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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧
陰気な私は地球を回さないさんのページへレビュー数78件
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「十二人の死にたい子どもたち」、このタイトルを知った時には是非とも読んでみたいと思った。
あらすじとしては以下の通りだ。1番の少年サトシが主催する集団安楽死に賛同する2〜12番の番号を振られてた少年少女がその会場に集合するのだが、既に1人がベッドの上に横たわっていて動かない。彼は一体誰なのか、それがわかるまではスッキリと自殺できないということで犯人探しをしようとする。12人全員の視点を章ごとに描きながら誰が犯人だかわからないようにさせているのもなかなか容易なことではないと思う。 全体の雰囲気としては、ダークで重々しい雰囲気が漂っていながらも決して重くなりすぎない絶妙な空気感によってストーリーに引き込まれていった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学生アリスシリーズを読むのは何年ぶりだろうか、登場人物の特徴等は全く覚えていないが、このシリーズがとても楽しいものだったことだけは記憶している。本作も例に漏れずあっという間に読めてしまった。非常にボリュームのある大作であるが、分量は一切気にならない。読者への挑戦状は3つも用意されており、3度も事件の解決を楽しませてもらえる、非常に贅沢な1冊だった。
「双頭の悪魔」とは見事なタイトルに思う。川を隔てて存在する2つの村、そこにはかつて川の氾濫をおさめるためにそれぞれの村から生贄を用意させていたという言い伝えがある。そんな村にやってきた主人公一行は大雨により橋が壊れてしまい、互いの村を行き来できなくなるどころか2手に分断されてしまう。そしてそれぞれの村で殺人事件が起き互いにどのように絡み合うのか非常に興味をそそられ、最終着地も見事だった。 そんな本作の良かったポイントはこれだけ多くの登場人物が出てくるのに、一人ひとりをしっかり描き切ったことだろう。それぞれの人物が個性的で、この手の作品によくある、誰が誰だかわからないといった事象は一切無かった。本格ミステリではストーリーは非常に退屈だといったことが珍しくないが、このシリーズでそのようなことは未だ経験していない。 |
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この手の小説は万人受けするものではないだろう。この作品を受け入れられない人もいるのだろうが否定をするつもりはない。私自身本作に対してネガティブな印象を抱いている点も多々ある。例えば、固有名詞の読みづらさはそれだけで読書のペースをダウンさせてしまう。他にも女性キャラクターの描写は物足りなく、いまいち特徴が掴みきれなかったように思う。序盤に関しては稚拙な文章に感じてしまい、嫌悪感があったように思わなくもない。
とはいえ本格ミステリーとしては非常に完成度が高く感じ、続編があるとのことなので是非とも読破したいものだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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犬飼隼人の作品は本作で2作目だが、前作を読んだのはもう4年も前のこと。正直に言うと犬飼隼人がどんなキャラクターであったか全く覚えていなかった。それでもしっかりと物語を楽しむことができた。1作品が非常に短い短編集なので、多くを描き切っているわけではない。そこを物足りなく感じる人がいるのもわからなくもない。
一方でミステリーとしては「7つの毒」のいずれも一級品だと思う。1作品毎が長編として読みたいと思わされるほどの完成度ではないだろうか。 最後に7色の毒といったタイトルからも読後感は苦々しい内容でもあるのだが、最後の最後で晴れやかな気持ちで読了できた。短編1つをとっても本作を通しで見ても、最後の着地が上手い作家だとつくづく思わされる。 |
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すごく面白いのだが、序盤は読んでいて平和警察の横暴っぷりにイライラさせられた。正義を語る平和警察であるが、実際はただの尋問と処刑を趣味にした鬼畜といった感じだ。彼らは何のために危険人物を取り締まっているのだろう?と思わされるほど、全くの無実な人々を痛めつけるために遊んでいるようにしか見えない。
