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掏摸
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掏摸の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.70pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全89件 41~60 3/5ページ
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著者の作品を読んだのは本作が初めて。 主人公は天才的なスリ師。第2章、電車で痴漢を発見した彼はこう思う。「このような男には、二種類あ」り、それは「性的に変質の傾向のある普通の人間と、変質に自身が飲み込まれ、現実と変質の境界が曖昧になり、それが全てとなるほどに浸食された人間。」 無意識のうちにスリを行ってしまうこともある主人公は後者の範疇に入るのだろうか。 作品の中で何度か「塔」の記憶やイメージが語られる。常にそこに立ち、主人公を見つめる美しい存在。だが、希望であったかもしれないその存在は、肯定も否定もせず聳える手の届かない絶対的存在であり、スリにのめり込んでいくうちに「塔」が見えることはなくなった。 “変質に自身が飲み込まれ”、意識的/無意識的にスリを繰り返す主人公は、世間に背を向けながらそれでも誰かと繋がりを感じていたいと思っている。昔の仲間や女を思い出したり、母親に万引きをさせられる子供に目をかけたり。 過去の行きがかりから主人公は裏社会で暗躍する男から仕事を依頼される。いや、抗うすべもなく仕事の成功を強要される。主人公を支配する絶対的な立場である男は思い通り人を動かすことに快楽を感じる。悪の衣を纏った「塔」のような存在。 失敗は死を意味する。男の描いた絵図面通りに動いて成功させても待っているのは死かもしれないが、運命に抗うことだけが生き残る道であるかのように困難な―天才的スリ師しかできないー仕事に挑む。 文中に「微か」という言葉が比較的多く出てくる。少しの誤差から運命が開けることもあるとでも言っているようだ。 最後の場面で主人公は絶望的な状況からポケットに入っていたコインを投げる。コインが誰かにあたれば自分に気づく。あたるか/あたらないかは少しの差。どちらになるかは読者の想像に委ねられている。生き続けようとしている男の姿に共感を覚えた私の想像は前者である。 | ||||
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淡々とクールに描かれています。 人物描写に物足りなさを感じる人がいるかもしれませんが、私はこのくらいが好みです。 姉妹作の王国を読みたくなりました。 | ||||
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とても綺麗な状態で、梱包も良かったです。また、何か機会がありましたら、お願いしたいです。 | ||||
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どんな本が良くって、どんな本がだめなのか 評価できるほどの文才は私にはありません。 ただ、自分には関係ない(と信じている)非常に暗いアンダーグランドな話ですが、 終盤のスリリングさと結末は読んで良かったと思えました。 | ||||
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やや抽象的な、観念的な表現に支配されていると思いますが それ程、鼻につかないところが、著者の人柄でしょうか。 | ||||
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最初から最後まで、物語の細部に至るまで全て面白かった。私にとっては文句の付け所のない面白さが一文字一文字に詰まってると言っても過言では無いような。面白い作品を読むと他の小説も読み尽くしたい気持ちになりますね。 | ||||
