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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数50件
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この本に限って云えば、この人のこの作品はそれぞれのエピソードが最後に集約するその様はとても自然で、無理の無い形でそれぞれが繋がっていくところが上手いなと感心させられる。
作者の都合で人が動いたりとか、そのような不自然さが皆無で全てがキッチリと嵌まって一枚の絵になるような構成の巧みさがある。しかし、国が違えば日本の常識が通用しないのは 分かるけれども、どうも「え?」と思うことが多々あり過ぎてその辺が少し可笑しい。事件があればその家の周辺に徹底的に聞き込みを入れて目撃情報を得るのは捜査のイロハだが、 どうもスウェーデンでは違うらしい。こういった点や子供を迎えに行くために刑事が夕方5時に帰るとか、日本じゃちょっと考えられないところがあって、異文化の面白さが味わえる面もあり 海外小説ならではの別の楽しみ方も出来る。とはいっても、捜査の様子がきめ細かく描かれ着実に犯人に迫っていく捜査チームの動きが、かなりの枚数だけれども中ダレすることなく書かれており、 先の展開が気になってとても途中で放り投げるような事は出来ない。主人公の警部も人間味溢れるキャラクターでこういった点もこの物語を面白くしている一因なのは間違いない。 でも一番の良さは無理のない展開とそれぞれの人の考えや行動がとても自然に描かれているところだと思う。文庫本上・下のボリュームだけれど読み応えのある内容だった。 |
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旧ソビエトの社会主義国が舞台の物語。従って一部の理想国家を追求する人種たちは別にして、一般の人々はただ盲従的に国の取り決めに無言で従うしかない。上の人間は「信用しろ、しかし、確かめろ」と一般人を見る。
当然隣人同士で相互監視が起きる。密告により反体制派とレッテルを貼られ処刑される人々は数知れない。そんな世界だ。主人公のレオ・デミドフは国家保安省の捜査官。国家に忠実であればこそこれまでに無実の人を たくさん殺してきた。仲間の捜査官の子供が死んだが、殺人だと騒ぐのを上司の命令で収めに行く。みんな平等なのだからこの社会に犯罪は存在しない。これがこの国の基盤。死体も検分せず目撃者にもろくに話を聞かず ウムを言わせず事故で片付けた。そんなレオが子供ばかりを殺害した連続殺人鬼を追う物語。当然このような事件は表面上存在しない。存在しない事件を調べるとどうなるか?それがこの物語の最大の背景。 レオと妻のライーサの物語。レオと宿敵ワシーリーの物語。過酷な状況のなか信念を持って殺人鬼を追うレオ。ジェットコースター・ムービーのように波乱の展開が続くストーリー。伏線もちゃんと張られ無理の無い ストーリー展開。文庫本上・下のボリュームだけれど一気読みをするほど物語にのめり込んだ。社会的背景が主人公の敵となって立ちはだかる、その設定の面白さが良く描かれている作品といえる。 |
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トマス・H・クックの「緋色の記憶」が好みの人にはこの本もお気に入りとなるでしょう。語り手が四十年前のひと夏の記憶を回想する形で書かれたミステリです。丹念に生活の様子や土地の風土と当事の社会情勢
などが描かれ、少年フランクの心の内や弟と過ごす田舎町の毎日が読み手の心に沁み込んで来ます。ミステリといっても、ひとつの家族の物語となっています。父と母のちょっとした感情のすれ違い。吃音で友達のいない弟。芸術家肌の母に似た 姉。ひと夏に三人の人の死に13歳の少年フランクは遭遇し、これまで知らなかった大人の世界を垣間見ることになります。他のレビューにあるとうりもうひとつの「スタンドバイ・ミー」として見る事も出来る上質な物語です。 秀逸なのはエピローグだと思います。過ぎ去ったひと夏、その時間の経過と共に去っていった人たちの様子を語りながら、フランクと弟と父が会うシーンがとても良い余韻となって物語を締めくくっています。 最後の明らかになる真実の様子も無理が無く、地方の小さな町の人間模様がきめ細かな筆致で描かれていてどの人物も確かにそこに生きていた、そう実感できるヒューマンな物語でもあります。 |
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さて、この死体どうする?ミステリ作家と編集者の二人が考えた解決策は・・・。出だしから伏線いっぱいの書きようで、ミステリファンと真っ向勝負といった内容のストーリー。アイテムを散りばめ密室殺人の解決が各人から語られるなんて凄すぎる。呼ばれた探偵役も推理を重ねて犯人を指摘する。どれもがなるほどと頷く名推理であり読んでいる読者は密室殺人の講義を受けているようなものだ。ポーの見立て、ドイルの見立て、数々のアイテムとギミック。これはミステリ入門書であり
