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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数608件
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ススキノを駈け抜ける〈俺〉シリーズも第12作になり、長寿作品に付きもののマンネリ感と安心感が強くなったようだ。熱は感じられないが、うま味は濃くなったような。細部を味わう作品とでも言えばいいのだろうか。本作だけを読む方にはオススメ度7、シリーズの読者にはオススメ度9という評価にした。
例によって、頼まれもしないのに犯人探しに奔走するのだが、今回は舞台がほとんどススキノに限られている上に、犯人の悪らつさや残虐さが抑えられているため、他の作品に比べるとストーリー展開のスピードに欠け、アクションシーンも少なくなっている。その理由は、作品中でも数ヵ所、五十代になった自分の衰えを嘆く部分が出て来るが、〈俺〉の年齢的な変化と言えるだろう。 〈俺〉シリーズの魅力の一つに、バカや田舎者に対する罵倒の辛辣さとボキャブラリーのユニークさがあると思っているが、今作品ではバカや田舎者にずいぶんやさしくなった印象を受けた。これも、〈俺〉が年を取って丸くなったせいかもしれない。 さらに、タイトルにもなっているように、今回は猫が主要な役割を果たしているが、猫とハードボイルドの相性はあまり良くないのではないか? パートナーの華と猫の二人に押されて、〈俺〉のハードボイルドな生き方が徐々に崩されかけている・・・さて、どうする〈俺〉? |
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カーソン・ライダー刑事シリーズの第二作は、解説者が書いている通りの“まさに全方位的なエンタテイメント・ミステリ”だ。
蝋燭と花で異常なまでに装飾された女性の遺体が発見され、それが30年前に殺された連続殺人犯につながっており、さらに現在の連続殺人とも密接に絡まって行く・・・・。 デビュー作に続くサイコミステリーとして、前作の印象を上手に生かしながら話が展開されて行く。しかし、前作が効果をあげているのは登場人物のキャラクターにまつわる部分だけであり、本筋は本作だけで本格派のミステリーとして完成しているので、この作品からライダー刑事シリーズに触れた読者もとまどうことはなく、面白く読めるだろう。特に、謎解きの上手さ、伏線の張り方の巧みさには舌を巻くしかない。読み終ったときに初めて気づかされる伏線の多さと答えの深さには、多くの読者が感動するしかないだろう。 それでもオススメポイントを「7」にしたのは、「百番目の男」、「ブラッド・ブラザー」に比べると技巧的な部分が勝ち過ぎていて、犯行動機や犯人像にやや物足りなさを感じたせいである。とはいえ、多くの方にオススメできる作品であることは間違いない。 |
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カーソン・ライダー刑事シリーズの第一作というより、ジャック・カーリイのデビュー作。
いや、あまりの上手さに驚いた。これで本当にデビュー作なんだろうか? ジェフリー・ディーヴァーを追いかける作家という評価も買いかぶりではないと実感した。 残念なことに(?)第4作の「ブラッド・ブラザー」を先に読んでしまったので、兄・ジェレミーの存在がそれほど衝撃的ではなかったが、本作から読み始めた人にはこの兄弟関係が強いインパクトを与えただろう。ただ、このシリーズ全体を貫く重要な要素になっているカーソンにつきまとう家族、過去の重さや深さは「ブラッド・ブラザー」の方がよく描けていたと思う。 ストーリーは、サイコサスペンスの王道を行く、首無し連続殺人事件。このなぞ解きだけでも十分に楽しめるレベルだが、登場人物のキャラクターやエピソードがしっかりしているので、物語として非常に厚みがあり、たんなるサイコ物ではない面白さがある。シリーズとして成功しているのも、当然だろう。 |
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女刑事・音道貴子シリーズの短編集第二弾。
