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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数154件
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英国四代女流ミステリ作家のひとりマージェリー・アリンガムの、キャビオン氏の事件簿Ⅰと銘打った一冊です。古典を読むと内容はともかくとして、現代と余りにもかけ離れた環境や習慣などに
戸惑いを覚えて、当時でこそのトリックだと思うものがほとんどです。でもこの本に収められているものは、七編ともそれほど違和感がなく現代でも無理なく通る話です。個人的には 「懐かしの我が家」が好みです。七編とも殺伐とした殺人事件がなくコンゲームのような内容の話しが多いせいでしょうか、肩の凝らないリラックスして読めるミステリです。主人公の キャビオン氏も正体がはっきりしないという設定で書かれており、時に触れて彼が漏らす言葉で素性が推察されるというようなキャラクターです。本のタイトルになっている「窓辺の老人」も 組み込まれたいろいろな謎をすっきりと収める話の持って行き方は上手いです。小品と云えばそんな感じもしますが良い感じの作品ばかりで、ちっとした時間に珈琲片手に読むにはぴったりの本と云えるでしょう。 |
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クルト・ヴァランダー警部シリーズ10作品のうちの6作目です。シリーズものとして脂の乗った読み応えのある作品でした。イースタ警察の捜査チームの面々のキャラクターがとても良く描かれ、個々のエピソードが物語に彩を添える役割を十分に
果たしています。残虐な殺人事件を捜査するヴァランダー以下のチームも、皆目犯人像が見えない中、地道な捜査で一歩一歩犯人に迫っていく様子が丹念に描かれていて読み応えがあります。天才的な閃きとかそう言ったことで捜査が進むといった 都合のよい話ではなく、時には迷い仲間の意見や別のとらえ方で状況を推理し直す着実な捜査の仕方が読むものを引っ張っていきます。この、物語に没頭させて読者を引っ張っていく力量は並みではありません。その筆力で試行錯誤しながら連続殺人犯を追うヴァランダーたちの過酷な日常が淡々と描かれているところもとても好感が持てます。証拠を残さずミスリードを図る犯人に最初は迷わされますが、始めから感じていた違和感を信じ仮説を追っていくヴァランダー警部。チーム責任者としての苦悩を盛り込みながら犯人に辿り着く過程がミステリとしても警察小説としても大変良くできた作品であると感じました。後記に著者の経歴やエピソードが書かれていますが自分としては意外な感じの人だと思いました。才能のある人はそこにピタッとはまるように世の中は出来ているんですね。 |
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裕福な家の一人娘が家や両親を捨てホームレスとなって他人と係わらずに一人で生きていく道を選ぶ。そこまでの過程は途中のモノローグや回想で読者に示されていて、多分に読者の共感を得られるように工夫して書かれている。
これまで社会とは無縁で生きてきたのに、その社会から追いつめられた彼女はやがて社会と戦うことを決めるのだが、その気持ちの変化に無理のない設定で一人の協力者が現れるところは中々上手い。 殺人者の追跡を開始するくだりもシビラの心情をしっかりと描きながら行動させているので、調べを進める過程が自然になり動き出す事態も必然のように移る。しつけとか教育という言葉に置き換えて子供をコントロールしたり 管理して思うように育てようとする母親や父親のあり方と、残虐な猟奇殺人者の追跡というシビラの切羽詰まった生き方がしっかりと分かりやすい言葉で書かれていて楽しめる。 こういう少女もいるだろうと思うのは著者の作った世界の上手さであり、それとは別に容疑者となった事件の犯人捜しの様子がシビラの心情と交差して進むところが読ませる部分で、トータルで見れば始まりから最後までシビラの 人生というか運命がこの物語そのものである。ラストも彼女に相応しい終わり方と云えるだろう。 |
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荒筋を見るとコテコテのシチュエーションだと分かる。こういったシチュエーションでは何が重要か、著者はちゃんと把握している。それはヒーローではなくストーリーを盛り上げて、更にヒーローをよりカッコ良く見せる悪役の設定だ。
