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掏摸
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掏摸の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全89件 81~89 5/5ページ
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本書の主人公は現代の日本にはそれ程いないと思われるプロの掏摸(スリ)だ。冒頭から仕事をする場面が描かれるが、スリの手法や実行者の心理状況などが緊迫感を持って描写され、一気に物語に引き込まれる。 主人公がどのような人間であるかは詳細には説明されないが、スーパーマーケットで万引きをしようとしていた子供を助けて、この子供と自分の過去を重ね合わせるところを見ると、不幸な生い立ちを背負っていることは想像がつく。この少年との交流は本書の中でも心引かれるエピソードだ。 ところが木崎という謎の男から仕事を命じられるところから、急速に運命が動き出す。主人公が苦労しながら仕事を遂行していく様は抜群に面白いが、最後の終わり方は個人的には釈然としない感じが残った。 | ||||
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どなたかも書いていますが、映像を読むような小説です。 それもずっと暗い夜のシーンのように(実際は昼間のシーンでも)錯覚して脳裏に 残るような...。 「木崎」は残酷な神のように描かれます。ただでさえ暗いトーンが彼の登場でそこだけ さらに闇が深く救いがなくなります。 いわゆるバイオレンスな犯罪小説のような派手さはありませんが、都会の裏街道を 生きる主人公の孤独がひしひしと伝わり、フィルムノワールを思わせます。 唯一の絆を感じた「石川」との思い出も、彼がもういないことを知ってるが故に 切なく、万引き母子との関わりも、孤独に生きる主人公がかすかなつながりを 他人に求めているようで胸を締め付けます。 そしてその想いがラストにかすかな光を見せてる...と思いたいです。 | ||||
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「絶対悪」とも言うべき男、「木崎」。 その「木崎」に翻弄され、追い詰められ、破滅に向ってゆく「僕」。 「木崎」の壊れ方、狂い方が心底恐ろしい。 「木崎」に運命を操られているのか。 「木崎」に操られるのが運命だったのか。 追い詰められてゆく「僕」の心理描写が生々しい。 「木崎」の恐ろしさが迫ってくる。 怖い話だった。 | ||||
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短い。あとがき含めて175ページ。厚手の紙で読者の「読んだ感」を充実させるためらしい。あざとい。小説自体はとてもいいんだけどね。 こういうあざとさには腹が立つ。あ、本書の内容には関係ないのでやめます。 内容としては、とてもよかった。「僕」とか、バカ母に万引きを強要される子どもか、悲しい人がいっぱい出てきて、読むのが辛かった。でも先を読みたかった。あっさり死んだ石川に、こんなにも心を通わせる「僕」がいることにに、小説の主眼があったと思う。人間同士って、時には仲間になる。…ってこと? やはり人は誰かとつながりたいんだってことか。 木崎というキャラクターが目立っているが、あの現実離れしたキャラクターは、魅力的ではある。それ故、この小説上のテーマを攪乱してしまった感がある。 木崎というキャラクターに、やたら感応してる読者がいるけど、危ないと思う。オゥムの時がそうだったよ。そんな人いないよ。みんな、小さい自分のまま、がんばっているんだよ。 | ||||
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雑誌で作者のインタビュー記事を読み購入しました。 インタビュー記事に「凶悪事件の犯人像を調べて行くと あまりにも浅く、チープ・・・・。 ・・・どんどん人間が短絡的になっているように感じます。 それに抵抗するものとしての活字があり、高度な言葉をもつ 文学が必要なんだと思う。」の言葉に集約されています。 神業的に芸術的に犯罪を重ねる男・木崎。 主人公に感情移入しようとしても、 ついついこの「最悪」の男に入り込んでしまいました。 作者の圧倒的なスケール感、リサーチ力で文章が動き出してくるようです。 こんなにも才能のある若手の作家が存在したことに感動しました。 | ||||
