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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数236件
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古典部シリーズの3作目。
奉太郎の一人称だった前2作と異なり、今作は古典部メンバー4人で視点をまわしていくスタイル。 冷静で堅物?な奉太郎の主観のみで語られるのではなく、それに学園祭って事もあってこれまでより明るい雰囲気。 今作も謎を解くのは奉太郎だけど、今作の謎解き自体余り論理的とは言えない内容で、里志、摩耶花が主役って感じもします。 前2作よりハチャメチャ感もあって、こっちの方が好みですね。 謎解きのミスリードのひとつに、シリーズ過去作品を読んでいないとミスリードにならないものがありますね。 なので、やっぱり順番に読んだ方がいいでしょうね。 サブタイトルにもなっている十文字事件はクリスティのABC殺人事件を下敷きにしています。 ほんとに偶然なのですが、この作品の2作後にABC殺人事件を読んだという・・・ 逆だったらもっと面白く読めたかも知れません。 今回のテーマは「期待」ですかね。 ただ「期待」の裏には「絶望的な差」があるって事みたいだけど、これにはちょっと納得しかねるかな。 それにタイトルの意味がイマイチ分からないです。何故クドリャフカ? |
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タイトルだけ聞くと、あの「城シリーズ」を想起させ嫌な思い出がよぎったが、当然そこまで破天荒ではない。
有栖川有栖の館シリーズって事だが、当然あの「館シリーズ」のような派手さはない。 やはり有栖川有栖は有栖川有栖なのだ。派手なタイトルの割にやはり地味だ。 火村シリーズの短編集。 火村シリーズはどこか淡々としていて静のイメージ、江神シリーズと比べると退屈な作品が多い印象だから、短篇集の方が切れがあるようには感じた。 でも、やっぱりこのシリーズはその退屈なのがいいんだわ。大人二人が繰りなすあの「正統派本格」っていう雰囲気がね。 だからたまに読みたくなるんですよね。短編だと若干その良さが殺されてるかな。 6編ありますけど、ロジック勝負の作家さんですからね。 「バカヤロ~」ってのと「こんなモン分かるかい」ってのが1編ずつありましたけど、残り4編はまずまずかな。 |
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このシリーズの最高峰「容疑者Xの献身」以後に出されたシリーズ短編作品。
「容疑者~」のラストで初めて人間臭い姿を晒した湯川学を人間臭いまま登場させるあたりよく出来ています。 なので、この作品は一話完結をなす短篇集といえど「容疑者Xの献身」の後に読むべき作品といえますね。 また、この作品より内海刑事が登場したりとテレビシリーズの人物造形に合わせてきています。 「探偵ガリレオ」の湯川のモデルは佐野史郎、「ガリレオの苦悩」の湯川のモデルは福山雅治って事です。 そこまでの変化は感じないですが(笑) 「攪乱す」は長編で読みたかったな。 |
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このシリーズの弱点は、読み手がトリックを見破るのが難しいというところじゃないですか。
こちらが推理を組み立てる事が出来ないという事になれば、言わば一方通行と捉えられても仕方がない。 つまり専門知識を要するというですが、読み手はそれが机上の空論ぽくとも受け入れざるを得ないですからね。 私は理系出身ですが、このシリーズ読むといつもそうなります。 その点で、活字より映像の方が向いている作品といえるでしょうね。せめてイメージさせて。 あと総じて言えるのは、このシリーズ(容疑者Xは除く)の犯人には「心がない」ような印象を持てる事ですかね。 短篇集だから描き切れていないだけなのかもしれないのですがが、知的なヤツほど狡猾で怖い・・・個人的には意外に効果的かもと感じています。 |
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作家アリスシリーズの第一作。
ドタバタ冒険活劇となりがちな学生アリスシリーズと比べると大人のミステリという感じがしますが、その分相当に地味です。 派手な演出もなくロジックのみで読者に挑むという作者の姿勢はある意味立派、王道という感じ。 ただ、余程新鮮で面白みのあるトリックを持ってこないと、読者を驚かせるには至らないでしょうね。 個人的に叙述トリック作品が好きだという訳ではないのですが、やっぱり今読むと若干物足りなさを感じますね。 タイトルにある46番目の密室は結局謎のままですよね。 作品内で披露される密室殺人は特に目新しい感じはないですし、火村、アリスによる密室談義が繰り広げられる訳でもないですし、タイトルに惹かれたのであれば肩透かしを喰らうかも知れませんね。 |
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キャラ重視な短編集で設定勝ちじゃんとも言えるのですが、個人的には少しバランスが悪いかなと感じています。