ただ単に極悪人なんですと云ってもワザトラシサが鼻に付くようではストーリーの面白さが生きない。だがこの物語の場合は強盗に失敗して逃亡先に用意してあった村の住処に潜り込んだ男たち三人のそれぞれのキャラクターが良く書き分けられている。 中でも一人異常な振る舞いでキレていく男の壊れ方がとても上手く描かれている。精神的な疾患のある人間のようでその内面がリアリティーたっぷりで、徐々に異常になっていく過程がストーリーの緊迫感を生む効果絶大である。 この男の目線で書かれているところは、仲間の他の男たちへの気持ちの変化や村人からの強奪計画にのめり込んでいく心情が薄気味悪いほど上手く書かれているので、相対的に村人や中でも引退した元群保安官と村人などとは一切係わらない謎の男や、村の実力者たちの普段の 日常などから非常事態となっていく様子などがとても良く伝わってくる。悪く言えばB級映画のノリのようであるしラストシーンも定石どうりだけれど、吹雪の村で対決する過程がスリリングに描かれている後半が読み応え十分といえる。 |
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久しぶりの最後に「ん!」となるオチが用意されたミステリでした。海外が舞台でこのストーリーでは日本よりもそのほうが自然に受け取れると思います。周到に用意されたミスリードの上手さとお話の面白さ、主人公を取り巻く人間関係の多彩さなどが話の内容や展開を盛り上げます。
インターポールの事務職員が遭遇するミステリアスな事件。連続殺人のオチがそう来たかと思うほど予想外でした。(もっとも何も考えずに読んでいるので、オチが楽しめるわけですが)森博嗣氏の久々のミステリらしいミステリを読ませて頂きました。今後も楽しいミステリをお願いいたします。 最後のシーンまで犯人の予想はつかなかったのですが、チラホラと見える伏線でもしかしたらと感じた読者もいたことでしょう。でもその鋭さはこのミステリを楽しむためには少し仇となっているかも知れません。最後のオチを楽しむスタイルがこの本をもっとも面白く読む方法だと思います。 |
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ミステリのいろいろなガジェットを使った遊び心満載の快作。初めに登場人物一覧があり館の主の親族が21名。招待客が63名。使用人が29名。その他に5名。すべてに名前があり職業等が記載してあるのが笑ってしまう。
山から麓に下りる道にある橋が爆破され、外は暴風雨。電話線は切断されるしケータイは圏外。お約束の「閉鎖状況」で起きる連続殺人。さて、どんな料理が出されるのか興味津々で読み始める。 最初から名探偵が登場しメイドや何だかんだとオチャラケているようだけれど、中身はけっこう本格。すべての辻褄もキチンと合うように説明され齟齬はない。動機は是か非かと問われれば、そこを否定されたらそもそもこの話は 成立しない。何故100人かを突き詰めたフーダニットとハウダニット。自分としては面白かった。一読の価値はある。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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単行本で上・下巻に分かれているボリュームだけれど、途中退屈することなく読み終えた。それは作者の筆の確かさ、上手さ所以の賜物だろう。映画「パルプ・フィクション」のように時系列をシャッフルした書き方と
あり得たであろう現実を虚構として主人公(もと直木賞を取った作家)が小説風に書き綴った内容が交互に読者に示されるからだ。ワザとシャッフルしているので通して読めばそう意外でも何でもない出来事もミステリアスな 事のように思えてくる。読み進むに従ってあった事実と主人公が書くあり得たであろう事実(虚構)が交差する面白さ。そこがこの本の狙いでありウリになっている。タイトルの意味もそこにある。会話文が長いというかきめ細かく綴っているのでページ数が増えていると云えるが、その部分がこの作家の面白さを表わすところでもあるように思う。吹き出したり、ポルノ風に興奮したりいろいろな面を見せながら物語の進行を追っていく読ませ方は上手い。 結局二月二十八日には何があったのか、消えた人物は何処に行ったのか、偽札はどうしたのか、いろいろな夢を見せてくれる物語だった。初めて読んだ作家だけれど文章の上手さが際立っている印象だ。 |