だがそんな彼らも自らが正義だと盲信し、仕事をしているのだと分かってくる。多くの人が自分の仕事は正しいと思っているかもしれないが、実際には自分もしくは会社の都合を押し付けているだけということは少なくないように思う。正義とは一体何なのかといったことを問いかけているような側面も本作にはあった。とはいえ目に見えて平和警察は悪役であり、いかに平和警察をやっつけるかに主眼は置かれる。 そこで登場するのが警察内部の真壁鴻一郎だ。彼が非常に格好良く、実際的な主人公のように映った |
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外国の小説を読む場合、アメリカやイギリス等といった我々にとって馴染みの深い大国を除いてその国に関する多少の下調べは有意義だ。主要な都市や人口、経済規模、その国特有の文化や特徴程度は抑えておいたほうが楽しく読書できると思う。
本作の舞台スウェーデンに関する世間一般のイメージはどのようなものか。日本人からすると、経済水準が高く高税率高福祉の社会民主体制や、世界でもいち早く女性の参政権を認めた点等から男女平等の意識が比較的強い国、といった印象の人が多いのではないだろうか。よく北欧諸国の政治は模範のように扱われ、日本も彼らの年金制度を模倣しようとしていると言った話を耳にする。そんなスウェーデン(少なくとも私はスウェーデンについて良い点しか耳にしたことがなかった)にも様々な問題があり陰となる面も当然ある。そんな部分を浮き彫りさせる社会派といった印象を本作から受け取った。 主人公でありジャーナリストのミカエルは、ある富豪実業家であるブルムクヴィストに関するデマを掴まされ名誉棄損で禁固刑を言い渡される。そこからブルムクヴィストの弱点を握っているこちらも実業家のヘンリック・ヴァンゲルの依頼を引き受ける。彼の依頼は失踪した親族の行方を調べて欲しいとのこと。 そして衝撃の展開からまさかまさかの連続。上下2冊の大作であるが、正直に言って面白くなってくるのは下巻に入ってからだった。それまではただのミステリーとしか思っていなかったが、先ほど書いたような社会派の印象が強くなっていくのが下巻からだ。 私が本作の特徴に感じたのが、女性に暴力を振るう男性がたくさん出てくることだ。各部の冒頭にはスウェーデンにおける女性の○○%が〜といった挿入があるが、決して意味のない物を書いたりはしていない。経済水準が高く幸福度が高いと聞くスウェーデンでも日本と同様に、もしくはそれ以上に悲しい犯罪が起きているのかもしれない。どれだけ行政の体制が良くても、そこに暮らす人々は個々に自我を持った人間であり、社会に縛り上げられているわけではないといった印象を受けた。 作者であるスティーグ・ラーソンは人権派のジャーナリストであったようだが、ミカエルにも同様の印象を受けた。ジャーナリストがこれほどかっこよく映る作品に出会ったのは初めてかもしれない。 あとがきにはしっかりと3部作であると書かれていた。第1部だけでも十分に面白かったが、謎は残っており完結していないとのことだった。この続きを読むのもそれほど後にはならなさそうだ。 |
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この本をこのタイミングで読んだのは、もうすぐ今住んでいる街を離れ新しい場所へ移住するかもしれないからだ。これから行く先はどんなところなのか、ワクワクしているのだがそんな旅の気分を早く味わいたいと思い手に取った一冊。
旅は普段の生活から離れられ嫌なことを忘れる浄化の意味があると思っている。そういう意味では読書と同じような感覚だ。読者も普段の生活とはかけ離れた本の世界を旅しているのだから。読書ばかりではなく、時には書を捨て街に出る本当の旅もいいかもしれない。そんな気持ちにさせられた。 非常に爽やかで、少し恥ずかしくなるぐらいの素直な内容が心地良かった。おかえりのように真っ直ぐな気持ちで日本各地を回れるのは本当に幸せなことなのだろう。 |
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チャンドラーの作品もついに4作目まで来た。これまでの3作品は非常にわかりにくい内容であったが、ここに来てシンプルでわかりやすいプロットだった。そして少し方向転換をしたのか本格派のような内容だった。決してその点を批判するつもりはないのだが、私がかすかに感じていてチャンドラーらしさとは少し作風が違うのかもしれない。
この作品はストーリーが非常にシンプル(とはいえ、相変わらずの脱線と寄り道が満載)で易しいかもしれない。他のチャンドラー作品から読むと彼を嫌いになる方もいるかもしれないが、この作品ははじめて読むチャンドラーには持ってこいだ。 |
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これまでの前2作品は意外性に満ちたミステリアスな展開が特徴的であったが、今作は意外とシンプルにスマートにまとめてきた印象だ。とてつもなく意外な結末でもなく、これまでの佐方というキャラクターをしっかりと描いており、続編もまた手に取ってみたくなる。
