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マッチマッチ さんのレビュー一覧
マッチマッチさんのページへレビュー数145件
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この方の作品は本当に読み易い。
あっという間に読み終えることが出来た。 テーマの割には小難しいことも無く、そういう意味では、お手軽な社会派ミステリーというところですか。 ストーリーのメインは、死刑執行された殺人犯三原響子の「約束は守ったよ、誉めて」という最後の言葉。この言葉の意味を求め、響子の遠縁に当たる吉沢香純が追求するというお話し。 読み始めてすぐに、20年ほど前に起こった秋田児童連続殺人が思い出された。巻末の参考資料を見てみると、この事件に関する書籍が挙がっていたので、著者が参考にしたのは間違いないようだ。 ウィキで調べてみると、この事件の犯人である畠山鈴香は無期懲役で確定しているのですね。 本書では死刑になっていますが、そこが違っているだけで、響子と鈴香は似たような環境設定で描かれています。 それで思ったんだけど、死刑になった響子は、今の日本の司法制度で果たして本当に死刑になるのだろうか?という疑問。 彼女の生い立ち、境遇、壮絶なイジメ被害。実の娘を殺した動機の不明確さ。これらを勘案すると、鈴香と同様無期が妥当なところではないだろうか、と思ってしまう。 確かに本人や母親が一切のいじめを認めないとの設定では描かれてはいるが、調べれば調べるほどこういう事実は浮かび上がって来るもの。 いかにも死刑という結論ありきで、辻褄を合わせたような都合よい設定。 この小説は「死刑を執行された」という大前提が無いと、筋書きが成立しないから、こういう荒業を使ったのかなと邪推してしまう。 当方にとってそこが大きなマイナスポイントになってしまった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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まずはミステリー小説では無いことははっきり確認しておきたい。
子ども目線で書かれたエンタメ小説ですね。 主人公は元過激派の父を持つ、小学6年生の二郎。 特に第1部は、特異な過去を持つ父親に振り回されながらも、成長していく二郎の青春小説です。 ちょっと過激な思想的描写も見られるが、十分に児童書として子供にも読まれていいと思います。 第2部は、その親子が西表島に移住して生活するお話。 地元民との交流、環境問題に関わる市民団体との軋轢など、バタバタと物語が進行します。 とにかく展開が速くて、面白いのは間違いない。 肩肘を張らずに、気軽に楽しめる1冊ですね。 息抜きにどうぞ。小中生にもいいと思います。 |
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これは暇つぶしに持って来いのお手軽本ですね。
町村合併で新たに生まれた「ゆめの市」という架空の市を舞台にして書かれた群像劇です。 イメージ的には、街の郊外にイオンのショッピングセンターが唯一あるような中規模の街でしょうか。 「ゆめの」ではあるが、全く「夢の」見えない街、という設定です。 真面目に読むと日本の地方都市が抱える様々な問題、「貧困」・「福祉」・「介護」・「就労」・「公共事業」・「高齢化」・「過疎」等をえぐる社会派小説の一面も垣間見えます。 でも、この本はそんなに真面目に読む必要は全くありませんね。 サクッと読んで、笑い飛ばして良いのでは無いでしょうか。 5人の登場人物にはそれぞれ味があります。彼らの行動・思考・発言が、我々そのものの見本のようであり、まさに鏡のような存在。滑稽であり、憎めない。 著者の少し毒を含んだ皮肉が、妙にとても愉快。思わず笑ってしまいます。 そんな感じで読めば、楽しくあっという間に読み終えます。 この5人の登場人物は、最後にどこかで収束するのかなと考えながら読み進めていましたが、確かに最後はあの形で収束しました。 本当にぐちゃぐちゃで、題名通り「もう無理!」というEndです。 ただ当方としては、ちょっと「無理やり」収束という感もあるので、敢えてそれぞれ単独で結末を迎えても良かったのでという気もします。 「夢の」見えない街だからこそ、一人ぐらいは明るい希望の夢が見えても良かったかもしれません。 アマゾン評価4点の下という所でしょうか。 |
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いかにも、この都合よい筋書き。
旦那に瓜二つの中国人⁈ お金持ちで認知症気味のおばあちゃん⁈ そして、いくらDV旦那って言っても、普通、殺す前に警察への相談だろ⁈ でもこれらの重要なピースが無いと、この小説の筋書きは成立しない。 だから、いくら本書がご都合主義って言っても、これらのピースは必然であり、かつ善なのである。 よって、都合よく善なるピースを組み込まれて書かれた本書は、すこぶる面白い。 特にラスト数ページのスリル感は、満点ですね。 無事逃げ切れるのか、それともラスト1行に悲劇が待ち構えているのか、このドキドキ感はこの小説の醍醐味です。 お見事です。 ではなぜにアマゾン評価の5点。当サイト評価9・10点にならないかというと、やっぱり善なるピースが、余りにも都合良すぎ、また事件が安直すぎるあるからである。 でもそこを無視して読めば、面白く一気読みでしょう。よって、アマゾン評価4点の当サイト評価8点にした。 |