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悪とは?悪人とは?を追求した作品で、ひところの吉田修一風でもある。主人公のスリの青年は、ある時スーパーで母親に命じられるがまま、商品を万引きする少年と出会う。バレバレの万引き法ではなく、見つからないように教えつつも、また母親に命じられたら買い物ができるように、少年に自分のお金を渡す。実はこのスリの青年、それまでにヤバイ仕事をしたことがあり、かつての仲間は行方をくらましていたり、既にこの世にいない。そんな中、彼の運命を掌握しているという男が現れ、3つの仕事を要求する。できなければ、その母子や彼自身の命が危ない。 神はいるのか?と問いたくなるなか、青年の運命を握った男は「もし神がいるとしたら、この世界を最も味わっているのは神だ」と言う。だからこそ「世界は理不尽に溢れている 」のだとも。 本書には答えは書かれていない。この世に起きていることを凝縮させているから、答えもこの世にあることからめいめい、感じ取れということなのかもしれない。それとも神がいるなら、これらの答えを顕現という形で示してくれるのか? | ||||
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一本の映画を見ているよう。 スリが主人公だから 感情移入しないように気をつけて読んだがムリだった。 主人公は 自分で決めたキマリ事があるようで、それを守る。 金持ちしか狙わない。 取った財布は 心なく破棄することはしない。カード等は現金に換えようなどと試みない。 カモを、さげすんだり、うらやんだりと 余計なことは口にせず、発する言葉はムダなく短い為、キレ者の雰囲気。 身なりも良い。頭脳のスマートさが漂う。 (映画化になったら、俳優さんの声が気になるところ) 善良な老夫婦を狙ったシーンは、その後の 二人の落胆を想像せずにはいられなかった・・・が主人公はあくまでもクール。 「泥棒にも三分の道理」などでうかつに心許すことのないよう、用心しつつも、主人公が危ない依頼を受けた場面では、うまく切り抜けられるかハラハラ。 以前つながりのあった、石川という男がスッた一千万円の行方は、石川の性格の独特な一面を表しており、この男もどこか律儀で 主人公と共通する部分を持つ。 店の中で母親にぶたれた子ども(他人)が笑みを浮かべるところで主人公が、子どもの心理を察する場面がある。そこで最も共感した。 (怒られた子が 少し笑い顔になってしまうのは 相手を馬鹿にしている訳でなく、おそらく自己防衛本能や恥の心などが複雑に絡みあって出てしまった表情だと思うから。) 母の客から暴力を受けた子どもの傷ついた心に、自然治癒力をつけさせるかのように接する主人公には親しみを感じた。 寒いのか、クセなのか 足をこする子どものしぐさが実にリアル。 ひとすじ残す 終わりかたは 印象に残った。 ラスト9行が 特に。 | ||||
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スリ行為に快楽を感じる主人公と、人を思うように操ることに快楽を感じる木崎。 そんな悪漢を、どこか冷静に、詩的に描いている作品だと思いました。 主人公が自分の人生を客観的に捉えているあたりに独特のニヒリズムとナルシズムが見えるのだけど、格好よすぎる終わり方じゃないところがよかった。 緊迫した場面と、困難にぶつかった主人公が考える策なども読みどころですね。 この主人公を演じたい俳優さんがいっぱいいそうな作品だと思いました。 | ||||
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木崎がもしわたしの身の回りにいたらどうしているだろうなんて真剣に考えてしまった。 中村文則さんらしい、けれども今までを超えた作品だと思います。 どうしようもない悪。 どうしようもない運命、人生。 こういうものから逃れようとどんなにあくせくしたって結局人なんて無力でちっぽけなのに、 どうしてこの世にすがりつくんだろう、、、(私も含めて。。) 不条理だとか不誠実だとか悶々と考えている方、なーんにも考えてない方にも 是非読んでみて欲しい一冊です。 どう思いましたか?なんて話してみたくなりますよ。 | ||||
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