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空き巣グループから独立して東京を活動の場とするプロのスリ師。生死不明の昔の仲間を思い、淫売女とその息子を知る。希望の見えない日々に、とてつもなく大きな悪が接触し……。 人の生まれは、その後の彼の生態を縛り付けるのか。著者の答は是であり、思いは否である。 ・「時間には、濃淡があるだろ」(p27) ・「惨めさの中で、世界を笑った連中だ」(p87) 希望のある言葉だ。 ・13章、桐田のバッグから携帯電話を盗む描写力に唸らされた(p133)。時間を支配する意識とは、こういうものなのか。 支配する者とされる者。その複合的構造への叛逆こそ、生命力の源泉となる。そんな読後感を抱かせてくれた。 大江健三郎賞を受賞した本書は『土の中の子供』の衝撃こそないものの、間違いなく著者を代表する傑作と言えよう。 | ||||
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教団Xほどではないけどやはり気持ち悪くなったなぁ この人は「絶対的な悪」とか「不幸な運命」とか それに翻弄される人間の哀しさが ほんとうに好きなんだろうな すごく気持ち悪いけど 少し追いかけてみたい気もしてきた・・・ | ||||
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昔この賞縛りで手を出してみた作品・作家がいずれも胸のむかつくものばかりで(例えば東日本大震災を天罰扱いした障子の人とか)、芥川賞、というと、芸術は人情・倫理および一般常識を超越するものであり、草の根に生きる人たちの血と涙で築かれ痛みと共に受け継がれ往くものなど一顧だにしないという芸術信奉者を気取ったスノッブタの読み物であると思っていた。 この小説により完全に裏切られ、陳腐な言い方しかできないが、魂を掴まれ揺さぶられた。このような作家が今、ここ、この時代にいてくれることに感謝。一気読み必至。金融街の人でなしどもよりも、そいつらの作り出した闇の底であえぐ人たちにこそ読まれるべき、文章としてもストーリーとしても珠玉の一冊。ずっと手元に置いておくだろう。 | ||||
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善はリアリティがないが、悪はリアリティがある。 悪の所業を通じて人間の本質に迫ろうとした、大江健三郎賞の力作。 現代の風俗を巧みに取り入れるだけでなく、旧約聖書を背後に置いて重層的に圧倒的な描写力で書いている。 世界文学の水準に到達している。 | ||||
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運命に抗うスリ師を描いた作品。 いくつかのスリ描写はリアリティを感じさせてくれる。 なぜかよく分からないが、引き込まれ、一気に読みきってしまった。 とくにラストシーンと、それに至るまでの過程が秀逸。 全体を通して映像的で、映画を観ているような気分になった。 ある種の「生き辛さ」がある現代日本をうまく描写している。 哀しいが奥底に少しの温かさを感じる作品である。 | ||||
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絶対的な悪って、あるんですね~ 誰も勝てないと思います。 王国、買わねば! | ||||
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一気に読みました。小説は、一度に読んでこそ。と改めて気づかされました。 180P位で、一気に読むのに、丁度良い長さ。 話のまとまり、クライマックスへのもっていき方、その辺の構成が凄いと思いました。 基本的にスリの描写がメインで、それを取り巻く暴力的な世界。 というモチーフがメインになっています。 スリという暴力を伴わない犯罪が、どうそういう直接的な暴力の世界と結びついて・・・ とかは、今、書いていて思いましたが、後付けですね。 そういうまとめ方もできる。というだけで。 というよりも、短文で読み易く、スリの描写の具体性ゆえのスリリングさと、 小説的な抽象性のバランスが良く取れていて、 後は、前出しで、人物名を出すミステリー感など、、、 色々な工夫がされており、単純に面白くて、 良くできている。凄い。と思わせてくれる小説でした。 | ||||
