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マッチマッチ さんのレビュー一覧
マッチマッチさんのページへレビュー数78件
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短編集である。
当サイト内で偶然に見つけ手にする。著者初読み。 大正から昭和初期にかけての動乱期に、男女が織りなす綾を描いた小説。 ミステリー小説らしからぬ格調高き文体で、文学的に書かれてはいるが、これは歴然としたミステリー小説である。 特に表題の短編「戻り川心中」では、冒頭での歌人「苑田岳葉」についての解説が、まるで実在する歌人であるかのように描かれ、騙し絵のように騙される。 「ひと枝の花をかたみに逝く春を雲間のかげに送る夕月」…ただ初期の作品は、表面的な物象にとらわれ、才に溺れすぎ、現在では大した評価を受けていない。 うーん、著者が詠んだ作中歌なんだ。そしてそれを著者自身で解説する。 「明日はまた涸れぬ命をつかの間の朝陽に結び蘇る花」「世の中は行きつ戻りつ戻り川 水の流れに抗ふあたはず」 こんな感じで、なかなか本格的。著者紹介に早稲田大卒と書かれていたので、Wikiで調べてみたら文学部ではなく政経学部卒なんですね。意外でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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履歴を見ると、著者の青山七恵氏は2007年第136回芥川賞受賞、2009年第35回川端康成文学賞受賞とある。しかも受賞時の年齢は20代前半。お若い!
とは言え、当方全く知らない。 なのに何故本書を手にしたかというと、本年8月頃、愛読している日経新聞の書評欄でこの小説が紹介されていたからである。 当方、未読本の書評は出来るだけ避けるようにしている。もちろん、オチを想像してしまうことを避けるためだ。 日経の土曜日の書評ページは、基本的にお堅い書籍・専門書が多数である。ただ、たまにはこうした娯楽的な小説も取り上げられる。 という事情でついつい軽く読み流してみると、「不穏な気配」というフレーズが目に飛び込んできた。 これは大好きなフレーズである。 ということで、今回、手に入れ読んでみた訳である。 さて、主人公の猪瀬藍は37歳で独身の作家だ。 思い立ち、やっとのことで購入した中古の1LDKマンション。 ここからなにやら怪しげなことが起こってくる。 マンションの売主小林家は、妻と夫と小さな二人の娘の4人家族。 主人公がマンションを購入後、しばらくしてから、この娘たちがマンションを訪問してくる。 さらにしばらく経つとその母親まで。 うーん、その目的というか意味は? そしてさらに時が進むにつれ、藍は小林家の新居を訪問するようになり、歓待される藍は、ついには連泊するまでになる。 いやいや確かに不穏である。 不穏・不思議と言えば、この小林家の夫。目立たないようではあるが、何か秘密が? 娘たちも可愛いんだけど、藍に懐いているようで懐いていない。 主人公の藍も何やら頼りないし、小林家の妻の歓待は、無償の愛なのか。 うーん、なにやら本当に不穏である。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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文庫本の解説を読んでみると、本作の初稿完成時期が1995年12月となっている。
今から約30年前で、阪神淡路大震災があり、オウム真理教による地下鉄サリン事件があったあの頃である。 果たしてあの頃に、巷でVR(仮想現実)の話題が上がることはあったであろうか。 本書では、終盤の犯人とのやり取りが、カートに乗ってVRで行われる。この辺りは凄く新鮮。30年ほど前の小説とは思えない新しさだ。 AI(人工知能)についての記述は無かったが、その初歩的発想のロボットも出てくる。 著者の履歴を調べてみると、執筆当時は現役の名古屋大学工学部助教授。うーむ、これはバックボーンが全く異なる。 こういう肩書でありながら、こうした大衆向けの娯楽小説が書けるわけだ。その当時、著者は大学でどのような趣向で学生に講義していたのだろうかと、色々と想像してしまう。 さてそういうことを含めて、本書のミステリー本としての感想だが、内容的にはクローズド・サークルのミステリー小説であった。 当方、基本的に、この手の謎解き本格物というものは、余り好みでは無い。 しかしながら、今回は妙に楽しく読ませて頂けた。理系ミステリーを標榜するだけあって、ややマニアチックな用語や数値が頻出したが、さほど苦にはならなかった。 謎解きの説明も、そこそこに納得できた。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「サスペンスミステリー」というキーワードで、引っかかった作品。
でもこれは、ミステリー小説でも無ければサスペンス小説でも一切ありません。 少年犯罪に関わった4人家族の揺れ動く心理を扱ったリアルな家族小説です。 登場人物は、設計事務所を構える夫、校正の仕事を請け負う妻、サッカー部を怪我で辞めた高校生の兄、高校受験を控えた中学3年生の妹の4人。 あらましは、兄が行方不明になり殺人事件という少年犯罪に関わっていることが判明。数限られた情報から、兄が事件の加害者であるか殺されてしまった被害者であるのか、その2者択一。 こうした状況下で、夫・妻・妹は、兄が加害者と被害者のどちらであることを望むのか、この心理の様をリアルに事細かく描いていく。 特に長男である兄のことを考える夫と妻の心理の対比はリアルです。 ストーリーはほぼ最後までこの描写が続きます。これを良しとするか悪しとするかは、読み手の年齢・家族構成によっても違うでしょうね。 また、この小説をミステリ本と思って手にした方は、正直、何の面白味も感じなかったでしょう。 当方は結構、夫や妻の思考・心理にそれぞれ同調でき、考えさせられました。 まあ、しかし、最後は親の立場として、見舞いに来た妻の母親がアドバイスした考え方が、道理でしょう。 読み手の立ち位置によって評価が分かれる本と思います。 私はある程度高評価のアマゾン評価4点にしました。 |