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相変わらずのクワコーの大学准教授生活ぶりだ。文芸部の面々も新たなメンバーを加えてさらに異質な部活となっている。日本一の下流大学たらちね国際大学を舞台にしたクワコーのダメ生活ぶりと遭遇する不思議な事件が抱腹絶倒のユーモアを交えて描かれている。著者は現在近畿大学文芸学部教授で2012から芥川賞の選考委員を務めている。その確かな文章力と的確な語彙を使った美しい日本語とも言える物語の中で、文芸部の連中や他の大学生たちが話す若者言葉がまったくそのままに書かれていてそのギャップからも爆笑を誘うことになっている。よくもまあ観察しているなと思うほどにいまどきの若者が話す言葉が次々と多少の誇張を持って描かれ吹き出してしまう。そしてその文芸部の連中に振り回されるクワコーのしみったれた大学准教授とは思えない哀れな日常生活が笑いのベースになっている。謎を解く探偵役のジンジンこと神野仁美も相変わらずのホームレス生活で、クワコーや彼らの食事風景やらが食リポのように面白可笑しく描かれているところも楽しい。
コテコテの本格ミステリにちょっと疲れたらこの爆笑ミステリにコリをほぐされるのも良いと思う。効能は絶大とおススメできる。 |
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サラリと読めます。でもだからといって薄っぺらい内容のどうってことないミステリとは思いません。まぁ多分にそれは氏のファンである部分が大きく作用している所為と思いますが。しかし、ガチガチの本格的なハードボイルドスタイルの本を読むよりはこの方が楽しめる、自分としてはそのように感じました。相変わらず登場するキャラクターの魅力と会話の楽しさ、そして嫌味の無い人間的な身上やモノへの価値観の公平さ。金持ちが集まるパーティには一着だけ持っている上等なスーツを着ていく、趣味の問題ではないようするに、そういった防具なのだ。こういった言葉がとても気持ち良い。全てがこういった調子で語られる氏の価値観がとても好きだ。先に二作目の暗闇・キッス・それだけでを読んだので主人公の頸城悦夫という探偵の過去や人となりも把握していたので還って読み易かった。周りの取り巻く人物たちとの距離や温度などもここからスタートしているので違う意味で楽しめた。ラストはチョッピリセンチメンタルだけれど探偵にはこれが丁度良いと思う。
二作書かれた、次も期待して良いのだろう。楽しみにしている。 |
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横溝正史+初期の島田荘司といった味付けのミステリ。機会的なトリックって良く考えるものだと感心するが名探偵が解説するところはやや苦しいといった印象。この人の特徴とも云える一件落着と思ってもさらに意外な事実が暴露される
二度びっくりの構図は今作も健在。神話的な言い伝えや土地に伝わる不思議な現象、お約束の双子の姉妹など盛りだくさんの内容で読者を煙に撒く作者のサービス精神の旺盛さには敬意を表する。惜しむらくは名探偵の創造がイマイチなところ。 もう少し魅力のある人物を作り上げて欲しいと思う。ちょっと狙いすぎて破天荒なキャラクターを登場させる作品があるけれど、そっちの方向には行かずにもう少し個性的で魅力的な人物を創造してもらいたいと思う。あまり自分で名探偵と云うような人物設定はどうかなと思う。手を変え品を変え物事を複雑にして読者を引っ張り最後に探偵が鮮やかな推理を披露して一件落着。安心して読める王道のミステリ展開であるこの人の作品は面白いと思うので次も読んでみようと思う。 |
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本音がズバズバと書かれ人間の胸の内、心の中の本当の思いなど赤裸々に語る主人公のモノローグなど辛口の人間批評に溢れたお話である。これを読んでどう受け止めるのか、人それぞれだろう。
著者のメッセージはどこにあるのか理解に苦しむ人もいるかも知れない。しょせん皮一枚。だがそれが大きく作用する現実もある。きれいごとではすまない現実がある。心の美しさは初対面では解からない。 指標となるのは外見だろう。こざっぱりした服装で場にあった物腰で穏やかに話す人。こんな人は無条件で好ましいと受け止める。そんな人間の感情を左右する皮一枚を徹底的に突き詰めた本音の女の言葉で綴られた 物語である。シビアでシニカルな中でラストはありきたりの恋愛ドラマのような姿を見せて幕が下りるのも面白い。是か非か本音満載の生き方のバイブルといえなくも無い。形を変えたイソップ童話だ。 自分が女だったら、躊躇せず和子の生き方を推す。幸せか不幸かそれは二次的なものだ。どうせ人はみな死に塵となる。どう生きたか、だ。 |
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久しぶりの東野圭吾の本。本格ミステリを好んで読んでいる者にとっては、やはり彼の本は通俗小説のように映る。殺人事件は一件。殺された老人の孫が知り合った男と二人して老人の周囲の不可解さを追求していくストーリー。
