ばかり)がやたら多いようですが・・・ 恩田さんの作品には、性悪な女性が数多く登場する中、前作の黎二といい、今作の雅雪といい、男性陣には好キャラが多いですね。 このシリーズだけでなく「夜のピクニック」も確かそうだった記憶が・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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