この後検察をやめて弁護士へと転身するわけだが、いったいどんな事情があったのか。それが今後の作品で描かれているか知らないが是非とも読んでみたいと思う。 |
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ちょっとできすぎか?読了後にこの作品についてまず思ったのはそんなところだ。とても綺麗にまとめられているし、話の美しさはとても劇的だ。読んでいて正直照れ臭くなってしまうほど、ピュアな登場人物たちが「まっすぐに」話して生きていることが表れている。
実際の世の中に照らし合わせることができるほど忠実に再現されたストーリーから、政治やスピーチに興味を持たせてくれた。読書は心の安寧を得られる趣味だと思っているが、漢字や言葉以外のことが身になるのはこの一冊の特徴だ。人は誰でも人前でスピーチをする機会が1度や2度はあると思う。そんな時にこの本のことを思い出して、良いスピーチをしてみたいと思うかもしれない。実際に私は本作の影響を受け始めている。 |
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その国のことを知るのにミステリーほど適しているものはない、とあとがきだかどこかに書いてあったが、たしかに本書はアイスランドという北欧にある小さな島国を知ることに一役買った。ファミリーネームを持たない国民で構成された、わずか人口30万人強の小国は独自の文化を持つ。その魅力を存分に感じることができた。ストーリーとしてもアイスランドという日本の地方都市にも満たない人口の少ない国であるからこその話であったのではないか。
なかなか馴染みのない人や街の名前が出てくるが、それがまた新鮮で旅行に行ったような錯覚にも陥らせてくれる。 ミステリーとしてもかなりの完成度だ。私の1番のお気に入り作家が同じようなテーマを持つ作品を書いているが、本書の方が何年も前に世の中には出ている。意外性は決してないが、物語に引き込む力は圧巻だった。エーレンデュルという警察官はどこかフィリップ・マーロウに似ているような気もするが、作風は決してハードボイルドではない。この主人公も私の中で輝いた魅力を放っていた。シリーズ物のようなので、他の作品にも手を伸ばしてみたい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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戦争に敗れた国の話を描いた本作は、あらすじからは全くストーリーが想像できず、読み進めていけばあまり伊坂幸太郎の作品とは思えないようなファンタジー感が新鮮だった。猫が主人公で、話し声が人には聞こえないというところは「ガソリン生活」に似通ってはいるか。
後進的なとある国は鉄国からの支配を受けるようになり、その中でさまざまな抵抗を見せながら、過去にあったクーパーと呼ばれる杉の木の怪物の話を混ぜてくる。そしてもう一つの軸が仙台の公務員である男がこの国の近くにさまよってしまい、猫から話を聞く場面だ。この2つがどう混ざり合うのか、いつ猫はこの男と出会ったのか、この辺りが注目してしまうポイントだろう。 正直オチとしてはイマイチでしかなかったが、それでも高評価とするのは斬新な世界観に引き込まれたことが全てだ。非常に面白く読めた。 |
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初めて有栖川有栖氏の作品を読んだ。その設定や他の作品タイトルからしてエラリークイーンの影響を受けているのだろうが、理論を整理して犯人を絞り込む様はまさに、エラリークイーンそのもののようであった。そして、エラリークイーンの作品と比べて(海外古典作品だからであろうか)、遥かに面白くそして読書に浸ることができた。本格物においてこれは非常に重要な点だと私は考えている。トリック重視でご都合主義だと言われたり、あまりに現実離れした内容であったり、何かと批判は付いて回りそうなものだが、この作品はただただ結末が気になりながら楽しい読書であった。これだけたくさんの登場人物がありながら一人一人の個性も残していたりと、読み物として非常に良かった。
▼以下、ネタバレ感想 |
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この「密室殺人ゲーム2.0」を読もうと思っている方のほとんどが前作を読んでいるとは思うが、これは必ず読んでおくべきである。前作のネタバレが書かれていることもそうだが、筆者としても前作を読んでいる前提で話が始まるからだ。