少なくとも中級者以上の人向けのミステリと云えます。しかし、すべては最後の仕掛けのための工作です。そして本当のラストはブラックジョークのようでホラーなオチが用意されているといった手の込みようです。 変化球なしの直球勝負の著者と対決することをワクワクした気分でバッターボックスに入れる。そんな気になる一冊です。 |
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久しぶりの氏の作品。氏の作品はどれもそうだけれどお話自体が楽しめる。ミステリ度がどうのトリックがどうのという話ではない。それが氏の作品に対する自分の認識。軽妙で洒落た文章、多少ハードボイルドチックで楽しい会話。
楽しい夢を見させてくれる数少ない作家だ。「ゾラ・一撃・さようなら」と同じ探偵・頸城悦夫が主人公の物語。彼を取り巻く連中も面白い人物ばかりで、その他の作品も全部がそうだけれどキャラクターの造形が上手い。 読んでいて楽しいのは一番に登場人物たちの面白さだ。この主人公の人物像もフワフワと生きているような感じだが、古い記憶の底に沈殿しているものは若さが作った苦々しいものでちょっと影がある人物といった設定。ハードボイルド・チックにしている関係上このような人物が好ましいとしても、とりまく女性たちとの距離が絶妙だ。それは頸城悦夫という探偵のキャラクターの良さが上手く機能し、またそのように書く氏の筆の確かさ故だろう。 二作書かれた。この後も探偵頸城悦夫の物語を期待してよいのだろうか。そうだとしたらとても楽しみだ。 |
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最後にそうだったのか、と解かるとうーんと唸るストーリー構成。この内容で最後のオチをそのような形で用意するのは物語の性格上とても良いと思う。でなければ一般的に云えばただ暗い内容の話だけで終わってしまう危険がある。
文体も自分のものとしての個性が出ていて好印象。週刊誌記者の生き方というかブレない姿勢やポリシーもしっかり描かれ、それが物語の芯をなす訳でこの記者の存在がひとつの出来事を誰も知らない世間の片隅に追いやることなく 意味のあるひとつのストーリーとして出来上がるわけだ。死を誘う謎の人物と、生と死の間で揺れ動く一人の女性の物語が徐々に盛り上がっていく過程も上手く描かれていてドラマチックな内容が一気読みを誘う。 ラストのドンデン返し的な騙しにはフーンと素直に感心した。この様な手もあるんだなと云うのが正直な感想。この人の他の作品にも興味が出たのでぜひ読んでみたい。 |
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ミステリ専門の流行作家ではなく、東大の助教授時代に書かれた作品で専門は英米文学という学者さんが書かれたミステリです。でも、こういった切り口のミステリは新鮮でとても面白かったといえます。
見立て殺人が続きます。その見立てこそがポオの作品そのものです。ボルティモア市警察警部補、ナゲット・マクドナルド(この名前が可笑しい、登場人物の名前はすべてこんな調子で笑える)の父と何十年もの親交があった 外交官の更科氏。三年ぶりに会う彼を迎えにボルティモア・ワシントン空港に出向いた彼の前に現れたのは更科氏と娘の更科丹希。彼女がこの事件を解決する名探偵で通称ニッキだ。こまかなその場面の様子をキチンと把握していけば 読んでいる人も犯人に辿り着けるように書かれた正統派のミステリで、第4章『ユリイカ(われ発見せり)』を読む前にニッキよりも先に犯人を指摘できれば貴方は名探偵です。 ポオへのオマージュと『アッシャー家の崩壊』を新たな考察で見せるこの一冊はミステリファンには堪らない贈り物です。 著作は少ないですが、既存の作家では無い人が書くミステリには意外と名作と呼べる物が数多くあるものです。坂口安吾しかり、筒井康隆しかりです。 『アッシャー家の崩壊』、『ベレニス』、『黒猫』とポオの作品に見立てた連続殺人、その真相はひとつひとつの手がかりを組み合わせていく正統派の探偵に相応しい事件です。 |
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サム・ホーソーンものの初期の作品12編を集めたものにボーナストラックとして不可能犯罪の名作「長い墜落」が収録された一冊だ。1974年の作品から連続して不可能犯罪の数々を解決したサム・ホーソーン医師自身が、