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「サイコミステリー」という検索ワードで引っ掛かった小説。
しかし、サイコというほどの内容ではなかった。まあ、エンタメ感たっぷりの警察小説というところでしょう。 と言っても、王道の警察小説に見られる重厚さは一切無い。 軽くてスピード感たっぷり。リアルには拘らず、筋書きの細かい齟齬にはお構い無く、娯楽色を全面に打ち出してストーリーが展開する。 だから、面白さは抜群。文庫本で400頁少々だが、あっという間に読み終える。 そして、事件の真相も影の主犯も、主人公の女性刑事姫川の直感で炙り出される。 ただし、これを良しとするか否かは読み手次第。 ※当方にとっては正直物足りない。娯楽だけに拘ればこれでもいいんだが、、、 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これって3部作だったんですね。
当方基本的に事前情報なしで、読み始めるので途中で気付きました。 あとがきにも、第1作の失踪症候群から読むべしと推奨されていましたが、確かにそうでしょうね。 第1作から出ている登場人物の背景が分かれば、より、ストーリーに深みが出てくる。 まあ、とは言え、本作だけでも十分に楽しめました。 少年や精神疾患者の起こした重大事件に関わる社会派小説という体ですが、エンタメ感も十分です。 700ページ超ですが、それほど重くない。結構、あっさり読み終えます。 展開的には、犯罪被害者の復讐を請け負う職業殺人者とそれを追いかける非合法警察組織。そして、それと同時並行に進行する不可思議な交通事故死。 後者は、現役の刑事が、臓器移植のドナー獲得のための殺人と見立てて捜査する。 要するに、この2つの事件がどう絡んでいくかが、本書の読みどころ ▼以下、ネタバレ感想 |
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湊氏が「イヤミスの女王」と言われる所以のような小説ですね。
灰汁が強いです。故に癖になりそうな味付けで、後を引きそうです。 ただ、後を引くなら、最後まで徹底して引いたままで終わって欲しかった。 終章の二人。明るく明日を向いて、前向きに終わっている。 この終わり方が、却って中途半端ですね。 この小説の構成なら、明日への希望や夢は不要でしょう。 ところでこの小説、イヤミスとは言っても、ミステリー要素は殆どありません。 都合よく人が死に、こじつけのように美少女殺しの犯人の正体が分かります。 驚きなど全くありません。 ポイントはイヤミスの「イヤ」の部分。 ここは面白い。痛快なほどに、人間の負の思考を晒しだします。 ここが面白いので、読みだしたら止まらない。 あっという間に読み終えます。 そういうこともあり、ミステリー部分では低評価ですが、総合的にアマゾン評価の4点にしました。 |
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この方の作品は本当に読み易い。
あっという間に読み終えることが出来た。 テーマの割には小難しいことも無く、そういう意味では、お手軽な社会派ミステリーというところですか。 ストーリーのメインは、死刑執行された殺人犯三原響子の「約束は守ったよ、誉めて」という最後の言葉。この言葉の意味を求め、響子の遠縁に当たる吉沢香純が追求するというお話し。 読み始めてすぐに、20年ほど前に起こった秋田児童連続殺人が思い出された。巻末の参考資料を見てみると、この事件に関する書籍が挙がっていたので、著者が参考にしたのは間違いないようだ。 ウィキで調べてみると、この事件の犯人である畠山鈴香は無期懲役で確定しているのですね。 本書では死刑になっていますが、そこが違っているだけで、響子と鈴香は似たような環境設定で描かれています。 それで思ったんだけど、死刑になった響子は、今の日本の司法制度で果たして本当に死刑になるのだろうか?という疑問。 彼女の生い立ち、境遇、壮絶なイジメ被害。実の娘を殺した動機の不明確さ。これらを勘案すると、鈴香と同様無期が妥当なところではないだろうか、と思ってしまう。 確かに本人や母親が一切のいじめを認めないとの設定では描かれてはいるが、調べれば調べるほどこういう事実は浮かび上がって来るもの。 いかにも死刑という結論ありきで、辻褄を合わせたような都合よい設定。 この小説は「死刑を執行された」という大前提が無いと、筋書きが成立しないから、こういう荒業を使ったのかなと邪推してしまう。 当方にとってそこが大きなマイナスポイントになってしまった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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まずはミステリー小説では無いことははっきり確認しておきたい。