しかし、いろんな人物が登場していろんな角度からひとつひとつの謎を解いていくと黄色いアサガオに繋がっていくようになっている。この辺の構成というか物語の作り方はベテランらしい上手さで読者を魅了する。 謎の中心が自然界に存在しない黄色いアサガオという設定が良い。だから自分も興味を惹かれて読んでみたわけで。ファンには申し訳ないが他の作品には興味が湧かない。 でも、この作品はベテランらしい筆致で安心して読めるがどうもテレビの2時間ドラマのような印象も持ってしまう。それは謎解き以外の部分の人間関係にいろいろと盛り込む所為だろう。 こういったスタイルを好む人が大多数だろうけれど、「読み易い文章と人間ドラマの面白さプラス謎解き」のミステリは自分は今は距離を置きたい。 ただ、この本は面白かった。それは黄色いアサガオの着想の良さに尽きるけれど・・・。 |
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ミステリとしての謎解きの楽しさはあまり感じられない。警察小説とキャプションがついているのは多分正解だろう。国の違いは文化の違いで警察官としての規範もかなり職業的で、日本の感覚からすると
だいぶズレているようだけれど、他の国の実情が知れるのはこういった機会でなければ余り無いので面白く感じる。真相はどこにあるのか、読者を引っ張っていくエピソードの数々は複雑に絡み合っているようで 捜査に当たる刑事コンビも中々先に進めない。むしろ脇役的な感じで登場したアメリーという少女が探り出した真実の欠片が読者に示されて刑事コンビがその後を追うという展開で読者の気を揉ませる書き方をしている。 村人等彼の周りにいる人間はすべて敵のような状況のなかで彼女が調べ始める11年前の事件の話は並行して読者に知らされるが、逮捕され刑に服し事件は解決した形になっていることに警察は積極的には動かないのは 何処も同じで、彼女が邪魔になった人間の意志で彼女が失踪してから本格的に刑事コンビが動き出すまでが少し長い。物語り世界の周りの淵を色々な登場人物のエピソードで見せていくやり方は有効だけれど、これもまた 念が入りすぎていてページ数が多いのはこのためだ。複雑に絡み合った糸が解れていくと悪意を持った人間が浮かび上がってくるわけだが、そこを単純にしていないところがこの作者の良いところなのかも知れない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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旧友に頼まれコインロッカーから取り出したスーツケースには裸の少年が入っていた。ニーナ・ボーウ、看護師でこの物語の主人公。病院で意識を取戻したシギータ。脳震盪と左前腕の骨折。ほとんど酒を飲まないのに意識不明になるほど
飲んで階段から落ちたと説明されるが血中アルコール濃度の高さがその話を裏付けていた。そして息子ミカエルが居ないことに気づく。この二人の行動がストーリーを広がらせる二つの軸となって物語りは進む。スーツケースを開けたら子供が入っていた。普通この展開なら何故 警察に届けない?不自然だろうとツッコミが入るところだ。しかし、キチンとニーナの行動原理が説明されているので違和感はない。もちろん国による事情などの違いなどもそのひとつの要因として書かれている。 そして旧友の死体発見。コインロッカー付近で見た大男。ニーナの方を見て睨みつけていた正体不明の大男。子供は何故スーツケースに?子供を追うシギータ、子供を連れて逃げるニーナ。劇的に急展開が続くような書き方ではないけれど じっくり書き込まれたストーリーは眼が離せない。真相はさほど意外性などは薄いだろうけれど、登場人物たちの心理的な内面もセレブといえる男と底辺に生きる男の思惑などが絡み合うところがクライマックスに生きており、丹念な書き方が この物語を構築するすべてにおいて成功していると思う。ラストの面白さも良いと思う。ホッとさせてニヤリとさせるラストは次回作への序章だろう。 |
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古い本で、翻訳ものでもあり内容はともかく本として読むのは退屈するのじゃないかと危惧したが、全然そんなことも無く普通に楽しめた。そんなに読みづらい翻訳文じゃなかったのが幸いだった。