朝永と鞠夫の関係性はいいかなと思うのですが、紅一点妹尾さんのキャラが、推理展開上役に立ちそうもないキャラで朝永に被っているかなと・・・ 彼女がもう少し切れ者なら三人のバランスが取れるかなぁとも思うのですが・・・ 心の声で、無能な朝永を扱き下ろしたりしたら面白いのになぁ。 「殺戮」はもとより「弥勒の手」や「探偵映画」が好きな私にとっては歓迎する作品ではないのですが(ドットジェイピーよりはマシ)、シンプルながら最後必ず驚かせてくれる絶妙なプロットを繰り出す我孫子さん。 この手の短編作品を描いてもしっかり安定してます。 突飛な設定ではあるのですが、推理小説という体裁は保っているので、ファンタジーでは終わっている作品ではないのが流石です。 |
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「硝子のハンマー」コンビが活躍する短編集。
「硝子のハンマー」「鍵のかかった部屋」と感想は同じで高評価とはなりません。 防災コンサルタントと弁護士のコンビってのは面白いと思うのですが、期待するコンビネーションを発揮してくれていません。 ドラマ化された作品。私は見ていないのですが、青砥のキャラは映像化を意識してのものなのかなぁ。どうもしっくり来ないです。 弁護士である意味があるのでしょうか? このシリーズは、近代の高度化したセキュリティ技術に対抗する密室看破を描いたものが多く、密室トリックというより泥棒ノウハウといった方が良い題材が多く、私のイメージする密室ものとは何かが違う気がしています。 まぁ榎本が泥棒?だから仕方ないのかも知れませんが・・・ そういう作品だと思って読んだら読めなくはないのかもしれない。 ただそれが(デフォルトのハードルをかなり高く設定してある)貴志祐介である必要はないように感じています。 このままでは、シリーズ化する程の魅力を感じないですねぇ。 |
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ラストでも犯人を明かさず終了するという作品で、ある意味読者への挑戦の趣向を取っています。
主に謎を解明していくのが、警察官とはいえ交通課勤務の被害者の兄です。 彼の推理ではなかなか核心を突くには至りません。そして読者に与えられる情報は断片的です。 そこに肉付け、関連付けする役目を担っているのが、今作ではお助けマンに徹している感のあるあの加賀です。 本来の加賀であれば「瞬殺」だろうなと思いつつ、「私には全てお見通し」視線で主人公をそして読者をゲームに誘っているように思えます。 予めこの趣向を念頭に練られたプロットのはずで、やはり回りくどく真相に対して遠回りしている印象は拭えません。 なので、物語本体の部分はイマイチです。 この作品の評価は「犯人当て」を委ねられた読者が、その趣向を面白いと思えるかどうかでしょう。 私は個人的に余り感心しません。 犯行に至るまでの犯人の心情など、本来必要であるはずの描写が欠落しているからです。 加害者の犯行へ至るまでの経緯が読後感に大きな影響を及ぼす事って多々ある訳ですから・・・ |
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ミステリではないかもしれない。最後どんでん返しがある訳でもない。
でも、道尾さんらしい作品です。 作品全体を通して、道尾作品らしい窒息しそうな重苦しい雰囲気があります。 テーマは「嘘」ですかね。 正直この作品、何が嘘で何が本当かわからないです。 そして、それを象徴するのが作品タイトルにも関連する「ゾウを飲み込んだウワバミ」のくだり。読中頭から離れません。 悪意のある嘘、相手を思いやっての嘘、嘘にも色々あります。 何気に発した言葉が、思い込みや迷い、誤解を生み予想外に相手に重くのしかかる事があります。 それが思わぬ事態を生み、取り返しの付かない最悪の局面を迎えてしまう。 皆が自分のせいではと恐怖する。窒息しそうな苦しみを皆抱え込み、吐き出す事ができずに、じっと光が射すのを待つ。 登場人物中、光が射し込んだのは彼女だけか。 とすると、あれも嘘、これも嘘だった事になるけど・・・ 「龍神の雨」もそうだったけど、恐ろしいようで普通に有り得る話。 こういうの描かせたら上手いなぁ。 |
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ロシア革命やロマノフ王朝の事を全く知らなくても読めます。
しかし、ロシア・ロマノフ王朝崩壊にまつわる謎という歴史ミステリーであり、大半の読者には馴染みの薄いテーマではないかと思われます。 ウィキペディアなどで「アナスタシア」に関して少しでも前知識を入れた状態で読まれたら面白味は倍増するのではないかと思います。 私は、読書前半でこれは史実に基づいて描かれた作品では・・・と色々検索しました。正解でした。 御手洗・石岡コンビが登場しますが、ある地味な歴史的史実に対する考察本ですので、従来の御手洗シリーズを期待した読者には期待外れになってしまうかもしれませんね。 確かに御手洗シリーズ異端作と言えますが、違和感を感じたまま読み終えたとしたら、何か勿体無い気がしますね。 史実と空想を、作者らしい豪腕で見事に融合させていますよ。 エピローグが、読後感を一気に引き上げています。 そのエピローグ、特筆できる内容って訳ではないのですが、そこまでの話がかなり暗く、悲しい話ですので・・・ |