子ども目線で書かれたエンタメ小説ですね。 主人公は元過激派の父を持つ、小学6年生の二郎。 特に第1部は、特異な過去を持つ父親に振り回されながらも、成長していく二郎の青春小説です。 ちょっと過激な思想的描写も見られるが、十分に児童書として子供にも読まれていいと思います。 第2部は、その親子が西表島に移住して生活するお話。 地元民との交流、環境問題に関わる市民団体との軋轢など、バタバタと物語が進行します。 とにかく展開が速くて、面白いのは間違いない。 肩肘を張らずに、気軽に楽しめる1冊ですね。 息抜きにどうぞ。小中生にもいいと思います。 |
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これは暇つぶしに持って来いのお手軽本ですね。
町村合併で新たに生まれた「ゆめの市」という架空の市を舞台にして書かれた群像劇です。 イメージ的には、街の郊外にイオンのショッピングセンターが唯一あるような中規模の街でしょうか。 「ゆめの」ではあるが、全く「夢の」見えない街、という設定です。 真面目に読むと日本の地方都市が抱える様々な問題、「貧困」・「福祉」・「介護」・「就労」・「公共事業」・「高齢化」・「過疎」等をえぐる社会派小説の一面も垣間見えます。 でも、この本はそんなに真面目に読む必要は全くありませんね。 サクッと読んで、笑い飛ばして良いのでは無いでしょうか。 5人の登場人物にはそれぞれ味があります。彼らの行動・思考・発言が、我々そのものの見本のようであり、まさに鏡のような存在。滑稽であり、憎めない。 著者の少し毒を含んだ皮肉が、妙にとても愉快。思わず笑ってしまいます。 そんな感じで読めば、楽しくあっという間に読み終えます。 この5人の登場人物は、最後にどこかで収束するのかなと考えながら読み進めていましたが、確かに最後はあの形で収束しました。 本当にぐちゃぐちゃで、題名通り「もう無理!」というEndです。 ただ当方としては、ちょっと「無理やり」収束という感もあるので、敢えてそれぞれ単独で結末を迎えても良かったのでという気もします。 「夢の」見えない街だからこそ、一人ぐらいは明るい希望の夢が見えても良かったかもしれません。 アマゾン評価4点の下という所でしょうか。 |
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まさに日本の高度経済成長期の頃のお話。
特に東京オリンピックが開催され、東海道新幹線開通した昭和39年は、この時代の輝かしいシンボル的な1年であったであろう。 本書は、その成長期の光と影に焦点を当てた長編社会派エンターテイメント小説という位置づけが適切だ。 原稿用紙1400枚ということだから、相当なボリュームがある。しかし単純な社会派小説ではないので全く重苦しくない。それどころか、エンタメ感満載で気楽にサクサク読める。 さらに、この時代の懐かしい世相もタップリ盛り込まれ、思わず笑いがこぼれる。この著者は、「罪の轍」でも感じたけど、この時代を非常に上手に描き切っているように思える。 調べたところ奥田氏は1959年生まれということだから、東京オリンピック開催年の1964年の時は5歳児であったわけで、結構研究されたんでしょうね。それに心理描写も上手だし、お見事ですね。 しかしこう書いてしまうと、なんだかお気軽エンタメ娯楽作品のようになってしまうけど、実際はとても哀しいお話です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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結構話題の小説なので読んでみた。
読み始めてすぐに、『これは典型的なクローズド‐サークル小説。当方があまり好みとしていない「犯人は誰なのか」という謎解き小説』であると思われた。 結局そう思って読んでいると、正直それほど面白いという感じはない。所謂どこにでもある謎解き小説のレベルである。 強いてあげれば、「犯人を見つけ、その犯人を生贄にして自分たちが生き残るという行為」が道義的に許されることなのかを、それを問う社会派小説という見方もできる。 しかしそうであるならば、登場人物たちの心情の描き方が弱い。ただ、バタバタと犯人を見つけようと思考しているだけ。なにか中途半端なままである。 そしていよいよ犯人が明かされる。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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この著者は初読みでした。
読後調べてみると、「法医昆虫学捜査官」のシリーズで結構有名な方なんですね。恥ずかしながら、当方知りませんでした。 されど、以前、某新聞の書評で紹介されていたので本書を手にした訳ですが、十分に楽しめました。 服飾ブローカー(仕立て屋)という設定の主人公が、その職業的知識を活かし、十年ほど前に殺害された少女の身元を追いかけ、事件の真相を明らかにするというお話です。 こうした特殊な職業を持った一般人がスーパー探偵ごとく活躍し事件を解決するというお話は、ちょっとハズレが多いんだけど、今回は当たりの部類ですね。 ※そう言えば少し前に読んだ「紙鑑定士の事件・・・」というのがちょっと大外れだったので、余計に目立ちました。 主人公がその造詣の深さで、少女の服1枚から様々な情報を得、推理する過程が、本書の読みどころですが、著者は十分な知識と裏付けでこれを書いており、説得力がありました。 まあ、しかし、説得力はあっても、当然、実際はそうは行かないだろうというのは、常にあります。 要するに余りにも都合よく行き過ぎのは、否めない。しかし、本書はそれも含めて楽しめたらいいと思います。 主人公以外の登場人物のキャラも立っていたので、何となくシリーズ化されそうな予感を感じさせる一冊でした。 |
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