誰かと酒を飲みながら当事を回想し事件の顛末を語る、そんな設定になっているので一話完結のストーリーではあるが連作ミステリとなっている。全篇不可能犯罪を扱っていて、もちろん現代の科学をもってすれば 成立しない話もあるけれどそんな野暮は言いっこなしで純粋にパズルとしてのミステリを味わうべきである。密室や消失がほとんどで手を変え品を変えていろいろなバリエーションを見せてくれる。プロットを思いついたら すぐに書きたいタイプのようで短編が多く長編は少ない作家だと解説にあるけれどそうなのかも知れない。少なくとも「どんどん橋落ちた」などよりはよほど楽しめる。例えば新幹線などの車中で読めば退屈など吹き飛んでしまうだろう。 個人的には「ロブスター小屋の謎」、「十六号独房の謎」、「農産物祭りの謎」、「水車小屋の謎」と好きだけれど、一番は特別に収録された「長い墜落」が面白かった。類似したものを読んだ記憶があるけれど、これのアレンジだったのだろう。 部屋の窓ガラスが割られ人が飛び降りた、しかし、下には死体が無い。交通整理していた警官がいて何事も無いと証言する。何処にも部屋に入った人物はいない。でも三時間四十五分後にはビルの下に死体が現れた。 このサム・ホーソーンものではない一編が一番良かったというのも皮肉だけれど、しかし、どの物語もアイデアの良さは光っているので楽しめる一冊というのは間違いない。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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敬愛する作家の昭和62年の作品。ミステリ作家であると同時にプロ級のマジックの腕を持っていた。有名な話で本名の厚川昌男のアナグラムで泡坂妻夫のペンネームになっている。こうした稚気とも言えるユーモア精神溢れる人物で
読者へのサービスぶりはどの作品を読んでも実感できる。この本も奇術のネタ的なトリックが使われている。メンタルマジックで使われる読唇術がそれだ。通常のミステリとして楽しんだ後さらに読者を驚かす仕掛けが この本にはある。そう、本の内容そのものの読唇術のネタが仕込まれているのだ。ただし本にも書かれているように読者の幸せのために未読の人に「しあわせの書」の秘密を明かさないで下さい。それがこの本を楽しむためのルールです。 ミステリとしても楽しめるストーリーで伏線の回収の鮮やかさに目を見張ること請け合いです。氏の実力をこの本でお試しあれ。 |
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贅沢な内容のミステリです。三津田信三のようなミステリらしいミステリです。不思議な死体のありようとか二重の密室状態や関係者すべてにアリバイがあり唯一アリバイの無いものは植物人間として入院しているといった展開などミステリファンの心を掴んで離しません。誰もが怪しむ人物からどんでん返しの真犯人までへの謎解きの楽しさが満載の物語です。ミステリマニアへのツボを心得た謎の提出やミスリード、謎解きの論拠となるアイテムなど作者のミステリファンへのサービス精神が遺憾なく発揮された作品です。願わくばこのまま息切れすることなくこのスタイルで書き続けてもらいたいものです。三津田信三氏とかこの小島正樹氏のようなミステリ作家は大事にしなければいけません。他の作品はどうなのだろう?
とても興味が惹かれる作家です。タイトルも作者の狙いを表わしたものでそこからスタートしているこのストーリーはきっとあなたを満足させることでしょう。 |
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有名な作品。短編の名手と謳われる作家の輝かしい歴史的な作品である。アームチェア・ディテクティブのジャンルだろうが、バロネス・オルツィ「隅の老人」シリーズやアシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズと並ぶファンの多い作品だ。
日本で云えば都筑道夫の「退職刑事」シリーズが定番だろう。会話で片方が謎を提示し話を聞いた片方が鋭い洞察力をみせ真相を解明する・・・。このパターンは数多くあるがミステリの王道のひとつと云える。北村薫の「六の宮の姫君」の 円紫師匠と女子大生の「私」シリーズなどが質の高い作品だ。私個人もこのようなスタイルのものがとても好きでこの『九マイルは遠すぎる』は楽しめた。些細な出来事に着目し見過ごしがちな点を捉えて推理の幅を広げていくと始めには考えられなかった事実に行き当たる・・・。こんな楽しい話は無い。ホームズの『赤毛組合』からこういったロジックのものに夢中になった。ミステリファンなら読んでおくべき作品と云える。 |
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長編だと思っていたが短編三作を収めたものだった。でも、「モザイクとフェリスウィール」は第二作目の「夏服パースぺクティヴ」の前日譚に当たる内容で、遊佐 渉と樋口真由が出会うエピソードからストーリーが展開していくので