かくいう私はだいぶ前に「密室殺人ゲーム王手飛車取り」を読んだが、その内容を忘れた頃に読んでもその内容が蘇ってきた。こんなすごいトリックあったなぁと懐かしく感じた。 ちなみにここまでの2作品では、甲乙付け難い完成度を共に誇っていると思う。個人的な感想だが、この密室殺人ゲームシリーズはトリックそのものを楽しむというよりは、その事件の中身の意外性にただただ驚かされるものと思っている。そんなのありー?というのもあれば、現実離れして無茶苦茶だと思うものも多々ある。批判も当然出てくるが、この作品の珍妙なところはやはり殺人者たちがチャットをしていることに全てある。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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話の導入がオカルトサークルの合宿ということで、序盤はかなり退屈した。というのも、私自身オカルトには一切興味関心はないからだ。延々と続く記述に飽きかけたが、読み終わった感想としては非常に好印象だ。恐ろしい雰囲気の中でいつ殺人が起きるのかとても緊張感があり、没頭して読書することができたのが良かった。
正直あまりにも人工物めいているとも思う。本格物であるのに細かなポイントについて曖昧であることは確かに気になる。しかしそれでも、その他のインパクトでぼかされてしまったような感じだ。 ちなみにだが、登場人物が長崎県や石川県の地名であることには、意味はなかったようだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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朝井リョウ、最近私がハマりつつある作家である。人の感情を書かせたらこれほど共感できる作家もいない。そして表現の妙。なかなか言葉にしづらいあの感覚を文書とするならこうなのか、それが正解なのかと納得させられてしまう。小学生という周りのあらゆる事象に敏感な時期を描いたこの作品とのマッチはもちろん良かった。
決してストーリーに特別なひねりがあるわけでもないのだが、読んでしまえば浸ってしまう。小学生のストーリーってどこか俯瞰してしまうという私の感覚は全くなかった。しっかり感情移入できるから不思議だ。 |
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冷静になって振り返ってみると、なかなかに振り切れたストーリーだと思う。その辺りを気にさせないのはさすが伊坂幸太郎なのか?世界観がいつものようであり彼らしい。久しぶりにかなり読書にのめり込むことができた。そこだけ切り取ると10点満点でもいいのかなと。
それでもこの点数なのは、あまり捻りを感じない終盤があったからだ。伊坂幸太郎という作家に対して異常なまでの期待があるからこそ、いい意味でもっと裏切って欲しかった。少し贅沢かもしれないが、それだけ大好きな作家であるので厳しくなってしまう。 この作品を語る上でグラスホッパーについて触れないわけにはいかないだろう。続編とは見聞きして知っていたが、ここまで直接的にリンクしているとは思ってもいなかった。グラスホッパーを読んだのは数年前だが、本作を読みながら色々と思い出すことができた。それだけで贅沢な一冊だ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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いやあ面白かった。ストーリーがどうとかではなく、その世界観とラゴスの強靭な精神を通した描写が面白い。たった250ページ程度で、旅をしているラゴスの20歳過ぎあたりから生涯?70歳程度までを描いている。数行の間に数年たったというような日記形式であるから、あっという間に読めてしまった。
読んでいて、常にまとわりついてきたのがファイナルファンタジーのイメージだった。当然ラゴスは自分の思い通りに動かないので、ゲームをプレイしているような感じではないが、その世界にいるような感じである。ドラゴンクエストでもいいが、私のイメージでは少し違う。こういった小説ってありそうで意外とない。そんな新鮮さからぐいぐいハマっていった。 |
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クリスマス・プレゼント、そのタイトルから読むべき時期はクリスマスだと、ずっと今まで読まずに溜めていた一冊。ジェフリー・ディーヴァーの作品は初めてだったが、どんでん返しの名手?という評価を得ているのも納得できた。
本作品に収録されている話は、どれも数十ページととても短い短編である。それ故話に深みを持たせるのは難しいだろうが、淡白にならずストーリーに浸ることができた。特にこれが!というのはないが、どれもかなりのクオリティを見せてくれる。筆者の長編作品を読んでみたいと思わされた。きっと長編であれば大きな驚きを得ることができるだろう。 |
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