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私の好きな所謂「警察ミステリー小説」。その王道のような作品。
祖父・父・子の親子三代に渡る警察官の物語。 まさに「警官の血」タイトルそのものです。 上下2巻で、読み応え十分ですね。しっかり楽しめました。 祖父清二、父民雄、子和也、それぞれに独立したストーリーが描かれているが、鍵となるのが駐在員だった祖父清二の謎の転落死。 この謎が未解決のまま物語は父、子と進んでいく。 読者は、それぞれの警官のストーリーを楽しみながら、この転落死の謎を解くための伏線を見つけるという別の楽しみを得ることが出来る。 そういう面で、この小説はダブルの相乗効果で、秀逸の面白さがあった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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まさに日本の高度経済成長期の頃のお話。
特に東京オリンピックが開催され、東海道新幹線開通した昭和39年は、この時代の輝かしいシンボル的な1年であったであろう。 本書は、その成長期の光と影に焦点を当てた長編社会派エンターテイメント小説という位置づけが適切だ。 原稿用紙1400枚ということだから、相当なボリュームがある。しかし単純な社会派小説ではないので全く重苦しくない。それどころか、エンタメ感満載で気楽にサクサク読める。 さらに、この時代の懐かしい世相もタップリ盛り込まれ、思わず笑いがこぼれる。この著者は、「罪の轍」でも感じたけど、この時代を非常に上手に描き切っているように思える。 調べたところ奥田氏は1959年生まれということだから、東京オリンピック開催年の1964年の時は5歳児であったわけで、結構研究されたんでしょうね。それに心理描写も上手だし、お見事ですね。 しかしこう書いてしまうと、なんだかお気軽エンタメ娯楽作品のようになってしまうけど、実際はとても哀しいお話です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読み終わって分かったこと。
この作品、第67回江戸川乱歩賞作品らしい。うーん、なるほど。 本冊の最後に、選考経過と5名の選考委員の選評が記載されていた。 元々のタイトルは「センパーファイ …常に忠誠を…」。確かにこのタイトルではピーンと来ないし、読み終わった後に「何故、このタイトル⁈」と疑問符が付いてしまう。 刊行時の改題されたタイトルは、この「北緯43度のコールドケース」なのだが、正直当方、読後、この意味が分からなかった。 それで調べてみると、「コールドケース」というのは「未解決事件」という意味があるんですね!納得です。やっと腑に落ちました。 そして、読後にこの5名の選評を読んだのですが、共通する弱点「序盤の書き方の不親切さ、順番が不整理、体裁が整えられていない、時系列等の拙さ、読みにくい、小説が下手」との辛辣な意見が書かれていました。 しかし、それでもこの作品が受賞したということは、当然、その問題点は修正出来ることであり、その弱点を上回るほど内容が秀でていたからでしょう。 それを踏まえての当方の感想なんですが、問題点を修正されて刊行された本書、結構面白かったです。 北海道警の未解決誘拐事件を扱った警察ミステリー小説なのですが、登場人物が十分に肉付けされていて、厚みがあります。 道警内部の抗争、未解決誘拐事件、天狗岳事件、これらが絡み合って物語が進行します。 そして、主人公の女性警察官が捜査資料漏洩の生贄になりそうな辺りから、グーンと面白さアップです。 逆に言うとこの辺りがピークかもしれませんね。 この小説は、事件の真相を明らかにしていくミステリ―小説としての面白さより、登場人物の生い立ち・背景・人間関係のデティールを楽しむ小説だと思います。 事件の顛末としては、ツッコミどころ満載です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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結構話題の小説なので読んでみた。
読み始めてすぐに、『これは典型的なクローズド‐サークル小説。当方があまり好みとしていない「犯人は誰なのか」という謎解き小説』であると思われた。 結局そう思って読んでいると、正直それほど面白いという感じはない。所謂どこにでもある謎解き小説のレベルである。 強いてあげれば、「犯人を見つけ、その犯人を生贄にして自分たちが生き残るという行為」が道義的に許されることなのかを、それを問う社会派小説という見方もできる。 しかしそうであるならば、登場人物たちの心情の描き方が弱い。ただ、バタバタと犯人を見つけようと思考しているだけ。なにか中途半端なままである。 そしていよいよ犯人が明かされる。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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350ページ程の中編だけどコンパクトに仕上がっており、十分に楽しめました。