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私が初めて中村文則作品に出会ったのが、この作品でした。 単行本で出版されたときに読んだのが最初です。 初めて読んだ時、よくできた物語だなと感心しました。 特に構成が素晴らしいと思いました。 主人公が掏摸というのも面白かったし、主人公が見ていた「塔」の存在が興味深かったし、それを作者も実際に見ていたというのはなかなか凄い感性だなと思いました。 しかし、作者の力量に感心しながらも、追って他の作品を読んでみることは、その時はなぜかしませんでした。 最近になって、気になる何人かの役者さんや芸人の方が、わりと中村さんの作品に影響を受けているということを知り、 そんなに影響力があるならちょっと他の作品も読んでみようとデビュー作から読んでいくことにしました。 すると、デビューから芥川賞をとる初期のあたりは、ずいぶんと作風が違うように感じました。 話の巧さというよりも、書かなければならないという強い迫力を感じ、ちょっと震えました。 そして「何もかも憂鬱な夜に」を読んで、ものすごく感動しました。正直、救われました。 小説を読んで、“救われる”という感覚を得たのは、それが初めてでした。 最新作の「教団X」や「あなたが消えた夜に」も読みましたが、そうやって古いものから新しいものまで辿って読んでみると、 この「掏摸」はひとつの分岐点だったのかなと思わされました。 ある種のエンターテイメント性が「掏摸」あたりからは加わったような気がします。 映像化しやすいというか。綾野剛さんも確か、白黒からカラーになった印象を受けたそうです。 たぶん、中村さんがこの作品を書くまでは、技術的なことよりも、書きたい想いの方が強かったのかな、と勝手に推測しました。 求めてくれる人、わってくれる人にさえ届けばいいと、一般向けとまでは考えていなかったのかもしれません。 でもこの作品からは、少し作品と距離を取りながら、構成とか展開とか技術的なことも考慮して、誰もが楽しめるような作品を作ろうとしているように思います。 それでも、彼がずっと描き続けてきた自分のテーマはしっかり作品の基礎に置いて、訴えるメッセージ性は損なわれていません。 「掏摸」が文庫化されていたことを知り、今回何年かぶりに再読してみましたが、もし最初にこの作品よりも前の作品を先に読んでいたら、はじめから中毒的に追っかけていたのかなと感じました。 この作品は洗練されており、そのためかそれ以前の切迫感のような息苦しさはありませんでした。 その後の作品も、同じように作品と作者にはほどよい距離感があり、職業作家としてひとつステップアップしているのかなと思いました。 でも個人的には、初期作品の切迫感がけっこう好きなんですがね。 (2017.9.17追記) 「R帝国」のサイン会で中村文則さんに直接お会いすることができました。 中村さんの小説に救われたと、なんとか感謝の気持ちを伝えることができました。 自然と涙が溢れてしまい、ちょっと恥ずかしかったけれど、中村さんはとても気さくに優しくさらりと気遣ってくれました。 中村さんにいただいた「言葉」、大切にします。一生の宝物です。 | ||||
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中村作品の楽しみ方、読み方は幅ひろい。フランスの思想家ロラン・バルトが「作家の死」を著作 「テクストの快楽」(1973)に発表してから読者の解釈の幅が拡がり過ぎていると云われているくらい である。しかし、読者がどのように解釈しようが勝手といえば勝手である。本作品は「掏摸」に騙され てはいけない。掏摸のテクニック・ハウツウー本では決してない。「悪」の物語でもない。 本作品のキーワードらしきものをあげれば、「塔」「こども」「運命」であろうか。もちろん、作者に 共通する「神」や「愛」のテーマを含んでいる。 僕(西村)は立花や石川とともに高級テクニックをもつ掏摸グループのひとりである。富裕層を見抜き 金品を掏っている。石川から、「ある男」(木崎)(正体不明であるが闇世界で暗躍する怖いオジサン) の指揮する集団強盗の話を持ち掛けられ「ある男」のグループと僕のグループで実行する。 成功し各500万円の分配金をもらう。木崎に見込まれた僕は、三つの仕事を強制される。 実行し成功しないと付き合っている親子の命が危ない。 親子は不幸な母子である。何回もスーパーなどで子供に万引きを強要する母親。見かねた僕は、生活費 や買物代金を負担してやる。子供は僕に頼り切りキャチボールまでするような関係になる。しかし、母親と 相談し、子供の将来を考え児童擁護施設に入所させることにする。 子供に掏摸のテクニックを伝授したり、子供に理解不能な人間心理の複雑さを真面目に語る描写は面白い。 しかし、掏摸の物語でありながら子供に対する愛情や優しさをかなり重点的に描写している。 「塔」については、「神」とか「運命」と解釈できる。