内容はほとんどの人が知っている話で、ミステリが好きですと公言する人はこの本を知らないとは云えないほどの古典である。 西澤保彦の「聯愁殺」はこれが下地にして書かれているし、歌野晶午の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」もこれのアレンジだ。一貫してひとつの事件に対しての推理を披露するという流れだけでここまで綿密に書けるのは 凄いと単純に驚く。アンチミステリとしていても最後にはミステリのお約束をしっかり守ったオチが用意されているところも笑えるし、この着想の見事さが気の置けない友人などとミステリ談義の中でフト浮かび上がったのじゃないかと 想像したりして頬が緩む。 Aに送られた毒入りチョコレート。たまたまそばにいたBに譲ると、Bの妻Cが数を多く食べたせいで死亡する。犯人Xは誰か・・・。シンプルな設問でいろいろな推理が披露されるこの本。 今読んでも充分読み応えのあるミステリで、楽しみながら読み終えた。バークリー貴方は凄い。そしてミステリ界に残したその足跡は偉大だ。 |
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ジェフリー・ディーヴァーとくればリンカーン・ライムシリーズが思い起こされるが、これはそれより前の94年に出たものだ。サイコ・サスペンスと紹介されているがそれほど深くは無い。
ただ、読ませる筆力はこの本でもすでに確立されているようで、一ページ上下に組まれた文章が432ページもあるボリュームで、そう簡単に読み終えることはない。 普通これぐらいあると気を抜いて飛ばし読みをしたりするものだけれど、この本に限ってそうはしなかった。ストーリーを追いながらじっくり読んで楽しい時間を過ごした。飛ばし読みをしようと考えなかったし、そうはさせない作者の 上手さがあった。迫りくる嵐、分裂症の殺人犯が西へ向かう、それを追う訳ありの三人。各人をメインに据えた各章の動きと展開。証言した事件の秘密と姉妹の葛藤。 お約束の意外なラストの真相。 リンカーン・ライムシリーズは云ってみれば大向こうを唸らせる派手な演出のストーリーが身上だけれど、これはどちらかと云えば地味な内容とも云えるしストーリー展開も派手さはない。 派手な演出は迫り来る嵐といったところだけで、肝心なのは各人の心の動きでありそれらがキッチリ描かれていることが効果的に緊迫感を醸し出す結果になっていると思う。 追跡者の裏をかき西へ向かうルーべック。彼の後をじっくり読み進む時、読書の至福の時間を味わえることでしょう。 |
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内容は石持浅海らしい作品でストーリーを追うのも、登場人物たちの会話を楽しむのもいつもどうりのことで飽きずに読める。この人の書く作品は視点の面白さだと云える様に感じる。倒叙形式のミステリとしても幾分変わった様子で描かれている。
意思は通じ会っている様に見える殺人を考えている男と殺されることを望んでいる男。この対比がまず不思議だし、そこに不穏な空気を感じてさりげなく邪魔をする碓氷優佳という存在。変わった面白いこの構図で物語りは進むわけだがさりげなく殺人の餌を撒く殺されたい男の内なる思いと、各人の会話からひとつの仮説を立てズバリと読み解く碓氷優佳の存在がこの物語の終焉がどのようになるのかと非常に興味が持たれる。結局事件は起こるのだが碓氷優佳が何をしたのかがこの物語のある意味芯の部分であり、解決としてのバックグランドはそのエピソードが用意されているので消化不良の感じはしない。著者の言葉にあるように事件が起こるまでを丹念に描いた内容なのですが、たったひとつ云えるのは言葉のキャッチボールから仮説を立てる碓氷優佳が「僕の身体にも『うだうだ言う前に相手のところに飛んでいけ』というDNAが受け継がれていましてね・・・。」と云う梶間の言葉をスルーしている点だ。この重大なセリフを何故碓氷優佳は聞き逃したのかが疑問だ。小説的ご都合主義といえばそれまでだが、この著者にそれは無いはずだと思うが。他の言葉にはすべて反応して仮説を組み立てる材料にしている彼女がこの言葉だけ無視しているのは不自然である。どうなんです石持浅海さん?それはまあともかく事件は起きているのでこの後碓氷優佳はいったいどのようにするのか、そこを考えると決して後味の良い物語とは云えない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ホラー的な要素が感じられ、どうしても貴志祐介の「黒い家」が頭に浮かんでしまう。単なる悪女ものだったらつまらないしと思っていたが、なかなかどうしてけっこう面白かった。打算だけの女、その女が医者であった夫の死後三人の子供たちと暮らしてきたその凄まじさが関係者へのインタビューといった形で明らかになってくる。各人の視点で語られる女の異常さ。確かに上手く描かれ読ませるところはあるけれど、このままだったら良くある内容で新鮮味も何もない。そう危惧していたらこちらの予想を見事にひっくり返してくれた。しかも、周到な伏線も用意されていて後半はミステリ度がぐんと上がる内容だった。
▼以下、ネタバレ感想 |
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