これは著者のデビュー作ですか。デビュー作がこのレベルだと、当時相当期待されていたのでは? 自身の過去のレビューを調べてみると、この方の作品を結構な冊数読んでました。そして、最近読んだ「赤い砂」以外は評価も高い。8点と9点ばっかりですね。この方の作風は私の嗜好にピッタリはまっているのかもしれません。 主人公の元刑事尾木には、いずれ本物の虹を見つけそこを渡って欲しいな、と思わせるどこかホッコリするような小説でした。気軽にあっという間に読み終えます。お勧めします。 |
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この著者は初読みでした。
読後調べてみると、「法医昆虫学捜査官」のシリーズで結構有名な方なんですね。恥ずかしながら、当方知りませんでした。 されど、以前、某新聞の書評で紹介されていたので本書を手にした訳ですが、十分に楽しめました。 服飾ブローカー(仕立て屋)という設定の主人公が、その職業的知識を活かし、十年ほど前に殺害された少女の身元を追いかけ、事件の真相を明らかにするというお話です。 こうした特殊な職業を持った一般人がスーパー探偵ごとく活躍し事件を解決するというお話は、ちょっとハズレが多いんだけど、今回は当たりの部類ですね。 ※そう言えば少し前に読んだ「紙鑑定士の事件・・・」というのがちょっと大外れだったので、余計に目立ちました。 主人公がその造詣の深さで、少女の服1枚から様々な情報を得、推理する過程が、本書の読みどころですが、著者は十分な知識と裏付けでこれを書いており、説得力がありました。 まあ、しかし、説得力はあっても、当然、実際はそうは行かないだろうというのは、常にあります。 要するに余りにも都合よく行き過ぎのは、否めない。しかし、本書はそれも含めて楽しめたらいいと思います。 主人公以外の登場人物のキャラも立っていたので、何となくシリーズ化されそうな予感を感じさせる一冊でした。 |
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この著者は初読みです。
サイト内評価が高いので、手にしました。 とんでもなく分厚いですね。読み始めても、なかなかストーリーの全貌が見えて来ない。300ページ程読み進めて、やっとバラバラだった事件に、関連した手掛かりが見えて来る。 そういう面では、とにかく話がしつこいと言うか、くどいです。そして、その執拗な書き込みこそが、本書の醍醐味なんでしょうね。いわゆる、癖になりそうな味付けです。 タイトルや表紙の絵から連想するようなホラー感や恐怖感は一切感じられません。 それどころか、探偵役の京極堂と関口を含めたそのお仲間達との会話は、一種の喜劇のような面白さで、思わず含み笑ってしまうほどです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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宗教色がかなり濃い作品です。著者が真面目に宗教に対峙して書き込んでいることが伺え、また、作品の後半には新興宗教の題材も記載し、そういう面では一種の社会派小説の側面もあるかもしれない。
といっても、ガチガチにクソ真面目で、面白くも何ともないということは一切無く、当方も一気に読み終わったように娯楽色も十分にあり、楽しむことが出来た。 ラスト近辺における主人公実藤と謎の作家水名川泉との激烈な対峙。ここで多くの宗教用語が飛び交うが、知識の無い方にはやや難解である。しかし、深い意味は分からなくてもスイスイ読み進めることが出来、これこそ著者の筆力の確かさであろう。 ただし、題材のせいもあるのか、読後感は余り良くない。何か夢の無い結末であった。 しかしながらこの小説を俗物的な見方で読み、出版社の編集者が良い作品を求めて偏執的に葛藤する姿をギャグにした業界小説と見なせば、笑い話で済ませることができそうと思うが、著者には失礼かな(笑) ▼以下、ネタバレ感想 |
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真面目な戦争小説です。
ちょっとタイトルが安っぽく、少年向け漫画のタイトルの様だけど、しっかり骨太に書かれています。 後書きの解説を読むと、どうも著者のデビュー長編作らしい。 参考文献も多数明示されており、第二次世界大戦の独ソ戦について、入念に勉強されたことが伺える。 そのことが、本書の細部にリアリティー感を与え、戦争の苛酷さ卑劣さを読者に明白に晒してくれた。次回作を期待させる新人作家さんだと思う。 やむなき事情からスパイナーとなった一少女が成長していく一種の冒険小説なので、驚くような展開があったり、ミステリックなオチがあるわけではありませんが、スピード感もあり、あっという間に読み終えることが出来ます。ただし、ワクワクするような面白さを一面に挙げたエンタメ小説ではないので、それは期待しない方が良い。それも加味して良品です。 最後にこの小説を読みながら、今ウクライナで起こっている惨状に深い憂いを感じています。人類というのは、常に同じ過ちを犯すものなんですね。 |
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