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防災コンサルタント榎本、弁護士青砥コンビの密室犯罪を題材にした中・短篇集です。
気楽に読める作品ですので、読者にとっていい暇潰しになるとは思うのですが、作者にとってもこのシリーズは暇潰しなのでは・・・と感じてしまう、そんなシリーズです。 「黒い家」や「青い炎」と同じ作者の作品にはとても思えません。 完全に密室トリックが主眼となっており人間ドラマが描かれていないのです。 犯人は物語の前半で早々に明らかにされます。フーダニット要素は完全にゼロです。 それどころか、犯人が密室を作るに至った経緯や心理状態などもしっかり描けておらず、トリック解明に躍起な印象です。 そのトリックに関してもマニアック過ぎて、「凄い」ではなく「へぇ、そんな事が出来るんだ・・・で?」止まりです。 密室トリックモノが好きな読者にとっても面白い内容ではないのではないでしょうか。 青砥さんの存在意義もイマイチ不明で、完全にお笑いキャラになっています。 ギャグ作品と割り切る事ができれば楽しく読めるのかもしれませんが、やはりこの作者には「黒い家」や「青い炎」のような作品を期待してしまうので・・・ |
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作者の作品は3作目。
「扉は~」「水の迷宮」同様、限られた空間、限られた登場人物で繰り広げられる物語。 その中で、論理展開、謎の解明、そして自分達の中にいる犯人を見つけるという流れです。 しかし、この作品は前述の2作品とは少し違う。 それはハイジャック中に密室殺人が起こったという設定だという事です。 同じ事を感じられたレビュアーの方も多いようで、主要登場人物を除く本来大多数を占めるはずの人質の皆さんが人形扱い。 事件発生現場のスケールに見合わない。どこかマンガみたいです。 事件の背景にあるカルト思想の設定も、結局腑に落ちる形の説明がないので最早ファンタジーの世界です。 また、蚊帳の外にいるキーマン「師匠」に対する描写が圧倒的に足りないので、個人的に「変なおっさん」止まり。 なのでハイジャックの動機なども納得できるものではなく、知的面々の論理展開というより「変人の集い」になってしまっている印象です。 せめて犯行動機であるあの「奇跡」に対して、もう少し納得できる形での描写があれば、評価も変わっていたのですが・・・ |
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作者である奥田氏の自叙伝的小説のようだ。
自叙伝的小説の中には、余りにもその人生が一般と比較すると異端で、共感できるどころか、そんな生き方格好いい的な描写に虫唾が走る作品も多いのだが、この作品は違います。 いつの時代もありそうな事という印象で、誰にでも共感できるのではないだろうか。 特に私の場合は、同世代という訳ではないが、僅か6,7年程度のずれなので、この作品に登場する出来事、事件等は全てリアルタイムで経験しているのが大きかったかもしれません。 しかも、そのディテールが細かいのがまた嬉しい。 時代的にも、生き方にも共感できたという事になりますね。 浪人→上京→大学生活→中退→就職→独立 18歳から20代、確かにこの10年強は、親との関係性もそうだけど、人間関係に目まぐるしい変化がある期間でもあります。 章立てされていますが、各章毎に登場人物がガラッと変わっているのが、そこをよく表せているように思えて、そのリアルさが妙に気に入っています。 結婚を含めていないのがいいですね。 来るべき30代に色々な可能性を連想する事ができますからね。 30歳を前にして「人生これから」なんて言ってたら「何、悠長な事言ってるの」って怒られるかもしれない。 主人公が親しい関係になった女性も、章毎に異なっており、以前の女性の話題など微塵も登場しない。 この辺りは、男の私にはよ~く分かるのですが、女性からは理解を得られないかも知れないですね。 |
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ジョーカー・ゲームに続くD機関シリーズの第2弾。
前作同様、各章が独立した短篇集であるため、このダブル・ジョーカーを先に読んでも大きな問題こそ無いですが、個人的にはやはりジョーカー・ゲームを先に読んだ方が数段楽しめると思っています。 というのも、今作は視点が敵対組織などD機関の外にあるからです。 外側から見たD機関、つまりは敵対組織の追い詰められる様が描かれる訳で、これはこれで大変面白いのですが、「D機関とは」「結城中佐とは」を理解した上で読んだ方がやはりよいでしょう。 まず今作では、結城中佐が余り登場しませんからね。 前作を読んだ方には、登場しなくとも、そこに結城中佐の影を感じたり出来るでしょうが・・・ 今作では、結城中佐の過去や、D機関の完全無欠でない部分も描かれます。 D機関から人間味を感じる事ができたのは意外な展開で、そこからはまた独特の美学といったものも感じる事ができます。 ただ作品の面白さという意味では、やはり前作の方が上でしょうか。 |
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