物語としてはちゃんと繋がっている。「冬空トランス」は密室に絡むハウダニットがテーマで、樋口真由がここでも探偵としての属性をみせて活躍するストーリーだ。 そして「夏風邪とキス以上のこと」は渉と樋口真由の関係が一歩進んでいく様子が描かれている。その様子も第一作の「消失グラデーション」に出てきた謎の男「ヒカル君」が登場し、樋口真由との頭脳戦を繰り広げる中で 描かれている。いずれにしたも一作目、二作目と読んだ人はコレを読まなければ損だ。他にも愉快なキャラクターがいろいろ登場する。渉の父親など傑作だし、会話も楽しく面白い。 個人的にはおススメの一冊。 |
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ミステリではないので、ここでレビューを書くのはどうかと思いますが皆さんが書かれていますので私も書かせて貰います。
経済小説のようなストーリーに勧善懲悪のスタイルとサクセスストーリーの彩りを添えた物語です。読者のツボを得た書き方で いろいろなアクシデントを乗り越えていく主人公とその会社の仲間たちの様子がテンポよく書かれていて気を抜くところがありません。そのため読み始めてからページをめくる手が止まらず一気に最後まで読んでしまいました。評判のわけが解ります。ただ、ひとつ残念なのは人物の描写が浅いことです。主人公の佃にしても、背が高いのか低いのか、太っているのか痩せているのか、眼鏡をかけているのかそうでないのか、髪は長いのか短いのか、そんなところがひとつも書かれていません。そのためいまひとつイメージが湧かなくてモヤっとした感じです。でも久しぶりに一気に本を読み終えるという楽しい時間を与えてくれました。 素晴らしい本であることは間違いありません。小が大を喰う痛快さは云ってみれば王道で誰の胸にも響く物語ですが著者は淡々と描いていてそこが良いところだと思います。最後のページでは涙がポロリとなりました。 |
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始めに、9ポイントとしたのは純粋に私の好み故の評価です。他の作品を読んでいるかどうか、と云った部分を抜きにしても面白いと思います。あとがきにもあるように、バークリーの「毒入りチョコレート事件」の本歌取りとして書かれたところもあるようですが、これはこれで成功しているように思います。入須先輩とホータローとの静かな対決といったシーンなどは面白く感じました。ホータローの覚醒か、内なる自分の解放といったニュアンスで自己に目覚める様子が名探偵誕生のシーンに見えました。結果ひとつの答えを出すわけですが、それにはホロ苦さが付いており一時気を落とす場面もあります。しかし、ホータローです。少しのきっかけで真相に気付きました。十人十色の見方で推理が生まれ、たった一つの真実に到達できるのは、やはり技術=能力ということなんでしよう。こういった芯の部分を抜きにしても登場人物の多様さ面白さは群を抜いており、初野晴のハルチカシリーズとこの二つがこういった青春ミステリのジャンルでは依り高いところに位置する作品と思います。読んでいると高校一年にしては老成した言葉や思考だなと苦笑します。他の登場人物にしても熟成した大人のようなもの言いと態度をみせますがまぁ良いでしょう。里志、ホータロー、伊原摩耶花、千反田える。この四人がこのままの関係で何年かが過ぎ、大人になったホータローが不思議な事件に「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」と解決に手を染める、そんな物語を読んで見たいと思うのは私だけでしょうか。
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先に読んだ「火刑法廷」は多分にオカルト趣味的なホラー要素のあるストーリーで、あまり面白さは感じなかったが、この「黒死荘の殺人」は純粋な謎解きを楽しむミステリとして面白く読み終えた。H・Mの登場する第一作であるが、勝手気ままな性格でマイクロフトとあだ名で呼ばれるのを大いに憤慨していた、とある。マイクロフトとは例のシャーロック・ホームズの兄の名前からとられたもので、そんなエピソードがあるがこのヘンリ・メリヴェール卿の推理力は並ではない。
事件解決の後の推理を披露するところは読み応えがある。この犯人の隠し方は良く出来ていてなかなか見破るのは難しいと思う。トリック、意外な犯人、その隠し方、これはカーター・ディクスン名義のなかでも上位に選ばれる作品と納得する。カーの密室ものとしても楽しむことができる一冊で、ミステリ小説の面白さを満喫できた。 |
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ミステリーとは?に作者が示した答えがこの本であると思います。これはミステリ作家とミステリ愛読者との「楽しい遊びの場」であると言えます。究極の世界を設定しその世界でミステリのアイテム、ミステリのスタイル、トリックのパターンを惜しげもなく使用した「高等問題」を読者に示し、回答を読者がどの様にして導き出すか作者はニヤニヤと見ています。そう、あの綾辻行人の「どんどん橋、落ちた」とは究極の対比として見られます。もちろんその世界の住人が大前提でしよう。