表題作の「未練」は男同士の絆が壊れる様を描いているが、こういう話は作者は苦手なのか? いつもの切れ味の鋭さが無く、凡庸な印象。むしろ、サイドストーリーの音道の友人に紹介された男との付き合いの話の方が、音道らしさにあふれていて面白かった。 いつまでたっても大人になりきらず、不器用でまっすぐな音道の生き方は、読者をハラハラさせると同時に、こんなにぶれない人もいるんだという爽快感を与えてくれるが、本短編集では、それがいっそう強調されているように感じられた。 全体を通して、音道のファンには彼女の性格をより深く知って行く面白さがあるだろうが、初めての読者にはややストーリーの深みの無さが物足りなく感じるのではないだろうか。 |
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ある書評では「サーフ・ノワール」と分類されたそうだが、サーフとノワールという、どちらかと言えば正反対の言葉をつないで表現されているところに、この小説の本質がよくあらわされている。
南カリフォルニア・サンディエゴを舞台にした、サーファーのPI小説とくれば、明るくノー天気な主人公かと思うが、ところがどっこい、ドン・ウィンズロウにかかると明るいだけでは終わらない。確かに、いつも軽口をたたき、仕事よりサーフィンが生きがいで独身という主人公は、一見、典型的な肉体派に見えて、実は知性的で深い洞察力を秘めている。彼を取り巻くサーフィン仲間たちも、軽薄な外見とは裏腹にそれぞれに悩みやトラウマや葛藤を抱えている。 片方には、これまでにない大きな波への挑戦というサーフィンの王道の話があり、もう一方では少女売春組織との戦いという人間の暗部をえぐるような話が展開される。しかも、場面展開が早いので、読む側の気分は上昇と下降を繰り返すジェットコースターに乗せられたようになる。 ただ、両方の要素が並び立ち過ぎているせいか、いまいち、話に深みが足りない気がした。 これが新シリーズの第一作ということなので、今後、どう展開していくのか期待したい。 |
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上下2巻、800ページを読み終えての感想は、一言でいえば、重くて複雑な小説だった。
ケネディ暗殺からベトナム戦争終結までの時代のアメリカの暗部でうごめいた、有名、無名の人物たちが織りなす、きわめて重層的で精緻に構成された政治的ノワールの世界。つまり、エルロイ・ワールド全開の物語だ。 物語の第一印象として、いわゆる「善人」が登場しない。もちろん、そんなことはないのだが、続々登場する悪人たちの存在感が強すぎて、善人は吹っ飛んでしまっている。それだけキャラクターの立った人物が続々登場し、複雑に絡み合ってストーリーが展開するため、読者側が強いられる緊張感も半端ではない。エルロイ・ワールドを楽しむことは、知的興奮はあるものの倫理的、情緒的に非常に疲れることは間違いない。 反則技かもしれないが、巻末の「訳者あとがき」を先に読んでから本文を読めば良かった気がしている。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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高校教師が不倫相手である主婦(生徒の母親)を殺害した事件(前作の「風紋」)から7年後、加害者、被害者双方の遺児と家族のその後を描いた大河小説。お話の中身も重いし、本自体も上下2巻で約1400ページの重量級で、久しぶりに力技で読み通した感じです。
「殺人は、加害者(犯人)以外の関係者全員が被害者」という作者の視点がよく表現されている。ミステリーとして見れば、前作「風紋」の方がよくできているが、哀しみや憎しみから逃れられない人間性の悲劇としては、こちらの方が面白い。 ぜひ「風紋」を読んでから読むことをオススメします。決して、逆の順番にならないように。 |
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刑事・音道貴子シリーズの短編集の表題作。これ一作だけだと、オススメにはならないが、音道シリーズ、なかでも音道貴子のキャラクターを知るという点では、オススメ作だと思う。
ストーリーはありがちというか、通俗的な人情小説の趣だし、半分ほど読み進めば結論が見えてしまう。謎解き、サスペンスの面白さはない。しかし、ところどころにちりばめられたエピソードが主人公・音道のキャラクター作りに貢献していて興味深い。 |
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