僕の決断、子供の頃の回想、木崎に殺されかけ ても「生きたい」希望の先に霞んで見えるのである。『あなたが消えた夜に』の「あなた」であり、吉髙 亮介の信じた「神と名付けた架空の存在」でもある。 人間の「運命」はどうしようもないのか。木崎が「運命のノート」と呼ぶ人間操縦法で僕は「悪」の世界で 翻弄されているのである。 「塔」は見ているだけで何も云わない「神」。「悪」の世界でしか生きられない僕の「運命」。せめて 施設に入った子供は「善」に向かって生きてもらいたい。僕が希望を託す「運命のノート」である。 「小さな者が一人でも滅びることはあなた方の天の父の御心ではない」(マタイ18章・14) 『掏摸』の表層に欺かれないように。中村作品はどれも深い。 | ||||
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古本とは思えないほど綺麗な商品でした。とてもいい買い物ができたと思います。 | ||||
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なかなか面白い。どうせなら、スリリングなスリ場面にもっとページを割いて、闇の支配者(木崎)との真っ向勝負!に話しを絞ったらよかったと思う。 犯罪者が暗くトラウマを背負ってるなんてありきたりな設定、とくに要らない。 あと、文庫版は筆者による後書きがついているが、興醒め。 作家なら、後書きで語らず、作品で語るべきだし、 作品から読者が勝手に想像を膨らます余地がなくなるなんて、 読んで損した気分になる。 とはいえ、文章は端正だし(時々主語が分からなくなるが)ストーリー展開は無理がなく、 久しぶりに若い作家の小説を楽しめた。 他の作品も読んでみたい。 | ||||
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反社会的な行為である掏摸を生業とする男。 悪を超越した悪と表現される木崎と関わり、あるいは 関わる事が運命でありそれに抗おうとする。 木崎の姿は恐ろしいというよりは無機質で超人的に感じた。 言葉の上では感情を持っているようだが行動からはそれが感じられない。 それが余計に恐ろしさを引立たせているのだろう。理不尽の権化。 社会の繋がりから外れた登場人物達はそれでも繋がりを完全には断ち切る ことはできずそれ故に窮地に追い込まれた。木崎の言う通り、 運命が最初から握られていたのか、あるいは握られる事が運命だったのか。 謎が謎のまま残されているものが多く(もちろん意図的に)そのため評価は 分かれるだろうが個人的には十分に楽しめた。本書の結末の続きを勝手に 想像したが続編にて裏切られる事を期待したい。 | ||||
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中村さんの大ファンです。ドキドキしながら読みました。木崎の極悪ぶりと、心優しい悪党の僕の対峙にドキドキさせられました。裏社会のことを少しでも知っている人が読んだら相当怖いと思いますが、その極悪ぶりは突き抜けて、想像できない領域にあったため、リアルに怖がることができなかったのが少し残念な点でもありますが、幸せなことでもありました。「土の中の子供」や「銃」のような、心の闇を映し出すような描写はあまりないけれど、行間に豊かな切ない流れがあって、物語はハードボイルドに進んでいき、本を読む楽しさを堪能しました。最後もとても良かったです。映画で観てみたい作品です。 | ||||
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小説はシナリオではないので、登場人物が、長々と語り出してもそれは『アリ』。だって漱石の『こころ』だって、後半、延々と遺書が続く。だから木崎の語る寓話も映像化する時には不自然になるだろうが小説だから『あり』。この小説で作者が描きたかったのは感情移入できない絶対悪の存在ではないか。最近印象的な絶対悪と言えば『ダークナイト』のジョーカー。ジョーカーはバットマンと自分は同じカードの裏表と思っている。正義の味方ったってよ俺とおなじだろ?と思っている。ジョーカーは自分が悪だと言う自覚があるが、木崎はその自覚はない。力がある自分がより力を得ていくために道徳や法律を、無視しているだけ。木崎は人間をコマとしか思っていない。その傲慢さ、底意地の悪さを今演じられるのは吉田鋼太郎氏しかいないだろう。 | ||||
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