仮に「ハーレクイン・ロマンス」の愛読者がこの本を手にしたとしたら、ありえない設定。非常識。キモい。バカバカしい。非人道的。などの意見が多く寄せられるでしょう。それがつまり他の世界の住人である証です。非常に高度な「問い=答え」あなたはいくつ答えを出すことが出来ましたか?ハンドル・ネームひとつにしても凝っています。作者の徹底した遊び心とミステリを愛するハートに触れてこの本を楽しむべきであると言えます。言わずもがなですが物語の最後にはキチンと登場人物にはケジメをつけたフィナーレが用意してあります。それが世に言う良識というもので、作者はキチンと配慮しています。凝りに凝ったスタイルのこの本。作者に拍手で応えるべきでしょう。 |
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前作の「体育館の殺人」に続く裏染天馬が推理の冴えを見せるシリーズ二作目。読んでいて思ったのがこの作品の世界は完全に出来上がっていること。登場人物たちのそれぞれの役割とかキャラクター設定が出来上がっているので、彼らが物語を動かしていくのにうまく機能している。刑事が高校生に捜査に詰まったからといって協力を仰ぐなんてそんなバカな、なんてつまらない野暮な突っ込みは止めましょう。そんなところにも利害関係をちゃんと用意して天馬の隠された素性が少しずつ明かされていく計算を作者はしています。平成のエラリー・クイーンと評する裏表紙のとうり、論理の積み重ねにより表面には見えない事実を読み取っていく彼天馬の推理は圧倒的に凄く、物事の真理を突き詰めた人の心理面までをも鋭く見抜く天馬の推理力。何故それがそこにあるのか?黄色いモップと青いバケツ。事件を解決するのは結局その黄色いモップと青いバケツでした。論理的展開の圧倒的な面白さ。ミステリーの醍醐味がここにあります。この作者、只者ではない。
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電話ボックスに入った人物が忽然と消えた。これを理路整然と解明し説明する奇術師探偵マニーリー。素直に感心し納得するだけの私。この一篇だけでも読む意義がある。その他にも今読んでも充分楽しめる作品が収められたこのアンソロジー。
珠玉の一冊として大事に残したい本である。ミステリの醍醐味が凝縮された短編ばかりが集められている。ゆっくりとした時間の時に珈琲を片手に味わってみるのも良いでしょう。 |
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【ネタバレかも!?】
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ミステリ作家でない人の作品で楽しめたのは、この「ロートレック荘事件」と坂口安吾の「不連続殺人事件」ぐらいかな。専門家以外の人のアイデアがとても秀逸というのも皮肉なことだけれど、これは普通に騙されるよね。山荘に着く10ページまでの会話を読むと何の違和感もないし。ただ、閉鎖空間であり部外者を除外されるとなると動機さえ読めればおのずと犯人は限定される。そんな単純な事件ではあるが、そうはならないのが仕掛けと証言者の存在と記述の妙であるわけで、
今読んでもうーんと納得しながら唸ってしまう上手さがある。ひとつのネタのパイオニアとすれば古典として語り継がれる栄誉は当然であり、時を経ても読まれ続けられるのもしごく自然なことである。未読の人はぜひ読んでみるべき一冊と云えます。 |
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前作に続いての樋口真由が探偵となり推理の冴えを見せるストーリー。本を手にとってちょっと驚いた。思いのほか厚い。二作目だから、それ程こねくり回したストーリーの物ではなくて、軽めの謎を用意した中篇を何となく想像していた。しかし、思っていた物とはまるで違っていた。けっこう本格で作者のリキが入っているのがヒシヒシと伝わる。映像製作について詳しい様子だけれど、そういったスキルが有る人なのか。好ましいのは「セリフ」のやり取り。こういったセンスは好きだ。波長が合うと云うか読んでいて楽しい。結局、寸断された場所を舞台にした犯人さがしとなるストーリーで、真由と渉と秋帆との関係も可笑しくて気を揉ませて、この後どうなっていくのだろうと期待させる。次があるならぜひ読みたい、そう思う内容で楽しめました。結局、樋口真由。このキャラクターがすべて。
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